Coolier - 新生・東方創想話

君が涙を流す理由(わけ)

2010/06/26 01:11:10
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 幻想郷にある人間の里、ここにはあらゆる店が揃う。アリス・マーガトロイドもよく訪れるが、たいてい食料品を買い足すくらいしか来ていない。だが、今日は荷物多く抱えて歩いていた、そばには彼女お気に入りの人形を従えて。紙袋からは、色とりどりの布がはみ出ていたが彼女は気にしていていないようだ。にぎやかな商店街を抜ければ、人々が暮らすやはりにぎやかな住宅街が現れる。しかし、いつもここらはにぎやかな声が飛び交っているのだが、聞こえてくるのはすすり泣く声のみ。

 ―……そう、また誰かが死んだのね。どうして人は涙を流すのかしらね、死ぬことは生きとし生けるものに定められた終着点なのに。そういえば、私はいつから泣くことを忘れたのかしらね……。

 すすり泣く声を聞き流しながら、彼女は自分の家に帰っていく。魔法の森にある彼女の家は小ぢんまりとした洋館のようであった。自分の家に近づいた時、人形が玄関に居座る誰かを確認した。

「よぅ」
「何よ、また来たの?」

 ―そう、あいつがまた来た。どうしていつも私の家に来るのかしら、おしゃべりくらいなら霊夢もいるでしょうに。魔法の研究ならパチュリーの所へ行けばいいのに。

「あんた、いつからここにいたのよ」
「もう一時間以上まったぜ」
「…………。紅茶、ご馳走するわ」

 ―霧雨魔理沙、弾幕はパワー、と自負する普通の魔法使い。これまで、幻想郷で起こった異変を博麗霊夢と共に解決していった。私も魔理沙の手伝いをしたことがあった、それからというものの何かと私の家にやってくる。ときどき変なお土産をもってくるけど、正直アレはやめてほしい。

「シャンハーイ」
「お、サンキューな」
「それで、今日は何の用?」
「んー、おしゃべりかな」
「紅茶飲んだら、さっさと帰りなさい」
「つれねーな」
 二人用のティーセットを置くには少々テーブルが小さいようで、カップはお互い持つしかなかった。ちなみに、準備はすべて彼女が操る人形が行っていた。魔理沙も、これには最初とても驚いた。が、今は慣れているせいか人形たちに礼を言うようにもなった。
「あ、そういえばさ」
「何よ」
「人間の里で一人亡くなったんだ。寿命らしいぜ」
「ふぅん」
「私はあんまり泣くことはないけど、アリスはそういう場面とかで泣くのか?」
「……くだらない事を言うのね。人が死ぬくらいで私は泣かないわよ」
「へぇ。だったら何で泣くんだ?」
「ふん、私はちょっとやそっとじゃ泣かないわ」
 都会派をなめないで頂戴、そういってカップを置いた。スペースはかなりギリギリだった。それからは他愛のない世間話や魔法や弾幕に関する持論を言いあった。

 ―まったく、魔理沙はいつも突拍子もない事を言うのね。私が泣く?あり得ないわね、私は都会派魔法使いだからそこらと一緒にしないでほしいわね。

 魔理沙とそのようなおしゃべりをして数日がたった頃、アリスは出かけるたび不可解な視線を感じていた。最初は魔理沙のいたずらだった。玉ねぎなら涙を流すだろう、そんな古典的なトラップを仕掛けてどこからか様子をうかがっていたらしいのだが、アリスには通用せずにトラップ用玉ねぎは全て人形が回収し、それからというものアリスは玉ねぎに困らなかった。二番目はチルノであった。おばけに似せた布を彼女の知り合いと共にかぶり、アリスを驚かせようとしたらしいのだが、その姿はあまりにも滑稽でかつ幼稚な出来であったが為にすぐにバレた。その後も、あの手この手、わしゃやり手を繰り返したがことごとく失敗に終わる。

 ―本当にもう、いい加減にしてほしいわ。私は泣かないのに、どうしてそんな事をしたがるのかしらね。

 しかし、ブームもいつかは終わる。魔理沙が飽きたのか変なトラップは姿を消した。やれやれ、と安心した矢先に霊夢から宴会のお知らせが来た。人見知りではないアリスだが、宴会だけは少しばかり苦手であった。だが、無下に断る訳にもいかないので仕方なく参加することにした。博麗神社の宴会会場はたくさんの妖怪達が勢ぞろいしていた。アリスはしばらく参加した後、会場を後にした。

 ―少し酔っぱらったのかしら、なんかふらふらするし……。あれ……?

 気がついたら見知らぬ誰かに囲まれていた。手には得物を持ち、月明かりが反射していた。

 ―嘘、野良妖怪共?!す、スペル……、くっ、集中できない……。

 酔っているため、思考がまとまらない。そんなことも知らず、野良妖怪達は一斉に襲い掛かる。しかし、得物がアリスに届く瞬間、突如爆音がアリスの周りに発生した。それと、同時に彼女の足元に破片が。

 ―……嘘、う、そ、よね。どうして……。

 翌日の朝、文々。新聞にはどこで見ていたのかアリスに起きた事件が一面に大きくでていた。だが、そんな記事も知らず、彼女は自室にこもり、声を殺し泣いていた。昨日、彼女を守ったのは彼女の人形であった。主の危険に反応し、野良妖怪全てを巻き込んで爆発したのである。そして、その人形は彼女にとって最初に作った最初の人形にして一番愛着を持っていた人形であった。
「おーい、アリスー。入るぜー、拒否られても入るからなー」
 魔理沙が家の中に勝手に入ってきたようだ。彼女は誰にも会いたくない気分だった。しかし、白黒の少女はお構いなしに彼女の自室のドアを開いた。
「やっぱり、ここにいたか」
「……ぐすっ、な、何よ……勝手に入ってこないでよ!」
「新聞見たぜ、大変だったな」
「…………」
「あの人形、お前の大切なものだったんだろ?」
「……だったらなによぅ……」
「ほら」
「!!」
 魔理沙が差し出してきたのは、彼女の人形であった。
「……これ……どうして……」
「パチュリーに無理言って復元してもらったんだ。記憶があやふやでうまくいくか不安だったんだけど……、アリス?」
 人形を受け取った彼女は子供のようにぼろぼろ涙を流していた。
「……なんだ、アリスだって泣くんじゃないか」

 ―私は都会派魔法使い、涙なんて流さない。……けれど、魔理沙の気遣いや元通りのあの子を見たら、涙が止まらなくなっちゃったじゃない。やっと思い出したわ、泣き方が。
アークナイトⅡです。

最初に謝ります、すいません。
少し泣ける話を目指したのですが、これでいいのかわかりかねます。コメントでおもいっきり評価してください。

何かネタが出来次第投稿していきます。ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
アークナイトⅡ
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コメント



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14.90糸目削除
くそう。お前の前では泣かないと決めたはずなのにどうして涙が止まらないんだ。