―なかはあったかい・・・・
そう「なかはあったかい」
全く持ってその通りである。なかに入ると、そこはとっても心地よくて全てを溶かしてしまう、夢見心地の世界が広がり、ちょっと油断するだけでもその心地良さに全てを持ってかれてしまいそうな気がする
特にこの心身共に冷えるこの時期は…出るまでの間、大好きな人と共に心地良さと温かさに包まれるのはまさにこの世の至福とも言えることだ…
だが、大好きな人となかに入るのは何時でも良いと言う訳ではない
…ちゃんと、夜が更けてから、順序を踏んで行う必要があるのだ―
冬の寒さで、しんしんと冷える私の家の居間に、アリスと二人。大好きな人と楽しむ夕飯後の語らいながらの魔法の研究。あーでもない、こーでもないと一杯議論したりして沢山意見を交わしてからの方がなかに入る時は望ましいんだぜ。
交わした言葉や意見の分だけ、溜まった物を吐きだす事ができるからな。
「おっと、もうこんな時間だ。じゃあ、そろそろアリス…」
時間もたけなわ、私はそっとアリスの手を取った。すると、アリスも手を握り返してくれる。
「そう、入るのね…」
「ああ。今から入る、ちょっと遅かったような気がするが」
「ううん、良いのよ。行きましょ、魔理沙」
その一言で立ち上がった私達はしっかりと手を繋いで、静かに慣れ親しんだ部屋を、そして廊下を進んでいく
…初めてじゃ無いけど、なかに入るまでのこの時間と言うのはもどかしくも心地良い
早くなかに入ってあったまりたいけど、そこまでに大好きな人と共有する緊張感とか距離感とかを感じるのも、よりよく温もるためには必要なのだ
「ささ、アリス。お先にどうぞ」
「ありがと、魔理沙」
部屋に入った私とアリスは、そっとドアを閉めてから、どちらからともなく服を脱ぐ。パサッ、パサッと小さな音を立てて身を包んでいた服が一枚、また一枚この身を離れていく。ちょっとだけ早く、服を脱ぎ終わり下着姿となったアリスは鏡を見て全身をくまなくチェック
そんなアリスを見ていると…手が上手く動かなくなった。緊張か、かじかんだのかは良く分からなかったが、シャツのボタンを外すのに戸惑っているとアリスがそっと細い、美しい指を胸元に伸ばしてくる
「外してあげようか?」
「子供じゃないんだ、それくらい自分でやるぜ」
はいはい。今からなかに入るのに随分と余裕な感じがするアリスが自分の下着を取り去るのに少し遅れて私はシャツのボタンを外し終わった。チラと見たアリスの姿はとっても愛らしくて、美しくって、直視するのが難しい。
「どうしたの、魔理沙、まだ準備できないの?」
「い、いや。何でも無い。もうすぐ準備は出来るから安心しろよ」
震える手でなんとか金具を外すと、パチンと音がして控えめなブラが落ち、冷気が一糸まとわぬ上半身を撫でた。身体の芯まで冷えてしまいそうなその冷たさに私は思わず身震い。視界の向こうでアリスが頬を染めて同じように少し寒さに震えている
「だんだん寒くなって来てる…冬になってきた証拠ね」
「だなぁ。でも、こうして一緒に暖まれる大切な人が居て、私は幸せだぜ」
「ホント。一人より二人の方があったかいしね」
そういって寒さに震えながらも微笑むアリスを寒い中で凍えさせるのも嫌だし、自分もアリスと共に早く温まりたいので、慌ててスカートとドロワ―ズを脱いだ。脱いだものは人形達が回収して、洗濯までしてくれるので非常にありがたいのだが、人形達の動きがどこかよそよそしい。
なかにはいるのは…毎日の事なのになぁ
「待たせたな、アリス」
「寒いわよ、魔理沙。このままだと凍えちゃうわ…」
「そうだな、一緒に…な」
そして私達はゆっくりと進みだす。どちらからともなく差し出された手は自然と繋がり、冷たい空気にさらされていた身体の片隅に小さな熱が触れる。微かに震えているのが分かり、寒さか緊張か分からないのはお互い様だなと思いながら足を進めた
裸足で踏むひんやりとした床から伝わる冷たさがジワリと全身に染みわたっていくのを感じた私は、居てもたってもいられなくなってアリスより1歩前に飛び出した
「よーし、じゃあいくぞー!」
「待って。準備がまだじゃないの…いきなりはダメでしょ?」
「えー私はいきなりでも気持ち良いんだけどなぁ」
「だぁめ。入った直後に出るようなハメになるわよ、さっさと座る」
「へいへーい」
さらりと主導権を奪われたのが少し悔しいが、そこは年の功と言う物だ。私より少しお姉さんなアリスにこうやってして貰うのも悪くない
そんな事を考えてしゃがみ、身がまえていると、水の揺れる音が爆ぜる音に変わり私の全身が温もりを帯び始める。二度、三度爆ぜる音がして水の音が少しずつフェードアウトしていき、ぽた、ぽたと水滴の流れる音とだけが空間を支配した
「…ふぅ、気持ち良いんだぜ。アリスもしてやろうか?」
「ん、良いわよ別に。それ位自分でするわー」
「ちぇー」
つれないアリスに口を尖らせる私であったが、アリスの手が動き水の音がし始めると私は思わず息を飲んだ。アリスの陶器のように白い肌が朱に染まり、火照る様は美しさを通り越して最早神々しいと言っても過言ではない
水の爆ぜる音に交じって漏れる熱い吐息、小さく呻くような甘い声は私の頬を一気に染め上げてしまう
「…準備完了、だな」
濡れたアリスはコクリと頷いた。同じく濡れた私もそれを見て、笑顔で答える。だがその笑顔と笑顔の触れ合いの余韻に浸っている暇は無い。ここで止めてしまうと寒い事この上ないし、アリスが風邪でもひいたら大変だしな
だから…私は、深呼吸してアリスの手を取って視線を交わした
「入るぞ、アリス」
「ゆっくり、お願いね」
首を縦に振ったのを確認してから、ゆっくり、ゆっくりとあたたかいそのなかに入っていくと・・・繋いだままのお互いの手がぶるりと震え、熱い吐息が漏れた。
「あっ…」
「んっ…」
ゆっくり、ゆっくりとあたたかい中に包まれて行く私。アリスもリラックスしているのかとても心地良さそうな表情をしている。その表情をじっくりと眺めながらそのままずぶずぶと完全になかに入っていく
カラダの中に溜まった冷たい物とか、色んな感情を押し出すかのように吐き出した息が重なり、少しだけ視線が逸れる
「熱すぎる?」
「ううん、丁度良いわ」
「そりゃあよかった」
こんな時でも優雅さを失わないアリスにときめいてしまった。穏やかな息を吐くアリスの微笑みに私は頬を染めながら、少しずつ進んでいく…
「うわっ!」
「きゃっ!?」
「っと、滑っちゃったんだぜ。申し訳無い。」
「んもう、焦っちゃだめでしょ?」
しっかりと受け止め胸の中に収まったアリスの髪を撫でる。サラサラで綺麗な金色の髪は触っているだけでも幸せな気持ちになれる。そうしていると、アリスは私の頬に手を添えて来た。
「このままじゃ寒いわ、魔理沙はそのままで、ね」
「よし、じゃここからは一気に行くぜ!アリス」
「早くしてねー」
コクリと頷いたアリスのおでこに自分のおでこをくっつけてから、私はゆっくりと腰を下ろした。完全になかに収まった私は、私を包みこむ心地良い温もりとアリスのすっかり蕩けきった顔を見てほう、と溜息を付いた
「どう…?」
そして、身も心も融かす温かさに震えながらアリスに語りかける。アリスはふぅ、と小さな溜息を付いてからニコッと笑ってから私に元気よく答えてくれた…
―やっぱり冬のお風呂って最高ね!!
アリスの幸せそうな声と共にぱしゃっとお湯が揺れた。全身を包む優しく、温かなお湯。そこから香る微かな温泉の匂いがじんわりと私の冷えた身体を芯から温めて心地良い気分にさせてくれる
いやぁまったく、風呂は命の洗濯という言葉はあるが…ホント、寒い時の風呂の「なかはあったかい!」んだぜ
「ホントホント、どんなに寒くてもコレがあれば生き返るよなー」
「ねー。正にこの世の楽園、気持ちい事この上ないわー」
「だろ、飛びこみたくなる心情も理解して頂きたい物だな―」
そう言ってアリスに倣って大きく伸びをすれば、今日の疲れも吹っ飛んで行く。ホントはいきなり飛び込みたかったんだけど…
「まぁ、分からなくは無いけど、心臓発作起こして倒れたらどうすんのよ?」
「そん時はアリスに診取って貰う、私は世界一幸せな魔法使いだぜ」
「死んだら、天国の向こう側とか地獄の果てまで追い掛けるわよ…それでもいい?」
「おお、こわいこわい。分かった、ちゃんと気を付けるから勘弁して欲しいんだぜ」
アリスの言うとおり心臓発作でも起こして卒倒しようものなら私はどうアリスに詫びれば良いか分からないんだぜ。それに、ああは言ったけどどこまでも追い掛けてくれるって言ってくれる人を残して死ねるもんか
一緒にこうして生きてこそ、幸せなのだから
暫くは二人であったまっていたが、やがてアリスが湯船から上がった。優雅に椅子に腰かけて、タオルで石鹸を泡立て始めるアリスの背中に視線をやる。湯船の中と外気の温度差が大きく、何度もその白い背中が震えるのを見た私はそっとほんのりと温もった手をアリスの背中に当てた。
「ひゃんっ!」
「温もりのお裾分け、だぜ」
「んもう、いきなりは反則よー」
頬を染めてこっちを見て来るアリスの姿が可愛らしい。私は、ふむと呟いて湯船から上がってアリスの泡立てていたタオルを取り上げた。そして、後ろに置いてあったもう一つの椅子を足で引き寄せ、座る
「こうすれば、少しは温かいだろー」
「確かに…温かいわ、ホッとする温もりね」
「そう言ってくれるなら何よりだぜ」
温もった身体を寄せて、暖を取りながらの二人の一時。協力してお互いの身体を清め、髪を洗えば、今日の疲れも完全に吹っ飛び、また明日に向けて頑張れる私とアリスの出来上がりである
「ふぅ…」
「さっぱりした?」
「ああ、さっぱりほこほこだぜ」
最後に残っていた私の髪が洗い終わり、美しい金色の輝きが風呂場に踊る。うん、と呟くアリスの満足げな表情を見れば、洗い上がりも最高なんだなって分かる
嬉しくなった私は寒さで固まった節々を動かしながら、アリスがお風呂に腰を沈めるのを待った
「おいで、魔理沙」
「今、行くんだぜー」
差しのべられた手を取り、自分もゆったりとお風呂に浸かる。アリスと暖を取っていた温もりの上から感じる浸かった所から広がる温もりに、じっくりと身を任せて深く腰掛けて大きな息を吐く。
揺れる水面に映る私達の笑顔が、風呂場を照らす魔法の光と重なり、きらきらと輝いて映し出される
―そんな二人で過ごすお風呂はは冬の寒さを吹き飛ばしてくれる、素敵な世界だ
「良い湯だなぁ~お風呂に入るという文化があって本当に良かったと思うんだぜー」
「寧ろ、お風呂と言う物を生みだしてくれた人に感謝しなきゃねー」
色んなお喋りをして過ごす、お風呂での一時。あったかいお湯の中で、身も心もぽっかぽかにあったまる。湯煙の向こう側にいるアリスも楽しげにしている、サードアイが無くても、相手の楽しさが分かる事、そして楽しさを共有できる事ってホントに素晴らしい
裸の付き合いとは、本当に良く言ったもんだよな、うん
「そろそろ上がりましょ?のぼせちゃうわ」
「同感だ、のぼせたら危ないもんなー」
今度は私が立ち上がり、アリスの手を引いて浴室を出る。待機していた上海と蓬莱から受け取ったバスタオルで、頭を、そして身体を拭いてゆく。容赦無い冬の寒さが、身も心も温もった私の身体を冷やして行くのが分かり、思わず身震い
「あぁ、やっぱりお風呂の外は冷えるんだぜ」
「ホント。早く寝支度済ませちゃいましょ」
「お前にしては珍しいな、アリス」
同じく身体を振るわせるアリスが、私の方を向いて微笑む。暫くは見つめ合っていたがやがて、アリスの唇が動いて私にこんな事を言ってきた
「この後は…ベッドの中で魔理沙が暖めてくれるんでしょ、私だって、寒いのは嫌よ?」
流石ブレイン派、口説き文句も吟味された物だ。私の心臓が爆発しそうな位跳ねたが、ここで爆発させたらそれこそアリスに迷惑がかかってしまう。
でも、主導権を握られるのも癪だから…私は、精一杯の反撃をアリスにする
「わ、私もアリスに朝まで暖めて貰うから、覚悟しとけよ…」
私は照れ隠し代わりにそう言って、アリスから目を背けて受け取ったパジャマに腕を通した
そう「なかはあったかい」
全く持ってその通りである。なかに入ると、そこはとっても心地よくて全てを溶かしてしまう、夢見心地の世界が広がり、ちょっと油断するだけでもその心地良さに全てを持ってかれてしまいそうな気がする
特にこの心身共に冷えるこの時期は…出るまでの間、大好きな人と共に心地良さと温かさに包まれるのはまさにこの世の至福とも言えることだ…
だが、大好きな人となかに入るのは何時でも良いと言う訳ではない
…ちゃんと、夜が更けてから、順序を踏んで行う必要があるのだ―
冬の寒さで、しんしんと冷える私の家の居間に、アリスと二人。大好きな人と楽しむ夕飯後の語らいながらの魔法の研究。あーでもない、こーでもないと一杯議論したりして沢山意見を交わしてからの方がなかに入る時は望ましいんだぜ。
交わした言葉や意見の分だけ、溜まった物を吐きだす事ができるからな。
「おっと、もうこんな時間だ。じゃあ、そろそろアリス…」
時間もたけなわ、私はそっとアリスの手を取った。すると、アリスも手を握り返してくれる。
「そう、入るのね…」
「ああ。今から入る、ちょっと遅かったような気がするが」
「ううん、良いのよ。行きましょ、魔理沙」
その一言で立ち上がった私達はしっかりと手を繋いで、静かに慣れ親しんだ部屋を、そして廊下を進んでいく
…初めてじゃ無いけど、なかに入るまでのこの時間と言うのはもどかしくも心地良い
早くなかに入ってあったまりたいけど、そこまでに大好きな人と共有する緊張感とか距離感とかを感じるのも、よりよく温もるためには必要なのだ
「ささ、アリス。お先にどうぞ」
「ありがと、魔理沙」
部屋に入った私とアリスは、そっとドアを閉めてから、どちらからともなく服を脱ぐ。パサッ、パサッと小さな音を立てて身を包んでいた服が一枚、また一枚この身を離れていく。ちょっとだけ早く、服を脱ぎ終わり下着姿となったアリスは鏡を見て全身をくまなくチェック
そんなアリスを見ていると…手が上手く動かなくなった。緊張か、かじかんだのかは良く分からなかったが、シャツのボタンを外すのに戸惑っているとアリスがそっと細い、美しい指を胸元に伸ばしてくる
「外してあげようか?」
「子供じゃないんだ、それくらい自分でやるぜ」
はいはい。今からなかに入るのに随分と余裕な感じがするアリスが自分の下着を取り去るのに少し遅れて私はシャツのボタンを外し終わった。チラと見たアリスの姿はとっても愛らしくて、美しくって、直視するのが難しい。
「どうしたの、魔理沙、まだ準備できないの?」
「い、いや。何でも無い。もうすぐ準備は出来るから安心しろよ」
震える手でなんとか金具を外すと、パチンと音がして控えめなブラが落ち、冷気が一糸まとわぬ上半身を撫でた。身体の芯まで冷えてしまいそうなその冷たさに私は思わず身震い。視界の向こうでアリスが頬を染めて同じように少し寒さに震えている
「だんだん寒くなって来てる…冬になってきた証拠ね」
「だなぁ。でも、こうして一緒に暖まれる大切な人が居て、私は幸せだぜ」
「ホント。一人より二人の方があったかいしね」
そういって寒さに震えながらも微笑むアリスを寒い中で凍えさせるのも嫌だし、自分もアリスと共に早く温まりたいので、慌ててスカートとドロワ―ズを脱いだ。脱いだものは人形達が回収して、洗濯までしてくれるので非常にありがたいのだが、人形達の動きがどこかよそよそしい。
なかにはいるのは…毎日の事なのになぁ
「待たせたな、アリス」
「寒いわよ、魔理沙。このままだと凍えちゃうわ…」
「そうだな、一緒に…な」
そして私達はゆっくりと進みだす。どちらからともなく差し出された手は自然と繋がり、冷たい空気にさらされていた身体の片隅に小さな熱が触れる。微かに震えているのが分かり、寒さか緊張か分からないのはお互い様だなと思いながら足を進めた
裸足で踏むひんやりとした床から伝わる冷たさがジワリと全身に染みわたっていくのを感じた私は、居てもたってもいられなくなってアリスより1歩前に飛び出した
「よーし、じゃあいくぞー!」
「待って。準備がまだじゃないの…いきなりはダメでしょ?」
「えー私はいきなりでも気持ち良いんだけどなぁ」
「だぁめ。入った直後に出るようなハメになるわよ、さっさと座る」
「へいへーい」
さらりと主導権を奪われたのが少し悔しいが、そこは年の功と言う物だ。私より少しお姉さんなアリスにこうやってして貰うのも悪くない
そんな事を考えてしゃがみ、身がまえていると、水の揺れる音が爆ぜる音に変わり私の全身が温もりを帯び始める。二度、三度爆ぜる音がして水の音が少しずつフェードアウトしていき、ぽた、ぽたと水滴の流れる音とだけが空間を支配した
「…ふぅ、気持ち良いんだぜ。アリスもしてやろうか?」
「ん、良いわよ別に。それ位自分でするわー」
「ちぇー」
つれないアリスに口を尖らせる私であったが、アリスの手が動き水の音がし始めると私は思わず息を飲んだ。アリスの陶器のように白い肌が朱に染まり、火照る様は美しさを通り越して最早神々しいと言っても過言ではない
水の爆ぜる音に交じって漏れる熱い吐息、小さく呻くような甘い声は私の頬を一気に染め上げてしまう
「…準備完了、だな」
濡れたアリスはコクリと頷いた。同じく濡れた私もそれを見て、笑顔で答える。だがその笑顔と笑顔の触れ合いの余韻に浸っている暇は無い。ここで止めてしまうと寒い事この上ないし、アリスが風邪でもひいたら大変だしな
だから…私は、深呼吸してアリスの手を取って視線を交わした
「入るぞ、アリス」
「ゆっくり、お願いね」
首を縦に振ったのを確認してから、ゆっくり、ゆっくりとあたたかいそのなかに入っていくと・・・繋いだままのお互いの手がぶるりと震え、熱い吐息が漏れた。
「あっ…」
「んっ…」
ゆっくり、ゆっくりとあたたかい中に包まれて行く私。アリスもリラックスしているのかとても心地良さそうな表情をしている。その表情をじっくりと眺めながらそのままずぶずぶと完全になかに入っていく
カラダの中に溜まった冷たい物とか、色んな感情を押し出すかのように吐き出した息が重なり、少しだけ視線が逸れる
「熱すぎる?」
「ううん、丁度良いわ」
「そりゃあよかった」
こんな時でも優雅さを失わないアリスにときめいてしまった。穏やかな息を吐くアリスの微笑みに私は頬を染めながら、少しずつ進んでいく…
「うわっ!」
「きゃっ!?」
「っと、滑っちゃったんだぜ。申し訳無い。」
「んもう、焦っちゃだめでしょ?」
しっかりと受け止め胸の中に収まったアリスの髪を撫でる。サラサラで綺麗な金色の髪は触っているだけでも幸せな気持ちになれる。そうしていると、アリスは私の頬に手を添えて来た。
「このままじゃ寒いわ、魔理沙はそのままで、ね」
「よし、じゃここからは一気に行くぜ!アリス」
「早くしてねー」
コクリと頷いたアリスのおでこに自分のおでこをくっつけてから、私はゆっくりと腰を下ろした。完全になかに収まった私は、私を包みこむ心地良い温もりとアリスのすっかり蕩けきった顔を見てほう、と溜息を付いた
「どう…?」
そして、身も心も融かす温かさに震えながらアリスに語りかける。アリスはふぅ、と小さな溜息を付いてからニコッと笑ってから私に元気よく答えてくれた…
―やっぱり冬のお風呂って最高ね!!
アリスの幸せそうな声と共にぱしゃっとお湯が揺れた。全身を包む優しく、温かなお湯。そこから香る微かな温泉の匂いがじんわりと私の冷えた身体を芯から温めて心地良い気分にさせてくれる
いやぁまったく、風呂は命の洗濯という言葉はあるが…ホント、寒い時の風呂の「なかはあったかい!」んだぜ
「ホントホント、どんなに寒くてもコレがあれば生き返るよなー」
「ねー。正にこの世の楽園、気持ちい事この上ないわー」
「だろ、飛びこみたくなる心情も理解して頂きたい物だな―」
そう言ってアリスに倣って大きく伸びをすれば、今日の疲れも吹っ飛んで行く。ホントはいきなり飛び込みたかったんだけど…
「まぁ、分からなくは無いけど、心臓発作起こして倒れたらどうすんのよ?」
「そん時はアリスに診取って貰う、私は世界一幸せな魔法使いだぜ」
「死んだら、天国の向こう側とか地獄の果てまで追い掛けるわよ…それでもいい?」
「おお、こわいこわい。分かった、ちゃんと気を付けるから勘弁して欲しいんだぜ」
アリスの言うとおり心臓発作でも起こして卒倒しようものなら私はどうアリスに詫びれば良いか分からないんだぜ。それに、ああは言ったけどどこまでも追い掛けてくれるって言ってくれる人を残して死ねるもんか
一緒にこうして生きてこそ、幸せなのだから
暫くは二人であったまっていたが、やがてアリスが湯船から上がった。優雅に椅子に腰かけて、タオルで石鹸を泡立て始めるアリスの背中に視線をやる。湯船の中と外気の温度差が大きく、何度もその白い背中が震えるのを見た私はそっとほんのりと温もった手をアリスの背中に当てた。
「ひゃんっ!」
「温もりのお裾分け、だぜ」
「んもう、いきなりは反則よー」
頬を染めてこっちを見て来るアリスの姿が可愛らしい。私は、ふむと呟いて湯船から上がってアリスの泡立てていたタオルを取り上げた。そして、後ろに置いてあったもう一つの椅子を足で引き寄せ、座る
「こうすれば、少しは温かいだろー」
「確かに…温かいわ、ホッとする温もりね」
「そう言ってくれるなら何よりだぜ」
温もった身体を寄せて、暖を取りながらの二人の一時。協力してお互いの身体を清め、髪を洗えば、今日の疲れも完全に吹っ飛び、また明日に向けて頑張れる私とアリスの出来上がりである
「ふぅ…」
「さっぱりした?」
「ああ、さっぱりほこほこだぜ」
最後に残っていた私の髪が洗い終わり、美しい金色の輝きが風呂場に踊る。うん、と呟くアリスの満足げな表情を見れば、洗い上がりも最高なんだなって分かる
嬉しくなった私は寒さで固まった節々を動かしながら、アリスがお風呂に腰を沈めるのを待った
「おいで、魔理沙」
「今、行くんだぜー」
差しのべられた手を取り、自分もゆったりとお風呂に浸かる。アリスと暖を取っていた温もりの上から感じる浸かった所から広がる温もりに、じっくりと身を任せて深く腰掛けて大きな息を吐く。
揺れる水面に映る私達の笑顔が、風呂場を照らす魔法の光と重なり、きらきらと輝いて映し出される
―そんな二人で過ごすお風呂はは冬の寒さを吹き飛ばしてくれる、素敵な世界だ
「良い湯だなぁ~お風呂に入るという文化があって本当に良かったと思うんだぜー」
「寧ろ、お風呂と言う物を生みだしてくれた人に感謝しなきゃねー」
色んなお喋りをして過ごす、お風呂での一時。あったかいお湯の中で、身も心もぽっかぽかにあったまる。湯煙の向こう側にいるアリスも楽しげにしている、サードアイが無くても、相手の楽しさが分かる事、そして楽しさを共有できる事ってホントに素晴らしい
裸の付き合いとは、本当に良く言ったもんだよな、うん
「そろそろ上がりましょ?のぼせちゃうわ」
「同感だ、のぼせたら危ないもんなー」
今度は私が立ち上がり、アリスの手を引いて浴室を出る。待機していた上海と蓬莱から受け取ったバスタオルで、頭を、そして身体を拭いてゆく。容赦無い冬の寒さが、身も心も温もった私の身体を冷やして行くのが分かり、思わず身震い
「あぁ、やっぱりお風呂の外は冷えるんだぜ」
「ホント。早く寝支度済ませちゃいましょ」
「お前にしては珍しいな、アリス」
同じく身体を振るわせるアリスが、私の方を向いて微笑む。暫くは見つめ合っていたがやがて、アリスの唇が動いて私にこんな事を言ってきた
「この後は…ベッドの中で魔理沙が暖めてくれるんでしょ、私だって、寒いのは嫌よ?」
流石ブレイン派、口説き文句も吟味された物だ。私の心臓が爆発しそうな位跳ねたが、ここで爆発させたらそれこそアリスに迷惑がかかってしまう。
でも、主導権を握られるのも癪だから…私は、精一杯の反撃をアリスにする
「わ、私もアリスに朝まで暖めて貰うから、覚悟しとけよ…」
私は照れ隠し代わりにそう言って、アリスから目を背けて受け取ったパジャマに腕を通した
それと内容と比べると地の文の文字が多すぎると思います。
とても甘くて良いマリアリでした!
あと、魔理沙がだぜだぜ言いすぎな気もします。