一人の男が腐りかけた女の死体に向かって優しく囁きかけていた。
「なあ、覚えてるか。あの冬の日。猫の女の子が家の炬燵で丸くなっててさあ」
その声音はどこまでも穏やかで、相手に対する愛情に満ちている。だが死体は死体である。その上腐って皮膚
が崩れかけて、蛆まで湧いているような有様なのだ。返事など返ってくるはずもない。
「かわいそうになあ」
呟きながら、男は繊細な手つきで女の顔の蛆をそっと摘み取る。白く蠢く蛆の大群は、女の右頬にびっしりと
こびりついている。その汚らわしい幼虫の群れを、男は一匹一匹丁寧に摘み取っていった。焦って一気に取り除
こうとすれば、女の顔を崩してしまうからだろう。男の手つきは慎重で、気遣いに満ちていた。たとえもう既に
生前の面影が残っていないほどに崩れてしまっているとしても、その女の尊顔は男にとって何よりも大事にしな
ければならないものなのだ。
そうして蛆を全て取り除いたあと、男はかすかに微笑みながら、女の頬に手の平を伸ばし、撫でるようにゆっ
くりと上下させた。わずかも触れてはいない。触れては崩れてしまうからだ。
「こんなことしかしてやれなくてすまねえな。俺は何の力もねえただの人間だからよう」
女は何も言わない。その目は永遠に閉じられたままで、男を見つめ返すことすらない。しかし男はその沈黙す
らも愛おしくてたまらないというように、力ない女の躯を抱きかかえたまま、静かな声で囁き続ける。
「それで、話の続きだけどよ」
そうして夜通し囁き続け、空が白み始めるころになると、男の顔から急に微笑みが消え失せた。物言わぬ女の
死体を無表情にじっと見つめ、苦しげに涙を流す。
「何をやってんだろうな、俺は」
喉がひきつれたような嗚咽が、男の口から絞り出された。
「ごめんな、ごめんな、許してくれな。俺ぁもう、お前がいないあの家で眠るのが、どうにもこうにも耐えられ
ねえんだ。もう二度とお前と抱き合って夜通しつまらない話が出来ないなんてよぉ。本当にもう、耐えられねえ
よ。こんな俺をどう思う。悲しんでるか、怒ってるか。なあ、なんでもいいから答えてくれよ。なあ」
しかし死体は何も答えず、表情一つ変えることはない。男は数分も無言で涙を流し続けていたが、やがてヨロ
ヨロと頼りなく、しかし死体を損壊しないように細心の注意を払いながら立ち上がり、墓を元の通りに整え直す
と、朝の光から逃げるように去っていった。
その一部始終を目撃していた魔理沙は、たった今呼吸のやり方を思い出したような気持ちで、大きく、大きく
息を吐く。
「とんでもないもの、見ちゃったなあ。ホラー小説かよ。全く笑えねえ」
ぼやくように呟いて笑おうとしたのだが、頬の筋肉は死んでしまったかのように、ぴくりとも動いてくれな
い。本当に、全く笑えねえ話だった。
その翌日の夜から、魔理沙の苦行が始まった。昼間寝て夜のそのそと起きだしては、あの男を見張るために人
里の家の陰などに潜んで待つ。男の家は知っていたので、夜の闇に隠れて見張るのは大して難しくもなかった。
姿を消す類の魔法は苦手だったが、それでも力のない人間に見つからないようにする程度は造作もない。家から
出てきた男にも同じ魔法をかけてやって、他の人間に発見されないようにした。こんなところを見つかりでもし
たら、男と女の逢瀬はそこで止められてしまうだろう。そうなったら一巻の終わりだ。
人里の隅に隔離されているかのように存在する共同墓地に向かうまでの間、男はやせ衰えて生気がないのに、
そのくせ希望に満ち溢れた顔をしていた。長い間ずっと恋い焦がれていたものにようやく会えるという、幸福感
に満ち溢れた足取り。迷いなく歩く酔っぱらいのようなその姿に、魔理沙は舌打ちを漏らさずにはいられなかった。
「すっかりイカれてやがるぜ」
今更といった感のある言葉を小さく吐き出し、魔理沙は男の後をつける。今は深夜で人里の人間は皆寝静まり、
起きている者は誰一人としていない。物見台には見張りがいるかもしれないが、この里が妖怪の賢者に保護され
ている平和な場所である以上、さほど気張ってはいないだろう。下手をすれば居眠りをしている可能性すらある。
その上、男は人がいる可能性のある場所は一度も通らなかった。魔理沙が考える限り、もっとも安全なルートを
冷静に選んでいる。もう男を見張るようになって数度目の晩だが、猫一匹とすら遭遇していない。
(イカれてるくせに、こういうところは気持ち悪いぐらいに完璧だ。愛のなせる業ってやつかね)
胸中で溜息をつく魔理沙の前で、男は今夜も共同墓地にたどり着いた。
世界各地の妖怪が流入しているせいか、幻想郷の文化は基本的に和洋折衷である。日々の食事から建築や芸術
作品に至るまで、実に多様な文化が無理なく混在している場所なのだ。宗教にしてもそれは変わらないので、埋
葬の方法も実に様々だ。男は当然のように、自分の妻を棺に横たえて土葬していた。
そんなわけで妻の死体は腐りかけながらも完全に骨にはならず、毎晩毎晩わずかに面影を残した体で生前の夫
を出迎えるわけである。
「元気にしてたか。ずっとそばにいてやれなくてすまねえな」
速やかに埋め直せるよう気をつけて墓を掘り返したあと、男は優しく抱き起こした妻の死体に向かって話しか
けた。また夜通し、愛しい女の腐り落ちそうな耳元で、絶えることなき愛の詩を囁くつもりらしい。
(勘弁してほしいぜ、全く)
男のいる位置からでは見えない墓石の陰に座り込みながら、魔理沙は深くため息をつく。派手な魔法を好み、
また得意としている彼女にとって、人払いの魔法を夜通しかけ続けるというのはなかなか骨の折れる作業だった。
しかも耳に入ってくるのが狂った男の答える者なき愛の囁きである。正直、こちらの頭までイカれそうだ。
それでも魔理沙は耐えに耐えた。たまに立ち上がって男の顔を思い切り殴り飛ばしてやりたいという強い衝動
に駆られたが、必死に我慢した。
魔理沙がここまでしているのには、もちろん理由がある。彼女にとってはずっと昔、まだ人間の里で暮らして
いた頃、よく男の世話になっていたのだ。正確に言うなら、男と、今は物言わぬ骸と成り果てている女とに。
仲のいい、善良な夫婦だった。悪戯がばれてこっぴどく叱られた魔理沙が泣きながら彼らの家に駆けこむと、
いつも優しく迎えてくれたものだ。夫婦仲が極めて良好なのに子供がいなかったから、娘のように思っていてく
れたのかもしれない。そんな二人が形作る穏やかな空間を、当時の魔理沙は幼いなりに愛していた。
そういう人間的な幸福に満ち溢れていたはずの男が、今は物言わぬ妻の死体を抱きしめて、忌まわしい安らぎ
に身を委ねている。熱に浮かされたような瞳は、ただ妻だけに情熱的な視線を注ぎながら、しかし少しも現実を
見ていない。
(深すぎる愛はときに人を狂わせる、ってか。陳腐すぎて笑えもしないや)
男の狂おしい愛の囁きを聞き流しながら、魔理沙は一人ため息をついた。
そうして空が白み始める頃、男はまた最初の日と同じように妻の墓を注意深く元通りにした。涙を流して謝り
ながら、朝の光から逃げるように去っていく。
男が誰にも見つからずに家まで帰るのを見届けたあと、魔理沙もまた速やかにその場を後にした。なにせ勘当
中の身である。里の人間に見つかりたくないのは、魔理沙とても同じだった。
(いつまで続けなくちゃならないんだ、こんなこと)
今すぐ墜落したいような気分で空を飛びながら、魔理沙は奥歯を噛みしめた。
家に帰るなりベッドに潜り込み、起きだしてみたらもう夕方になっていた。窓の向こう、鬱蒼とした魔法の森
は夕闇の中に沈みつつある。ぼんやりとそれを眺めたあと、溜息交じりに頭を掻く。
(寝過ぎだろ、明らかに)
現実逃避願望が睡眠時間にまで影響を及ぼしているようだ。自分の意志でやっているくせに、と魔理沙は自虐
的に笑う。次の展開を忘れて舞台の上で行き場もなくグルグル回っている役者とか、糸が絡まって動けなくなっ
た操り人形とか、そういうものになってしまったようなどうしようもない気分。胃はからっぽに近いのに、無力
感で吐きそうだった。
(だからって、他にどうしろってんだ)
人間として常識的な対応をしろと言われたら、もちろん男を止めるしかない。だがそうしたところでどうなる
というのだろう。男が何物にも代えがたいぐらいに深く妻を愛していたことを、魔理沙はよく知っている。あの
夜の逢瀬が誰かに知られて妻の死体が焼かれでもしたら、男はもう完全に生きる気力を失くしてしまうだろう。
いっそ冥界に行って妻の魂を探してみようか、とも考えたが、これもリスクが大きい。男が死んだ妻に引っ張
られて、そのまま旅立ってしまう可能性がある。というか、確実にそうなるという予感があった。
(あの人に生きててほしいんだよな、要するに)
ひょっとしたら死んだ方が男にとっては幸せなのではないか、と頭の隅で考えつつも、霧雨魔理沙という人間
は男に生きてほしいと望んでいる。死んだ妻の分も生を全うするべきだ、とか、生きていればまたいいことがあ
るかもしれない、とか、理由はいくらでも作り出せる。ともかく、生きてほしいと思っている。
しかしながら、どうやったらこの胸糞の悪い劇を終わらせることができるのか、魔理沙には皆目見当もつかな
い。こんな異常事態、誰にも相談することが出来ないので、そもそも男の妻がいつ、どういう理由で死んだのか
も分からないのだ。男が毎晩毎晩妻のところに通って、最終的にはどうしたいのかもさっぱり分からない。
(結局あの人の好きなようにさせてやることしかできないのか、わたしは)
漏れ出しそうになる罵声を堪え、ぐしゃぐしゃと髪を掻き乱す。事態が自分の手に負えるものではないことぐ
らい分かっているが、男の愛情の深さなど知りもしない誰かに介入してほしくはなかった。興味本位で引っかき
回されるのも、客観的な正論を盾に何もかもぶち壊しにされるのも嫌だった。
そのとき不意に、階下から誰かが扉をノックする音が聞こえてきた。少し驚く魔理沙の耳に、聞き慣れた声が
飛び込んでくる。
「魔理沙ー、いないのー?」
魔理沙と同じく魔法の森に住んでいる、人形遣いのアリスだ。魔理沙は慌てて飛び起きて、一段飛ばしに階段
を駆け降りた。散らかり放題の一階の隅にある鏡の前で、軽く居住まいを整える。普段通りに応対しなければ、
何か悩み事を抱えているとアリスに気づかれてしまうかもしれない。
(大丈夫、バレやしない)
墓から帰ってきたあと、疲れ果てて着のみ着のままで眠ったのは不幸中の幸いだった。魔理沙は少し気息を整
えてから、おもむろに家の扉を開ける。
「よう、アリスじゃないか」
「なんだ、いるんじゃない。すぐに出なさいよね」
「誰かを待たせてるときほど楽しい時間はないぜ」
「相変わらず人情のない女ね」
呆れたように言うアリスには、別段いつもと違った様子は見られない。
(良かった、バレてないみたいだぜ)
まあ入れよ、とアリスを家の中に招き入れながら、魔理沙は胸中で安堵の息を吐く。
たまたま通りかかったからなんとなく寄ってみた、という言葉通り、アリスは別に用事があって来たわけでは
ないようだった。いつも通りの会話を交わして、いつも通り素っ気なく別れた。彼女の様子にはいつもと違った
ところなど何一つ見られなかった。
三日経った。その間も男は墓場通いを繰り返し、日に日に腐っていく妻の死体を抱いて蛆を取り除きながら愛
を囁き続け、朝の訪れとともに逃げるように去った。魔理沙は逃げ出したい気持ちを必死に堪えて、忍耐強く男
に付き合い続けた。だが男が墓場通いを止める気配は微塵もなく、彼が正気を取り戻すこともない。
そうして、男は今日も墓場に辿りついた。恋い焦がれたものにようやく会えるという喜びに満ちたあの笑顔を
浮かべて、注意深く墓を掘り起こしている。
(もう限界だ)
どうしても慣れることのできない精神的な苦痛に、魔理沙はすっかり打ちのめされていた。ひょっとしたら今
日こそ墓場通いをやめてくれるのではないかという想いが未だ胸の片隅に残っており、それ故に毎晩毎晩期待を
裏切られたという痛みに苦しまなければならないのだ。相手が見も知らない男ならともかく、まともだった頃を
知っているが故に、尚更苦痛が大きい。
「だからって、今更止めるわけにはいかないよな」
溜息交じりに呟いた、そのとき。
「でも、それじゃあいつまで経っても終わらないわよ」
冷徹にも思えるほどに、淡々とした声音だった。魔理沙が驚いて振り向くと、そこに見慣れた人形遣いが佇ん
でいる。
「あ、アリス!? どうしてここに」
「話はあと。あんたは黙って見てなさい」
切り捨てるような声で言いながら、アリスはじっと、少し離れた場所にいる男を見つめている。
「おい、いったい」
「黙ってなさいって。大丈夫よ、あんたの悩みも、今日で終わりになるから」
一瞬だけ、アリスの微笑みがこちらに向けられた。人形遣いの声音があまりに暖かかったものだから、魔理沙
はついつい泣きそうになってしまう。慌てて帽子のつばを引っ掴み、表情を隠す。
だが、安堵と同じぐらい、不安も大きかった。一体アリスはどうやってこの異常事態を終わらせるつもりなの
か。再び男を見つめ始めた人形遣いの瞳はどこまでも真っ直ぐで、酷薄なぐらいに冷静に見えた。これから何を
するつもりなのか、見当もつかない。
「なあ、アリス」
と、不安に駆られた魔理沙の声は、もっと大きな悲鳴にかき消された。驚いてそちらを見ると、掘り起こした
墓のそばに這いつくばった男が、悲鳴を上げながら狂ったように周囲を見回し、妻の名前を呼んでいる。棺の中
に妻の死体がなかったことは、いちいち考えなくても分かった。
(まさか、こいつ……!)
魔理沙は沈黙を保っているアリスを睨みつけた。この人形遣いが男の妻の死体を隠したのは間違いない。まさ
かこんな短絡的な方法を取るとは思ってもいなかった。思慮深い女だと心の片隅で認めていたのは、魔理沙の誤
りだったのか。
「アリス、お前……!」
「黙って」
アリスの緊迫した声音には、有無を言わせぬ力強さがあった。魔理沙は思わず黙り込んでしまう。そんな彼女
の前で、人形遣いはじっと男の様子を見つめていた。何かを待っているようにも見える。彼女の両手の指が、人
形の糸を操るような形で固定されていることに、魔理沙は少なからず驚きを覚える。人形遣いと言っても、彼女
の糸は魔法の糸だ。いちいち指を動かさずとも人形を操ることは可能なはずだし、いつもはそうしているはずだ。
とすれば、今彼女はいったい何を操ろうとしているのか。
そのとき、不意にアリスの指が細やかに動き始めた。明らかに、何かを操っているらしき指捌き。視線は相変
わらず男の方へ向いている。反射的にそちらを向いた魔理沙は、息が止まるほどの衝撃を受けて目を見開いた。
這いつくばって嗚咽を漏らしている男に、歩み寄る人影がある。ほっそりした肩やゆったりした足運びに、見
覚えがあった。
(そんなバカな……!)
声も出ない魔理沙が見つめる先で、その女が口を開いた。
「あなた」
聞き覚えのある声だった。男が弾かれたように顔を上げる。まるでこのシーンを演出するために拵えられたス
ポットライトのごとく、雲間から一条の月明かりが降りてきて、女の顔を淡く照らし出した。そこには昨日まで
腐りかけていたとは思えぬほど元通りになった、穏やかな美貌がある。
這いつくばったまま呆然と見上げる男の前に、蘇った妻がゆっくりとしゃがみ込んだ。
「大丈夫、あなた。なんだか少し痩せたみたい」
妻が悲しげに眉を曇らせながら、やせ衰えた男の頬を優しく撫でる。その表情も腕の伸ばし方も、生前の姿そ
のままだ。少なくとも魔理沙にはそう見えたし、男にとっても同様だったらしい。
「ああ、お前、そんな、どうして」
止めどなく涙を流しながら、男がうわ言のような言葉を何度も何度も繰り返す。そんな男に、妻がそっと微笑
みかけた。
「あなたがわたしに会いたがっていたから、神様が時間を下さったの。ね、何か、話したいことがあったんで
しょう。全部聞いてあげるから、なんでも話してちょうだいね」
包み込むようなその囁きを聞いて、男が激しく泣きじゃくり始めた。妻は黙ってそれを抱きしめて、慰めるよ
うにそっと背中を擦り始める。
男の泣き声を聞きながら、魔理沙は無言で視線を戻した。彼女のそばに立つ人形遣いの指先は、今も絶えず動
いている。魔理沙の背筋が激しく震えた。
(ああ、こいつ、この女、あの人の死体を弄って、操っていやがる……!)
しかも表情一つ変えず、至極冷静に、だ。魔理沙は吐き気を感じた。今すぐアリスに掴みかかって、この死者
への冒涜を即刻止めさせたかったが、そうしたら何もかも台無しになるのは目に見えている。結局、ただ黙って
見守ることしかできなかった。
ヴェールのような月明かりの下、暴かれた墓の前に並んで座った男とその妻が、穏やかな面持ちで生前の思い
出を語り合っている。男はときに涙ぐんだりしながらも、絶えず幸せそうな微笑みを浮かべていた。妻の方も生
前と全く変わらぬ表情、全く変わらぬ声音で、男の声に答えている。彼女のことをよく知っている魔理沙ですら、
何も知らなければ死者が蘇ったと信じてしまいそううな光景だ。
だが、もちろん事実は異なる。近年冥界との行き来が割と自由になっている幻想郷においてすら、死者が蘇る
ことなど絶対にあり得ないし、許されないことである。死体を弄るのも同様だ。普通の人間とは価値観がかけ離
れている魔理沙ですら、その辺りの感覚は変わりない。見知った人間だろうがそうでなかろうが、腐りかけた死
体を弄って元通りにして糸で操れ、などと言われたら、言った奴を即座に吹き飛ばすだろう。
魔理沙は苦々しく、そばに立っているアリスを睨みつけた。人形遣いは今も指を動かし続けている。その指捌
きは完璧と言っていい。死体を操っているということに対する躊躇や動揺など、微塵も見られない。
(異常だぜ、全く。やっぱりこいつも妖怪なんだな)
否定しようもない生理的な嫌悪感に吐き気を覚えながら、魔理沙はアリスに問いかける。
「おい人形遣い」
「なに」
「あれ、お前が操ってるんだよな」
「分かりきったことを聞かない」
「どうやって喋らせてるんだよ」
「糸で肺の収縮を操ってるのよ。腐りかけてた肺や声帯を元通りに戻すのは大変だったわ」
「じゃあやっぱり死体弄ったのか」
「分かりきったことを聞かない」
喋りながらも、アリスは死体操作を止めなかった。魔理沙が見る限り、表情や細かい仕草まで完璧に再現され
ている。そこにはアリス自身の感情の揺らぎなど全く窺えない。どうやったらこんな真似ができるのか、魔理沙
には想像もつかなかった。
(だって言うのに)
釈然としない気持ちで、魔理沙はアリスの横顔を見つめた。人形遣いの指捌きには一欠けらのミスも見られな
かったが、今彼女が浮かべている表情は、そういう冷徹さとはかけ離れたものだった。辛そうに顔を歪め、止め
処なく涙を流しているのである。魔理沙は自分の顔が歪むのを抑えられなかった。
「なんで泣いてんだよ、お前」
「だって」
小さく鼻を啜りあげながら、アリスは涙声を絞り出した。
「これも所詮は一夜の夢だと思うと、ね。あの人はあんなにも愛している人と永遠に別れて、これからも続いて
いく人生を生き抜いていかなくてはならないのよ。その辛さを思うと、胸が張り裂けそうだわ」
「そうかい」
「そうよ。あんたにはこの切なさが分からないの?」
「今はどっちかというと嫌悪感の方が大きいぜ」
「あんたって本当に人情のない女ね」
死体を操りながら、アリスが非難するような声で言った。
そうして、朝がやってきた。あれだけ熱心に喋り続けていた男も、今はただ黙りこんで、妻の隣に座っている。
「そろそろ、行かなくちゃ」
妻がゆっくりと立ち上がった。男は黙ってそれを見上げ、目を潤ませる。
「ごめんな」
「どうして謝るの?」
「弱い俺の我がままのせいで、お前にこんなことさせちまって……閻魔様にお叱りを受けるんじゃないのか」
「大丈夫よ。きっと、お許しくださるわ」
「すまなかった、本当にすまなかった」
男の目からぽろぽろと涙が零れ落ちた。
「この現実を受け止めなくちゃいけないってのは、分かってたんだ。でも、何も伝えられないまま、お前がいき
なりいなくなっちまったもんだから、どうしても……伝えたいこと伝えたくて、一言だけでいいから、お前に答
えてほしくて、こんなこと」
「伝えたいことって、なに?」
「うん」
男は涙を拭って立ち上がった。柔らかな朝日に照らされたその顔は、真っ直ぐに妻と現実とを見つめているよ
うに思える。彼は背筋を伸ばし、涙の跡が残る顔で、一言一言かみしめるように言った。
「お前がいてくれて、俺は本当に幸せだった。心の底から愛してた。これからも愛してる。ありがとう。さようなら」
妻が優しく微笑んだ。
「わたしも愛してるわ、あなた。幸せな人生だった。本当にありがとう。さようなら」
穏やかな声で言い終えるのと同時に、妻の体からふっと力が抜けた。男は慌てて彼女の体を支えたが、どんな
に呼びかけても、もう答えが返ってくることはない。
男はしばらくの間、物言わぬ妻の骸を抱きしめたまま、声を上げて泣き続けていた。だがやがてゆっくりと立
ち上がり、妻の死体を元通り棺に横たえると、静かに墓を整え直した。
その儀式を終えたあと、男は昇りゆく朝日を無言で見つめた。その顔は今も沈鬱な色に包まれていたが、憑き
物が落ちたように晴れやかでもあった。男は少しの間妻の墓に向かって祈りを捧げたあと、前日までとは比べ物
にならないほどしっかりとした足取りで、その場を立ち去った。
後に残されたのは、静かに涙を流しながら去りゆく男を見つめる人形遣いと、納得できない心境のまま憮然と
唇を尖らせる、普通の魔法使いのみであった。
魔法の森に帰還した魔理沙は、アリスの誘いに応じて彼女の家を訪れていた。出された紅茶に口をつけること
もなく、テーブルの向こうの人形遣いに向かって噛みつくように問いかける。
「で、結局どういうことなんだよ」
「なに怒ってるの、あんた」
眉をひそめながら、アリスがティーカップを置いた。魔理沙は苛々して、テーブルの表面を指で叩く。訊きた
いことは山ほどあった。
「まずは……そうだな、いつ気がついたんだ?」
「三日前、あんたと会ったとき」
「やっぱあのときか……隠してたつもりだったが、わたしはそんなに落ち込んでるように見えたのか?」
「ううん。まあ演技自体は、あんたにしては上出来だったと思うけど」
「じゃあなんで」
「家の中でバタバタやってる音が聞こえたからね。客がわたしだと分かっててあんたが身だしなみを整えるなん
て、あり得ないもの。となると、なにか隠したいことがあるんだ、と思うのが当然でしょ。後はばれないように、
こっそり人形に見張らせるだけで良かったわ」
淡々としたアリスの指摘に、魔理沙はぐうの音も出ない。やっぱり隠し事は苦手だ、と思う。
「その後は?」
「情報を集めたわ。あの男の人が、なんであんなことをしているのか」
ティーカップを小さく揺らしながら、アリスは悲しげに目を細める。
男が毎夜あんなことをしていると知っていた人間は、実は魔理沙だけではなかった。里の守護者である慧音も
気付いていたのだ。だが魔理沙と同じような理由で、どうにもこうにも手が出せなかったらしい。
「あの男の人、奥さんが本当に突然死んじゃったものだから、彼女の死を受け入れることが出来なかったみたい
なの。一言言葉を交わすことすらできなかったみたいでね」
「だからあんなことを?」
「そう。本人も、馬鹿なことをしているっていうのは分かっていたんでしょうけど」
アリスは憂鬱そうにため息をついた。
「やっぱり、ちゃんとした形で別れを告げることって大事ね。そういう段階を経ないと、まともに悲しむことす
らできないんだから」
「だからお前は死体を操って、あの人にああいう儀式をやらせてやったってわけか」
魔理沙が大きく鼻を鳴らすと、アリスは怪訝そうに眉をひそめた。
「さっきから何を怒ってるの、あんた」
「怒るに決まってるだろうが!」
魔理沙は手の平で思い切りテーブルを叩いた。アリスがちょっと目を見開く。
「ちょっと。どうしたの。落ち着きなさいよ」
「これが落ち着いていられるか!? 知り合いの死体を好き勝手に弄り回されて、なんとも思わない奴の方がど
うかしてるぜ!」
魔理沙とて、アリスの取った手段が有効だったことは認めざるを得ない。だが、それとこれとは別問題だ。胸
にこびりついている嫌悪感は、どうやっても拭うことが出来ない。
そんな魔理沙を見て、アリスはようやく合点がいった様子で大きく頷いた。
「ああ、そういうことだったの。それで怒ってたんだ」
まるで今まで皆目見当がつかなかったと言わんばかりの面持ちである。魔理沙の顔が大きく歪んだ。
「やっぱ、お前も妖怪だよな」
「なによ突然」
「腐りかけた人間の死体弄り回しても、なんとも思わないんだもんな。人情がないのはどっちだよ、全く」
うんざりしながらそう言うと、アリスは心外だと言わんばかりに眉をひそめた。
「ちょっと、人を極悪人みたいに言うのは止めてくれない?」
「それ以外のなんだって言うんだよ」
「誤解してるわよ、あんた」
「なにが」
「だって、ちゃんと本人から許可をもらってるもの、わたし」
何を言われたのか、すぐには理解できなかった。
「許可?」
「そう」
「なんの?」
「もちろん、あの人の死体を掘り起こして、修復する許可よ」
「……はぁ!?」
絶句する魔理沙の前で、アリスは疲れたように息を吐きだした。
「大変だったわよ。冥界まで行って転生待ちしてるあの人の魂見つけ出して、事情説明して……」
「じゃ、じゃあ、あの人がお前に言ったのか? 自分の死体を弄ってもいいって?」
「もちろんよ。どうか夫が今後も元気に生きていけるようにして下さいって頼まれもしたわ。そうでもなければ
他人の死体を勝手に弄ったりするもんですか。わたしは都会派なのよ。そんな常識のない真似はしないわ」
なんだか頭が痛くなってきた。呻く魔理沙の前で、アリスは淡々と説明を続ける。
彼女とて死体の修復は専門外だったから、永琳にも協力を求めたそうだ。男の妻の生前の姿を完璧に再現する
ために、慧音に話を聞いたりもした。里の守護者は最初こそ渋っていたが、アリスが本人の許可を取りつけたこ
とと、男の心を癒す手立てがおそらく他にはないであろうことを考慮して、最終的には支援してくれたらしい。
「なんだよその万全の支援体制は……」
「ちなみに時間がなかったから、移動は紫に手伝ってもらったわ。死体の運搬とかもね」
「相変わらず暇なババァだな……時間がなかったってのはどういう意味だ?」
「腐りかけの死体を毎晩毎晩抱きしめてたら、いつ病気にかかってもおかしくないでしょう? それに、こうい
うのは時間が経てば経つほど治りにくくなっていくものよ。腐敗が進行しすぎれば、永琳でも修復するのは難し
くなるでしょうしね」
言い終えてから、アリスは心底安堵しきった様子で溜息をついた。
「何にしても、間に合って本当に良かったわ。立ち直るきっかけは出来たから、あの人の心の痛みは時間が癒し
てくれるでしょうし、奥さんの方も、旦那さんが立ち直ったことを知れば未練なく次の生へ向かえるはずよ。何
もかも丸く収まって、本当に良かった」
心底から満足げなアリスの声を聞きながら、魔理沙はギリギリと歯ぎしりしていた。
確かに、文句などつけようもないほどのハッピーエンドではある。そもそも何もできずに傍観していることし
かできなかった以上、自分に文句を言う資格があるとも思えない。
だがそれでも、なんだか釈然としないのだ。
「ええい、納得いかん!」
呟きながら、魔理沙は紅茶をガブ飲みする。冷めきった紅茶は酷く不味かった。
「じゃあ、またね」
「おう」
ぶすっとした表情で言いながら、魔理沙がどこか不満げな足取りで去っていく。
(無理もないか)
友人の小さな背を見送りながら、アリスはこっそり苦笑した。
彼女とても、魔理沙の気持ちは理解できる。死体を弄るなど、できれば取りたくない手段ではあった。
だが、本当に時間がなかったのだ。だからこそ、あんな方法に頼らざるを得なかった。
(だって、ねえ)
三日前の夜に見た魔理沙の姿が、アリスの脳裏に蘇る。口は悪いが根は真っ直ぐな友人の表情は本当に辛そう
で、とても見ていられなかった。彼女があれほど苦しんでいたからこそ、アリスは多少無理をしてでも男を救お
うとしたのだ。
(ま、とりあえずはめでたしめでたしかな。魔理沙がわたしを嫌う分には、特に問題もないし)
少なくとも人が死ぬよりはずっとマシだ、と考え、アリスは一人微笑んだ。
こうしてこの小さな異変は終わりを告げた、かに見えたのだが、少し経って余計な後日談がくっついてきた。
『優しい死体の弄り方』
という見出しが文々。新聞の一面に踊っているのを見たときは、さすがのアリスも絶句してしまった。どうや
らあの晩の人形劇、烏天狗の射命丸文に目撃されていたらしい。紙面には、死体を操りながら涙を流すアリスの
写真が大きく掲載されていた。記事の本文も、この小さな異変の顛末を事細かに語っていた。男の妻にきちんと
許可を得た上での行動であった、ということまで書かれていたほどだ。一体どこでここまで正確に情報を知りえ
たのだ、と思ったら、文末に「情報提供者 Y・Y女史」と書いてあった。
これで、事の真相が当事者である男にも伝わってしまったわけである。愛しい妻の死体を他人に弄られたと
知ったら怒り狂うのではないか、とアリスは危惧したが、後に慧音に聞いたところによると、男は静かに微笑ん
で「森の魔法使いも、粋なことをしてくれますね」と言ったのみだったという。
記事の論調が基本的にアリスを賞賛する姿勢だったおかげか、彼女が非難の的となることはなかった。それど
ころか、死に引きずり込まれつつあった男を救うために敢えて自らの手を汚した高潔な女性である、と、しばら
くの間森の聖女と崇められたほどだ。
なお、これら一連の流れを知った普通の魔法使いは、やはり釈然としない表情で、
「納得いかん、納得いかんぞ」
と何度も呟いたとのことである。
<了>
納得いかずブーたれる魔理沙も可愛いですが
遠くない未来、お節介な誰かにアリスの真意伝えられたり
ボロボロになるまで耐えたからこその結末と言われても
帽子を目深に引下げ素直に受け止めない魔理沙
勝手な思い込みですが貴方の幻想郷はそんな感じなのかなー、と気持ち良くなれました、有難う。
いい話をありがとうございました。
これはいい「弾幕はブレイン」でした。
この辺がらしいな、と思いました。
端から見ると多少切ない気もしますが、他人からの評価は特に気にせず目的の遂行を優先するあたりはアリスだなと。
しかし優しいなぁ…色々と。本当に妖怪らしくない妖怪ですね。
お疲れ様です。
まさかこんなに暖かい話とは……
切ないというか暖かいといいますか…
ahoさんの書く幻想郷が優しいんでしょうね、きっと
明らかに別々のベクトルなのにがっちりと組み合ってるのはさすがですね~。
やさしいアリスとブーたれる魔理沙、森の魔法使いに胸キュン。
でもたまにはパチェのことも思い出してあげてー
それにしてもオリキャラなのに全く違和感がないな。
すごいとしか言えない
今までもこれからもそう信じ続けて行きます。
この幻想郷は本当に優しいから泣きたくなります。
なるほど……と思いました。
やっぱり旦那さんがあんな状態でいることを奥さんは
悲しんでいて、なんとかしたいと思っていたからこそ
自分の骸を操ってでも止めて欲しかったんですね。
骸を操るのは冒涜だと解っていても、汚れ役を引き受けたアリスが素敵でした。
切ないけど、なんだかホッとする感じのするお話でした。
そろそろ全裸待機が辛いんだが
特にアリスが素晴らしい!
だがそれがいい
暖かい物が書けるなんて。脱帽です。
永琳や紫が手を貸すあたりで非常に萎えてしまいました。物語のための便利な道具扱いされているような感じ。せめて宴会とかで魔理沙の顔を直接見ていたとかの描写でもあれば、それなりに納得できたのでしょうが。
慧音は里の守護者だからいい。アリスは落ち込んでる魔理沙の顔を直接見たからいい。幽々子は直接自分が何かするわけじゃないから協力しても問題ないでしょう。
しかし紫が協力するのは見知らぬ人間に対してお節介すぎでしょう。紫が幻想郷の事件に対して自分が介入して片っ端から解決しないと気が済まない人みたいに見えてきました。前作のようにしてもしなくてももとから結果は運任せという程度のお節介ならよかったんですが。
大事にしすぎというか……もっと身内だけで解決できるような問題じゃないかと思いました。
その辺が気になって最後の新聞も無理に美談にしているような印象が残ってしまいました。
というかそんなことよりも。慧音と魔理沙なにやってんの。お前らの知り合いだろ。お前らが動かないでどうするんだ。見てるだけかよ。里の人間も賞賛してんじゃねえよ。何もできなかったならそのあと支えてやれよ。大妖怪に頼らなきゃ、仲間ひとり慰められないような人間ばかりなのか幻想郷は。
こんな私の感情が一番大きいです。『幻想人類覚悟のススメ』の影響もあるかも。ですのでフリーレスで。氏の次回作に期待します。
これがあるから、おりんりんはあんなに可愛いのに嫌われてるんだよなあ
しかしこの魔理沙は「お元気ですか?」の頃からあんまり成長してないなw
横槍するのもあれですが、他人の感想に文句つけたりコメントにコメント返すのは基本的にナシですよ、そういう場所じゃないのでここ。
アリスと魔理沙の間だけで完結していればまだしんみり出来たのに、無理やりに美談にされている感じがしました。
魔理沙とは意図が違いますが、まさに「納得いかん」という感じです。
鬱系やホラー系でありがちなテーマですが、それを見事に幻想郷アレンジしましたね。
オリキャラの男の描写、魔理沙、アリスともに素晴らしかったです。
死体の扱いに関する思想の違いも、くど過ぎずによく叙述できてると思いました。
ただ、その反面、思想に至る経緯や、背後の人物の動きの描写が等閑になっているきらいがあります。
アリスが自分の今までの行動を話す部分がとりわけ説明的で、物語性を害しているのではないでしょうか。
……まあ、僕はもっと酷いものを書いたことがあるので、あまり人のことは言えないのですが。
何はともかくお疲れ様でした。
次回作も期待しております。
そして、あとがきにて死体を弄る筋書きにて明るい話が出来る訳がないと述べておられますが、
無理に明るい話にする必要はないと思います。
後日談前まではシニカルな感じのお話で哀を感じることが出来たのですが、
最後の最後で今まで絡んでこなかった紫や文を出して、
「明るい話だったんだよ!」を演出したことに違和感しか感じ取れずに萎えてしまいました。
ですが、後日談前までは非常に良い出来でした、次回に期待しております。
この最後のエピソードは余談に見せかけて、aho氏の描く幻想郷の世界観を垣間見せています。
後日談前にて、死んだ本人に許可を貰うなど現実にはできる訳がありませんので、この方法は幻想郷ならではといえますが、
本来禁忌であるはずの「死体を弄る」というアリスの行為にさも正当性があるかのように描かれています。
それに対して、幻想郷の人達はアリスを森の聖女と崇め、愛しい妻の死体を他人に弄られ騙された当の本人ですら賞賛する始末。
しかも情報提供者=記事の黒幕である人物は、aho氏が愛して止まないY・Y女史。
おそらく彼女はこうなる事を予期した上での行動だったのでしょう。
>死体を弄る筋書きで、明るい話が出来るわけがない。
>そんな風に考えていた時期が、俺にもありました。
幻想郷の人達が異常すぎて死体弄りが明るく見えるんですね?分かります。
その中で一人、「納得いかん」と正常な思考の魔理沙が一人だけ浮いているのも
その異常性を際立たせています。
まあ、彼女にも何もできずに傍観していることしかできなかったという非は有るでしょうが。
今回はaho氏の「優しい幻想郷」の抱える歪みが強く出てしまったように感じました。非常に残念です。
次回に期待しております。
本人に許可貰ったとはいえ死体を修復して操る必要性があったのだろうか?
結局文句言うだけで何もできなかった魔理沙だけど、「死体弄り」に関しては彼女の方が正論として書いてるよね最初は、
なのに後日談でまさかのどんでん返し、仕方が無いとはいえ夫の前で妻の死体を操って騙したアリスは、正直あまり褒められない事をした筈なのに、
新聞で広まった幻想郷の人達の反応が聖女扱いって、
悪いが幻想郷の人達の正気を疑わざるを得なかった。
いつもは破天荒な魔理沙一人がまともに見えるってどういう事なの。
というか本来後ろめたい事を美談として吹聴しやがったババァとカラスマジ自重。
特に批判意見は的を得たものばかりで、自分の実力と思慮不足を痛感しております。
それでも呼んで下さった皆さんに心からの感謝を捧げつつ、
今回の反省を活かしてまたもっといいものが書けるように頑張ろうと思います。
ではまた次の機会に。
最後が要らなかった、あるいはもう少し別の形で書いた方が良かったかなぁ。
そこを除けば、まぁ悪くはなかった。
アリスは魔理沙がいつの日か死んでしまうことを理解しているから・・・
魔理沙がこれを理解できる日が来るといいですね
でも、元の世界観自体はいつものaho氏らしくてほっとした
構成は微妙でも多少のそれを吹っ飛ばしてくれる世界を作れる、ってのは物書きとして素晴らしいことだと思うんだ
さらっと読めたし、次にも期待
仙人や冥官に死者との対談を取り持ってもらう
転生先との繋がりがある幻想郷だと直接妻と対話させた方が、死体を操るより容易な気もする
魂や亡霊が闊歩する世界だと
死者の扱いが気になりますね
死体は抜け殻にすぎないと達観してる可能性があるから
自分が冥界や三途の川に赴くような気もするし難しいです
があったりなかったり。
しかし、いつも一種独特な話が多いahoさんの世界は読んでいて引き込まれる。いいお話でした。
美談にさせることが作者の意図とは思ったけど。もっと薄くても良かったかなと個人的感想。
本編はとても素晴らしいものでした。
話自体はありがちというかベタなものですけど、ahoさんの書くベタ・王道は
安心して見れるからいいですね。綺麗というかちゃんと伝えてくれるから。
しかも最後は美談になっちゃてるから悩んでた自分がしっくりこない感じ。
する愛が感じられなかった。
紫スキーの同志として残念だと言わざるを得ない。いつものアンタらしくないぜ
?
やっぱり後日談が蛇足に感じたなあ、男に対する魔理沙とアリスの対応の違いで
終われば話がまとまった気がする。後日談で無理やり明るい話にしようとした感
が否めないなあ。
意図したモノかどうかは読み取れませんでしたけど。
私は紫好きだからなんでも許しちゃいますよ。
天狗の新聞は事実が捻じ曲がるほどに誇大的にかかれるって二次創作でしたっけ?
その中でも文々。新聞は比較的真実のままに書かれると記憶しているのですが、今回はスッパ抜かれて正解なのか失敗なのか考えるところですね
何も出来ない魔理沙や里の人間の気持ちもわかりますし、アリスの心情も汲むことが出来ます
幻想郷の母については「またお前暇つぶしかッ」ってかんじですけどw
いつもahoさんの作品は楽しくて優しい
身近な人だからこそ自分で動けない魔理沙に慧音や、それしかないと分かっていても割り切れない魔理沙の気持ち、それを理解したうえであえて汚れ役を務めたアリスが良い感じでした。
でもやっぱり後日談はいらないんじゃないかと思いました。
アリスは別に人から賞賛されたくてやったわけではないでしょうし、旦那にしたって、人に知られたいような話ではないでしょう。最初に見たときは「何やってんだあのパパラッチ!」と思いましたし。
この事件は当人たちだけが胸にとどめるものにしておくべきだったんじゃないかと。
また、結果的に美談になったし、紫もそれを予測してたんでしょうけど、事実だけ見れば、夜な夜な死体を掘り返した夫と、死体弄りを行った魔法使いなわけで。
アリスも自覚してるように、少なくとも社会・倫理的にほめられた行為ではないと思います。だからこそ魔理沙もどこか釈然としない想いを抱えていたわけですし。
それが、まったく批判が出ずに受け入れられたのは不自然、というか異常な気がします。禁忌は禁忌であり、社会がそれを受け入れてしまうのは危ういというか・・・。魔理沙の気持ちが逆に浮いてしまう形になってますし。
なんだか、幻想郷が全てを受け入れることにつけこんで、禁忌まで受け入れさせてしまったような感じがしました。
ある意味、幻想郷の残酷さをリアルに描いた形になったのかもしれないですが。
なんか長々と書いてしまいましたが、最初に述べたように話自体は楽しめました。また次回作を楽しみにしています。
まさにな
いやいやまったく、そしてそれをやり遂げることはとても難しいのですよね。
それ故にこの話はおかしくない
後日談がなければ特に東方でやる必要のない創作
貴方に自分の『幻想郷』の世界観があることも分かる
貴方ほどの作者が、一目線の作品に留まれないことも良く分かる
だが、そろそろ次に期待させてくれ。
いくら親しくしていたとはいえ、こればかりは出来かねる。だって人に後ろ指をさされたくないですからね。
けれどアリスは動いた。ただ友人が辛そうにしているのが耐えられないという理由だけで汚れ役、嫌われ役を買って出た。
しかし幻想郷の住人はこれを褒めた。美談として奉り上げられたというよりも、まさに美談だったからこそです。
世の中にはいくつかの価値観がありますが、己に汚名が被せられる覚悟を以て世に安定をもたらそうとする姿勢を健気で美しいものだと見る人と
いや、それでも悪は絶対悪なんだ、この世において善と悪は相反する二元的なもので勧善懲悪こそが至上、とする人とで評価はばっさりと分かれるのではないでしょうか。
私は文の大々的に報道する行為には納得できかねますが、アリスの行為はまさに尊敬すべきものだったと思います。
人の目を気にしない気負わぬ優しさ。誰がなんと言おうと素晴らしい心だと。
そして真相を知った幻想郷の人々の対応もまた、とても優しく理解あるものだったと思います。
しかし我々の世界ではすでにこの「優しさ」も幻想入りしかけていて・・・何とも哀しいものです。
これだけ聞くと怖い話だが「臓器移植」と言うと分かり易い医療行為
アリスの行いも同様で、ただ事実だけを見るならただの人助け
ただ臓器移植と違って一般化して無い行為である以上は嫌悪する人もいて当然
この作品では最後に作者の回答が示されていますが、納得できない人もいるはずで
行為の是非については問い掛けのままで終わらせた方が良かったように思います
その点と紫と永琳の名前があまりに唐突であるように感じた点を引いてこの点で
魔理沙の気持ちもわかりますし、アリスの気持ちもわかります。
しかしどうもお話が消化不良気味な気がするんですよねえ不思議なことに。魔理沙の思いがうつったのでしょうか。
魔理沙はいつもと真逆な性格で新鮮でしたね
後日談読む前はちょっと涙目でしたよ 正直
しかしまじで文屋自重 隠し通したかった慧音と魔理沙の気持ちを踏みにじる行為がなんとも
とにかくとってもおもしろかったです お疲れ様でした
さて、鳥鍋の準備でもするか
さぁて、>>173よ、烏鍋の準備でもするか。そりゃあ盛大に
嫌われる分には問題ないって思えるアリスが暖かい・・・。
そこに魂がなくとも、自分の身体で、自分の声で伝えたいっていう彼女の意思だったと思えば
人形遣いのアリスが人形を使う事を思いつかなかったとも思えんしね
俺のアリスは、えーりんの力なんぞ借りずとも死体修復くらいできる!
という点で-10点
ハッキリ言って批判のコメントが気持ち悪すぎます。
″次回作に期待″とかホントに吐きそうになります・・・
いやいや面白かった!
そして必ず出てくる“ババア”の文字w
それに、アリスだったらこうするとかああすればとか、俺設定を俺設定で批判しても滑稽なだけですよね
元々設定の少ない原作からSSを創作するんだから、少々強引な俺設定が含まれるのは当然だと思います。
aho氏の作品には多くのファンがおられるようで
それだけに、他作品と同じ価値観・世界観・感性などを求められている方もおられるようですが
今回は、こういうアリス、こういう魔理沙を見る作品だと思います。
文章も相変わらずよくまとまっていて読みやすかったです。
良かったんだが……納得いかん。
ババア…
・相手は夫
・肺や声帯の存在
・流石に人間大の精密な人形をアリスだけで作るには時間が足りないのでは?
など、考えれば案外理由はある。だからしてこの展開は必然的だったと思いますね。
ただ、確かに後日談は少々蛇足だったかも。
あと229氏に同意
ただ一つ…多分ですが、「憮然」の誤用がありますよ。
あとコメ返し、「的を射る」と「当を得る」がごっちゃです。
今更の指摘で恐縮ですが。
涙を流しながら最後のお別れをして、これからを精一杯生きる。素敵なお話ですね。
その機会を作ったアリスたちも、とても優しいと思います。
ただ、他の方々が指摘されてるように後日談は不要に思えたのと、
個々人が動く動機が少し弱いかなと感じたのでこの点数で。
ただ他の方も言ってるように後日談がどうも納得いかない……
それでいてキャラの魅力も存分に引き出しているのはお見事と言わざるをえません。
ただ既に上の人たちが何人かご指摘してる通り、私も後日談の部分には少し違和を感じました。
その点を除いても今回は満点を投じたい。
新作も期待してます。
魔理沙の「納得いかん、納得いかんぞ」にも激しく共感
でも、これもまた人間やめて魔法使いになるってことでもあるのかもしれませんね