コンコン
ドアをノックする音がするけれど、居留守を決め込む。
コンコン
もう一度ノックされたけど、開ける気になんてなれなかった。
コンコン
何度ノックされたって、このドアを開けてなんてやらない。
コンコン
…ううん、本当は開けないんじゃなくて開けられないんだ。
見せるのが怖くて。
迎え入れるのが恐ろしくて。
いつまで経っても、鍵が付いたままのドア。
隣にある特別席は、ずっと空いたままなのに―――
コンコン
お昼を食べ終わった後のまったりした午後、突然玄関をノックする音が聞こえた。
家によくやってくるやつはノックなんてしないやつだから、少し珍しい感じを受けつつ返事をする。
「開いてるから入ってきていいわよ」
そんな答えを返すとドアが開き、予想外な人物が姿を現す。
「お邪魔するぜアリス」
「魔理沙…? あなたがノックして入ってくるなんて珍しいわね。どういう風の吹き回し?」
やってきたのは魔理沙で私は少々驚いてしまう。
魔理沙が遊びに来ること自体は特別珍しいことではないし、むしろ彼女以外が家にやってくることの方が少ないくらいだ。
だけど魔理沙はいつもノック無しでいきなりやってくるから、ちゃんとノックの後に入ってきたことに驚いてしまったのだ。
「あぁ、今日は静かに入りたい気分だったからな」
「ふ~ん…」
いまいち釈然としないけれど、それ以上追求するのもおかしい気がしてそこでやめておく。
魔理沙のことだからきっと気まぐれだとは思うけれど、静かに入りたい気分ってどういうことかしら…?
「ところで今日はなにか用? それともいつもの暇つぶしかしら?」
「いや、今日は用があって来たんだ。これをアリスに見せたくてさ」
そう言って魔理沙は、私の目の前に一輪の花を差し出した。
「これは……水仙の花?」
「あぁ、今日水辺に咲いてるのを見つけてさ。アリスに見せたくて一本摘んできたんだ。綺麗だろ?」
その花は水仙といって、魔法の森からあまりでない私は本でしか見たことはないけれど、水辺などに咲いている花だったと思う。
少し俯いたような角度で花が咲いていて、綺麗な六枚の黄色い花びらが印象的だ。
「そうね…。確かに綺麗だわ」
「気に入ってもらえてよかったぜ。じゃあ空いてる花瓶に生けとくな」
勝手知ったる他人の家といった感じで魔理沙はすんなり空いた花瓶を見つけると、水を入れて水仙を入れテーブルの上に置く。
頻繁に来ているせいで、まるで魔理沙の行動は自分の家にいるようだった。
下手すると、私がしまった場所を忘れてしまったものまで覚えているんじゃないかと思ってしまうほどだ。
「そうだアリス。この花は綺麗だけど毒があるから、お腹が空いたからって食べちゃだめだぜ?」
「た、食べるわけないでしょばかっ」
魔理沙のありえない冗談に、ちょっと怒りながら返答する。
わ、私が花まで食べちゃうようなはらぺこキャラなわけないでしょ!?
…いや、たぶん魔理沙自体そんなことは分かってるんだろうけど、それでも私のことが心配で言わずには居られなかったんだろうっていうのがわかってるから、これ以上は怒れないんだけどね…。
「ところでアリス、この水仙の花言葉知ってるか?」
「花言葉…? 水仙はたぶん…うぬぼれじゃなかったかしら?」
以前になにかの本で読んだことがある。
なんでも外の世界の神話でナルシストという言葉の語源になった人物が死んだ後に姿を変えた花だとか。
だから花言葉がうぬぼれなのかも。
「だな。普通の水仙の花言葉はうぬぼれだぜ。だけどさ、この花みたいに黄色い水仙の花言葉はさ―――」
そこで一瞬言葉を区切り、くるりと私の方に振り返る。
そしてふっと軽い笑みをこぼしながら、告げた。
「―――“私の愛に応えてください”…だぜ?」
「っ!?」
予想もしなかった言葉にドキッとする。
水仙にはそんな花言葉もあるなんて知らなかった…。
「なぁアリス、そろそろ私の気持ちに応えてくれてもいいんじゃないか?」
「な、なんの話よっ…」
恥ずかしくてとぼけようとする私に、大きなため息をつく魔理沙。
それでスイッチが入ったのか、より真剣な表情でこちらをみてくる。
「もう何度も言ってるだろ? 私はアリスが好きだって」
「そ、それは冗だ―――」
「―――冗談だと思ったって言う言い訳なら聞き飽きたからな。一度だってアリスに冗談で好きだなんて言ってない。最初から私は本気だ」
強い口調に気圧されて押し黙る。
魔理沙の言うとおり、何度も冗談だと言って、そう思いこんで結論から逃げてきた。
今の関係が心地よくて。
今の関係を壊したくなくて。
別に魔理沙が好きじゃないわけではない。
むしろ逆に―――
……だけど、もし関係がダメになってしまったときに、もう今の関係に戻れないのだと思うと、どうしても最後の一歩が踏み出せなかった。
そんなことを思い悩み自分の思考に集中していると、気づけば魔理沙の顔が目の前にある。
その強くてまっすぐな瞳に射抜かれて、釘付けにされたように視線が反らせない。
「…私だってそこまで鈍感じゃない。仮に今私がキスしようとしたところで、おそらくアリスが受け入れてくれることはわかってる」
「……そ……れは……」
魔理沙の言葉に反論できない。
もし魔理沙がキスしようとしてきて、それが不意打ちではなく十分拒否できる間があったとしても、私は果たして拒むことができるだろうか。
そう、もしも今魔理沙が、ゆっくりと唇を近づけてきたとしても…。
あまりの緊張に唇が震える私に、魔理沙は静かに首を横に振った。
「それじゃあダメなんだ…。私はきちんとした形で、アリスにこの気持ちを受け入れてほしい。そんな曖昧なものじゃなくて、ちゃんとしたアリスの心を…アリスの言葉で伝えてほしいんだ」
「魔理沙……」
表情から、声色から、魔理沙の必死で真剣な想いが感じられて、胸が締め付けられる。
こんな想いをさせていながら、それでも言葉が出てこない自分に嫌気がさす。
たった一言言えば済むのに、その一言がどうしても出てこなかった。
トントン
「…えっ?」
落ち込みそうになっていと、魔理沙が胸の中心あたりを手の甲で優しく二回叩いた。
「こうやってノックしたら、アリスが心のドアを開いてくれるかと思ってさ」
いつものようにおどけてるその笑顔に、つられて私も頬がゆるむ。
魔理沙は自分のことをよくがさつだなんて言うけれど、本当は全く逆なんだ。
今だって落ち込みそうな私を元気づけるために、冗談を言って和ませてくれたのだから。
「今すぐになんて言わないからさ。ゆっくり気持ちに整理を付けてからでいいぜ。私はいつまでも待ってるからさ」
「う、うん……ありがとう、魔理沙…」
そう言いながら優しく笑う魔理沙に胸がときめく。
本当に、どうしてあなたはそこまで優しいのかしら。
あまりに優しすぎて、こっちが申し訳なくなってしまうほどに。
だけど、だからこそ出来るかもしれない。
普段は突然ドアを開け放ってやってくるくせ、ホントはそっとノックするほど優しいあなたになら。
堅く閉ざした心のドアを開けて、その一番奥の場所に迎え入れることが。
そしてその中にある特別席に座ってもらう、最初で最後の人になってもらうことが―――
「さて、それじゃあ今日は帰るとするぜ。あんまり遅くなってるとホントに強引に唇奪っちゃうからなっ」
「な、なに言ってるのよばかっ」
そんなこと言っといて、結局待ってくれるくせに。
…だからこそ、私もその優しさに甘えてばかりいないようにしなきゃね。
「そうだアリス、こいつも受け取ってくれないかな」
棘があるからここに入れておくなと、魔理沙は取り出したもう一本の花を水仙の入った花瓶に生ける。
その綺麗な姿に思わず目を奪われてしまうその花は…。
「白い薔薇…?」
「綺麗で可愛いけど棘がある。まるでアリスそっくりだろ?」
「そ、そんなわけないでしょっ」
薔薇の花の部分に優しく触れながら、そう言って笑う魔理沙に胸が高鳴る。
よくある口説き文句だとは思うけど、それを魔理沙が口にするとまるで彼女自身の言葉のように聞こえた。
それだけ魔理沙の言葉に心が篭っていて、私の胸に届いているからかもしれない。
「だけどさ、この花の花言葉は私にピッタリなんだぜ?」
言いながら、私の傍まで歩いてきてニカっと笑う魔理沙。
「その花言葉ってなによ…」
ドキドキしているせいで顔が熱く、魔理沙を直視できずに少し俯き加減で呟く。
「…この花言葉はさ―――」
言葉とともに顎に魔理沙の人差し指と親指が当てられ、くいっと持ち上げられる。
途端に至近距離に映る魔理沙の顔。
絡まった視線を解くことも出来ず不意の出来事に言葉を失っていると、不敵な笑みを見せながらその口を開いた。
「―――“私はあなたにふさわしい”だぜ」
「ッ!?」
カァッと火が出るように火照る頬。
視線で射抜かれ動かすことが出来ない顔のせいで、体温上昇はさらに加速する。
「アリスと釣り合うやつなんて私ぐらいなもんだ。絶対幸せにしてやるから、安心して私のものになりな」
「~~~~~~っ!?」
ただでさえ顔の熱さと鼓動が大変なところにとどめの一言。
なにか言いたかったけれど、あまりの恥ずかしさとバクバク言っている胸のせいで頭も口も全然動いてくれない。
耳まで真っ赤にして口をぱくぱくさせている私を尻目に、くるっと身を翻しドアに向かって歩き出す。
「じゃあなアリス、大好きだぜっ」
最後にいつもと変わらぬ調子でこちらに笑いかけ、帰ってしまう魔理沙。
結局なにも言い返せなくて、なんだか凄く悔しかった。
「………さ……ささ…最後にカッコつけてるんじゃないわよばかぁーーーーーっ!!!」
魔理沙がいなくなった家の中に、そんな叫び声が空しく響く。
うぅ……結局やられっぱなしだったわ…。
不意打ちであんなことするなんて卑怯よ…。
「………”私はあなたにふさわしい”…か。最後にカッコつけ過ぎよ魔理沙のやつ…」
…ホント、あなたは私にふさわしいわ。
だって最後の言葉さえ、あのくらいはっきり言われないと私が踏ん切りを付けられないって、わかって言ってくれたんだろうから。
これだけされちゃったんだから、次は私の番かもね。
今度会うそのときにはあなたの愛に応えたい。
だからそれまでにしておこう。
この胸の中にあるドアを開いて、優しいあなたを迎え入れる準備を―――
ドアをノックする音がするけれど、居留守を決め込む。
コンコン
もう一度ノックされたけど、開ける気になんてなれなかった。
コンコン
何度ノックされたって、このドアを開けてなんてやらない。
コンコン
…ううん、本当は開けないんじゃなくて開けられないんだ。
見せるのが怖くて。
迎え入れるのが恐ろしくて。
いつまで経っても、鍵が付いたままのドア。
隣にある特別席は、ずっと空いたままなのに―――
コンコン
お昼を食べ終わった後のまったりした午後、突然玄関をノックする音が聞こえた。
家によくやってくるやつはノックなんてしないやつだから、少し珍しい感じを受けつつ返事をする。
「開いてるから入ってきていいわよ」
そんな答えを返すとドアが開き、予想外な人物が姿を現す。
「お邪魔するぜアリス」
「魔理沙…? あなたがノックして入ってくるなんて珍しいわね。どういう風の吹き回し?」
やってきたのは魔理沙で私は少々驚いてしまう。
魔理沙が遊びに来ること自体は特別珍しいことではないし、むしろ彼女以外が家にやってくることの方が少ないくらいだ。
だけど魔理沙はいつもノック無しでいきなりやってくるから、ちゃんとノックの後に入ってきたことに驚いてしまったのだ。
「あぁ、今日は静かに入りたい気分だったからな」
「ふ~ん…」
いまいち釈然としないけれど、それ以上追求するのもおかしい気がしてそこでやめておく。
魔理沙のことだからきっと気まぐれだとは思うけれど、静かに入りたい気分ってどういうことかしら…?
「ところで今日はなにか用? それともいつもの暇つぶしかしら?」
「いや、今日は用があって来たんだ。これをアリスに見せたくてさ」
そう言って魔理沙は、私の目の前に一輪の花を差し出した。
「これは……水仙の花?」
「あぁ、今日水辺に咲いてるのを見つけてさ。アリスに見せたくて一本摘んできたんだ。綺麗だろ?」
その花は水仙といって、魔法の森からあまりでない私は本でしか見たことはないけれど、水辺などに咲いている花だったと思う。
少し俯いたような角度で花が咲いていて、綺麗な六枚の黄色い花びらが印象的だ。
「そうね…。確かに綺麗だわ」
「気に入ってもらえてよかったぜ。じゃあ空いてる花瓶に生けとくな」
勝手知ったる他人の家といった感じで魔理沙はすんなり空いた花瓶を見つけると、水を入れて水仙を入れテーブルの上に置く。
頻繁に来ているせいで、まるで魔理沙の行動は自分の家にいるようだった。
下手すると、私がしまった場所を忘れてしまったものまで覚えているんじゃないかと思ってしまうほどだ。
「そうだアリス。この花は綺麗だけど毒があるから、お腹が空いたからって食べちゃだめだぜ?」
「た、食べるわけないでしょばかっ」
魔理沙のありえない冗談に、ちょっと怒りながら返答する。
わ、私が花まで食べちゃうようなはらぺこキャラなわけないでしょ!?
…いや、たぶん魔理沙自体そんなことは分かってるんだろうけど、それでも私のことが心配で言わずには居られなかったんだろうっていうのがわかってるから、これ以上は怒れないんだけどね…。
「ところでアリス、この水仙の花言葉知ってるか?」
「花言葉…? 水仙はたぶん…うぬぼれじゃなかったかしら?」
以前になにかの本で読んだことがある。
なんでも外の世界の神話でナルシストという言葉の語源になった人物が死んだ後に姿を変えた花だとか。
だから花言葉がうぬぼれなのかも。
「だな。普通の水仙の花言葉はうぬぼれだぜ。だけどさ、この花みたいに黄色い水仙の花言葉はさ―――」
そこで一瞬言葉を区切り、くるりと私の方に振り返る。
そしてふっと軽い笑みをこぼしながら、告げた。
「―――“私の愛に応えてください”…だぜ?」
「っ!?」
予想もしなかった言葉にドキッとする。
水仙にはそんな花言葉もあるなんて知らなかった…。
「なぁアリス、そろそろ私の気持ちに応えてくれてもいいんじゃないか?」
「な、なんの話よっ…」
恥ずかしくてとぼけようとする私に、大きなため息をつく魔理沙。
それでスイッチが入ったのか、より真剣な表情でこちらをみてくる。
「もう何度も言ってるだろ? 私はアリスが好きだって」
「そ、それは冗だ―――」
「―――冗談だと思ったって言う言い訳なら聞き飽きたからな。一度だってアリスに冗談で好きだなんて言ってない。最初から私は本気だ」
強い口調に気圧されて押し黙る。
魔理沙の言うとおり、何度も冗談だと言って、そう思いこんで結論から逃げてきた。
今の関係が心地よくて。
今の関係を壊したくなくて。
別に魔理沙が好きじゃないわけではない。
むしろ逆に―――
……だけど、もし関係がダメになってしまったときに、もう今の関係に戻れないのだと思うと、どうしても最後の一歩が踏み出せなかった。
そんなことを思い悩み自分の思考に集中していると、気づけば魔理沙の顔が目の前にある。
その強くてまっすぐな瞳に射抜かれて、釘付けにされたように視線が反らせない。
「…私だってそこまで鈍感じゃない。仮に今私がキスしようとしたところで、おそらくアリスが受け入れてくれることはわかってる」
「……そ……れは……」
魔理沙の言葉に反論できない。
もし魔理沙がキスしようとしてきて、それが不意打ちではなく十分拒否できる間があったとしても、私は果たして拒むことができるだろうか。
そう、もしも今魔理沙が、ゆっくりと唇を近づけてきたとしても…。
あまりの緊張に唇が震える私に、魔理沙は静かに首を横に振った。
「それじゃあダメなんだ…。私はきちんとした形で、アリスにこの気持ちを受け入れてほしい。そんな曖昧なものじゃなくて、ちゃんとしたアリスの心を…アリスの言葉で伝えてほしいんだ」
「魔理沙……」
表情から、声色から、魔理沙の必死で真剣な想いが感じられて、胸が締め付けられる。
こんな想いをさせていながら、それでも言葉が出てこない自分に嫌気がさす。
たった一言言えば済むのに、その一言がどうしても出てこなかった。
トントン
「…えっ?」
落ち込みそうになっていと、魔理沙が胸の中心あたりを手の甲で優しく二回叩いた。
「こうやってノックしたら、アリスが心のドアを開いてくれるかと思ってさ」
いつものようにおどけてるその笑顔に、つられて私も頬がゆるむ。
魔理沙は自分のことをよくがさつだなんて言うけれど、本当は全く逆なんだ。
今だって落ち込みそうな私を元気づけるために、冗談を言って和ませてくれたのだから。
「今すぐになんて言わないからさ。ゆっくり気持ちに整理を付けてからでいいぜ。私はいつまでも待ってるからさ」
「う、うん……ありがとう、魔理沙…」
そう言いながら優しく笑う魔理沙に胸がときめく。
本当に、どうしてあなたはそこまで優しいのかしら。
あまりに優しすぎて、こっちが申し訳なくなってしまうほどに。
だけど、だからこそ出来るかもしれない。
普段は突然ドアを開け放ってやってくるくせ、ホントはそっとノックするほど優しいあなたになら。
堅く閉ざした心のドアを開けて、その一番奥の場所に迎え入れることが。
そしてその中にある特別席に座ってもらう、最初で最後の人になってもらうことが―――
「さて、それじゃあ今日は帰るとするぜ。あんまり遅くなってるとホントに強引に唇奪っちゃうからなっ」
「な、なに言ってるのよばかっ」
そんなこと言っといて、結局待ってくれるくせに。
…だからこそ、私もその優しさに甘えてばかりいないようにしなきゃね。
「そうだアリス、こいつも受け取ってくれないかな」
棘があるからここに入れておくなと、魔理沙は取り出したもう一本の花を水仙の入った花瓶に生ける。
その綺麗な姿に思わず目を奪われてしまうその花は…。
「白い薔薇…?」
「綺麗で可愛いけど棘がある。まるでアリスそっくりだろ?」
「そ、そんなわけないでしょっ」
薔薇の花の部分に優しく触れながら、そう言って笑う魔理沙に胸が高鳴る。
よくある口説き文句だとは思うけど、それを魔理沙が口にするとまるで彼女自身の言葉のように聞こえた。
それだけ魔理沙の言葉に心が篭っていて、私の胸に届いているからかもしれない。
「だけどさ、この花の花言葉は私にピッタリなんだぜ?」
言いながら、私の傍まで歩いてきてニカっと笑う魔理沙。
「その花言葉ってなによ…」
ドキドキしているせいで顔が熱く、魔理沙を直視できずに少し俯き加減で呟く。
「…この花言葉はさ―――」
言葉とともに顎に魔理沙の人差し指と親指が当てられ、くいっと持ち上げられる。
途端に至近距離に映る魔理沙の顔。
絡まった視線を解くことも出来ず不意の出来事に言葉を失っていると、不敵な笑みを見せながらその口を開いた。
「―――“私はあなたにふさわしい”だぜ」
「ッ!?」
カァッと火が出るように火照る頬。
視線で射抜かれ動かすことが出来ない顔のせいで、体温上昇はさらに加速する。
「アリスと釣り合うやつなんて私ぐらいなもんだ。絶対幸せにしてやるから、安心して私のものになりな」
「~~~~~~っ!?」
ただでさえ顔の熱さと鼓動が大変なところにとどめの一言。
なにか言いたかったけれど、あまりの恥ずかしさとバクバク言っている胸のせいで頭も口も全然動いてくれない。
耳まで真っ赤にして口をぱくぱくさせている私を尻目に、くるっと身を翻しドアに向かって歩き出す。
「じゃあなアリス、大好きだぜっ」
最後にいつもと変わらぬ調子でこちらに笑いかけ、帰ってしまう魔理沙。
結局なにも言い返せなくて、なんだか凄く悔しかった。
「………さ……ささ…最後にカッコつけてるんじゃないわよばかぁーーーーーっ!!!」
魔理沙がいなくなった家の中に、そんな叫び声が空しく響く。
うぅ……結局やられっぱなしだったわ…。
不意打ちであんなことするなんて卑怯よ…。
「………”私はあなたにふさわしい”…か。最後にカッコつけ過ぎよ魔理沙のやつ…」
…ホント、あなたは私にふさわしいわ。
だって最後の言葉さえ、あのくらいはっきり言われないと私が踏ん切りを付けられないって、わかって言ってくれたんだろうから。
これだけされちゃったんだから、次は私の番かもね。
今度会うそのときにはあなたの愛に応えたい。
だからそれまでにしておこう。
この胸の中にあるドアを開いて、優しいあなたを迎え入れる準備を―――
この後魔理沙も顔真っ赤にしてるんでしょうね。
こういうマリアリは大好きです。
甘くて素晴らしい。
マリアリマスターと呼ばせてもら(黙
特にマリアリマスターやマリアリマイスターと言って下さってる方がいて非常に恐縮です><
他に素晴らしいマリアリを書かれる方はたくさんいらっしゃいますし、
自分なんかがその称号で呼んでいただいてしまっていいのか不安ですが、
そう言っていただけるのは凄く嬉しいです^^
あと、早ければ明日辺りにまたマリアリSSをうp予定なので、
そちらも宜しければ読んでいただけると嬉しいです。
紫煌刀さんのマリアリ大好きです!!!