Coolier - 新生・東方創想話

東方探偵碌

2014/03/18 18:32:04
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(本作品はサスペンスもので、且つ”主人公たちの女子会”シリーズの独自設定を一部含んでおりますが、推理に必要そうなところには注釈を加えておりますので、読まれておられなくても楽しめます。)





あの夜は、少なくとも午後8時までは普通だった。

私の主観ではあるが、どこまでも普通、だからこの後”あんなこと”が起きるなんて全く想像してなかった。


(13日午後8時、ミスティアの屋台、魔理沙視点)
私たちはいつもの屋台で飲んでいた。

今日は女子会ではなく、霊夢と2人で飲んでいたが、後からアリスと幽香が加わり、結局女子会のノリになっていた。

妹紅 「へぇ~おまえらもこのみしぇにかよってるんだぁ」

カウンターから長髪白髪の蓬莱人、藤原妹紅が話しかけてきた。この女、普段は竹林の案内なんかしているが、酔うと相当面倒な女だ。

ミスティア「妹紅さん、飲みすぎですよ」
妹紅 「なぁにいってんだぁふろうふしにのみすぎもくそもあるかぁあってんだ」

止めるミスティアに何か反論しているが、正直何を言っているかさっぱりだ。ミスティアはいつものことと肩をすくめる。妹紅はその後カウンターの隣の客に絡み始めたので、私たちとしては大助かりだ。

こいし「お姉ちゃんみてみて~、あそこに酔っ払いがいるよ~」
さとり「話しかけちゃダメです。」
フラン「アンタたち姉妹、仲がいいわね、ウチと違って」
美鈴 「あはは、まぁまぁ妹様、お嬢様は・・・まぁ割と暴走することありますけど」

他のテーブルには古明地姉妹とフラン、中国が談笑している。見たことない組み合わせだが・・・というかフランは何で外に出ているんだ?

幽香 「そういえばミスティア、あなたも音楽やるって言ってたわね」
ミスティア「はい、鳥獣技楽っていうバンドでギターボーカルやってます」
アリス「ギターできるんだ。今後の参考に見せてくれない」
ミスティア「はい、いいですよ、ただ仕事もあるんでカウンターに来てもらっていいですか?」

魔理沙「お、私も見たいぜ」

しかし移動しようとした私の袖を掴む人間がいた。霊夢だ。

魔理沙「ああ、悪い。幽香、アリス。二人で見に行ってくれ。」

二人ともああそういうこと、と言う顔で去っていく。

魔理沙「全くいつまでいじけてんだよ」
霊夢 「だって・・・気まずいじゃない」
魔理沙「博麗の巫女が聞いて呆れるぜ。ったく付き合ってやるか」
霊夢 「ふん」

私は拗ねた霊夢を相手にしていた。この時の時刻は午後8時15分だったと記憶している。偶然こーりんから”借りた”腕時計を見ていたから間違いない。

ミスティアの演奏を肴にして私たちは飲んでいた。





事件は午後9時。トイレに行った中国が血相を変えて戻ってきた。

美鈴 「た、大変、なんです!大変なんです!!」
フラン「どうしたの、めーりん?」
美鈴 「ば、ら、ばら」
フラン「薔薇?花がどうしたの?」
美鈴 「そうじゃなくて、ばらばら・・・バラバラ死体が!!」
一同 「えええええええ!?」

どういうことだ?バラバラ死体?

霊夢 「直ぐに案内しなさい!!」





魔理沙「おぇええええ!!」

失礼だとは分かっていたが・・・正直、かなりショッキングな光景だった。

中国の連れてきた先は屋台の裏のトイレ。以前、幽香とやりあった場所だ。
(拙作、主人公たちの女子会シリーズのその6後半で、魔理沙は幽香と激しくバトルした)

アリス「嘘・・・これ、誰なの?」
幽香 「・・・さぁ」

余りの惨状にアリスたちも戸惑っている。もはや被害者が誰なのか分からないほど切り刻まれていた。

霊夢 「凶器はこのチェーンソーかしら?」

霊夢は一人指摘する。その時誰かが息を飲む音が聞こえた気がしたが、その時は誰なのかまでは分からなかった。

こいし「・・・お姉ちゃん」
さとり「とりあえず・・・自警団をよぶべきでは?」

古明地さとりの提案に一同うなづく。が、・・・

フラン「ねぇ・・・さっきからあの酔っ払いがいなくない?」
一同 「!?」

・・・妹紅が・・・いない?
なぜ?よっぱらってついてきてなかった?
それとも・・・

良く見ると、髪の毛は血で赤く染まっているようだが、元の色は白だ。
つまり、これは・・・

ミスティア「い、いやーーーーーーーー!!」

















午後9時45分

ナズーリン「これはこれは。怨恨かな?」
星  「可能性は高いですね。」

妖怪寺の二人組は妹紅を見るなりそういった。

何故コイツラが来たのかを掻い摘んで説明する。あの後、私は全速力で人里の自警団に連絡し、現場に来てもらうことにした。しかし自警団も来ることは了解したのだが、今回のように妖怪絡みの可能性が高い事件となると手に余るということ。で、一緒についてきてもらったのが、この2人。人里内の妖怪絡みの事件を扱っているらしい。

ナズーリン「ええ、諸君。ショックを受けられているようだが少々お時間を頂きたい。」

パンパンと拍手しながらネズミが言う。

ナズーリン「今回、外部の犯行の線がかなり濃厚だが、一応今回の客のアリバイを確認しておきたい。ご協力願えるかな?」

ネズミの発言に一同うなずく。

ナズーリン「まず左から」
霊夢 「博麗霊夢。巫女よ。今日は魔理沙と一緒に飲んでいたの。時間は・・・」
魔理沙「少なくとも午後8時。妹紅は確かに生きていた。で、9時まで私たちは・・・」
星  「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!被害者は妹紅さんなんですか!?」
霊夢 「そうだけど・・・」
星  「何で早く言ってくれないんですか!?生き返って話聞けば事件解決じゃないですか!?」
霊夢 「それが・・・何か生き返らないのよね」

はぁ・・・と二人がため息をつく。

ナズーリン「とりあえず永遠亭に運ぼう。それで解決だと思うが・・・」
星  「まぁ話は聞かせてもらいますか」

白い目で私たちを見る。

魔理沙「とにかく私と霊夢は午後8時から9時までトイレにすら行ってない。」
霊夢 「美鈴が来てからみんなで行くまで私と魔理沙は一緒だったわ」

ナズーリン「次をお願いする」
アリス「私と幽香はミスティアの演奏を聴いてたわ」
星  「被害者はいつトイレに行ったか分かります?」
アリス「それが・・・一緒のカウンターにはいたんだけど、その・・・」
星  「分からない?」
アリス「既にトイレに行ったことすら気が付かなかったわ」
ナズーリン「そちらは?」
幽香 「同じく・・・」
星  「ということは店主のアリバイしか証明できないということですね」
アリス「・・・そうです」

ナズーリンはメモしていく。

星  「そちらは第一発見者の?」
美鈴 「はい、紅美鈴です。よろしくおねがいします。」
ナズーリン「まずいつ頃トイレに?」
美鈴 「私、時計持っていないので分からないんですが、私が戻ったのが9時だそうです」
星  「つまり8時50分ごろの可能性が高い、と」
ナズーリン「当時の状況は?」
美鈴 「私が行った頃には既に妹紅さんはあの状態で・・・」
星  「不審者などは?」
美鈴 「全く。既に事件は終わってました」
星  「テーブルの方。何か気になることは?」
フラン「それが・・・フランは寝ちゃってて・・・」
さとり「同じく」
こいし「こいしはブラブラしてたー」

ナズーリンがメモしていく。覗いてみると『全く参考にならない』と書かれていた。

星  「さて、店主。これで今日の客は全てですか?」
ミスティア「いえ、あの・・・」
星  「?」
ミスティア「今日は霊夢さん、魔理沙さん、アリスさん、幽香姉さま、」
ナズーリン「ふむふむ」
ミスティア「テーブルにフランさんと美鈴さんとさとりさんとこいしさん、」
星  「はいはい」
ミスティア「カウンターに、被害者の妹紅さんと・・・」
星  「と?」

ミスティア「こちらのジェイソン・田中さんです」
???「・・・・・・」

その視線の先には・・・

ホッケーマスクをかぶった長身の男がいた。


















ホッケーマスクをかぶった長身の男がいた。
いや、男にしてはそこまで長身ではないか、寅丸星と同じ程度の身長だ。
何故今までコイツにきづかなかったかと言えば、一言もしゃべっていなかったからだが・・・一度気づくと不審過ぎてしょうがない。というより・・・


ミスティア「田中さんは毎月13日の夜に必ず来て下さる方で」
ナズーリン「ジェイソンが・・・13日に?」
星  「もしかしてチェーンソー持ってたりしません?」
ミスティア「はい、いつもお持ちで・・・あれ、今持ってませんね」


この時全員が、いや正確にはミスティアとジェイソン以外だが、一点を注目していた。それは血まみれのチェーンソー。


ナズーリン「御主人、前言撤回させてもらう」
星  「外部犯行より内部犯行から疑うべきでしたね」


寅とネズミがジェイソンに近づく。人里の自警団もジェイソンを包囲していた。


ナズーリン「ジェイソン・田中さん。このチェーンソーはあなたのものですか?」
ジェイソン「・・・・・・」
ナズーリン「聞こえませんでしたか?あなたのですか?」


ジェイソンが静かにうなづく。


ナズーリン「犯人はあなたですか」


今度は直ぐに首を振る。


ナズーリン「被害者と面識は?」


また首を振る。


ナズーリン「しゃべって頂けませんかね」


まあ首を振る。


星  「いずれにせよ重要参考人です。お寺にご同行願います」


一瞬暴れるかと身構えたが・・・奴はおとなしくお縄を頂戴する。


魔理沙「・・・まぁ・・・やれやれ一件落着か」
霊夢 「それはないわね」
さとり「・・・・・・」


え?


魔理沙「ちょ、ちょっとどういうことだ霊夢?あ、さとり!お前も!!」
さとり「私が関与する義務はありませんので、いくわよこいし」
霊夢 「私は気になることがあるから調べてみるわ」
魔理沙「あ、おい!」


いったいなんなんだ?


美鈴 「魔理沙さん、あの・・・」
魔理沙「うん?どうした?」
フラン「フランたち、おうちに帰るんだけど・・・」
美鈴 「あの、少々心細いのでついてきてくれますか?」


割と残虐方面に定評があるフランも今回のは応えたようだ。私は2つ返事で了解する。


フラン「ねぇ魔理沙。さっきの奴なんだけど・・・」
魔理沙「ああ、あのマスク男か?」
フラン「いつからいたの?フラン、全然気が付かなかった」
魔理沙「・・・・・・」


考えてみたら妙だ。あんな目立つ男に何で私たちは気が付かなかったのか。


美鈴 「私も気になることがありまして・・・」
魔理沙「うん?」
美鈴 「あのマスク男、かなり鍛えてました。なのになんで抵抗しなかったんでしょう?」
魔理沙「・・・着いたぞ」


私はフランたちを紅魔館に送った後、一人考えていた。美鈴が鍛えていた、ていうんだから武道を嗜んでいるということか?目立たず、一言も話さず、強い謎の男。しかし霊夢は犯人じゃないという。で、さとり。あいつの反応もおかしかった。待て。あいつならジェイソンの心の中を覗けたんじゃないか?


魔理沙「考えたってしょうがない。帰って寝るか。」


(13日終了)
(14日 9時)


私は朝早く博麗神社にやってきた。用事はもちろん、


魔理沙「霊夢~、命蓮寺に行くぞ~」
霊夢 「はいはい、ちょっと待ってね。賽銭箱確認してから」


じゃあ時間の無駄だな。案の定空っぽの賽銭箱を後目に私たちは命蓮寺に飛ぶ。が・・・


魔理沙「霊夢、昨日のこと聞かせてくれ」
霊夢 「昨日のことって?」
魔理沙「いや、ほら。なんでジェイソンが犯人じゃない、て思ったかだよ」
霊夢 「そこまで言ってないわよ。犯人かもしれないわよ」
魔理沙「じゃあ事件は解決じゃないか」
霊夢 「そうすんなり解決するとも思えないのよねぇ」


さっきから霊夢は何を言っているんだ?言動が支離滅裂だ。まぁいずれにせよ命蓮寺に到着すればはっきりするんだが。


星  「ああ、やっぱり。そろそろ来るころだと思ってましたよ」
ナズーリン「邪魔だけしないようにな」


例の二人組が出迎える。


魔理沙「何かしゃべったか?」
星  「それが・・・何にも」
ナズーリン「ずっと黙秘を貫いている」
霊夢 「今は?」
星  「聖の結界の中だ」
魔理沙「聖も夜通し大変だな」
星  「え?どういうことですか?」


どういうこと、て。夜通し結界張ってたんだろ。そりゃ眠くなるはずだぜ。


霊夢 「ああ、あのね魔理沙。結界は寝てても効果は持続するわ」
魔理沙「そういうものなのか?」
霊夢 「結界札を使えばね。私も使ってるでしょ」


なるほど、一度張れば寝ててもいいわけか。


星  「正直助かりました。実は昨日、聖は外出してたもので」
ナズーリン「それまでは一輪が結界を張ってたんだが、何分苦手でな」
星  「流石に我々も徹夜する覚悟を決めた矢先に帰ってこられたんですよ」
聖  「あら、霊夢さん、魔理沙さん、おはようございます」


話していると、正に当事者、聖白蓮がやってきた。


聖  「今日は何しに?」
魔理沙「例のマスク男を見に来たぜ」
ナズーリン「ああ、悪いが、関係者以外の容疑者の接見は禁じている」
魔理沙「ちぇ」


当てが外れたか。


霊夢 「今から尋問?」
ナズーリン「そうだが?」
霊夢 「じゃあ少し待たせてもらうわ」
ナズーリン「ま、時間の問題だな。証拠もあるし、簡単な事件だ」
霊夢 「先入観はよくないし、結構難しいわよ」
ナズーリン「?」


また霊夢が何か言っているが・・・昨日の晩から一体どうしたというんだ?


星  「ま、まぁお茶でもお出ししますし、そうだ、聖の説法でも聞いていってください」
聖  「え、ええ、そうですね」


流石に命蓮寺連中も訝しんでいるが、当の本人はどこ吹く風だ。しかしネズミの尋問が終わるまで退屈な時間になりそうだ。・・・居眠りするか。そう思って目を閉じた矢先だった。


ナズーリン「御主人!大変だ!!」
星  「え?どうしました、そんなに慌てて」
ナズーリン「容疑者が・・・容疑者が・・・」


どうしたっていうんだ?


ナズーリン「容疑者が脱走した!!」















(14日 午前10時)
ナズーリン「容疑者が脱走した!!」


確かにネズミはそういった。脱走ってそんなに簡単にできるものなのか?


星  「案内してください!巫女さん、あなたもどうか一緒に!」
霊夢 「ええ」
魔理沙「お、おい」


私たちは容疑者を監禁していたはずの小屋に行こうとして・・・
突然霊夢が立ち止った。


霊夢 「・・・この結界札、あなたの?」
聖  「え?ええ」
霊夢 「こっちは?」
聖  「たぶん一輪のものだと思いますが・・・」
霊夢 「ふぅーん」


何か気になることでもあったのか?が、今の先決は中だ。


魔理沙「こりゃ、ひどいな」
星  「昨日はあまりにも大人しかったもので・・・油断しました」


私たちが通されたのは離れの座敷牢だが・・・壁が見事に壊されていた。というより妖怪相手にこの座敷牢では不足だろう。まぁだからこその結界なんだろうが。


魔理沙「昨日の美鈴の話では、あのマスク、かなり鍛えていたという話だ。だから力技で」
霊夢 「それはないわね」


へ?


霊夢 「正直、一輪の結界はお粗末だけど、聖の結界は見事なものよ」
魔理沙「でも現実に・・・」
霊夢 「この結界を壊せるなんて、紫とか守矢の神とかのクラスよ」
星  「では・・・どうやって逃げ出したというんですか」
霊夢 「そこまでは・・・」


霊夢はあちこちを調べているが・・・命蓮寺サイドは私と同じ疑念を抱いていた。しかし言いにくいことだったので黙っていたが・・・


ナズーリン「巫女。一つ聞きたい。君はこの事件は難しい、といったね」
霊夢 「言ったわ」
ナズーリン「まさかとは思うが・・・容疑者の脱走を予見していたわけじゃないか?」


とうとう言った。爆弾発言。私もずっと疑問だった。この事件が難しくなるにはマスクの脱走が不可欠だからだ。しかし・・・


霊夢 「違うわ。脱走は予想すらしてなかったわ」
ナズーリン「では、何故難しいと」
霊夢 「私の言ってる難しいは脱走とは無関係よ」
ナズーリン「しかし、この脱走で事件がより難しくなってしまった。だから知っ・・・」
霊夢 「逆よ。”事件が簡単”になったのよ」

一同 「はぁ?」


いよいよ言動が支離滅裂になってきた。犯人を捕まえて、事件解決かと思ったら難しい、犯人が脱走して、迷宮入りかと思ったら簡単という。一体全体なんだと言うんだ?


霊夢 「魔理沙、いくわよ」
魔理沙「行くって、どこへ?」
霊夢 「決まってるじゃない、永遠亭よ。あ、でも香霖堂によってからね」


決まっているっていったって、まずやるべきはマスク男がどこに行ったかを探すべきじゃないのか?


ナズーリン「待て、巫女!!まだ話は終わってないぞ!!」
霊夢 「残念だけど、私も話せる段階にないわ。後で話すから」
ナズーリン「おい!!」


叫ぶネズミを置いて、私たちは永遠亭に向かった。



(14日15時)
魔理沙「霊夢、それは何だ?」
霊夢 「チェーンソーよ、全く同じ型というわけにはいかないけど」


私たちは香霖堂によってチェーンソーを借りた後に永遠亭に向かっていて、その道中である。


魔理沙「もしかしてあのマスク男、また妹紅を狙いに行ったのか?」
霊夢 「魔理沙も冴えてきたじゃない」


もう考えられるのはこれしかない。霊夢はマスク男を追うのではなく、待ち構えることを選んだのか。


霊夢 「それは十分考えられるわね。けど私の目的は捕獲じゃないわ。」
魔理沙「じゃあ、何だ?」
霊夢 「まずは妹紅が復活してそうだから話を聞きに行くのよ」
魔理沙「はぁ」


確かに被害者の話を聞くのは重要だと思うが・・・犯人の脱走をほっといていいのだろうか?程なくして私たちは永遠亭に到着し、妹紅の病室へと向かった。


妹紅 「おお、博麗の巫女か!久しぶり・・・いや、昨日会ってるらしいが」
霊夢 「早速だけど事件のこと教えてくれない?」
妹紅 「ああ、やっぱりか、悪いんだが・・・」


妹紅は頭をポリポリしながら言う。


妹紅 「あの時は深酒呷っててな、何も覚ええないんだ」
魔理沙「バラバラにしたやつの顔も?」
妹紅 「既にバラバラにされたことすら記憶にない」
魔理沙「おめでたい奴だな」


こいつは酒が入ってなければ常識人なんだが・・・。


魔理沙「じゃあホッケーマスクの男に見覚えは?」
妹紅 「他の奴からも聞かれたが・・・すまん」
魔理沙「恨みを買った覚えは?」
妹紅 「主にここの住人かな?」
輝夜 「妹紅、昼食よ。これ喰ったらとっとと退院しなさい」


見ると、蓬莱山輝夜が遅めの昼食を運んできた。こいつとあいつは仲が悪いと思っていたんだが・・・


妹紅 「ああ、他の奴っていうのがコイツだ。事件のことをあれこれ聞いてきてな」
輝夜 「他の奴ってどういう意味?」


こうしてみると夫婦漫才みたいだな。案外気が合ってるらしい。


霊夢 「ちょうどよかった、輝夜、あんたに話があるのよ」
輝夜 「ん?私?」
霊夢 「そこの焼き鳥屋は役に立たなかったから」
輝夜 「いいわよ、この私を思う存分頼りなさい」
霊夢 「ありがとう。じゃあ・・・」


そういいながら霊夢はチェーンソーを作動させる。


霊夢 「死んで頂戴」




























(14日18時:ミスティア屋台)
魔理沙「いったいどういうことだよ!!」


温厚な私も流石に霊夢を怒鳴った。
霊夢は本気で輝夜に斬りかかったのだ。傷は直ぐに再生したものの、服までは対象ではないらしく、無駄にサービスシーン満開の展開を見せた後、当たり前だが永遠亭をたたき出され、こうして飲み屋に来ていた。霊夢の異常さは目に余る。


霊夢 「それより気づいた?」
魔理沙「何がだよ!?」
霊夢 「輝夜の傷、すぐに再生したわ」
魔理沙「当たり前だろ!!」


このバカに付き合っていても埒が明かない。私は酒を呷る。ん・・・待てよ


魔理沙「ミスティア、妹紅ってここの常連だったよな」
ミスティア「へ?はい、そうですが・・・」
魔理沙「詳しく聞かせてくれないか?」
ミスティア「そうですね・・・酒癖が悪くて、いいお客さんとは言えませんでしたね」


そこらへんは私たちも聞いている。


ミスティア「ただ悪い人じゃないんですよ。酔っぱらって帰っても、翌日には必ずお金を持って謝りに来られてて。ツケを滞納したことは一度もありません。」


素面の時にはとことん常識人だ。


ミスティア「ところで、霊夢さん。ウチのツケいつになったら」
霊夢 「あ、ああ、ミスチー。ホッケーマスクの男のことなんだけど?」
ミスティア「ごまかせるわけねーだろ、この野郎。出るとこ出るぞ」
霊夢 「お願いします!どうか、それだけは!!」
ミスティア「もしもし、幻想郷地方裁判所ですか?」
霊夢 「あー、うー、いやぁああ」


今度はいつもの霊夢だ。ちなみに霊夢は以前、コーリン原告で差し押さえられ、服を始めとした私物をほぼ全て没収された。ちなみにコーリンはその服を1着50万円でマニアに売りつけた。


魔理沙「まぁその話は置いといて、だ。私たちが聞きたいのはマスク男と妹紅のことだ」
ミスティア「ていうと?」
魔理沙「この2人、仲が悪かったりしたのか?」
ミスティア「いえ、昨日が初対面だと思います。でも昨日の妹紅さん酒癖が・・・」


ふむ・・・とは言え、それだけでバラバラ、というのも過激な気がするな。質問を変えてみるか。


魔理沙「マスク男のことを詳しく聞きたいんだが、どういう男だった?」
ミスティア「毎月13日に来られる方で、一度も話したことはありません」
魔理沙「ず~っと黙っているってことか」
霊夢 「私からも一ついいかしら」
ミスティア「はい、なんでしょう?」
霊夢 「マスク男は普段何を注文していた?」
ミスティア「え?普通にお酒とかウナギとか・・・」
霊夢 「昨日も?」
ミスティア「あ、こちらに伝票がありますので」


見ると、酒、ウナギ、湯豆腐、おでん・・・、あまりに普通、何の情報もない伝票だが・・・


霊夢 「なるほど、そういうことね」
魔理沙「は?」
霊夢 「マスク男の動機が分かったのよ」
魔理沙「はぁ~~!?」


動機が?この伝票で?
”このタケノコを卸したのは誰だ!?”的なノリで殺したってことか?


霊夢 「よし、今日は遅いし、帰りましょう。明日は地霊殿よ」
魔理沙「地霊殿!?マスク男は地霊殿にいるのか!?」


ますます霊夢の言動は意味不明だ。私たちはこうして屋台を後にした。ちなみにツケは払ってない。




(14日21時:魔理沙自宅)

ふぅ~。疲れた。しかし・・・霊夢は何が分かったっていうんだ?私には何が何だかさっぱりだ。話を整理してみよう。


昨日、妹紅が殺された。生き返ったが殺されたことには間違いない。で、マスク男が逮捕された。理由は持ち歩いているチェーンソーが凶器だったからだ。しかし私たちが見に行ったときには脱走していた。14日23時~15日9時くらいの間に脱走したとみて間違いないだろう。

そして霊夢の指摘では「白蓮の結界を破ることはまず不可能」らしい。しかし星の話では、昨晩は聖が外出していて、途中まで一輪が結界を張っていたらしい。では一輪の結界の間に脱出したとしたらどうだろう?

しかしそれでと問題が2つ。1つは一輪結界中は外で星たちが見張っていたこと。どんな感じで見張っていたのか知らないが、結界が破られる前提で見張っていたとみるべきだ。では一輪と聖の交代時。これが有力か?しかし2つ目の問題。いくら白蓮とはいえ、自分が監禁している相手を一切見ずに結界を張るだろうか。まだ中にいることを確認してから張るはずだ。そもそもマスク男に交代の様子が正確に伝わっているとは考えにくいし。


魔理沙「というより、だ」


私は良く分からんが、結界を破ったら音くらいするのではないだろうか?もし必ずするのなら、交代時しかチャンスはない。つまりマスク男は壁をけ破った後、一輪聖交代時を狙って脱走する。で、聖は、たぶんうっかりして中の確認を怠ったのだろう。これくらいしか考えられない。

そして明日は地霊殿。おそらく霊夢はさとりにマスク男の心の中を聞きに行くんだろう。それで動機を絞り込み、後は臨機応変、ということか。


魔理沙「疲れたな。もう寝るか」


私は横になった。











(16日 12時)
地霊殿に向かう途中、私は霊夢に昨晩の推理を聞かせた。霊夢は1つうなずいた後、


霊夢 「可能性の一つではあるわね」
魔理沙「可能性って・・・他に何かあるのか」
霊夢 「あるけど・・・私は今回の件、まず”コイツじゃなきゃ不可能”から考えてるわ」
魔理沙「意味が分からないが?」
霊夢 「マスク男には不可能なことがあるってことよ」


不可能なこと?白蓮の結界のことか?しかし私の推理では解決しているはずだ。


霊夢 「そういうことじゃなくてね、ああ着いたわ」


またも話が途中で終わってしまった。地霊殿だ。特にアポは取ってなかったが、予想されていたのか、直ぐに客間に通された。


霊夢 「さとりが来る前に簡単にいうとね」
魔理沙「ああ」
霊夢 「魔理沙が気にしているのはマスク男の脱走よね」
魔理沙「ああ、白蓮の結界が破れない以上、交代時が一番確率が高い」
霊夢 「どうして?」
魔理沙「だって、一輪の結界の時は星たちが見張ってたんだろ、逃げられないじゃないか」
霊夢 「まず前提だけど、結界は2重に張れるわ。交代するからと言って一輪の結界はなくならないわ」


・・・た、確かに。ということは交代時であれ、逃げるときに気づかれてしまうことになる。


魔理沙「じゃあ逃げることは不可能!?」
霊夢 「とも言えないわ。命蓮寺の二人には盲点があるわ」
魔理沙「盲点?」
霊夢 「これは良くある誤解なんだけど・・・後で話すわ」

さとり「こんにちは。少々遅かったですね」


古明地さとり。心を見る妖怪。そもそもこいつが事件が起きた瞬間、犯人を名指ししてくれれば話が早いんだが・・・


さとり「それでは私の身の安全が保障されません」


それはさとりに脅しをかけているという・・・


さとり「そういう意味ではなく、私は仕事以外でこの能力を使う義務はないということです」


良く分からないのだが・・・


さとり「私の身の安全は、私が心の内容を黙秘することで成立するということです」


つまり事件のことは・・・


さとり「もちろん話すつもりはありません」
霊夢 「相変わらずね」


今の会話は霊夢からしてみれば、さとりが一方的に話しているようにしか見えなかっただろう。


霊夢 「それでもあなたは私と会わずにはいられなかった。それで十分よ」
さとり「・・・話すことはありません。」


? どういうことだ?


霊夢 「私も最大限名誉は守るわ。私の推理はこんな感じ。何か言いたいことはあるかしら」
さとり「・・・・・・・・・・・・憶測の塊のような推理ですね」
霊夢 「そうね、でもそれに沿って証拠が出ると思うわ。肝心なのは順番を間違えないこと」
さとり「その順番、間違っていたらどうします?」
霊夢 「間違っているなら指摘してもらえないかしら?最終的にはその方が都合がいいでしょ」
さとり「・・・・・・」
霊夢 「沈黙を回答と受け取って構わないのかしら」
さとり「待ってください」


何だ!?ついに心の中身を教えてくれるのか!?そう期待したが、さとりの意見は予想外の内容だった。


さとり「あなたの推理、いえ考えの根源は、ほとんどの人妖がスペルカードを守る前提ですね」
霊夢 「? どういうこと?」
さとり「あなたを好ましく思っていない妖怪はたくさんいるということです」
霊夢 「何が言いたいの?」
さとり「妖怪はあなたが怖くてスペルカードルールを守っているわけではない、と」
魔理沙「どういう意味だ?」
さとり「このルールは博麗が決めたもののように見えてそうではない。
    決めたのは八雲とそれに匹敵する風見、この両者がルールに従ったから」
霊夢 「・・・それが今回の事件に関係あるかしら?」
さとり「さぁ?ただ逆に言えば”風見はルールに縛られない”ということです」
魔理沙「幽香が何か事件に関係しているのか!?」
さとり「解釈はご自由に」


さとりがいきなり立ち上がった。


さとり「お麟!お客様がお帰りよ!神社まで見送ってあげなさい!」
霊夢 「・・・私を甘く見ているようね」
さとり「・・・確かに見ていましたね」
霊夢 「今でも遅くは・・・」
さとり「御帰りはあちらです」


私たちは半ば強引に地底を追い出された。




(16日 15時 博麗神社)
魔理沙「なぁ、さっきのさとり、どう思う?」
霊夢 「気分悪いわね」
魔理沙「いや、そうじゃなくて。幽香が事件に絡んでいるかもしれないってことだよ」
霊夢 「かも、じゃなくて絡んでいるわよ」
魔理沙「!?」


え・・・ということはつまり・・・


魔理沙「犯人は幽香!?」
霊夢 「それは短絡的すぎよ。ただ偶然なのか故意なのかは知らないけど、関わってはいるわ」


衝撃的な発言だが・・・今はそれより


魔理沙「さとりの話で、ほら、幽香が霊夢を嫌っているかもしれないっていう・・・」
霊夢 「あれは気にしなくていいわ」
魔理沙「いや、それは今回の件に・・・」
霊夢 「関係ない」
魔理沙「じゃあ何であのタイミングで・・・」
霊夢 「関係ないって言ってるでしょ!!」


いきなり霊夢がどなった。


霊夢 「もうやだ!私は今から寝るわ!魔理沙も帰って!」


どうやら癇癪を起してしまったらしい。しかし幽香と霊夢の確執が事件に関係ないとは言い切れない。


”決めたのは八雲とそれに匹敵する風見、この両者がルールに従ったから”


魔理沙「八雲、か」


紫なら何か知っているかもしれない。私はチェンの塒に向かった。





(16日 20時 八雲の住処)
紫  「悪いわね、遅くなって。帰りはスキマで届けてあげるわ」


寝ぼけ眼の紫がようやく表れた。


紫  「で、例のバラバラ事件のことかしら?」
魔理沙「ああ」
紫  「残念だけど、スキマで見てないわ。あんなこと起きるなんて知らなかったんですもの」
魔理沙「まぁそうなんだが、訪ねたいのは別件だ」
紫  「あらあら何かしら」
魔理沙「幽香は霊夢のことを嫌っているのか?」
紫  「はぁ?」


紫は首をかしげる。何を意図しているか分からない、という顔だ。


紫  「それはどういう意味?」
魔理沙「私が聞いたのはスペルカードルールでのことだがな・・・」


紫の双眸が細められる。・・・どうやら思った以上に根が深い問題らしい。


紫  「知ってどうするの?」
魔理沙「さぁな、しかし聞くまで帰らないぜ」
紫  「それはもう解決済みの問題なのよ」
魔理沙「それは私が判断することだ」


しばし沈黙が続く。が、・・・


紫  「そうね、確かにスペルカードルールは霊夢の力で定められたわけではないわ。
    ただ彼女の功績に大きく依存するのは確か、これで十分じゃない?」
魔理沙「私が聞きたいのはそういうことじゃないぜ」
紫  「ええ、いくつかの妖怪の根回しが必要だったのは事実よ」
魔理沙「幽香は?」
紫  「ええ、確かにあの二人は特別な配慮が必要だったわ。何しろ出身がアレだし」
魔理沙「2人?」


どういうことだ?


紫  「もちろん風見幽香と、アリス・マーガトロイド。この私が一目置く妖怪よ」




















(17日 14時 博麗神社)
いろいろ考えているうちに昼をまわってしまった。

”もちろん風見幽香と、アリス・マーガトロイド。この私が一目置く妖怪よ”

アリスが? 確かに幽香もアリスには遠慮している節があるが・・・。
それよりも目下問題なことがある。あの事件の夜、歌に集中しているミスティアと、それを聞いている幽香とアリスがお互いのアリバイを証言した形だった。

が、だ。もし幽香とアリスが結託して妹紅をバラバラにしたのだとしたら?

チェーンソー片手に妹紅を切り刻む幽香。人形劇よろしく、偽りの証言をするアリス。
想像して身震いがしたが、ありえない話ではあるまい。

同時に、別の線も考えた。霊夢は”誰が犯行可能か”を重視していたが。そもそも妹紅に危害を加えられる人妖がどれほどいるのか。


ジェイソン・田中。命蓮寺の術を出しぬき、見事逃走した。美鈴がかなり鍛えているといっていた。相当な実力者と見て間違いないだろう。

フランドール・スカーレット。悪魔の妹。ありとあらゆるものを破壊する程度の能力を持つ。単純な攻撃力なら幻想郷屈指だろう。

古明地さとり。人の心を読み、トラウマを想起させる程度の能力を持つ。妹紅は身体能力は凄まじいが、精神力は普通だろう。妹紅にとって天敵といえるかもしれない。

古明地こいしも負けてはいない。そもそもあいつは存在すら認知できない。警戒しようにも反撃しようにも認知不可能ならばどうしようもない。

紅美鈴も体術は相当なものという噂である。そういえば、さとりの話で”誰もがスペルカードルールを好んでいない”って言っていた。それはもしかして、弾幕を無視して、徒手空拳で犯行に及んだということなのか?

体術と言えば、忘れてはいけないのが風見幽香。八雲ですら一目置く大妖怪。能力抜きにした純粋な実力では幻想郷一と言っても過言ではない。

そして・・・アリス。私はアリスと古い付き合いだが、よく考えればアリスのことを何もしらない。それに紫の発言・・・。


魔理沙「あーーーーーーーー、結局全員怪しいじゃないか!!」
霊夢 「魔理沙、いきなりどうしたのよ?」


私の困惑をよそにのほほんとした感じで霊夢が答えた。


魔理沙「事件のことだよ!何も分からないじゃないか!」
霊夢 「ああ、まだ悩んでたのね」
魔理沙「まだも何も、霊夢だって似たようなものだろ!」
霊夢 「私はもう犯人が分かったわ」
魔理沙「だろ!だからこうしているうちに・・・て・・・」


今、何ていった?


霊夢 「何度も言わせないで。博麗の巫女が”解決した”って言ってるの」

魔理沙「はぁぁぁああああ!?」


ど、どういうことだ!?昨日までは何も・・・だって・・・えええ!?


霊夢 「今から犯人のところに行くけど、魔理沙、ついてくる?」
魔理沙「もちろん!でも本当に・・・?」
霊夢 「証拠は既に紫に抑えさせたわ。今から隠滅は図れない。あとは突きつけるだけよ」


私は訳が分からぬまま、霊夢についていった。























(ここから解答編です。
 もう少し粘りたい人はここで考えましょう)



















(17日 15時 某所 ???視点)


霊夢 「急に悪いわね」
???「とんでもない」
霊夢 「でもどうしても伝えたいことがあってね」
???「何?」
霊夢 「犯人、ジェイソン・田中がどこにいるか分かったのよ」
???「どこ?」


霊夢はそういうと結界を作り始める。


霊夢 「結界っていうのは、外と内を隔てるもの。スキマなんてその究極と言えるわね」

霊夢 「けど、実際に隔てられているわけではないわ」

コンコンとお札を小突く。

霊夢 「結界は外と内の隔離。元々同位相にあるものを力で無理やり隔てている。」

霊夢 「ではその力はどうやって流す?それがお札というわけ」

霊夢 「問題はそのお札は”外”なのか”内”なのか」

またお札を小突く。

霊夢 「正解はどちらでもない。赤でもない青でもない紫。」

霊夢 「混沌を司る紫(ゆかり)と違って、私たちは結界という絶対のような力を・・・」

今度はお札をはがす。

霊夢 「お札という曖昧なもので形成しているわ。結界使いの腕はお札を見れば分かる」

霊夢 「あなたも知っているわよね。一輪の結界は札の防御がされていない、杜撰なもの」

霊夢 「結界使いじゃなくても破って脱走は簡単だったでしょう、けれど」

剥がしたところにまた札を貼る。




霊夢 「あなたはそれができなかった。
    ”自分のせいで”一輪が責められることは許容できなかった」

新しい札を4枚、今度は完璧な結界を貼る。

霊夢 「だからこそ、あなたは虎とネズミの目を盗んで、
    ”結界を破った後に張り直し”、
    ”更に自分が新しい結界を張って”
    ”自分の結界が破られたことで犯人が逃げた”
    そういうストーリーを作ろうとした」

???「何を根拠に・・・」

私はかろうじて反論するも、心臓は早鐘のようになり、冷や汗も滝のように流れていた。

霊夢 「証拠はこの札。
    一輪が貼ったものだけど、一つだけ破られた後修復されたものがあるわ。
    それも元より強固に、正確に。
    あなたの気遣いが、結果としてあなたの首を絞めたのよ、
    ジェイソン・田中こと、聖白蓮!!」


霊夢は私、聖白蓮を指さしていた・・・。







(魔理沙視点)
白蓮は明らかに動揺していた。

”結界に関して、よくある勘違いがある”

あれは結界は、張るだけでなく、札の防御を厳重に行って、初めて結界として用を成す、という意味だったのか!虎とネズミは小屋を見張っていたが、一輪含めて結界のことは良く知らなかったらしい。白蓮は結界の札を無効化し、また貼り直すことで、まんまと脱出。それで何食わぬ顔で2匹の前に現れたのか!


霊夢 「あの逃走劇、一番最初の疑問点は
    ”何故一輪の結界を破らず、わざわざ白蓮の結界を破ったか”だったわ」


再び霊夢が続ける。


霊夢 「だから札の違和感にすぐに気づけたわ。犯人が結界の熟練者だと。」


推理が続く中、白蓮は観念したように下を向いている。


霊夢 「これができる人間は誰?どうしてわざわざ自分を捕えている一輪を庇う?」
白蓮 「だって・・・私のせいで一輪が落ち込むのはいやでしたから・・・」


霊夢は懐から何か差し出した。ミスティアの屋台の領収書だ。


霊夢 「動機はコレね」
白蓮 「出来心だったんです」


白蓮は腰を下ろし、遠くを見つめるような目をしていた。


白蓮 「半年ほど前のことでしたね。里で説法している時に、あの美味しそうな匂いを嗅いで。ウナギの匂いでした。それ以来、何をやってもウナギのことが気になって集中できなくなって・・・一度だけと思い、男装して仮面をして屋台に言ったんです。絶品でした。」

白蓮 「でもいけませんね、一度食べるとまた食べたくなる。ウナギとお酒で一杯やりたい。そう思って我慢はしたものの限界になって・・・また店に来てしまいました。ひと月、ひと月と。いつの間にか13日にだけ来る人と言われましたね。」

白蓮 「でも先日。屋台で一杯やった後、もよおしてしまって・・・トイレに入ったのが運のつき。つい女子トイレに入ったんですよね。そして妹紅さんに見つかってしまって・・・。後はご察しのとおりです。」



霊夢 「そうかしら?」
白蓮 「私は今から自首します。ご迷惑おかけしました。」
霊夢 「そうね、ただ自首は”正直”にやってもらわないと」
白蓮 「・・・言わんとする意味が分かりかねますが・・・」


一体霊夢は何を言っているんだ?


霊夢 「単刀直入に言うわ。あなたは”妹紅をバラバラにしていない”」
白蓮 「!?」
魔理沙「はぁぁああああ!?」


魔理沙「ど、どういうことだよ!?さっき犯人は白蓮って言ってたじゃないか!?」
霊夢 「妹紅に危害を加えただけよ、最悪気絶程度。私の予想では気絶すらさせてないと思うけど」


私には全く意味が分からないが、白蓮の顔は更に白くなっていった。


白蓮 「違います!!全て私がやったことです!」
霊夢 「往生際が悪いわよ」
白蓮 「私が妹紅さんをバラバラにしました!」
霊夢 「あなたには無理よ」
白蓮 「何で分かるんですか!?私の体術なら人間一人くらい!」

霊夢 「証拠があるからよ」


霊夢が荷物からチェーンソーを取り出した。2つある。


霊夢 「1つは犯行で使われたものよ、もう1つは香霖堂で借りたもの」
魔理沙「この2つがなんだっていうんだ?」
霊夢 「魔理沙、こっちのチェーンソーで斬られてもらえるかしら?」
魔理沙「は? いやに決まってるだろ!!」
霊夢 「どうして?」
魔理沙「死ぬだろ!」
霊夢 「まぁ死ぬわね。けど痛くはないはずよ」


チェーンソーをもて遊びながら、霊夢が言う。


霊夢 「何でかしら。自分で言ってみる?」
白蓮 「・・・・・・」
霊夢 「じゃあ私から言うわ。このチェーンソーには”無意識”の力が込められているわ」


無意識?無意識っていうと・・・じゃあ、やっぱり?


霊夢 「あなたの存在は認識できないけどね、」


霊夢が結界に近寄り、壁を指す。


霊夢 「あなたの残したものは見えるわ。例えば結界についた指紋」
魔理沙「!?」


いつの間にか、結界には無数の指紋がついていた!まさか・・・


霊夢 「こいし、でてきてもらえる?」
こいし「・・・・・・はい・・・」


いつの間にか、心を閉ざした覚妖怪、古明地こいしが姿を現す。


霊夢 「私の推理だけど、あなたは現場、妹紅とジェイソン・田中の邂逅に居合わせた」
こいし「・・・はい」
霊夢 「で、白蓮がピンチと知り、チェーンソーで殴ってしまった」
こいし「・・・はい」
霊夢 「素直ないい子ね」


霊夢はこいしの頭をなでる。


霊夢 「今回の件、いろいろ不自然な点があったけど、その一つは”何故妹紅が復活しなかったか”。最初は呪術とか再生能力を超える毒物かと考えたけど・・・。白蓮、あなたの下手な脱走劇が私に答えを教えてくれたわ。蓬莱人に死を認識できなくして、白蓮を庇う動機のある人物。あの宗教大戦以後、こいしが寺で修行中ということは知ってたからね」


こいしの頭をなでながら、霊夢は説明していた。


魔理沙「今にして思えば・・・輝夜にチェーンソーで斬りかかったのは・・・」
霊夢 「もしかしたらチェーンソーの傷だけ回復できないかもしれないでしょ、したけど」
魔理沙「全く・・・無茶するぜ」
こいし「でも!!」


こいしが叫んだ。


こいし「私、殴って気絶させただけです!ホントなんです!!」
魔理沙「でも実際に妹紅はバラバラになってただろ!!」
こいし「知らないんです!本当です!!」
魔理沙「しかしだな・・・」
霊夢 「魔理沙・・・」
こいし「私違うもん!本当に知らないもん!!」
魔理沙「でも・・・」

霊夢 「魔理沙!!!」


霊夢の一喝であたりが静寂になる。


霊夢 「私は今回の一件を公にするつもりはないわ。妖怪が人間を襲っただけだし。
    後は好きになさい」
魔理沙「え、ちょっと、おい、霊夢!!」


出ていく霊夢に私はあわててついていった。






(17日 18時 ミスティア屋台 魔理沙視点)
魔理沙「何だよ、ここ」
霊夢 「何、て、いつもの屋台じゃない」
魔理沙「そうじゃねぇよ!何で事件中ちょくちょく小料理店に寄るんだよ!『相棒』か!」


私たちが寄ったのはまたしてもミスティアの屋台。今週何度目だ?


ミスティア「それで、事件は解決したんですか?はい、お通し」
魔理沙「ああ、犯人は特定したよ。捕まえなかったが・・・」
霊夢 「まぁ間違ってはいないわね」
魔理沙「そういえば、ジェイソンのことなんだが・・・」
霊夢 「その話は後でいいかしら」


霊夢が話をさえぎる。お通しに口も通さずに。霊夢にしては珍しい。


ミスティア「あら、お口に合わなかったかしら」
霊夢 「ずいぶんと私の食事を観察しているようね、犯人のミスティアさん」


・・・・・・まだ事件は終わってなかったのか。














ミスティア「あら、それは一体どういうことかしら」


笑顔だ。ミスティアはいつもの笑顔。だが、私にはそれが逆に不気味だった。


霊夢 「言葉通りの意味よ。妹紅をバラバラにしたのはあなた、っていってるの」


霊夢は立ち上がる。ふざけているつもりはないらしい。


霊夢 「こいしもジェイソンも自供したわ。あなも自供する?」
ミスティア「そんなこと言われても・・・私は何がなんだか?」
霊夢 「そうね、妹紅も言ってたわ。正直者は死ぬって。」


屋台を歩き回る霊夢。終始笑顔のミスティア。くそ、何がなんだっていうんだ?


霊夢 「でも私に嘘は無駄。証拠も押さえているしね。」


荷物から何か取り出した。血まみれの割烹着、これは確かミスティアの・・・


霊夢 「実はあなたが犯人だと疑っていたのは最初からなの」

霊夢 「人間をチェーンソーでバラバラにしたら、血が飛び散るに決まってるわ。けれどあの場に血がついている人間はいなかった。外部犯なら凶器を現地で調達する真似はしないし、そもそも現場に凶器を残さない。内部の犯行と見るべき。で、犯行可能なのは・・・」


店の奥を指さす。


霊夢 「店に服の着替えを持っている人間。あなたただ1人よ」

霊夢 「それだけじゃないわ。状況証拠もあなたを示しているの。チェーンソーって物凄い音がするの。私が犯人ならまず使わないわね。その音で犯行を察知されるかもしれないもの。事実、ジェイソンもこいしも使わなかったわ。でもあなたは使えた。その心配がなかったから。」

霊夢 「以前、魔理沙と幽香がトイレで乱闘してた時。爆発音に気づいたのはウサギの鈴仙ただ一人。ここの音は屋台まで届かないことをあなたは知っていた。だから気兼ねなく妹紅を”解体”したのよね」
魔理沙「”解体”?」

霊夢 「妹紅をバラバラにした理由。それは異常性癖なんかじゃないわ。ただ人肉を欲していたからよ。バラバラにすれば好みの部位が手に入り、且つどこを切り取られたか分かりにくい。無意識の力がチェーンソーに込められていたことを知っていたかどうか。これだけは私には分からなかったけど・・・」


ミスティアはまだ笑顔だ。


霊夢 「自供してくれるかしら?」
ミスティア「いいえ」


え?


ミスティア「その割烹着は確かに私のです。つい最近無くしたんです。まさか事件に使われてたなんて」


嘘だ。あからさまな嘘だ。そしてミスティアもそれを隠そうともしない。


ミスティア「その割烹着、まさか私が犯人だという証拠にはなりませんよね」
魔理沙「おいおい・・・そんなウソ・・・」
霊夢 「あくまでシラを切る気ね」


ミスティアがウナギをひっくり返す。絶妙な焼き加減だ。そしてそれは、ミスティアがまだ平常心を失っていないことを示している。



霊夢 「アリスたちに聞けば、あの時あなたがトイレに行ったかどうかなんてすぐ分かるわ」
ミスティア「それでは聞けばいいじゃないですか」
霊夢 「・・・・・・」


どういうことだ?が・・・ふと、霊夢が言ったことを思い出す。

”幽香は事件に関わっている”

あれは犯人という意味ではなく、ミスティアの偽のアリバイ証言をしているという意味か。でも何故アリスと幽香がそんなことを?


霊夢 「これも分からないことね。幽香はとにかく、なんでアリスまであなたを庇うと確信できるのか」
魔理沙「霊夢・・・」


私は知っていた。アリスにもスペルカードルールのことで


霊夢 「何てね。彼女たちはあなたが犯人とは思わないで、面倒事を避けるために証言したに過ぎないわ。じゃあ魔理沙、改めてアリスのところに行きましょうか」
魔理沙「いや、霊夢。あのな・・・」


アリスにも確執が・・・


霊夢 「やるわね」
ミスティア「ふふふ」


? 霊夢は行かずに立ち止った。


魔理沙「? 霊夢、アリスのところに行くんじゃなかったのか?」
霊夢 「それで解決するならそうしてるわよ、けれど”証拠”にならない」
ミスティア「ですね」


どういうことだ?


霊夢 「確かにミスティアは席を立ったわ。でも本当にトイレに行ったとは限らない。
    つまり”バラバラにした”証拠にはならない。決定的じゃないわ」


ミスティアの余裕はこっちだったか。奴は既に霊夢が証拠を握っていないことを気づいている。


霊夢 「私はあなたを侮っていたようね」
ミスティア「・・・焼き上がりましたよ~」


更にウナギが盛られる。が、正直にいってこの状況で出す食事にはおそらく・・・


ミスティア「毒なんていれませんよ。入れて調べられたらそれこそ私は終わりですから」
魔理沙「どうだか」
霊夢 「魔理沙は食べないの?」


・・・ガツガツ喰うな。何でコイツはこう、なんて言うんだろう。


ミスティア「ビックリしました。実は召し上がられないんじゃないかと思ってましたよ」
霊夢 「ここまで計算高い妖怪がここでヘマすると思えないからね」


私は馬鹿らしくなって、食べる。が、ここまで来てジ・エンドか・・・。


霊夢 「1つだけ教えて欲しいわね。どこま・・・」
ミスティア「私はやってませんので答えられませんよ~」
霊夢 「・・・お手上げ、か。この事件、どうやって里に報告すればいいのかしらね」
ミスティア「ありのままでよろしいのでは?」
霊夢 「こいしの無意識での犯行?それだけ?それは流石に言えないわ、
    天狗に特ネタがあるって言っちゃったし」
ミスティア「命蓮寺の住職が絡んでいるってだけで話題性も十分ですよ~」

霊夢 「へぇ~、よく白蓮が事件に関係あるって分かったわね」


カタッ・・・。
コップの落ちた音。
本日、ミスティアが初めて動揺した瞬間でもあった。


ミスティア「それは・・・さきほど魔理沙さんが・・・」
霊夢 「魔理沙も私も白蓮のことは一言も言ってないわよ。どうして分かったのかしら?」
ミスティア「ああ、ええと・・・」
霊夢 「もう遅いわ、紫!!」

紫  「はぁ~~い♪」


呼ばれて飛び出てBBA・・・じゃなかった、ばばばばーん、と八雲紫が登場した。手には何か機械がある。


霊夢 「あなたもご存じ、レコーダーよ。よく私たちの飲み会録音してたしね」


・・・どういうことだ、それ?私、知らないんだが・・・。


霊夢 「あなたが何故白蓮の正体を知っていたか。それは白蓮とこいしの犯行を目撃したからよ。
    最後の最後で自滅したわね。」
ミスティア「いえ、待ってください。私はジェイソンさんの正体が白蓮さんだと気付いただけです!」


なん・・・だと・・・!?


ミスティア「私は犯行を黙秘しただけです。実行はしていません。」
霊夢 「そんな言い訳通るとでも・・・」
ミスティア「では裁判所にそれを持って行ってはいかがですか?」
霊夢 「ぐっ・・・・・・」


ここまで切り返すか?ミスティア、まだ粘るらしい・・・。


霊夢 「ぐ・・・ぐ・・・ぐ・・・・・・」


がっくりと項垂れる。霊夢にとって今度こそ本当に最後の隠し玉だったらしい。しかしスマン、私には力になれない。私はあきらめてウナギを口にする。ミスティアのウナギは本当にうまい。ウナギだけでなく、味噌汁、おでん、湯豆腐、全て絶品だ。そういえば死んだお袋も言ってたっけな。なんていうんだろう、そうだ、料理のコツは・・・


魔理沙「そうか!!」
霊夢&紫「!?」
魔理沙「霊夢!紫!一つ聞きたい!妹紅が復活したら切り取った死体はどうなる?」
霊夢 「え、えと、そのまま残るんじゃないかしら?でなきゃこの子も食べられないわけだし」
魔理沙「ミスティア、証拠と言ったな、証拠があれば認めるんだな!?」
ミスティア「え、ええ」
魔理沙「厨房覗くぜ」
ミスティア「え、ちょっと!!」


私はズカズカと入っていく。目当てのものは直ぐに、まぁ探す必要もないほど目立つものなんだが。


魔理沙「証拠はこれだ!!」
ミスティア「はぁ?」
霊夢 「それって、おでんじゃないの」


私は自信満々で指さす。霊夢は訝しげだが・・・


ミスティア「あああっ!!!!」


魔理沙「ふふふ、ミスティア。急にどうした?」
ミスティア「あ・・・あ・・・ああ・・・」
霊夢 「?」
紫  「まさかおでんの肉が人肉ってこと?」
魔理沙「それはないだろうな。というより食べちまっただろうし」
ミスティア「ああ・・・」
魔理沙「私も料理するから分かるぜ。
    料理のコツは出汁。
    ましてや、これだけ苦労して手に入れた食材だ。捨てるのはもったいなかったんだろうな」


私はそういって、おでんの鍋の中の網を取り上げる。中には骨が入っている。


魔理沙「料理人のミスティアだ。取り出すなら肉だけでなく、骨もと思うだろう。
    これが妹紅の骨だったとしたら・・・誰が妹紅をバラしたか分かるんじゃないか?」


じょ~~~~・・・。
どうやらミスティアが失禁してしまったらしい。”失禁するおかみすちー”。どこぞのマニアなら勃起するシチュだろうが、今はそういう空気じゃない。


魔理沙「料理人、遂に墓穴を掘ったな」


バタッ・・・。今度は気絶・・・。泡吹いて失禁して遂に犯人、ミスティア・ローレライは倒れた。







(後日 博麗神社宴会)
早苗 「ええええ!?そんな楽しいことがあったんですか!?なんで私呼んでくれないんですか!?」

霊夢 「もう解決しちゃったからねぇ」

鈴仙 「それでどうなりました?その、犯人の皆さん」

霊夢 「私は黙っててやるから気にするなって言ったんだけどねぇ」

魔理沙「白蓮は寺の連中に全て打ち明けたらしい。
    で、自戒の念を込めて修行の旅に出ている。
    一輪としては、これを機に飲酒解禁を狙ってたらしいから残念がってたぜ。
    こいしはあのまま寺で修行している」

霊夢 「結局のところ、妖怪が人間を襲っただけだからね」

妖夢 「ミスティアの方は?」

霊夢 「ずうずうしかったわよ。
    いきなり気絶から目覚めたと思ったら馴れ馴れしくすり寄って
    『ツケのこと、大目に見るから妹紅さんとの示談を取り持ってください』だって。
    で、口止め料として、ウナギを無理矢理口に押し込まれたわ」

魔理沙「さっき森を見たら、いつも通り屋台やってたぜ。ありゃ大物だな」

妖夢 「商魂たくましいですね」

魔理沙「そういえば、霊夢、その、さとりの言ったたことなんだが、幽香の件」


ガラッ!


さとり「それは私から説明しましょう」

5人 「うわっ!!」

さとり「皆様、お久しぶりです。さて、例の発言の件ですが、捜査を混乱させようとしただけで、事件には全く関係ございません。順を追って説明いたします。私はあの晩、私の能力によって全ての真相を把握しておりました。しかしご存じのとおり、私は地獄の管理以外にこの能力を使うことは好みませんので黙っておりました。そしてまた霊夢さんがミスティアと私の妹、こいしを疑っていることも存じ上げておりました。それ故にお二人が訪ねてこられた時にお会いした次第でございます。その時霊夢さんはジェイソン・田中氏こと聖白蓮さんとこいしの犯行の証拠を持っておられるようでしたが、ミスティアさんのは持っていない状態でした。私としては、もし霊夢さんがこいし達の犯行を立証した後、ミスティアを取り逃してしまっては全ての犯行がこいしに押し付けられてしまうのでは、と危惧したわけです。そこであのような発言をし、煙に巻こうとしたのですが、すぐに見抜かれてしまいました。

と、言うわけです。では私はこれにて」


す、ガラッ、ピシャッ!


妖夢 「いきなり出てきて、ノンストップで話して、終わったら、すっと帰りましたね」

鈴仙 「まさか、このためだけに博麗神社で待ち構えていたんでしょうか」

魔理沙「相当な暇人だな」

妖夢 「ですね」

魔理沙「そういえば一つだけ謎があるんだ」

霊夢 「何?」

魔理沙「白蓮は何でまた『ジェイソン・田中』って名乗ったんだ?」

霊夢 「さぁ」

















(同刻。命蓮寺)
星  「聖がいなくなると、なんというかさみしくなりますね」

ムラサ「おーい、アマゾ○から聖に荷物が届いているんだけど」

星  「ああ、はい、映画ですか。何々、13日の金曜日?聖がハマっているシリーズですね」

ナズーリン「大変だ、御主人!霧の湖で事件らしい!」

星  「何があったんですか?」

ナズーリン「何でも、ホッケーマスクをかぶった大男に襲われた、と!」

星  「・・・・・・」
推理物は初めて書きました。

何度か読み返しているのですが、矛盾点がないか、不安です。
tail
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コメント



0.210簡易評価
1.80名前が無い程度の能力削除
お麟

推理も…の…?いやまあ、ネタ臭が強い独特の雰囲気が楽しめました。
2.70奇声を発する程度の能力削除
こんな感じのも悪くないですね
3.70非現実世界に棲む者削除
>店に服の着替えを持っている人間
みすちーは妖怪だよ。

面白かったと言えば面白かったが、いらない部分がなければもっとよかった。
7.100リペヤー削除
推理小説で犯人は勘で当てる派がここに参上
トリックが不自然なのかどうかはあまり分からないですが、
みすちーvs霊夢のシーンが良かったです。
文字通り人間離れした冷静さのミスティアにぞくりとしました。
何はともあれ事件解決!面白かったですよ。