『引っ越ししました
お近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください』
ある日、アリス・マーガトロイドに届いた手紙は、ひょんな事から知り合った妖精三人組からの引っ越し通知だった。
知り合いが引っ越してしまったことに、一抹の寂しさを感じるアリスだったが、気を取り直し遊びに行くことにした。
昼食時も過ぎた昼下がり、アリスは地図を頼りに神社近くの森に来ていた。
神社の絵と目的地だと思われる樹の絵だけがかかれた簡素な地図だったが、
しばらく飛んでいると遠目に見ても、他の樹とは明らかに違う樹が見えた。
この分なら、おやつ時には着けそうだ。
おみやげに持ってきた里でも評判のおかしに、目を輝かせる三人の顔を想像し微笑むアリスだったが、
樹が近づくと、どうも様子がおかしい。
子供のような声と年がわからない女の声が言い争っている。
只ならぬ様子を感じ取ったアリスは、速度を上げた。
アリスは勢いよく樹の前の開けた場所に降り立った。
そして三人の妖精と言い争っていた相手を見て、このまま回れ右をして帰ろうか、という考えが一瞬頭をよぎる。
三人の妖精と言い争っている相手、それは他でもないスキマ妖怪八雲 紫。
彼女が妖精に詰め寄る姿は、弱い者虐めにしか見えない。
ルナチャイルドやスターサファイアは完全に怯えているし、2人の前に立つサニーミルクも腰から下が震えていた。
あまり首を突っ込みたくない状況だが、此処まで来て帰るのは何とも格好がつかない。
「あんた何をやっているのよ?」
「あらアリス、何って、ただ家賃を取り立ててるだけですわ」
アリスが来て少し落ち着きを取り戻したのか、妖精側から物言いがつく。
「家賃を払わなきゃいけないなんて聞いてません!」
「そもそも妖精が樹に住むのに、何で家賃を払わなきゃいけないのよ」
「お金なんて持ってないわ」
たしかに家賃を払う妖精なんて聞いたことがない。
そもそもお金を持っている妖精自体あまりいない。
もっとも紫もそんなこと百も承知だろう。
「私が住むことを許してるんだから、家賃を払うのは当然でしょ。
当然のことをいちいち口に出したりはしないわ」
案の定平然と言い放つ。
「お金がないのなら、そうね、体で払ってもらいましょうか」
さらには目を細めて、とんでもないことを言い出した。
「ちょっと、なに考えてるのよ!」
アリスは若干顔を赤くして、両者の間に割って入る。
自然と三妖精を庇う形になる。
そのことに紫は少し顔を顰めた。
「これは家主と借主の問題なのだから口を出さないでもらえるかしら。
まあ、あなたが代わりに払ってくれるというのなら話は別ですけど」
その言葉に、アリスは少し考える。
こんな山の中の樹1本、大した額ではないだろう。
この場は立て替えてあげて、3人には後から何かしてもらおう
……なにができるかは知らないけど、とにかく見過ごせないし。
「いいわ。私が払ってあげる。御幾等かしら」
相手に舐められないよう、胸を張り余裕すまして答える。
「これが請求書よ」
紫は一瞬驚いた顔をしたが、手に持っていた請求書をアリスに手渡す。
アリスは驚愕した。
「なにこれ! 高すぎでしょ!」
紙に書かれた数字は、アリスの想像していた金額よりも『0』が4個は多かった。
「あら、この樹は一応御神木、言うなれば高級物件なのよ。
さらに今までの延滞金に利子までついているのですから、高くて当たり前。
では早めに払ってくださいね。もちろん体でもかまいませんよ。うふふ」
壮絶に意地悪い笑みを浮かべると、足下に隙間を広げ消えていった。
残されたアリスは、ただ、唖然とするしかなかった。
八雲紫が帰ってから数時間が経過した。
「アリスさん、あとは私達でどうにかしますから……」
「どうにかするって……あなた達じゃどうにもしようがないでしょ」
申し訳なさそうにサニーは言うが、アリスは取り合わない。
とは言うものの良い考えがあるわけではない。
母を頼るという考えは最初に思いつき、即座に捨てた。
一人立ちして幻想郷に住んでいる以上、親の臑をかじるような真似はプライドが許さない。
かといって他に手があるかというと、ろくな方法が思いつかない。
もちろん若干の蓄えはあるし、裁縫などの手仕事を請け負えばそれなりの稼ぎにはなる。
だがそんなもので足りる額ではない。
ふとアリスが脇に目をやると、3人が不安と申し訳なさと一分の期待が入り交じった目でアリスを見つめている。
そんな3人の姿をしばらく眺め、アリスは深い深いため息を吐いた。
アリスの三妖精訪問からしばらくたったある日の朝、霊夢が境内の掃除をしていると、
霧雨 魔理沙がものすごい勢いで博麗神社に突撃してきた。
「たっ、大変だ霊夢! アリスが結婚しちまった!」
「……はっ?」
思わず手から箒を落としてしまう。
石畳に落ちた箒が、乾いた音を立てた。
そんな霊夢にかまわず、魔理沙は喋るのをやめない。
「今、里でアリスが出ていったっていう噂を聞いたんだ。
信じられなかったんだが、アリスの家まで行ったらもぬけの殻で……」
それだけで結婚と思うなんて、早合点過ぎるだろうと霊夢は思ったが、口には出さない。
今はただ魔理沙の話が終わるのを待つ。
「最近金に困っていたらしいし、きっとどこかの金持ちのところに嫌々ながら……」
話が飛躍しすぎているが、まだまだ魔理沙は止まらない。
「ああ何で気がついてやれなかったんだ。くそっ、こうしちゃいられない。
アリス! 待ってろよ。今助けに行くからな」
ここまで一気に言い切ると、霊夢に口を開ける暇を与えずに神社を飛び出していった。
「せわしないわね……それにしても……」
残された霊夢は、魔理沙が飛んでいった空を見上げた。
「……しょうがないわね」
そして誰に向かってでもなく呟いた。
アリス・マーガトロイドの朝は忙しい。
まだ外が薄暗い内に目を覚まし、軽く身支度を整えた後、アリスが使うには少し小さい台所で人数分の朝食を作る。
それが終わると、調理で使ったフライパンを左手に、お玉を右手で持つと、それをけたたましく打ち鳴らす。
「もう朝よ! いい加減起きなさい!」
もはや日課になった騒音に、夢の世界から強制送還された3人は、
寝ぼけたまま着替えると、のそのそと居間に下りてきた。
「「「おはようございますアリスさん」」」
「おはよう3人とも、さあ朝食にしましょ」
アリスは朝の挨拶する3人に席に着くように促す。
「うわぁ、おいしそう!」
テーブルに並ぶメニューをみて目を輝かせるサニー
そんな陽光のような笑顔に、アリスはそこはかとない幸せを感じていた。
結局アリスは自分の家を売ってお金を工面した。
当初売ったお金で家賃を支払い、残ったお金でしばらく借家を借りようと思ったが、
辺鄙なところにあるせいか、アリスの家はそれなりの値段でしか売れなかった。
支払いに殆どが消え、アリスは魔界に帰ることを真面目に考えたが、
ぜひ自分達のところに、という三妖精の誘いを受けてアリスと妖精の奇妙な生活が始まった。
「「「ごちそうさまでした」」」
「お粗末様でした。さあ急がないと仕事の時間に間に合わなくなるわよ」
アリスの声に、あわてて動き出す三妖精
これまでの家賃はアリスが支払ったが、これからの家賃は稼がなければならない。
あれやこれやと準備する3人を、アリスは微笑ましく見ながらも、
「ほら、さっさと行きなさい。あなた達がいると掃除もできないわ」
更なる追い打ちをかけた。
「パチュリー!」
神社を飛び出した後、魔理沙は紅魔館を訪れてた。
同じ魔女であるパチュリーなら何か知っているかも、と思ったのだ。
「アリスが!」
「騒がしいわよ」
「アリスがー! アリスがー!」
「騒がしいって言ってるでしょ」
魔理沙の頭を本の表紙で殴打するパチュリー。
角では無く表紙なのは、せめてもの優しさか、本を傷つけたくなかったからか。
隣に座っていたレミリアは、ふとそんなことを考えた。
「アリスがどうしたって言うのよ」
「実はかくかくしかじかで……」
「つまり家を売って姿をくらましたと」
パチュリーは早口でまくし立てる魔理沙の話から要点のみを抜き出す。
結婚云々に関しては完全に黙殺した。
「何か知らないか?」
魔理沙の問いにパチュリーは図書館の隅を指さす。
そこにはアリスの人形が、綺麗に並んでいた。
「急に預かってくれって持ってきたのよ」
「ほかに何か言ってなかったか!」
「何も言ってなかったわ。家を売ったのも今知ったのだし」
「そうか、じゃあ何か判ったら教えてくれ!」
魔理沙は妖精メイドをけちらしながら、来たときと同じ勢いで出ていった。
その姿に呆れつつ、パチュリーは隣に座っていたレミリアに猫撫声で話かける。
「ねえレミィ、買って欲しいものがあるの」
「それはお節介というものよ」
にべもなく拒否された。でもそれは予想済み。
パチュリーはショックを受けたように大げさに仰け反る。
「ひどい。妹様になら何だって買ってあげるのに、私にはマッチ棒一本買ってくれないのね」
わざとらしく椅子から転げ落ちて、座り込むパチュリー。
無論ねだっているのはマッチ棒などではない。
「最近は口を開けばフランがフランがって、あなたの愛は何処に逝ってしまったの」
さらには目元にハンカチを当てると、よよよ、と泣き真似まで始めた。
後ろでは小悪魔が、ああ可哀想なパチュリー様、とやはりハンカチを目に当てながら嘆いている。
もっとも口元がピクピク震えているあたり、役者としては三流だ。
「思えばあの紅い満月の夜、愛を囁かれた時から、何があってもあなたについていこうと決めたのに……」
ふと周りに目をやると、さっきまで気配すらなかったのに、
いつのまにかメイド達がにやにやと二人のやりとりを眺めていた。
レミリアの顔が紅く染まる。
「ああ、もう、わかったよ。買ってやる。買ってやるから
……おい、そこのメイド!」
レミリアは手近にいた金髪縦ロールのメイド、
確か新人でルー・チャンドラーなんて名前だったか、に声をかける。
「経理課のメイドをつれてこい!」
「経理課ってどこですか?」
「いいからとっとといけ!」
慌てて走り出したと思ったら、盛大にすっ転ぶ新人メイド。
泣き真似をやめて抱きついてきたパチュリーの頭を撫でながら、
新人教育はどうなっているのか、とレミリアは心の中で文句を言った。
アリス・マーガトロイドの午前は忙しい
「上海、あなたは食器の片づけ。蓬莱は中の掃除ね」
「シャンハ~イ」
「ホーラ~イ」
2体の人形に手早く指示を出す。
それぞれの仕事に向かう2体を見送ると、アリス自身は洗濯に取りかかった。
「さすがに4人分ともなると量も多いわ」
引っ越しの際に持ってきた洗濯機は1人用なので、最低でも2回に分けて洗わなければならない。
いっそ新しい洗濯機を買おうかなどと考えたが、うちにそんな余裕は無いか、と思い直し軽くため息をつく。
そんなこんなの内に一回目の洗濯が終わった。そのまま脱水機で脱水した後、外にかけたロープに一枚一枚丁寧に干していく。
「今日はいい天気ね。気持ちいいわ」
風に泳ぐ洗濯物を見ながら、なんとなく、こういう暮らしも悪くないかな、と思うアリスだった。
「はぁ、悪い人にだまされて」
「そうなんだ」
次に魔理沙が訪れたのは命蓮寺
ここの主である聖 白蓮はアリスと同じ魔法使いである。
魔界とも縁があり何か知っているかも、と魔理沙は考えた。
聖は目を瞑り、少し思案するが・・・
「申し訳ありませんが、何も存じません」
「そうか……」
「お役に立てずすみません」
「いや、いいんだ。何かわかったら教えてくれ」
そう言うと紅魔館の時とは違い、ちゃんと門まで歩いて出ていく。
門まで魔理沙を見送った後、聖は部屋に戻りしばらく瞑想に耽る。
やがて目を開けると、廊下に顔を出した。
「誰かいませんか?」
「は~い!」
聖の声に明るく答えたのは、少し前から命蓮寺で働いている妖精。
いきなり働かせてくれと訪ねてきたときには少し戸惑った聖だが、今では命蓮寺によく馴染んでいる。
最近ぬえと一緒にイタズラすることが聖のちょっとした悩みだった。
「すみませんが星達に、少し出かけてくる、と言ってきてくれませんか」
「は~い」
聖のお願いに元気よく駆けだしていく。
「廊下を走ってはいけませんよ」
「ごめんなさ~い!」
ドタバタという音と共に、全く反省の色が感じられない謝罪が返ってきた。
その背中を、まこと元気があってよろしい、と微笑ましく見送る聖。
だがその出で立ちからは、人越えたる者のオーラが只漏れしていた。
アリス・マーガトロイドの午後はのんびりしている。
午前中に家事を手際よく終わらせたアリスは、紅茶を飲みながら魔界通販のカタログを見ていた。
日用品から人形のパーツまで様々な物をそろえ、葉書一枚で幻想郷まで送ってくれるので、以前より大変重宝していた。
もっとも今はお金がないので眺めているだけ。それでもアリスは楽しんでいた。
「あっ、この服ルナに似合いそう。今度作ってあげようかしら」
アリスが目を付けたのは黒を基調としたゴシックロリータ系の服だった。
こんな服を買う余裕はないが、布を買う程度の余裕はある。
でも1人に作ってあげると、後の2人も欲しがるに違いない。
アリスはカタログのページをめくりながら、残りの2人に似合いそうな服を探し始めた。
「まあ! アリスさんが悪い妖怪に!」
次に魔理沙が訪れたのは、守矢神社。
困ったときの神頼み、と言うわけではないがここの巫女である東風谷 早苗とアリスはなぜか仲が良かった。
天狗の住処も近いし何か情報があるのではないかと考えたのだが、残念ながらはずれのようだ。
「まあ、そういうことだから何か解ったらよろしく頼むぜ」
飛び去る魔理沙。
「悪い妖怪、退治しないといけませんね」
それを見送ると早苗はにやりと笑った。
「出かけてきますから、神奈子様達をお願いしますね」
「わかりました」
返事をしたのは、ついこの間雇った妖精巫女。
巫女はやっぱり黒髪がいい、などと自分のことを棚に上げた理由で雇ったが、なかなかに信者受けも良い。
いずれは諏訪子様の巫女にでも……と早苗は考えていた。
「まずは文さんの所にでも行ってみますか」
新人巫女に後を任せ、早苗は楽しい楽しい妖怪退治に旅立つのであった。
アリス・マーガトロイドの夕方は戦争である。
「上海!」
素早く獲物の確保に向かう上海。
穫った! アリスは勝利を確信する。
「なっ!」
しかし確保する直前、横から伸びた手に獲物を浚われる。
アリスは相手の顔を凝視する。さすがは百戦錬磨の古強者。
ただの人間であるにも関わらず、動きにいっさいの無駄が無い。
技量は遙か上をいく、アリスは素直に認めるしかなかった。
「鶏肉のセールが始まるよ~!」
威勢の良い肉屋の声で、新たな開戦の狼煙が上がった。
多くの古参に混じって、アリス・マーガトロイドは商店街を駆け抜ける。
「疲れたぜ~」
幻想郷中を回った魔理沙だったが、結局手がかり1つ見つけることもできず、スタート地点の里まで戻ってきた。
「あら、魔理沙じゃない」
「へっ?」
振り返ると、いままで散々探し回っていた相手が、きょとんとした顔で立っていた。
手に持った大きめの籠の中には、肉や野菜が詰まっている。
あまりの展開に一瞬呆然とする魔理沙だが、頭を振って気を取り直しアリスに詰め寄った。
「怪我してないか! 私が来たからにはもう大丈夫だ!」
「なっ……何言ってるの魔理沙?」
「お前を無理矢理手込めにした奴はどこだ!」
「はっ!?」
アリスの返事も待たず、懐から八卦炉を取り出し周囲に向ける。
その姿に里の人々は、ママーあの人何やってるの? 見ちゃいけません、とか、
あれ最近よく見るマーガトロイドさんじゃない? 悪い女に詰め寄られてるのかしら?
などと囁きあっていた。
本人たちはひそひそ話のつもりなのだろうが、ばっちり聞こえていたアリスは耳まで赤くなる。
しかたなく魔理沙から少し距離をとるアリス。
「魔理沙ごめんね。もうあの子達が帰ってくる時間だから……」
適当なことを言ってとりあえずこの場から離れようとした。
しかしその言葉は魔理沙に予想外の打撃を与えた。
ショックのあまり数歩後ずさり震えの止まらない唇から声を絞り出す。
「あっ、あの子達、あはは……そーなのかー。子どもがいたのか」
「魔理沙?」
アリスの呼びかけにも反応せず、空を見上げて、ぶつぶつと独り言を続ける。
その目からは止めどなく涙が溢れていた。
「いつも一緒だったのに気づいてなかった私が悪かった。ごめんなアリス」
いつも一緒なら子供なんて出来ていないと気づいても良さそうだが、
今の魔理沙にそんなこと求めるのは不可能だった。
「お前のこと……好きだったぜ」
そう言うと、魔理沙はものすごい勢いで空に消えていく。
「なんなのよ」
アリスは最後まで訳が分からないまま、しばらく呆然と空を見上げていた。
「おーいアリス!」
釈然としないまま、帰路に就くアリスに呼び声がかかる。
「あら霊夢じゃない、どうしたの?」
「どうしたもこうしたも無いわよ。あんたね、困ったことがあったら相談してきなさいよ。
おかげで無駄に時間かかったじゃない」
「何のこと?」
「紫の事よ」
「ああ、そのこと。あはは、ごめんなさい」
目をそらして笑うアリス。
いかんせんお金が絡む話だけに、霊夢に相談、という発想自体無かったのだが、本人を前に言えるわけがない。
「まあ、もう大丈夫だから。紫は早苗や白蓮と協力して小町に引き渡しておいたわ」
要するに黄泉送り。
ちょっとやりすぎではないかと思うアリスだった。
「大体、あの辺の土地は神社の物なのよ」
「へっ、そうだったの!」
すっとんきょんな声を上げるアリス。
今明かされる衝撃の事実。
「じゃあ、家賃は霊夢に払うの?」
あの場所が神社の物なら、家賃は霊夢に払うのが道理だろう。
「いっ、いらない。アリスからお金なんて取りたくないし、
妖精から施し受けるほど落ちぶれちゃいないわ」
不労収入の魅力に、ほんの一瞬だけ心が揺らいだ霊夢だったが、ぎりぎりの所で踏みとどまる。
「あっ、そうだ。アリスの家なんだけど、紅魔館が買い取ったらしいわよ。
頼めば返してくれるんじゃない。なんなら私からレミリアに頼んであげようか」
一応紅魔館名義ではあるが、事実上の所有権はパチュリーにある。
まあ、そのことを霊夢が知るはずもない。
「う~ん」
確かに頼めば返してくれるだろうが、
それはそれでなんとなく心に引っかかる物を感じ、アリスが悩んでいると……
「アリスさ~ん」
遠くからアリスを呼ぶ声とともに、サニーミルクが近づいてきた。
飛んできた勢いそのままに、アリスの胸にダイブする。
「ちょっと!」
顔を赤くするアリス。若干嬉しそうでもある。
「あっ、サニーずるい」
「霊夢さん、こんにちわ」
後ろからルナチャイルドとスターサファイアもやってきた。
なぜか2人はメイドと巫女という出で立ちだ。
「あんたら、その格好なんなの?」
「これですか?」
「職場の服装なんです」
霊夢の疑問に答える2人。
いかがわしい所で働いているんじゃないか、仕事先を聞いて潰すか、
そんなことを悶々と考えていた霊夢に、アリスが申し訳なさそうに声をかける。
「霊夢、その……さっきの話だけど」
「ああ、気にしないで。あなたの好きにしなさい」
「ありがとう霊夢。さあ3人共、一緒に帰りましょ」
3人に囲まれて霊夢から離れていくアリス
「まるで母親みたいね」
その後ろ姿に、霊夢は和やかに微笑む。
「さて、後は……」
そして4人の姿が見えなくなるまで見送ると、霊夢は里の方に向かった。
「ぐびっぐびっぐびっ、ぷは~! 女将! もう一杯!」
「魔理沙さん、少し飲み過ぎですよ」
ビールを一気飲みして、さらに次を要求する魔理沙を着物姿の夜雀が窘める。
「そうよ魔理沙、いい加減飲み過ぎよ」
魔理沙に付き合って飲みにきていた霊夢も同調する。
しかし魔理沙は手を伸ばし強引にビール瓶を奪い取ると、ラッパ飲みする。
「か~、うるせーこれが飲まずにいられるか。まさかアリスに子供が……子供が……うおぉぉぉぉぉぉ」
今度は盛大に泣き出す魔理沙。
それを見て、霊夢と夜雀は顔を見合わ、同時にせやれやれと首を振る。
実のところ、先ほどからずっとアリスに子どもはいないと説明しているのだが、
「そんな慰めいらねえぜ」
などと言ってまったく信じようとしないのだ。
まったく思い込みとは恐ろしいもの。誤解を解くにはまだしばらく時間が掛かりそうだった。
「はぁ、まったくアリスといい魔理沙といいなんでみんなこう手間が掛かるのかしら」
とある八目鰻の屋台で、面倒見のいい博麗神社の巫女はため息混じりに愚痴を言った。
「朝よ! 起きなさい!」
今日もお約束となった金属音が妖精の樹に響きわたる。
もう家賃を払わなくてよくなったとはいえ、三妖精は仕事を続けていた。
なんでも見てて面白かったり、友達ができたり、可愛がられていたりするらしい。
まあ、理由はどうあれ働くことは悪いことではない。
3人のそんな変化を快く思いながら、まず新しい洗濯機を買おう、とアリスは密かに考えるのであった。
ここは彼岸、閻魔の裁判所
「なんでこんなバカな真似をしたんですか」
「藍が、寝てばかりいないで少しはお金でも稼いできたらどうですか、なんていうから……」
「寝てても稼げる大家業を思いついたと。あなたアホですね」
「ひどい!」
「体で払えと脅した、という供述もありますが」
「働いて払ってって意味よ~」
「やはりあなたはアホですね。
お金に関してはしばらくここで強制労働に励んでください。若干ながら給金もでますから」
「そんな~」
悪くない…いや良い
>アリスの家まで行ったらものけの空
もぬけの殻の間違いかと
そし魔理沙死亡フラグたっとるww
面白かったです。もうちと負債返済らへんで引っ張った話も読みたかったかも。都会派魔法使いの農家による土仕事とか弁護士つけて紫と法廷で争うとか。この辺は読んでみて膨らんだ妄想なんで気になさらず。
なんとなく助言を与えつつ頑張っていく様子を眺めて楽しむ、チェシャ猫のようなイメージが紫にはあるので。
でもこの家族って感じが良かったです。
もっと有ってもいいと思うこの組み合わせ。
面倒見の良いアリスが可愛いです。
これはいい家族。きっとアリスはいいママになります。
そして魔理沙…頑張れ!
でも魔理沙……うん、可愛いね!
三妖精とアリスの絡みもいい。
霊夢、早苗、白蓮、パチェのそれぞれの働き?も楽しかった。
パチェと小悪魔の三文芝居も最高でしたw
続編期待してます。
おいしゅうございました。
まぁ、笑わせてもらいましたw
アリスさんのコーヒーを飲んでるルナとかいいなァ
働く三妖精と保護者アリス可愛いです
可愛すぎる
幻想郷はこのぐらいずれているぐらいがちょうどいいですね。