・健全です
・シリーズ物ですが前後作品を読む必要は全くありません
・なんなら好きなキャラの出てくるページだけ読んでいただいても結構です
幽々子と妖夢 今はまだこのままで
草木も眠る丑三つ時、ふと目が覚めたので庭に出てみる。特に理由があったわけではないが、強いて言うならば……惹かれたからだろうか。
「……幽々子様?」
「あら起こしちゃった?」
「いえ……なんだか起きなきゃいけない気がしただけですので」
後ろから妖夢に声をかけられる。私と同じく寝巻きのままで、その上半ば眠ったままである妖夢はそれでも剣だけはしっかりと握っている。
「どうかしましたか?」
「……」
「幽々子様?」
「台所から適当にお酒と摘みを持ってきてちょうだい」
「はぁ……」
妖夢は覚束ない足取りで台所に向かう。その間に私は庭の西行妖を眺める。この咲かない桜はどうにも私の心を乱す。感情がコントロールできなくなる。私が私でなくなる。
「幽々子様?」
「……なにかしら?」
「何って……えーっと……お酒とお団子を持ってきました……よ?」
「ありがとう妖夢。さ、一緒に食べましょう」
私が無意識に西行妖に手を伸ばしてゆっくり近づいている所に、妖夢が反対の手を取って引き止めた。咄嗟の事だったので上手く表情を繕えていただろうか。妖夢に連れられて縁側に腰を落とす。
「幽々子様」
「うん?」
「いえ……なんでもないです」
一瞬妖夢の意識が手にいった。そういえば手を握りっぱなしだが……私は離そうとはしなかった。今は離したくなかった。
それからは二人で暫くの間お酒を飲みながらお団子を摘む。妖夢は何度か口を開きかけては閉じ、結局最後まで会話はなかった。
「じゃあ片付けてきます。そろそろ時間も遅いですし布団に戻らないとダメですよ」
そう言って立ち上がろうとする妖夢だが、私が手を握ったままなので動けない。
「……幽々子様?」
「妖夢も……いつか何処かへ行ってしまうの……?」
思いがけずか細い声が出た。私には不安がある。妖夢は半人半霊、普通の人間よりは寿命は長いが半分人間なら死ぬ余地がある。それに……
「そんなことはないですよ。幽々子様が望む限り、ずっとお側にいます」
「……同じことを言うのね」
「えっ?」
「かつて同じことを言って最も私の側にいた人は……私を置いていなくなってしまったわ」
「……」
普段言わないこともついつい口走ってしまっている。妖夢を困らせるのは楽しいが、こういう形ではない。……ここは誤魔化してしまうべきだ。そうすれば明日いつも通りに過ごせる。
「な~んてね。冗談よ」
「私には……先代が何を思っていなくなったのかはわかりません」
「……妖夢?」
「だから私が何を言っても説得力はないのかもしれません。でも!」
そう言って妖夢が私を抱きしめる。
「私は幽々子様の側にずっといられたらと思っています」
「……それって何の解決にもなってないわよね?」
「……」
「……半人前ね~」
思わず笑ってしまう。でも作り笑いではなく自然に笑えた。
「こういう時に主人の求める答えをちゃんと出せるようにならないといけないわよ」
「面目ないです」
「言葉が不得手ならせめて態度で示してちょうだい」
「はい……えっ?」
妖夢の手を掴んだまま自分の寝室へ向かう。
「ゆ、幽々子様!?」
「ずっとそばに居てくれるんでしょ?だったら今日は添い寝でもしてもらおうかしら」
「いや、えーっと、そういうつもりじゃ」
「えーコホン……妖夢、寂しいから一緒に寝てくれないかしら?」
「……わかりました」
寝室の扉を開け、共に布団に入りながら思う。今度こそ私の従者を手放さない。
・シリーズ物ですが前後作品を読む必要は全くありません
・なんなら好きなキャラの出てくるページだけ読んでいただいても結構です
幽々子と妖夢 今はまだこのままで
草木も眠る丑三つ時、ふと目が覚めたので庭に出てみる。特に理由があったわけではないが、強いて言うならば……惹かれたからだろうか。
「……幽々子様?」
「あら起こしちゃった?」
「いえ……なんだか起きなきゃいけない気がしただけですので」
後ろから妖夢に声をかけられる。私と同じく寝巻きのままで、その上半ば眠ったままである妖夢はそれでも剣だけはしっかりと握っている。
「どうかしましたか?」
「……」
「幽々子様?」
「台所から適当にお酒と摘みを持ってきてちょうだい」
「はぁ……」
妖夢は覚束ない足取りで台所に向かう。その間に私は庭の西行妖を眺める。この咲かない桜はどうにも私の心を乱す。感情がコントロールできなくなる。私が私でなくなる。
「幽々子様?」
「……なにかしら?」
「何って……えーっと……お酒とお団子を持ってきました……よ?」
「ありがとう妖夢。さ、一緒に食べましょう」
私が無意識に西行妖に手を伸ばしてゆっくり近づいている所に、妖夢が反対の手を取って引き止めた。咄嗟の事だったので上手く表情を繕えていただろうか。妖夢に連れられて縁側に腰を落とす。
「幽々子様」
「うん?」
「いえ……なんでもないです」
一瞬妖夢の意識が手にいった。そういえば手を握りっぱなしだが……私は離そうとはしなかった。今は離したくなかった。
それからは二人で暫くの間お酒を飲みながらお団子を摘む。妖夢は何度か口を開きかけては閉じ、結局最後まで会話はなかった。
「じゃあ片付けてきます。そろそろ時間も遅いですし布団に戻らないとダメですよ」
そう言って立ち上がろうとする妖夢だが、私が手を握ったままなので動けない。
「……幽々子様?」
「妖夢も……いつか何処かへ行ってしまうの……?」
思いがけずか細い声が出た。私には不安がある。妖夢は半人半霊、普通の人間よりは寿命は長いが半分人間なら死ぬ余地がある。それに……
「そんなことはないですよ。幽々子様が望む限り、ずっとお側にいます」
「……同じことを言うのね」
「えっ?」
「かつて同じことを言って最も私の側にいた人は……私を置いていなくなってしまったわ」
「……」
普段言わないこともついつい口走ってしまっている。妖夢を困らせるのは楽しいが、こういう形ではない。……ここは誤魔化してしまうべきだ。そうすれば明日いつも通りに過ごせる。
「な~んてね。冗談よ」
「私には……先代が何を思っていなくなったのかはわかりません」
「……妖夢?」
「だから私が何を言っても説得力はないのかもしれません。でも!」
そう言って妖夢が私を抱きしめる。
「私は幽々子様の側にずっといられたらと思っています」
「……それって何の解決にもなってないわよね?」
「……」
「……半人前ね~」
思わず笑ってしまう。でも作り笑いではなく自然に笑えた。
「こういう時に主人の求める答えをちゃんと出せるようにならないといけないわよ」
「面目ないです」
「言葉が不得手ならせめて態度で示してちょうだい」
「はい……えっ?」
妖夢の手を掴んだまま自分の寝室へ向かう。
「ゆ、幽々子様!?」
「ずっとそばに居てくれるんでしょ?だったら今日は添い寝でもしてもらおうかしら」
「いや、えーっと、そういうつもりじゃ」
「えーコホン……妖夢、寂しいから一緒に寝てくれないかしら?」
「……わかりました」
寝室の扉を開け、共に布団に入りながら思う。今度こそ私の従者を手放さない。