Coolier - 新生・東方創想話

夢想麗人

2011/01/06 11:19:22
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注意

・ほのぼのレイマリレイ
・注意を書くほどの注意すらない
・つまりそういうこと













『霊夢! 霊夢っ!!』
 暗い、暗い。
『霊夢! 待ってくれ! 霊夢!!』
 暗い、暗い。
 どうしてここはこんなに暗いんだろう。
 理由なら考えなくても分かる。彼女がいないからだ。
『待ってくれ! 待って、置いてかないでくれ!!』
 じゃあ何で彼女はいないんだろう。
 その理由を考える。頑張って、一生懸命考える。が、答えは出ない。
 ただ、ここは酷く暗い。
『霊夢! 霊夢!!』
 暗い、暗い。
『霊夢っっ!!』
 暗い、暗い。



  ―

「――――霊夢!!」
 叫んで、手を伸ばして、辺りの明るさに顔を顰めた。
 朝。とても気持ちのいい目覚めとは言いがたいが、目だけは良く冴え渡っている。これでは二度寝などという感じではない。
「…………はぁ」
 現実に伸ばしてしまっていた手を下ろす。そして、自分の手を見つめてみた。
「……」
 特に何かあるわけでも無い。いつも通りの私の手だ。強いて言うなら、寧ろそれが問題だった。いつもこの手は彼女を引き止めることが出来ないから。
「最近良く視るな。この夢」
 少し疲れているのかも知れない。今日のような――――霊夢がいなくなってしまう夢を視るのはもう珍しいことではなかった。三日に一回、悪ければ毎日同じような夢を視て、うなされて起きる。だから、ここ最近は寝起きは最高でも目覚めは最低に最悪で、どうにも寝不足に近い状況になっている。しっかり寝てはいるんだけど。
 まあ、永琳に聞いてみたところ夢を視てるうちは未だ良いらしいから気にしてるほど悪くは無いのかも知れない。
「…………あー、起きるぜ」
 一言、呟いてみてから体を起こした。いやに体がだるい。それに喉もからからだ。
 立ち上がって水を一杯飲んだ。喉の渇きは収まらなかったが気にしないことにする。
「…………さぁて、今日も一日頑張りますか」
 取り合えず着替えた。それから朝ご飯を食べる。勿論和食だ。私は和食以外の朝ご飯なんて認めないのぜ。と、言ってみるテスト。
 片づけて、今日は一日どうやって過ごそうか考える。
 まず、部屋を少し掃除しよう。流石に埃が酷くなってしまって本を置いたり取ったりする度に咳き込む始末だ。これ以上ほおって置いたらむきゅーになってしまう。それから、昨日の研究の続きだ。
「午後は霊夢のところだな」
 大して深く考えずともそんな答えを出してしまう時点で駄目なような気もするがそんなことはどうでも良い。ただ私はあの夢が本当になることを、その場に立ち会うことすら出来ないかもしれないことを恐れているだけなのだから。



  ―

「最近良く来るわね」
 昼過ぎ、というよりそろそろ日も暮れようかという頃。私は霊夢と並んで縁側に座り一緒にお茶を飲んでいた。
「…………そうか?」
 湯飲みを見下ろしたまま答えてから、しまったと思った。霊夢は勘の鋭い奴だ。こんな態度では直ぐに何かあると気が付くだろう。
 顔を上げる。そっと霊夢の顔を覗き見るといつも通りの無表情だった。相変わらず何を考えているか読めない。まあ、霊夢に関しては読めなくても良いけど。
「そうよ」
 自覚が足りないんじゃない? と霊夢は薄く笑うと私にでこぴんをしてきた。びしっ、と実に小気味のいい音がしたがそこは私のおでこだ。そんな気持ちの良い音なんかしなくて良い。
「痛っ! 何すんだよ」
「別にー」
 霊夢は私の抗議の声を風のように聞き流すと湯飲みをその場に置いて鳥居の方へ駆けて行った。
 どうしたんだろうとリズム良く走る霊夢を見守っていると、霊夢は懐から何かを取り出して叫ぶ。
「神霊『夢想封印』!!」
「あやややや」
 どーん。近くに来ていたらしい天狗が空高く舞い上がった。
「って、霊夢何して――――」
「夢符『封魔陣』!!」
「わほーい」
 どーん。その辺にいたらしい鬼が空高く舞い上がった。
「だから、何してるんだって――――」
「境界『二重弾幕結界』!!」
「って、きゃーー」
 どーん。ただ歩いていただけらしいアリスが空高く舞い上がった。
 取り合えず目が合ったから片手を挙げて挨拶しておいたが見えただろうか。
 一仕事終えた霊夢は歩いて私の隣に戻ってくるといつもの無表情になっていった。
「ねえ、今日は泊まっていくでしょ?」
 湯飲みを落としそうになった。別に霊夢の家に泊まるのは初めての事ではないが、今日のように霊夢が誘うことは無かった。大概は霊夢の家で晩飯をご相伴に預かった私が疲れてそのまま泊まる、というのが普通だ。
「あ、ああ。それでも良いけど」
「そ、じゃあお夕飯の支度してくるわね」
 そう言い残すと、霊夢は襖の向こうに消えた。
 さっきの行動といい、今の態度といい、今日の霊夢は何か変だ。



  ―

 夕飯は霊夢お手製の肉じゃがだった。超美味かった。もし将来結婚するなら霊夢が良いとかそういう冗談はさて置き、実際霊夢の料理は美味い。味の好みが私と近いのもある。
「偶には屋根の上から見る月も乙だと思わない?」
 私が激しく同意したので今日の晩酌は神社の屋根の上でになった。
 何でもないただの居待ち月だけど、霊夢と二人並んで見上げているとやたら輝いて見えるから困る。
「ほらよ」
「ん、ありがとう。ほら」
「おう、ありがとう、だぜ」
 お互い勺をし合って笑いあう。皆でわいわいやる宴会も良いけど、偶には二人きりというの悪くない。いや、寧ろ――――
「…………で?」
 私の注いだ4杯目に口をつけながら霊夢は尋ねてきた。質問の内容なんて口にしなくても分かる。
「……………………別に。お前が気にする程度のことは何一つ起こってない」
「ふーん、そう?」
 それにしても白々しい。いつもの霊夢らしくない…………いや、いつもは何も言わないか。相変わらずの何でも知ってる感は寧ろ敬服に値するが、兎に角。
「本当だぜ?」
「へえ、そう」
 信じてない。と言うよりはある意味私を信頼していると言ったほうが正しいか。霊夢はどこか呆れた様に溜息を吐いた。少し小馬鹿にしたような、子供の言い訳を聞き流す大人のような、そんな態度だ。
 話はそれっきりのようだった。無言で杯を傾ける。霊夢もまた無言で手持ちの杯を飲み干した。飲み干したから注いでやる。
 しかし、私たちは本当に何なんだろうな。仲間か、親友か、家族か。そのどれだろうと変わらない。変わらないが、そのうちのどれなのか分かれば、こうして並んで酒を交わす時の空気や、私の気持ちに、名前位は付けられるのだろう。
「ねえ、魔理沙」
「……んー?」
 考えても答えのでない問いだと、分かっているのにぞれでも繰り返してしまうのは、やはりあの夢の所為だ。実際、あの夢を見出してから霊夢との関係を気にするようになった。霊夢と私はこれからはどんな関係でいられるか、離れ離れになってしまわないか、それだけが心配で。結局、小心者なんだな、私は。
 自嘲気味に哂う。これだけ近くにいる人なのに、心は遠いもんだ。それが少し、寂しくもある。
「魔理沙は、どこにも行ったりしないでよね」
「突然何だよ、霊夢。私がどこに行くって言うんだよ」
 いつの間にか杯は空になっていた。霊夢の表情は読めない。あーあ、私も勘が鋭ければ良いのに。
「最近夢を見るのよ」
「…………へえ」
「私たちが離れ離れになる夢」
 奇遇だな、とは言わなかった。ただ黙って月を見上げていた。
「…………私は、どこかに行かなきゃならなくて、月も無い暗い夜に飛んで神社を出る。すると、あんたがついて来るのよ。箒も持たず、走りながら私の名前を何度も呼ぶの」
『霊夢! 待ってくれ! 霊夢!!』
「あまりにも必死で、その必死さが怖くて、私は立ち止まろうとする。でも出来ない。止まるどころかどんどん引きずられて、魔理沙との距離が離れていっちゃう」
『待ってくれ! 待って、置いてかないでくれ!!』
「どんどんどんどん離れて、暗闇に飲まれてあんたの姿が見えなくなって、…………目が覚める」
『霊夢っっ!!』
 不意に霊夢に抱きしめられた。しがみつく様にきつく腕を掴まれ、胸元に頭を押し付けられ、私は押し倒された。吃驚しすぎて杯を落とすところだった。
「そんな夢を見た日に限ってあんたがやってくる。夢が本当だったかもしれないと、不安で頭がぐるぐるしていると、あんたがやって来て笑いかけてくれる。それでやっと私は安心できるけど、夜になればまた同じ夢を見る。だから…………っ!」
「…………はっ」
 ああ、お前も同じだったんだな。お互い同じ事を恐怖に感じ、同じ事を夢想する。なんだかそれは、とても滑稽だ。私は心の中だけで大爆笑した。それから、私を放すまいと強く、強く腕を掴む霊夢を、逆に抱きしめ返してやる。
「ひゃっ」
「あのな、霊夢。私も同じ夢を見てたんだ。お前がいなくなる夢。どんなに手を伸ばしても、どんなに声を枯らしても、追いつくことも引き止めることも出来ない夢。心配で心配でほとんど毎日会いに来ちゃってたけど、でももうそれも良いな」
 腕の霊夢は戸惑ったように私を見返している。それに私は満面の笑みで応えてやった。
 だって、今私の腕の中に霊夢がいる。あんなに手を伸ばしても届かなかったのに、現実ではこんなに簡単に捕まえれた。なら、良いじゃないか。
「霊夢、今日は一緒に寝ようぜ。そしたらこんな夢も見なくなる。そんでこれからは私も毎日神社に来てやるよ」
「魔理沙…………」
 霊夢はもう半泣きだ。私も泣きたい。でも、ここで泣いたら折角の台詞が台無しだ。びしっと決めたんだから最後まで格好つけたい。
 しかし、そんな私の思惑もこいつの前では実に無力。私の考えを読み取ったわけでもあるまいのに、見事に打ち破ってくれる。
「? れい、むぐっ!?」
 あれ? 私今キスされてる? キスされてる?
 顔が異様に近い。唇に何か柔らかいものが触れている。私と霊夢の身体が異常に密着してる。
 あー、これはキスですねえ。完全に。
 ……………………What's?
「ぷはっ、魔理沙」
「はははは、はい! なな何ですか、霊夢さん!」
「私、あんたのこと大好きだわ」
 頭が霊夢の言葉を理解するのはおよそ十秒要した。脳味噌に言葉が染み渡り、途端に発火。一瞬で血が沸騰して何も考えられなくなる。
 霊夢の事以外は、何も。
「そそそそうかぁ! 実は私も霊夢のこと好きだ、ぜ!」
「そう、良かった」
 ふわりと、私に笑いかけてくる。目尻には涙が光っていたけど、それも含めて彼女の笑顔は眩しかった。
 あ、あれ? 霊夢ってこんな可愛かったっけ? 完全に混乱してしまった私を置いてきぼりに、霊夢はまた顔を寄せてきた。勿論、拒む理由が存在しない。
 私たちは暫く月の下で、キスを交し合った。



  ―

「で、何でその話を私にするのかしら」
 気持ちの良い昼下がりだと言うのに、何故この人形遣いはこんなに怒ってるのか。私には全く分からない。
「いや、お前の愛しのパチュリーとの参考にしてくれたらと思ったんだ」
「帰れっ!!」
 言われた通りに家へ一時帰宅した。あんまりからかい過ぎると本気で怒るからな、あいつ。
 本を数冊持って、また飛び立つ。行き先は…………決まってる。
「よっす、また来たぜ」
「…………いらっしゃい、魔理沙」
 幻想郷は今日も平穏だ。
「いつかここに来て、『ただいま』って言いたいぜ」
「っ! ……馬鹿////////」


どうも、虎です
二回目の投稿となります、前作もよろしく

ただ甘いだけのレイマリレイが書きたかっただけという、gdgdもの
それでも読んでくれてありがとうございます
タイトルはいつもフィーリングで付けているので、あまり気にしないでくださいww

いつか長めのシリアスなやつも投稿したいですww

誤字脱字、その他の意見ともどもガンガン言って下さって結構です
ここまで読んでくれてありがとうございました
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コメント



0.820簡易評価
13.100KY削除
これはひどいww
16.100名前が無い程度の能力削除
あまあまレイマリごっそさんです
魔理沙ったら和食派ね!
18.100名前がない程度の能力削除
すごく良かったです!!

魔理沙以外に容赦無い霊夢さん素敵