Coolier - 新生・東方創想話

人形使い、その情熱的愛。

2011/04/16 20:13:35
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 幻想郷は今年もリリーホワイトが飛びまわり、無事に春を告げていったわ。
 里では毎年恒例の桜祭りが開かれて、私ことアリス・マーガトロイドも
ご招待されたの。
 私がお祭りで見せる人形劇は里の可愛い子供達にも大好評で、それが周りの
大人にも認められたのね。
 今日も私の目の前で、子供達が目を輝かせて劇の始まりを今か今かと
待っているわ。
 フフフ、今年はちょっと頑張って、新作の脚本を作ったの。
 子供達に真実の愛とその情熱の大切さを教え諭す、教訓的要素を盛り込んだ
号泣率153.74%(当社比)の超純愛ラブストーリーよ!

「それでは、人形劇のはじまり、はじまり~。題は『黒い魔法使いと七色の
 人形使い』ですっ!」

 パチパチパチッ、と子供達が一生懸命拍手をしているわ!
 そんなに楽しみにしてくれていたのね……うふふ、すぐに感動の渦に飲み込んで
あげるから、覚悟していなさい!

「むかしむかし、あるところに黒い服を着た魔法使いの女の子がいました。
 その魔法使いの女の子は、とっても明るくて細かいことを気にしない、
 それでいて頑張り屋さんなステキな子でした」

 私は魔理沙人形を愛らしく動かす。
 ふふふ、本当に、魔理沙を私の思うままに動かしてみたいわ……。

「そんな魔法使いの女の子を、影でじっと見ている女の子がいます。その子はいつも人形を
 抱いていて、不思議な力で人形を踊らせたら、右に出るものはいません。周りの大人たちは
 その子を人形使いと呼んで、とても可愛がっていました」

 これはもちろん、ワ・タ・シ……。

「人形使いの女の子は、魔法使いの女の子を見るととても切なくなって、恋に落ちてしまった
 ようです。毎日見ているだけで辛かった人形使いの女の子は、その日、思い切って
 魔法使いの女の子に告白することにしました。でも、呼び出した魔法使いの女の子を
 前にすると、心臓が破裂しそうに早く動いて、何も言えなくなってしまいました。
 手先は器用でも心が不器用な人形使いの女の子は、魔法使いの女の子に抱きついて
 押し倒しました! そして不思議な力を使って魔法使いの女の子を動けなくして、
 口づけを……」
「なぁにそれ、単なる変態じゃない」

 クライマックスを迎えたのに、高圧的に難癖を入れてくるバカが現れたわ!
 もう、台無しじゃない!
 仮想現実とは言え私の情熱が最高のボルテージにまで昇り詰めていたのに、
一体どこのクソガキなのっ!?

「毎年、アナタの人形劇は楽しみにしていたのに。今回は駄作中の駄作ね。
 ねぇ、咲夜?」
「本当に、その通りでございますわ、お嬢様」

 レミリア・スカーレット……ッ!
 そしてその犬、十六夜咲夜……ッ!
 あいつら、私の人形劇を毎年見てたの? まるで気がつかなかったわ……。
 それにしても、なによあのカリスマブレイク……両手にリンゴ飴と綿菓子なんかもって、
その辺にいるガキどもと何にも変わんないじゃない!
 しかも持参のテーブルと椅子なんか勝手に広げて、空気が読めな過ぎるわ!
 あ、日傘持ちの紅美鈴が、隙をついてレミリアの綿菓子をつまんでいるわ!
 そして、咲夜の鋭い視線に気づいて、顔が蒼白になって硬直した!
 ざまぁないわ、これで今月の給料は無しね!
そう言えば、あの暗黒図書館女は来ていないのね。まぁ、それはそうよね。
あのネクラが人ごみの中に入ったら、すぐ酔って具合が悪くなるもの!
今ごろ1人で本を読んでニヤついているのね、本当に負け犬みたいだわ!
勝ちよ、私の勝ち! 魔理沙の嫁にふさわしいのは、人生の勝利者であるこの私よ!

「それにしてもアリス、白昼堂々とそんな淫らな劇を披露したら、子供達の教育上
 良くないと思わないの? お嬢様がおっしゃるとおり、駄作以外のナニモノでも
 ないわ。別な劇に代えないと、そのうち周りの大人に怒られるわよ?」

 大きなお世話よ、このダメイドがっ!
 世の中にはね、周囲の評価を振り切って真実を伝えないといけないときがあるの!
 私は屈しないわ! 私が信じる愛を、情熱を、幼く純粋な魂に伝えて明るい未来を
創り出す礎にして欲しいの!

「ふふふ、アナタたちのようなお高く気取った人たちに、この劇の価値はわからないわ。
 甘ったるい理想ばかりが先走りして、等身大の愛がまるで理解できないようね。
 見なさい、子供達は私の言わんとしているところをすぐに感じ取っているわ!」

 さあブルジョワども、子供達の希望に満ち溢れた笑顔をその目に焼き付けるといいわ!

「女の子が女の子に恋するなんて、ありえないよね~?」
「ホントホント、超~キモいよね~?」

…………。

「おい、そこのガキども……真実の情熱と愛を叩き込んでやるから、歯ァ食いしばれ!」

 私は子供達に、心の危機が訪れていると直感したわ!
 そして、この子達の目を覚まさせるために、この鉄拳が必要であることも!
 叱られもしない、殴られもしないでペットのようにおだてられて育ったガキは、将来
ロクでもない大人に育つ!
 これは教育的指導よ! 私個人の感情なんて、微塵もないわ! あるとしたら……それは
子供達の成長を願う、私の情熱的愛! 
 私は重力によってパンチの威力が損なわれないように、あらゆる運動の中で最もエネルギーの
ロスが少ない落下運動による渾身のパンチを放つため、地面を蹴って宙に跳びあがった!

「さぁ受けなさい、私の愛を!」
「やめなさい、おとなげない!」

 視界の死角から声が聞こえて、私は飛んできた大太鼓に撃ち落とされたの。
 私は人形劇の舞台を巻き込んで背中から地面を滑り、屋台にぶつかって焼きソバまみれになったわ!
 気がつくと、目の前には見覚えのある腋が……。

「博麗霊夢! アナタがどうしてここにっ!?」
「ちょっとアンタ、どこを見て私と判断したの? それより、私がいて当たり前でしょ?
 お祭りは神様に祈りや感謝を捧げる行事なんだから、巫女である私がその儀式を毎年任されて
 いるのよ。アンタだっていつもお祭りに来てるから、知っていると思っていたけど?」

 全然知らなかったわ。ただ遊びに来てお酒を飲んでいくだけだと思ってた。
 だって、普段が普段だから……。

「あんまり関わりたくないから首を突っ込まないでいようと思っていたけど、子供に手を
 出すのは見ていられないわ。アンタ、そのうち出入り禁止になるわよ? 気をつけなさい」

 な、なによその上から目線の説教は……。まるで私が悪人みたいじゃない!
 もしかして、レミリアたちもこの愛と情熱の使者である私を見下して……

「お嬢様、お口直しにお茶でもどうぞ」
「気が利くわね、咲夜……」

 お茶を飲んでる……なぁに、あの無関心ぶり! 傍観者ぶり! ものすごい腹立つ!

「……う、うーっ! う――っ!」
「うふふ、苦いですよね? 甘いお菓子が続いたときは、それぐらいが丁度いいのですよ?」

 咲夜に変なお茶を飲まされて、涙ぐんでる……。
 そしてあのダメイドが至福の笑みを浮かべている!
 レミリア、それは咲夜の謀略よ! あなた、慰み者にされてるわよっ!

「ちょっとアンタ、人の話聞いてるの?」

 あ、霊夢が目の前にいて気がついたけど、魔理沙がいない!
 悔しいけど、魔理沙はいつも霊夢の近くにいるから、絶対お祭りにも来てるはず!

「霊夢、魔理沙はっ!? 私の魔理沙はどこっ!?」
「ホント、聞いてないのね……。魔理沙はお祭りには来ていないわ。いつものことだけど。
 お腹が痛いとか熱が出たとかツヤツヤした顔で言って、なんだかんだ理由をつけて
 避けるのよ。里自体に、あんまり来たくないみたいね」

 あの明るい魔理沙が、お祭り嫌い……? そんなはずはないわ! きっと、何か
人に言えない理由があるのよ! 今頃暗い家の中で、1人で寂しくて、泣いているはずよ!
 そんな時こそ、恋を成就させる絶好のチャ……いや、親友として慰めてあげないといけないわ!
 どんな慰め方を、うふふふふふふ……やっぱりスキンシップが一番ね!
 だったら、こんなところで暢気に人形劇なんてやってる場合じゃないっ!

「人形劇は中止! 中止よ! 私は愛のために1人の少女を救いに行かなければならなくなったわ!」
「中止も何も、舞台も人形もメチャクチャで続行不可能だと思うけど……」

 霊夢が何か言ったけど、そんなことを気にしている暇はないわ!
 私は天狗の力を授かったようなスピードで、魔理沙の家がある森へ走ったの!

                   ★☆★☆★

「ああ、魔理沙、魔理沙魔理沙、魔理沙魔理沙魔理沙、魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙ぁああああああっ!」

 暗い森を全力疾走していると、ようやく魔理沙の家が見えてきたわ!
 待っていて、魔理沙! アナタの心の隙間とかいろんな所の隙間は、私が埋めてあげるわ!
 満たしてあげるわ! 注ぎこんであげるわ! いや、むしろ満たして、注ぎ込んで!

 私はノブが引きちぎれそうなくらい力を込めて、ドアを開けたの!

「魔理沙ぁあああああああ! 季節はずれのサンタクロースが今ここに、愛をたくさん抱えて
 やってきたわよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「おー、アリス! いらっしゃい!」

 魔理沙は、私の想像とは裏腹にいつもどおりの朗らかな笑みを浮かべていたわ……。
 コーヒーを淹れて、なんだか凄くくつろいでいる……。
 ん、カップが2つ……一体誰、誰が私の魔理沙を奪い取ろうとしているの!?
 私は、そのカップの先にいる人物に視線を送った……そこにいたのは……
 パチュリー・ノーレッジ!

「パチェ公、テメェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ! 
 魔理沙の家でなにやってんだ、この図書館モグラ女ぁあああああああああああああああああああ!」

 パチュリーはその据わった気持ちの悪い目で、私を舐めるように眺め始めたの。

「……フッ、あなたが毎年、売名行為の人形劇を鼻の穴を広げてお披露目してる間に、ワタシは
こうして魔理沙と2人で過ごしているの……。本当に、鈍感で使えない女よね……、愛だとか
情熱だとか言ってワタシの魔理沙に絡んでくるくせに、必要な時にいないなんて……。しょせん、
あなたの情熱なんてそんなもの……。口ばっかりで中身はスッカラカンよ……その頭の中と
一緒でね……っ!」

 それを聞いた瞬間、ワタシの頭から血が退いて、冷たい殺意が生まれてくる感覚を覚えたわ。
 でも、今はそれどころじゃない! 
 魔理沙とこの陰険パジャマ女が、毎年2人っきりで過ごしている? 
 そんなこと初耳よ、これは魔理沙に問いたださなきゃ、気が治まらないわ!

「魔理沙、魔理沙ぁああああああ! どうしてそんなことを黙っていたの! 私という者が
ありながらっ! 一体、私のどこが不満だっていうの!?」
「いや、聞かれなかったからなぁ。お前、忙しそうだったし」

 魔理沙はふにっ、と微笑んで無邪気な表情を見せている……。
 この笑顔を、魔理沙が吸って吐いた空気を、この貧血ムダ知識女が独占していたなんて、
 許せない、許せない、許せない、許せないぃいいいいいっ!

「なにをそんなに怒っているんだ、アリス? ああ、腹が減っているんだな! そろそろ昼メシに
しようと思っていたんだ」
「え、お腹……? 私は別に食べなくても生きていられるけど……」

 私がそう言うと、パチェ公がニヤリといやらしい微笑を浮かべた。

「……魔理沙、アリスはあなたが作った料理は食べたくないって。せっかく用意してくれるって
 言うのにね……失礼極まりない女よね……」
「えー、いらないのか? 特製キノコパスタだぜ?」

 ハメられた! このパチェ山パチェ郎、私が捨食の魔法を使っていると知っているからこんな
嫌味を! なんて卑怯で意地汚い女なの!

「食べる、食べる食べる食べる食べる! もう皿ごと、魔理沙ごと食べちゃいたいくらい、
お腹ペコペコなのっ! ほら、私って素直じゃないから……ええっと、ツン……ツンデ……
いや、ツインテール? そう、エビの味がして美味しい妖怪ツインテールみたいに、つい本当の
気持ちとは反対のことを言っちゃうの! ホント、変なクセよね!」
「はっはっはー、なーんだ。面倒な性格だぜ! 座って待ってろよな?」

 そう笑って、魔理沙は奥に姿を消した。
 私は席に着く勢いを利用して、テーブルの下で思いっきりパチェ公の足を踏んでやったわ!
「ぐがっ!」とはしたない声を漏らした! いい気味よ!
 パスタを茹でる良い匂いが漂ってきた……。
 魔理沙が一生懸命料理していると思うと、私はいますぐお手伝いに行きたい気持ちになったけど、
横の目障りな不健康女が睨みを効かせていて、立ち上がることもできない……。
 こんなヤツと話すことなんて無いから、ひたすら黙って待つことにするわ!
 しばらくすると、エプロン姿の魔理沙がお盆にパスタをのせて来た!
 か、かわいい……今すぐ抱きしめたい!
 私は湧き上がる情熱を抑えながら、魔理沙が皿を配っているのを眺めていた。

「さ、遠慮しないで食ってくれ! 最高に美味いぞ!」

 魔理沙が作ったものならなんでも美味しいに決まっているわ! 不味いなんて言うバカは、
その場でバラバラに切り刻んで天狗の山にでも捨ててやるんだからっ! 特ダネができて、
ブン屋も大喜びね!
 そう思って、私は魔理沙特製のキノコパスタを口いっぱいに頬張る、お、おいし……。

 バキッボキッ!

 …………。

 私は硬直した。隣で、パチェ公も同じ反応を見せている。

「どうだ? いい具合のアルデンテだろ?」

 魔理沙は、なんの疑問も持っていない顔でパスタをバリバリ食べている。
 違う、違うよ魔理沙……アルデンテって、外は柔らかくて中に少し歯ごたえがあるもので……。
 ああ、でも魔理沙はこれがアルデンテって信じているのね。そんな気持ちを、私は踏みにじる
ことはできない……。それに、無邪気に間違えている魔理沙がとっても可愛いから、ずっと
 気づかないままでいて欲しい……。

「……魔理沙、アルデンテはもう少し柔らかいの。ほんのちょっぴり歯ごたえがあるくらいで
いいのよ。でも、これはこれで美味しいから問題ないけど……」
「そーなのかー! いやぁ、やっぱりパチェは物知りだなー! なぁ、アリス?」

 朗らかに驚いて、魔理沙は頭を掻いている。
 パチェ公……最初に否定しておいて、その後すぐにフォローを入れるなんて、なんて巧妙な心理
テクニックを使うの! 何もかもが計算ずく! 本当にずる賢い嫌な女!

「なぁにアリス、そのいかめしい顔は……? せっかく魔理沙とステキな時間を過ごしているのに、
あなたのせいで台無しよ……不愉快だから帰ってもらえるかしら……? 淑女のワタシとしては、
アナタみたいな欲望丸出しで品の無い女は視界にいれたくないの……」

 このクソアマァアアアアアアアア!
 でも、これ以上あからさまないがみ合いを続けたら、魔理沙が嫌な気持ちになってしまうわ。
 何か、別な方法でこのパチェ山パチェ郎と差をつけないと……。
 冷静になって周りを見てみると、本やガラクタが放り出してあって、凄く散らかってる……。
 これよ! フフフ、パチェ郎さん……アンタは自宅でも本を積み上げて読みふけっているから、
この散らかり様を当たり前のように感じているのね? それのどこが淑女なのよ……ヘソで苦い
茶を沸かしてレミリアに飲ませて涙ぐませてやれそうだわっ!
 見ていなさい、アンタみたいな生活力に乏しくてだらしない女……もちろん、魔理沙は特別で
それが魅力なんだけど、この淑女気取りの貧弱不精女に、このアリスさまの甲斐甲斐しさを見せ付けて
やるわ!

「あらあら魔理沙、随分散らかってるじゃない……しかたないなぁ、私が片付けてあげるからね?
 ふふふ、こんなところも可愛すぎて、世話を焼かずにはいられないわ……」

 見て見て、魔理沙……私がこうして片付け始めたら、もう早速足の踏み場が出来てるわよ?
 凄いでしょ? 私、凄いでしょ? こう言う母性的な優しさを持つ私こそ、アナタに必要な
パートナーなのよ!

「勝手にいじるんじゃねぇええええええええ!」

 魔理沙の拳が、私の下顎にめり込んだっ!

「ぴちゅうううううううううううううううん!」

 私は思わず叫び声をあげて、額から滑って暖炉の中に突っ込んだ!

「お前に散らかっているように見えても、わたしにはモノの位置がちゃんと把握できてるんだよ!
 他人に動かされたら、わかんなくなるだろうが!」

 魔理沙が……魔理沙が私を睨みつけて怒鳴ってる……嫌、そんなの嫌!

「……フフフ、本当にガサツで無神経な女……ワタシは長年の付き合いで魔理沙のことを良く知って
 いるから、置いてあるモノには手を出さないのよ……墓穴を掘ったわね、七色莫迦……」

 「長年」を強調して嫌味な笑みを浮かべるパチェ山パチェ郎……なんて嫌なヤツ!
でも、こんなヤツに構っている場合じゃない! 今すぐ魔理沙に謝らなきゃ!

「ごめんなさい、魔理沙! 余計なことをした私がいけないのよね、私はホントにお節介で使えない女!
 ダメダメよ! ダメよダメよダメダメダメダメ女なのっ! もうこんな自分が嫌! 大っ嫌い!」

 私は自分の頬を、左右の手で交互に思いっきり叩いた。
 叩いて叩いて叩き続けて、だんだん頬が熱くなってきて、次第に感覚がなくなってきたわ……。
 見て、魔理沙! こんな健気な私を見て! 身体で示すしかアナタへの愛を表現できないけど、
こんな私を見てほしいの!

「やめろ!」

 魔理沙が、私の手を掴んで止めてくれた!

「確かに余計なお世話だったが、だからって自分を全否定しちゃダメだ! ひとこと、人の都合を
聞けばいい話だろ?」

 魔理沙が、魔理沙が私の目を真っ直ぐに見て、本気で叱ってくれている……うれしい……。
 フフフ、パチェ公ったら蒼白な顔で口をアングリと開けているわ。アンタみたいなアタマに頼った
小ざかしい恋愛テクニックなんて、シンプルでストレートな情熱的愛の前には足元にも及ばないのよ!  一発逆転ね!

「こんなに頬を腫らすまで叩きやがって。まったく、見ているこっちが辛くなってくるぜ……」

 魔理沙が、その両手でやさしく私の頬を包んだ……ああ、こんな幸せがあっていいのかしら!
 魔理沙が私を労ってくれている……これは、私だけに向けられた愛……そう、愛なのよっ!
 嫌われないように顔色ばかりうかがっている半端野郎には、決して得ることができない宝物!
 勝った! 私は、憎きパチェ山パチェ郎に勝ったのよ!
 なに、この胸の奥から湧き上がってくる熱い衝動は!? 押さえられない、とめられない!

「ああ……魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙
魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理
沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔
理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙魔理沙
魔理沙魔理沙魔理沙ぁああああああああああああああああああああああああああああああんッ!!」

 私は衝動に突き動かされるまま、魔理沙を押し倒してしまった!
 もう、どうでもいい! パチェ公に見られていてもいい! いや、むしろ見せつけたい!
 魔理沙の全てを私のものにするところを、そして魔理沙が私の全てを受け入れるところを見せつけて
勝利を不動のものにするのよっ!

「大好き! 世界で一番好きぃ! えぇい、服が邪魔だぁああああああ!」
「なにしやがる、気持ちワリィんだバッキャロ――――――!」

 メメタァッ、と魔理沙の拳が私の顔面にめり込んだ!

「ぴちゅううううううううううううううんっ!」

 天井にぶつかって跳ね返り地面に向って落下する最中、私は殴られたのにも関わらず恍惚とした
陶酔感を感じてしまった……。

 ああっ、魔理沙の拳から、私への情熱がほとばしっているわ! ふふふ、魔理沙ったら照れ屋さん
だから、正直に気持ちを伝えられないのね? 大丈夫、私はあなたの思いがちゃんとわかっているから。
この痛みが愛おしくなるほど、今の私は幸せのエクスタシーに襲われているの! 寄せては返す波の
ような情熱の繰り返しが、無限の快楽を呼び起こして私を揉みくちゃにするっ! そして愛の竜巻に
飲み込まれて、その渦から逃れることができない! 飲み込んでぇ、もっと飲み込んで、私の心を
もっと掻き乱してぇ! 魔理沙のためなら、私はどんなに淫らな女にもなれる! 

地面に頭から落ちると、魔理沙は私に馬乗りになった!

「おらぁ、嬉しいかこのド変態が! もっと欲しいなら、おねだりしやがれ!」

 そう言って、手近にあった本で私を何度も殴打する!

「嬉しいです! 気持ちイイです! もっと、もっと私にアナタの愛と情熱をください! 
ぶち込んでほしいの、アナタの想いのたけを、全て! ぶち込んで、ぶち込んでよぉおおおおおおお!」

 ああ、魔理沙ったらこんなにアグレッシブだったのね! でもいいの、魔理沙だから……え、
魔理……ってパチェ公、なんでアンタが乗ってるの!? 殴っていたのはアンタだったの!?

「死ね、死んでしまえぇえええええええええええええええええ!」
「パチェ公、テメェえええええええええええええええええええ!」

 狂気の表情で殴りつけて来るパチェ山パチェ郎の腕を、私は必死で受け止めた!
 そして、魔理沙がパチェ公の後ろから来て、その肩を掴んだの!
 ああ魔理沙、私のために、私のために止めに入ってくれたのね!

「わたしの本を、粗末に扱うんじゃねえええええええええええ!」

 パチュリーの腰……肝臓があるところに魔理沙の捻りが効いた鉄拳がめり込んだ!
 俗に言うバックリバーブローね!

「むきゅううううううううううううううううう!」

 パチェ公は半回転して額を床に擦りつけながら滑り、ソファーをなぎ倒して
壁にぶつかってグッタリしたわ! ザマァミロ、心の底からザマァミロ!

「……ま、魔理沙……その本は、元々ワタシのもの……」
「お前のものはわたしのものだ! そしてわたしのものは、わたしのもの! 人様のものを乱暴に
扱うとは、どんな教育を受けてきたんだ!」

 そうよ、魔理沙! もっとそのヒステリーネクラ女を罵って! ズタボロになるまで蹂躙して! 
 私も一緒に責めさいなんで再起不能にしてやるから!
 私はフラつきながら立ち上がり、パチェ公を見下ろした。

「うふふ、無様な姿を晒しているわね……アンタは私を陥れて魔理沙を自分のものにしようとした
みたいだけど、こんな結末になるとは思わなかったでしょ? まさに策士、策に溺れるってやつね!
アハハ、アーッハハハハ――――!」
「……黙れ、メス豚がぁあああああああああああ!」

 パチェ公が、最後のあがきで私に組み付いてきた!

「バカな女! ひ弱なくせに、私を肉弾戦で倒せるとでも思っているの!? 返り討ちにしてあげる!」
「ケンカなら、外でやれ――――ッ!」

 魔理沙は全力で私たちに駆け寄ってくると、跳びあがって左右の足を広げて突き出し、私たちの
顔面を同時に蹴り飛ばした!

「ぴちゅううううううううううううううん!」

 2人同時に窓を突き破って外に放り出され、転がって崖から落ちて川に真っ逆さま!

 その後、パチェ山パチェ郎がどうなったかは知らないけれど、私は身体を引き摺って必死で家に
帰ったわ……。
 部屋に入るなり、私はベッドに倒れこむ。
 ああ、魔理沙の心を、もう少しで私のものにできたのに、とんだ邪魔者が入ってしまった……。
 魔理沙、相当怒っているわ……もう、口をきいてもらえないかもしれない……。
 そんな絶望感に襲われているうちに、私はいつの間にか眠りに落ちていた。

 コンコン、と言うノックの音で目が覚めた。
 人形を使ってドアを開けさせると、そこにいたのは博麗霊夢。

「なに、なんか用?」

 言葉を出すのも気だるかったので、私はそんな愛想の無いセリフしか言えなかった。

「アンタ、お祭りで人形劇の道具を置きっぱなしにしていったでしょ? 邪魔だったから、持って
きておいたわ。まったく、なんで私がアンタの世話を焼かないといけないのよ! 労働か現金でこの
手間を返して欲しいものね!」

 もの凄く不機嫌そう。

「あとね、アンタの劇、子供達に意外と好評だったみたいよ? ふしだらな話をする悪徳人形使いを、
 私が成敗する格闘巫女活劇と勘違いしたみたい。屋台の人たちが見物人にモノを売りたいらしいから、
後援してくれるんだって。報酬をくれるって言うから、また明日やるわよ? まぁ、アンタは今日の
貸しがあるからタダ働きだけど」

 この守銭奴……金目当て! しかも全部持っていくつもりなの!?

「それから途中で魔理沙に会ったんだけどね、その話をしたらお祭りに来るってさ。面白そう
だからって」
「魔理沙がっ!? ホントにっ!?」
「ホントよ。アイツは何よりも、好奇心が行動の原動力だからね」

 それを聞いて、私の情熱がまた蘇ってくるのを感じたわ!
 これで大成功に終われば、魔理沙はきっと私を見直してくれる!
 やる価値は充分あるわ!

「霊夢、やるわよっ! 今から脚本を書くから、今夜は一晩中稽古! 家になんか帰さないん
だからっ!」
「嫌よ、そんなのアドリブで充分だから。今日みたいに、アンタは人形劇をやってればいいから」
「それじゃダメ! 私のプロ根性が、それを許さないわ!」

 ふふふ、待っていてね魔理沙……必ずアナタを、私の魅力で夢中にさせてあげるんだからっ!

                      おわり


 
こちらでは初投稿です。どろなかれんげと申します。
自分の東方観がどれくらい世の中に通じるんだろうと思い、この度載せてみた次第です。
言葉の弾幕が張れるよう、頑張りました。
魔理沙もアリスもパチュリーも、それなりに好きです。決して悪意はありません。
どろなかれんげ
[email protected]
http://blogs.yahoo.co.jp/dororen154
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コメント



0.170簡易評価
4.10名前が無い程度の能力削除
うん、全くと言っていい程東方観が通じない
止めた方がいいよマジで
6.無評価名前が無い程度の能力削除
どうやら初投稿で終了のお知らせですね
7.70名前が無い程度の能力削除
勢いは結構好きだ
特にパチェ公
8.無評価名前が無い程度の能力削除
一発目で大滑りする人増えたなぁ
10.無評価名前が無い程度の能力削除
いやまぁ、ギャグが書きたいだけで東方が書きたいわけじゃないんだな、と。
12.80名前が無い程度の能力削除
クソワロタw
だが完全にここ向けじゃないなw
せめて前書きに注意文を書くんだ!
14.無評価愚迂多良童子削除
メロドラマをやるにしても、もうちょいマシなやりかたがあるだろうに。
悪意が無いと書いてあるけど、そうだとしたらギャグのセンスは壊滅的だと思う。
15.60名前が無い程度の能力削除
ワロタ
16.無評価名前が無い程度の能力削除
貴方様のおっしゃる世界観は本編STGをプレイして、じゃなくて、どっかの動画共有サイトで培ったものと違いますか?

正直、そこのネタをここに持ってくるのは勘弁して欲しい。
17.無評価名前が無い程度の能力削除
悪意の有無を判断するのは読者だと思うんですが。
注意書きもせず、キャラクターをぞんざいに扱う作品投稿して悪意がない、ておっしゃってる時点で無自覚な悪意を持った作者だと読者は判断するわけだ。
18.無評価名前が無い程度の能力削除
東方シリーズ全作品プレイしてこい
話はそれからだ
19.50名前が無い程度の能力削除
とんでもないハイテンションですねw 嫌いじゃあないです。
ですが、ここに投稿するとこういうノリの作品は浮くよね。荒れるのは必至かとw
例えばこれが実は全部妄想でその反面、外面は澄ましているキャラの心理的攻防戦……とかだったらまだセーフだったかも?
それと原作のキャラに愛が感じられないのもマズイ気がする。
というかギャグ表現であったとしても、登場人物が酷い目にあったら、少しはフォローした話を作品内に盛り込んだほうが方が無難ですよ。
うーん、なんにしてもこういう題材で軟着陸させるには相当技術が要りそうですね。
20.無評価名前が無い程度の能力削除
うわぁ・・・・・・
21.無評価名前(以下同文です削除
う~ん。キャラ崩壊っていうより名前が同じだけに感じる。原作を買えない環境だとしてももう少し設定知ろうよ。ブログ見たけどチルノをツンデレだと思ってる人は初めて見た。あと自分のお気に入りのキャラだとおもわれるキャラが意味無く傷つくのは結構不快だしネタのセンスもなんか消防っぽい。おわりで良かった。
22.70ミスターX削除
>2人同時に窓を突き破って外に放り出され、転がって崖から落ちて川に真っ逆さま!
そんな近くに崖や川があったっけ?
それとも、ブレイジングスター式ドロップキックでもぶち込んだか?