タグと題名どおり、アリスと他のキャラでのキス話です。
百合表現を含むので、苦手な方もしくは自分のジャスティス以外はいやなかたはプラウザバックしてください!
アリス総受けオッケー!ってかたは下から読んでくれたらうれしいです!
頬の上ならば友情のキス
「んぅ、相変わらずあなたの紅茶は最高ね」
アリスはさすがだと感心しながらも、咲夜に微笑む。
「ふふっ、そういっていただけると光栄ですわ」
それに対して、にこっと完璧な微笑を浮かべる咲夜。
その様子に対して、アリスは呆れがちに溜息を一つ吐き
「今は二人……
ただの友人同士のお茶会じゃない」
「あら、きちんとご友人に対しての態度ですわ」
咲夜は相変わらず笑っている。
「まあ、いいけどね」
アリスはそれに寂しさを感じながらも、呟く。
最初に興味を持ったのも自分のほう。
お茶会をしてと誘いをかけたのも自分。
そこから、もうかなりの月日が流れたが咲夜の対応は変わらない。
友人としては理想的な彼女と友人になりたかったが、それも夢みた妄想。
一人で永遠と頑張り続ける人形劇。
惨めだなと考えていると、咲夜の手がそっとアリスの髪を撫でる。
「本当よ。
ただ、紅魔館にいると癖が抜けないだけ」
お姉さんのように咲夜は優しく優しくアリスの髪を撫でる。
細い指が気持ちよくて、アリスはつい目を瞑ってしまう。
アリスが猫ならば尻尾がゆらゆらと揺れていることだろう。
咲夜もそれをかわいいなって思っていたのだが、少しいたずら心がわき
「へ、ぇ?」
頬に少しぬれ物があたる感覚に驚いてアリスが目を開けると、そこには咲夜がいて……
長いまつげ、吸い込まれてしまいそうな蒼に見惚れて、アリスは何もいえなくなってしまう。
「ふふっ、かわいいわね~」
咲夜はくすくすと少し肩を揺らし笑う。
からかわれたと気づき、アリスの顔がかっと赤くなる。
「ば、ばかぁ!」
「あははっ、怒らないでよ。
アリス、頬のキスはどういう意味か知ってる?」
「何か意味があるの」
そっと咲夜はアリスの耳元で囁く。
「友情よ」
「さ、咲夜ぁっ!」
がばっとアリスは咲夜に抱きつく。
それを優しく咲夜は抱きとめる。
瞼の上ならば憧憬のキス
「ありがとうございました」
「人形遣いのお姉ちゃんすごい~!」
「もっかい、もっかい」
人形劇が終わり、片付けていてもアリスの前には子ども達の群れが出来ている。
大きな娯楽が少ない人里にとって、人形劇というのは子どもだけでなく大人にとっても大きな娯楽だ。
相手が魔法使いで人間じゃないことで、敬遠している人間もいるが、それはごく一部だけだ。
「今日は、終わりよ~」
アリスもそのことはわかっているが、お金以上のことはしない。
してしまったら、その後もずるずると次のときもやらされることをよくわかっているからだ。
子ども達は、こうなっては無駄だと分かっているため、残念そうに去っていく。
ようやく終わったかと思いながらも、人形を入れたカバンを持とうとしたとき
「こ、こんにちはぁっ!?」
「こ、こんにちは」
うさぎ耳の女の子、永夜異変のときに出会ったかなと思いながら首をかしげ、アリスは挨拶をする。
「さ、さっきの人形劇本当に素晴らしかったです!」
「ありがとうね」
お金のためとはいえ、褒めてもらえるのは嬉しい。
「で、何かようがあるの?」
わざわざ、そんなことだけのために引きとめはしないだろうと聞く。
暇人ならともかく、彼女だって仕事をしているのだから。
「え、あ、あのですね」
「いいにくいことならば、人がいないところに行く?」
「い、いえ、そうじゃなくてっ!」
鈴仙が叫んでしまったため、周りがちらちらと二人の様子を伺っている。
「とりあえず、飛びながら話しましょ」
「はいっ!」
人間の目が届かない範囲まで二人は飛んでいく。
ある程度で止まると、アリスはもう一度
「それで、何かしら?」
振り返ったアリスの目に伝わる熱。
それが瞼の上にキスをされたと気づいたときに、すでに鈴仙はいなかった。
「何がしたかったのかしら?」
不思議に思いながらも、また何かあるならば来るだろうと家路につく。
頬の上ならば厚意のキス
アリスは一人で家で本を読んでいた。
行動範囲は広いほうだが、用がなければあまり外へは行かない。
もう少しで読み終わり、読み終わったら人形の整備をしようと考えていると、どんどんどんっとドアが叩かれる。
「ア~リ~ス~!」
はやく開けろと少し心細そうな小動物のような声が聞こえてくる。
はぁっとしょうがなさそうに少し息を吐き、本にしおりを挟んで
「いらっしゃい、魔理沙」
ドアを開けてやる。
そうすると、いつものように軽い足取りで自分の指定席へと魔理沙は座る。
当たり前のように魔理沙は訪問してくるが、もちろん突然の訪問だ。
だが、それでもアリスは手馴れた要領で、紅茶の準備をする。
最初のほうは文句を言っていたアリスだったが、もうなれたものだ。
「はい、どうぞ」
「おぅ、ありがとう」
それに、自分がぐちぐちいってもどうせなおらないという諦めも混じっている。
魔理沙は最初香りを味わった後、一口含む。
「さすがだな、アリス」
最初は、まるで水のように飲んでいたのが、最近はきちんと味もわかって、褒めてくれているのだから、嬉しくはある。
アリスも隣に座って、紅茶を飲む。
うん、今日もなかなかの味だ。
「で、今日は何か用があるの?」
用がないことが多い魔理沙だが、時折何か用事があることもある。
魔法の共同研究だったり、異変の解決。
何かあるのならば、先に言って欲しいものだと思い、アリスはきいてみる。
「おぅっ、大事な用事だぜ!」
どんっと魔理沙は自分の無い胸を叩く。
はぁ、また厄介ごとかしら?
そう思いながら、アリスは心のうちでため息を吐く。
「早く言ってみなさい」
だが、魔理沙はモジモジとしだす。
なに、この乙女を形にした動作?
少し心の中で気持ち悪さと戸惑いを感じていると
「目、目を瞑れなんだぜ!」
「は、はぁ」
よくわからなかったが、アリスは言われたとおりに目を瞑る。
はぁはぁと少し荒い息が静寂とした雰囲気の中に響く。
そんなにもこの部屋暑くなったのかしらなんてどこか抜けたことを考えているアリス。
ドキドキとしながら、魔理沙はゆっくりとアリスに近づいていく。
もし、攻撃されたときのためにとアリスは一体の人形に魔法の糸を準備しておく。
魔理沙が決意したように息を止めてちゅっと頬にキスをする。
「へ?」
突然のことで意味が分からずに首をかしげているアリスに
「きょ、今日は私の誕生日だったんだ!
だから、今日くらいは素直にぃって」
恥ずかしくなったのか、魔理沙はぷいっと顔を逸らす。
「あ、も、もう帰るぅ」
弱々しげにいい、魔理沙はふらふら~とアリスの家から出て行ってしまう。
アリスは魔理沙にキスすれた頬を撫でながら
「もう、しょうがないわね」
小さくくすっと笑う。
『厚意』を言葉で伝えるのが恥ずかしかったからってわざわざキスなんて……
そっちのほうがよっぽど、恥ずかしかっただろうけど、わざわざ伝えにきたのだから……
アリスはティーセットを人形達に片付けさせながら、台所に立つ。
「準備しますか。
本当にしょうがない子」
呆れたように楽しそうに笑いながら、料理をしていく。
手の上ならば尊敬のキス
久しぶりにアリスは魔界に帰ってみた。
何年も連絡はしていなかったが、大丈夫だろう。
なんといっても、相手は魔界人なのだ。
数年なんて、あの方達にとって数日だろう。
家に入って行き、誰かを呼ぶようにただいまと言おうとしたら
「侵入者ですか?」
メイドがそっと刃物を突きつけられる。
「もう、私よ」
だけれど、普通の声でアリスは返す。
しばらく、眉を寄せて考えている様にアリスはふぅっと息を吐き
「アリスよ。
夢子さん、ただいま」
じぃっと顔を見られる。
ま、まさか忘れられた?
「あぁ、アリス様ですね。
ご無礼失礼いたしました」
よかった、忘れられてないみたい。
ようやく、ナイフが首元から離れる。
「なによ、びっくりするじゃない」
半分笑いながらアリスが言うと
「うふふ、アリス様が成長していましたから。
改めて、お帰りなさいませアリス様」
「じゃあ、改めてただいま」
その際にアリスは人形にもお辞儀させる。
夢子はその人形の頭をなで
「上手になられましたね」
「まあね」
魔界にいるときは人形一体操るのでさえも、かなり神経を使っていたアリスもいまや指を軽く動かす程度だ。
「向こうで、何もしてないと思ったの?」
アリスは自身の修行のために幻想郷へといったのだ。
だから、これくらい出来て当たり前だと思っている。
未だに自律人形は出来ていないのだが。
「いいえ、そうじゃないですよ」
「もう、いつまでも子ども扱いしないでよね」
アリスは魔界の中でも生まれが遅いほうだ。
だからこそ、まるで末っ子の子どものように扱われている。
それが、嫌なわけではないが、むずがゆい。
「そうですね。
アリス様はお一人できちんと幻想郷で生活していたみたいですからね」
「えぇ、最近では人形劇のオファーも多いのよ」
「本当によく成長なされました」
「もう、それが子ども扱いなのよ」
優しい瞳でアリスを見つめる夢子にアリスは困ったように笑う。
この人の前ではいつまでたっても子どもなのかしら?
アリスが少し残念に思っていると
「いいえ、違いますよ」
すっと夢子はアリスの手をとる。
突然のことで声をあげる前に
「尊敬していますよ、アリス様」
ちゅっと軽く手の上に唇を落とす。
「あ、ありがとう。
だけどね、夢子さん」
アリスも未だに自分の手を握っている夢子の手にそっとキスをする。
「ずっと尊敬していた人に言われるのは複雑」
「うふふ、それは嬉しいことです」
夢子は嬉しそうに笑う。
アリスもそれに釣られて、嬉しそうに笑う。
「さて、神綺様のもとに参りましょうか」
「えぇ、そうね」
夢子の隣に笑いながら、アリスは自分の母とも言える存在のところに向かう。
掌の上ならば懇願のキス
「神綺様、失礼します」
コンコンとドアをノックをする。
アリスは返事が来るのをドキドキとしながら待つ。
「えぇ、どうぞ」
許可がおりたので、ゆっくりとドアを開く。
「帰ってきました」
すっと指でスカートをつまみ、少しあげる。
うやうやしく一度礼をして、目を瞑る。
「おかえりなさい、アリスちゃん」
「はい、ただいま帰りました」
よかった、一目でわかってくれた。
「近くに座りなさい」
「はい」
近くにある椅子に座る。
家から出た時は、座りきれずに足をぷらぷらとさせていたのに、もうきちんと足が着く。
「家にいなかったときの間の話を聞かせて」
「はい、喜んで」
春にならなかったときで、久しぶりに再会した魔理沙や霊夢
永夜異変で、ペアになって異変を解決したこと
地底異変で、人形から指令を送り出し解決したこと
話は話しても話しても尽きていく気配はない。
あの子達はしょうがないんだからといいながらもアリスの顔は非常に楽しそう。
なんだかんだで、まだまだ子どものところも残っているのだろう。
「それで、次は」
「ねぇ、アリスちゃん?」
次は自律人形の研究の成果を話そうと思っていたアリスを神綺はいったん止める。
「どうしたの?」
まさか、止められるとは思わず首をかしげる。
何か、変なことでも言ったのかと少し怖くなっていると
「向こうは楽しい?」
「まあまあよ。
あいつらといてると、平凡なんてばかばかしくなってしまうほど」
神綺はどこか嬉しそうに、だけど複雑そうな顔をする。
「ねえ、アリスちゃん」
「なんですか?」
そうっと手を持っていかれ、ちゅっとキスをされる。
「たまには平凡も悪くないでしょうから……
帰ってきなさい」
「はい、そうしますね」
寂しがり屋の神様のためにちょっとだけ帰る頻度を増やそうとアリスは笑いながら返事をする。
唇の上ならば愛情のキス
「お邪魔します」
アリスは神社に着くと呟くようにいいながら、縁側へ腰掛ける。
「来るのなら、お賽銭いれなさい」
「はいはい」
霊夢のいつもどおりの言葉に笑いながら対応する。
もう、これもなれたものでアリスは動じない。
「お賽銭はおいしい秋野菜じゃだめですか?」
その代わりに籠に詰め込んだ野菜を見せる。
最近の人形劇でもらったものだ。
「もちろん、プラスあなたがそれを使って作るのよね」
「残念ながらそれじゃあオーバーよ」
「あら、強欲な魔法使いさん。
じゃあ、何を望むのかしら?」
お互いがにやにやと笑っている。
その先の答えなんて知っている。
「愛情のこもったキスかしらね」
ちゅっと霊夢は頬にキスをしてやる。
アリスはぷくっと頬を膨らませる。
「愛してるわ」
霊夢はそっと頬に手をやり、唇を重ね合わせる。
たった数秒の交わり。
「ば~か」
アリスは離された唇を不満そうにとがらせ、霊夢に腕を回し、また唇を重ねる。
舌を入れようとする前に
「はい、これ以上はだめ」
「ちぇ~、残念」
アリスは靴を脱いで、家に入っていつもの要領でキッチンにいく。
「ディープキスなんてしたら……
そのままやっちゃうじゃない」
「何か言った~?」
「な、なんでもないわよ!」
腕と首ならば欲望のキス
「はあ~ぁ」
アリスは思わず溜息をついてしまう。
夏でさすような日差しも一つの原因ではあるけれど、魔女のアリスにとってそのことは些細なことだ。
それよりも、彼女を憂鬱にさせているのは
「なに、溜息をついているのよ」
花といえば思い出され、相手の心をいてつかせる風見 幽香と一緒にいるからだ。
そもそも、好きでいるわけではない。
『アリス~、弾幕ごっこしましょう』
『へ、ぇ、ちょ』
『負けたほうが一週間、相手の奴隷ね』
なんて、いきなり押しかけてきて、アリスをこてんんぱんに叩きのめしたのだ。
魔女というのは本来自分の力が最大限、引き出せる空間を魔力を使うなり、事前に準備をして、弾幕ごっこをするものだ。
パチュリーだって紅魔館の図書館が一番自分の力がいかせるから、ずっといるのだろう。
もちろん、アリスはむちゃくちゃだと抗議したがそんなものが幽香に通じるわけもなく、花畑で強制労働だ。
なんで、こんなことをと思いながらも、黙々と働いてしまうのは都会派だからか……
「もぅ、せっかく休憩しようかと思ったのに」
アリスが振り返るとそこには、無色の液体が入ったコップを二つ持つ幽香だった。
はたして、水なのかそれともアリスには想像がつかないようなものなかはわからなかったが
「う、うん、したいわ」
幽香がアリスの傍に座る。
少し距離を置いて、アリスが座る。
アリスはコップを二つ持っているので、それは自分のものなのか、ききたかったが、座れるだけでもいいかと何も言わずに座り続ける。
「のどかわいてる?」
「まあ、かわいてるわね」
「甘いの大丈夫よね?」
「えぇ、大丈夫だけど?」
幽香がポケットから何かを取り出し、コップの上で拳を作る。
ひょっとして、コップを粉々に砕いて、それでケガさせて
『自分の血でも飲んで、喉の渇きを癒しなさい』
とでも言うつもりだろうか?
なんていう危ない発想にアリスがいってると
「はい、おいしいもの」
「あ、ありがと」
コップに一つきれいなピンク色の花が水に浸されている。
私には花瓶の水がお似合いってことかしら?
アリスはそう思いながらも、喉が渇いているのは本当のことだったため、口に含む。
「あ、おいしい」
本当においしいとは思わなかったため驚いてしまう。
しばらく待っても特に副作用もなかったため、こくこくとアリスは飲んでいく。
「んっ、素直でよろしい」
幽香の優しい声と頭を撫でられるのが信じられなくて、口がぽかんと開いてしまうアリス。
「ちょっと、何やってるのよ」
当然、飲み物を含んだままなのだから口からこぼれだす。
アリスは急いでハンカチを取り出して、拭おうとしたのだが
「ぇ、あ、なに?」
幽香にぐっと肩をつかまれて動けなくなってしまう。
肩を壊されるかもしれないという恐怖で動けなくなり、せめてものとぎゅっとアリスは目を固く瞑る。
「ひぁっ、幽……香?」
「ん、ちゅ……
とってあげるんだから黙りなさい」
だが、そんなことはおこらず、アリスの口からこぼれ出た液体を舐めている。
含んでいる水が多かったからか、首元にまで液体はこぼれている。
それらもただ一心不乱に幽香は舐める。
なにが起こっているかわからないが、抵抗をしたら殺されると思い込んでいるアリスは動けない。
いつになったら終わるのだろうと思っていると、はぁ~と大きい幽香の溜息が聞こえ
「ほんと、ばっかみたい」
最後にがぶっと腕をかまれる。
声を上げそうになったのをアリスは押し殺す。
ようやく幽香はアリスの肩から手を離す。
「もう、今日は帰っていいわよ」
やりきれないというように幽香は顔を逸らす。
アリスは帰れると、すぐさま立ち上がる。
「さ、さよなら~!」
人形を引き連れて、あっという間に飛んでいく。
「ちょっとくらいは意識しなさいよ……
あぁんっ、も~!」
自分から出て行ってしまう熱を抑えるようにさきほどアリスにしたように腕をがぶっとかんでみるけど、収まるはずはない。
次会ったときは押し倒してやろうとコップの中の水を含みながら幽香は決意する。
さてその他は皆狂気のキス
紅魔館に隠されるように存在する地下室。
そこは真っ暗何もない?
「あはっ、かっわいい~!」
いや、きちんと存在している。
部屋の主の真っ暗を照らすような金色の髪のフランドール スカーレットがいる。
フランが近づくたびにじゃりじゃりっと音が鳴る。
それは、フランが破壊しつくしたものがさらに破壊されていく音。
何も無いのではない、彼女以外何も存在できない。
存在しても破壊されてしまう。
「げほっ、がほ」
その部屋の真ん中、おなかを抱えて一人の少女がうずくまっている。
さらりと流れる肩口で切られた金髪、目鼻立ちが整った姿は人形といわれてしまえば納得してしまうほどきれいな顔立ちをしている人形遣いのアリス マーガトロイド。
咳き込み、口からは血が流れている。
「どうい、つも」
ふらふらとしながらも、なんとかアリスは立ち上がる。
本来ならば、フランの地下室などよることもないアリスだが、レミリアに人形劇を見せてやって欲しいと頼まれたからやってきたのだ。
最大限の警戒をしていたが、部屋のドアを開けられた瞬間、内臓部分を蹴られるとまでは思わなかったため、気絶してしまったのだ。
いくら、アリスが人間ではないとは言え、相手は吸血鬼。
身体が壊れなかっただけでも運がよかったほうだ。
次は何をされるかわからないと魔力を練ろうとしたのだが
「あははっ、お人形さんだ~!」
ぎゅうっとフランがアリスに抱きつく。
それを払いのけるためにも魔力を練ろうとしているのだが
「な、なんで?」
全く魔力が練れない状況にアリスはあせっていた。
その様子をフランはくすくすと楽しそうに笑っている。
「やっぱり、かわいいな~」
フランが伸ばす手から逃れるように後ろに下がる。
フランがゆっくりゆっくりと迫る。
『トンッ』
入ってきた扉に当たる。
アリスは必死に出ようとするのだが
「な、なんでよ!」
だが、一向に扉が開く気配はない。
そして、じっと扉を見てようやくアリスは気づいた。
扉に魔方陣が描かれていることに……
「アリス、一緒に遊びましょ♪」
「ふざけないで!」
振り払おうと動かした手はぐっと虫を握りつぶすように握られ
「アリス、ここはね箱庭なの。
私とあなたの二人だけの世界」
「なにいってるのよ」
狂っているのは知っているつもりだった。
しかし、アリスがフランにあったのは初めて……
つまり、自分の中の定規でフランの狂気を判断していた。
狂気などというのが、おそれられるのは相手が思う以上におかしいだからなのに、その判断をアリスは見誤ってしまった。
「うっふふ~、もうね嬉しいの!
ずぅっと、見ているだけの存在がこんなにも近くにいるのよ。
ねえ、アリスはわかってくれる?」
「知らないわよ。
どうでもいいから、ここから出しなさい」
「う~ん、それは私の判断じゃないの。
お姉さまたちの判断だからね」
何かわからないけど、かつがれた?
一体、何をしろっていうのよ。
このこと友達になれって言うの?
アリスは頭を抱えてしまいたいのを我慢しながら
「じゃあ、なにすればいいわけ?」
「付き合ってくれさえすればいいの」
「はじめてのおつかいにでも?」
「うふふ、半分正解。
はじめてのおつかいができるようになるように能力の制御の練習にね」
どうして、私なんかが?と思いながらも、巻き込まれたのなら終わるまで付き合うしかないと頷こうとしたアリスだったが
「それはお姉さまたちを騙すためのただの名目」
「へぇ、狂気の妹様は何をっ」
しゅっと風を切る音と共に押し倒される。
そして、お互いの金糸が絡み合ったと思ったら
「いたっ!?」
鎖骨にフランが噛み付く。
そのまま深く深く吸い付き、赤い花が咲く。
「ねえ、いいでしょ?
今からね、アリスを私色に染めちゃうの♪
目玉も声帯も肺も心臓も全部全部キスしちゃうのっ!」
うっととした表情でフランは笑う。
笑う笑う、楽しくてしょうがないと笑い……
フランの爪はアリスを引き裂く。
そこに響き渡る声は……
悲鳴、それとも?
百合表現を含むので、苦手な方もしくは自分のジャスティス以外はいやなかたはプラウザバックしてください!
アリス総受けオッケー!ってかたは下から読んでくれたらうれしいです!
頬の上ならば友情のキス
「んぅ、相変わらずあなたの紅茶は最高ね」
アリスはさすがだと感心しながらも、咲夜に微笑む。
「ふふっ、そういっていただけると光栄ですわ」
それに対して、にこっと完璧な微笑を浮かべる咲夜。
その様子に対して、アリスは呆れがちに溜息を一つ吐き
「今は二人……
ただの友人同士のお茶会じゃない」
「あら、きちんとご友人に対しての態度ですわ」
咲夜は相変わらず笑っている。
「まあ、いいけどね」
アリスはそれに寂しさを感じながらも、呟く。
最初に興味を持ったのも自分のほう。
お茶会をしてと誘いをかけたのも自分。
そこから、もうかなりの月日が流れたが咲夜の対応は変わらない。
友人としては理想的な彼女と友人になりたかったが、それも夢みた妄想。
一人で永遠と頑張り続ける人形劇。
惨めだなと考えていると、咲夜の手がそっとアリスの髪を撫でる。
「本当よ。
ただ、紅魔館にいると癖が抜けないだけ」
お姉さんのように咲夜は優しく優しくアリスの髪を撫でる。
細い指が気持ちよくて、アリスはつい目を瞑ってしまう。
アリスが猫ならば尻尾がゆらゆらと揺れていることだろう。
咲夜もそれをかわいいなって思っていたのだが、少しいたずら心がわき
「へ、ぇ?」
頬に少しぬれ物があたる感覚に驚いてアリスが目を開けると、そこには咲夜がいて……
長いまつげ、吸い込まれてしまいそうな蒼に見惚れて、アリスは何もいえなくなってしまう。
「ふふっ、かわいいわね~」
咲夜はくすくすと少し肩を揺らし笑う。
からかわれたと気づき、アリスの顔がかっと赤くなる。
「ば、ばかぁ!」
「あははっ、怒らないでよ。
アリス、頬のキスはどういう意味か知ってる?」
「何か意味があるの」
そっと咲夜はアリスの耳元で囁く。
「友情よ」
「さ、咲夜ぁっ!」
がばっとアリスは咲夜に抱きつく。
それを優しく咲夜は抱きとめる。
瞼の上ならば憧憬のキス
「ありがとうございました」
「人形遣いのお姉ちゃんすごい~!」
「もっかい、もっかい」
人形劇が終わり、片付けていてもアリスの前には子ども達の群れが出来ている。
大きな娯楽が少ない人里にとって、人形劇というのは子どもだけでなく大人にとっても大きな娯楽だ。
相手が魔法使いで人間じゃないことで、敬遠している人間もいるが、それはごく一部だけだ。
「今日は、終わりよ~」
アリスもそのことはわかっているが、お金以上のことはしない。
してしまったら、その後もずるずると次のときもやらされることをよくわかっているからだ。
子ども達は、こうなっては無駄だと分かっているため、残念そうに去っていく。
ようやく終わったかと思いながらも、人形を入れたカバンを持とうとしたとき
「こ、こんにちはぁっ!?」
「こ、こんにちは」
うさぎ耳の女の子、永夜異変のときに出会ったかなと思いながら首をかしげ、アリスは挨拶をする。
「さ、さっきの人形劇本当に素晴らしかったです!」
「ありがとうね」
お金のためとはいえ、褒めてもらえるのは嬉しい。
「で、何かようがあるの?」
わざわざ、そんなことだけのために引きとめはしないだろうと聞く。
暇人ならともかく、彼女だって仕事をしているのだから。
「え、あ、あのですね」
「いいにくいことならば、人がいないところに行く?」
「い、いえ、そうじゃなくてっ!」
鈴仙が叫んでしまったため、周りがちらちらと二人の様子を伺っている。
「とりあえず、飛びながら話しましょ」
「はいっ!」
人間の目が届かない範囲まで二人は飛んでいく。
ある程度で止まると、アリスはもう一度
「それで、何かしら?」
振り返ったアリスの目に伝わる熱。
それが瞼の上にキスをされたと気づいたときに、すでに鈴仙はいなかった。
「何がしたかったのかしら?」
不思議に思いながらも、また何かあるならば来るだろうと家路につく。
頬の上ならば厚意のキス
アリスは一人で家で本を読んでいた。
行動範囲は広いほうだが、用がなければあまり外へは行かない。
もう少しで読み終わり、読み終わったら人形の整備をしようと考えていると、どんどんどんっとドアが叩かれる。
「ア~リ~ス~!」
はやく開けろと少し心細そうな小動物のような声が聞こえてくる。
はぁっとしょうがなさそうに少し息を吐き、本にしおりを挟んで
「いらっしゃい、魔理沙」
ドアを開けてやる。
そうすると、いつものように軽い足取りで自分の指定席へと魔理沙は座る。
当たり前のように魔理沙は訪問してくるが、もちろん突然の訪問だ。
だが、それでもアリスは手馴れた要領で、紅茶の準備をする。
最初のほうは文句を言っていたアリスだったが、もうなれたものだ。
「はい、どうぞ」
「おぅ、ありがとう」
それに、自分がぐちぐちいってもどうせなおらないという諦めも混じっている。
魔理沙は最初香りを味わった後、一口含む。
「さすがだな、アリス」
最初は、まるで水のように飲んでいたのが、最近はきちんと味もわかって、褒めてくれているのだから、嬉しくはある。
アリスも隣に座って、紅茶を飲む。
うん、今日もなかなかの味だ。
「で、今日は何か用があるの?」
用がないことが多い魔理沙だが、時折何か用事があることもある。
魔法の共同研究だったり、異変の解決。
何かあるのならば、先に言って欲しいものだと思い、アリスはきいてみる。
「おぅっ、大事な用事だぜ!」
どんっと魔理沙は自分の無い胸を叩く。
はぁ、また厄介ごとかしら?
そう思いながら、アリスは心のうちでため息を吐く。
「早く言ってみなさい」
だが、魔理沙はモジモジとしだす。
なに、この乙女を形にした動作?
少し心の中で気持ち悪さと戸惑いを感じていると
「目、目を瞑れなんだぜ!」
「は、はぁ」
よくわからなかったが、アリスは言われたとおりに目を瞑る。
はぁはぁと少し荒い息が静寂とした雰囲気の中に響く。
そんなにもこの部屋暑くなったのかしらなんてどこか抜けたことを考えているアリス。
ドキドキとしながら、魔理沙はゆっくりとアリスに近づいていく。
もし、攻撃されたときのためにとアリスは一体の人形に魔法の糸を準備しておく。
魔理沙が決意したように息を止めてちゅっと頬にキスをする。
「へ?」
突然のことで意味が分からずに首をかしげているアリスに
「きょ、今日は私の誕生日だったんだ!
だから、今日くらいは素直にぃって」
恥ずかしくなったのか、魔理沙はぷいっと顔を逸らす。
「あ、も、もう帰るぅ」
弱々しげにいい、魔理沙はふらふら~とアリスの家から出て行ってしまう。
アリスは魔理沙にキスすれた頬を撫でながら
「もう、しょうがないわね」
小さくくすっと笑う。
『厚意』を言葉で伝えるのが恥ずかしかったからってわざわざキスなんて……
そっちのほうがよっぽど、恥ずかしかっただろうけど、わざわざ伝えにきたのだから……
アリスはティーセットを人形達に片付けさせながら、台所に立つ。
「準備しますか。
本当にしょうがない子」
呆れたように楽しそうに笑いながら、料理をしていく。
手の上ならば尊敬のキス
久しぶりにアリスは魔界に帰ってみた。
何年も連絡はしていなかったが、大丈夫だろう。
なんといっても、相手は魔界人なのだ。
数年なんて、あの方達にとって数日だろう。
家に入って行き、誰かを呼ぶようにただいまと言おうとしたら
「侵入者ですか?」
メイドがそっと刃物を突きつけられる。
「もう、私よ」
だけれど、普通の声でアリスは返す。
しばらく、眉を寄せて考えている様にアリスはふぅっと息を吐き
「アリスよ。
夢子さん、ただいま」
じぃっと顔を見られる。
ま、まさか忘れられた?
「あぁ、アリス様ですね。
ご無礼失礼いたしました」
よかった、忘れられてないみたい。
ようやく、ナイフが首元から離れる。
「なによ、びっくりするじゃない」
半分笑いながらアリスが言うと
「うふふ、アリス様が成長していましたから。
改めて、お帰りなさいませアリス様」
「じゃあ、改めてただいま」
その際にアリスは人形にもお辞儀させる。
夢子はその人形の頭をなで
「上手になられましたね」
「まあね」
魔界にいるときは人形一体操るのでさえも、かなり神経を使っていたアリスもいまや指を軽く動かす程度だ。
「向こうで、何もしてないと思ったの?」
アリスは自身の修行のために幻想郷へといったのだ。
だから、これくらい出来て当たり前だと思っている。
未だに自律人形は出来ていないのだが。
「いいえ、そうじゃないですよ」
「もう、いつまでも子ども扱いしないでよね」
アリスは魔界の中でも生まれが遅いほうだ。
だからこそ、まるで末っ子の子どものように扱われている。
それが、嫌なわけではないが、むずがゆい。
「そうですね。
アリス様はお一人できちんと幻想郷で生活していたみたいですからね」
「えぇ、最近では人形劇のオファーも多いのよ」
「本当によく成長なされました」
「もう、それが子ども扱いなのよ」
優しい瞳でアリスを見つめる夢子にアリスは困ったように笑う。
この人の前ではいつまでたっても子どもなのかしら?
アリスが少し残念に思っていると
「いいえ、違いますよ」
すっと夢子はアリスの手をとる。
突然のことで声をあげる前に
「尊敬していますよ、アリス様」
ちゅっと軽く手の上に唇を落とす。
「あ、ありがとう。
だけどね、夢子さん」
アリスも未だに自分の手を握っている夢子の手にそっとキスをする。
「ずっと尊敬していた人に言われるのは複雑」
「うふふ、それは嬉しいことです」
夢子は嬉しそうに笑う。
アリスもそれに釣られて、嬉しそうに笑う。
「さて、神綺様のもとに参りましょうか」
「えぇ、そうね」
夢子の隣に笑いながら、アリスは自分の母とも言える存在のところに向かう。
掌の上ならば懇願のキス
「神綺様、失礼します」
コンコンとドアをノックをする。
アリスは返事が来るのをドキドキとしながら待つ。
「えぇ、どうぞ」
許可がおりたので、ゆっくりとドアを開く。
「帰ってきました」
すっと指でスカートをつまみ、少しあげる。
うやうやしく一度礼をして、目を瞑る。
「おかえりなさい、アリスちゃん」
「はい、ただいま帰りました」
よかった、一目でわかってくれた。
「近くに座りなさい」
「はい」
近くにある椅子に座る。
家から出た時は、座りきれずに足をぷらぷらとさせていたのに、もうきちんと足が着く。
「家にいなかったときの間の話を聞かせて」
「はい、喜んで」
春にならなかったときで、久しぶりに再会した魔理沙や霊夢
永夜異変で、ペアになって異変を解決したこと
地底異変で、人形から指令を送り出し解決したこと
話は話しても話しても尽きていく気配はない。
あの子達はしょうがないんだからといいながらもアリスの顔は非常に楽しそう。
なんだかんだで、まだまだ子どものところも残っているのだろう。
「それで、次は」
「ねぇ、アリスちゃん?」
次は自律人形の研究の成果を話そうと思っていたアリスを神綺はいったん止める。
「どうしたの?」
まさか、止められるとは思わず首をかしげる。
何か、変なことでも言ったのかと少し怖くなっていると
「向こうは楽しい?」
「まあまあよ。
あいつらといてると、平凡なんてばかばかしくなってしまうほど」
神綺はどこか嬉しそうに、だけど複雑そうな顔をする。
「ねえ、アリスちゃん」
「なんですか?」
そうっと手を持っていかれ、ちゅっとキスをされる。
「たまには平凡も悪くないでしょうから……
帰ってきなさい」
「はい、そうしますね」
寂しがり屋の神様のためにちょっとだけ帰る頻度を増やそうとアリスは笑いながら返事をする。
唇の上ならば愛情のキス
「お邪魔します」
アリスは神社に着くと呟くようにいいながら、縁側へ腰掛ける。
「来るのなら、お賽銭いれなさい」
「はいはい」
霊夢のいつもどおりの言葉に笑いながら対応する。
もう、これもなれたものでアリスは動じない。
「お賽銭はおいしい秋野菜じゃだめですか?」
その代わりに籠に詰め込んだ野菜を見せる。
最近の人形劇でもらったものだ。
「もちろん、プラスあなたがそれを使って作るのよね」
「残念ながらそれじゃあオーバーよ」
「あら、強欲な魔法使いさん。
じゃあ、何を望むのかしら?」
お互いがにやにやと笑っている。
その先の答えなんて知っている。
「愛情のこもったキスかしらね」
ちゅっと霊夢は頬にキスをしてやる。
アリスはぷくっと頬を膨らませる。
「愛してるわ」
霊夢はそっと頬に手をやり、唇を重ね合わせる。
たった数秒の交わり。
「ば~か」
アリスは離された唇を不満そうにとがらせ、霊夢に腕を回し、また唇を重ねる。
舌を入れようとする前に
「はい、これ以上はだめ」
「ちぇ~、残念」
アリスは靴を脱いで、家に入っていつもの要領でキッチンにいく。
「ディープキスなんてしたら……
そのままやっちゃうじゃない」
「何か言った~?」
「な、なんでもないわよ!」
腕と首ならば欲望のキス
「はあ~ぁ」
アリスは思わず溜息をついてしまう。
夏でさすような日差しも一つの原因ではあるけれど、魔女のアリスにとってそのことは些細なことだ。
それよりも、彼女を憂鬱にさせているのは
「なに、溜息をついているのよ」
花といえば思い出され、相手の心をいてつかせる風見 幽香と一緒にいるからだ。
そもそも、好きでいるわけではない。
『アリス~、弾幕ごっこしましょう』
『へ、ぇ、ちょ』
『負けたほうが一週間、相手の奴隷ね』
なんて、いきなり押しかけてきて、アリスをこてんんぱんに叩きのめしたのだ。
魔女というのは本来自分の力が最大限、引き出せる空間を魔力を使うなり、事前に準備をして、弾幕ごっこをするものだ。
パチュリーだって紅魔館の図書館が一番自分の力がいかせるから、ずっといるのだろう。
もちろん、アリスはむちゃくちゃだと抗議したがそんなものが幽香に通じるわけもなく、花畑で強制労働だ。
なんで、こんなことをと思いながらも、黙々と働いてしまうのは都会派だからか……
「もぅ、せっかく休憩しようかと思ったのに」
アリスが振り返るとそこには、無色の液体が入ったコップを二つ持つ幽香だった。
はたして、水なのかそれともアリスには想像がつかないようなものなかはわからなかったが
「う、うん、したいわ」
幽香がアリスの傍に座る。
少し距離を置いて、アリスが座る。
アリスはコップを二つ持っているので、それは自分のものなのか、ききたかったが、座れるだけでもいいかと何も言わずに座り続ける。
「のどかわいてる?」
「まあ、かわいてるわね」
「甘いの大丈夫よね?」
「えぇ、大丈夫だけど?」
幽香がポケットから何かを取り出し、コップの上で拳を作る。
ひょっとして、コップを粉々に砕いて、それでケガさせて
『自分の血でも飲んで、喉の渇きを癒しなさい』
とでも言うつもりだろうか?
なんていう危ない発想にアリスがいってると
「はい、おいしいもの」
「あ、ありがと」
コップに一つきれいなピンク色の花が水に浸されている。
私には花瓶の水がお似合いってことかしら?
アリスはそう思いながらも、喉が渇いているのは本当のことだったため、口に含む。
「あ、おいしい」
本当においしいとは思わなかったため驚いてしまう。
しばらく待っても特に副作用もなかったため、こくこくとアリスは飲んでいく。
「んっ、素直でよろしい」
幽香の優しい声と頭を撫でられるのが信じられなくて、口がぽかんと開いてしまうアリス。
「ちょっと、何やってるのよ」
当然、飲み物を含んだままなのだから口からこぼれだす。
アリスは急いでハンカチを取り出して、拭おうとしたのだが
「ぇ、あ、なに?」
幽香にぐっと肩をつかまれて動けなくなってしまう。
肩を壊されるかもしれないという恐怖で動けなくなり、せめてものとぎゅっとアリスは目を固く瞑る。
「ひぁっ、幽……香?」
「ん、ちゅ……
とってあげるんだから黙りなさい」
だが、そんなことはおこらず、アリスの口からこぼれ出た液体を舐めている。
含んでいる水が多かったからか、首元にまで液体はこぼれている。
それらもただ一心不乱に幽香は舐める。
なにが起こっているかわからないが、抵抗をしたら殺されると思い込んでいるアリスは動けない。
いつになったら終わるのだろうと思っていると、はぁ~と大きい幽香の溜息が聞こえ
「ほんと、ばっかみたい」
最後にがぶっと腕をかまれる。
声を上げそうになったのをアリスは押し殺す。
ようやく幽香はアリスの肩から手を離す。
「もう、今日は帰っていいわよ」
やりきれないというように幽香は顔を逸らす。
アリスは帰れると、すぐさま立ち上がる。
「さ、さよなら~!」
人形を引き連れて、あっという間に飛んでいく。
「ちょっとくらいは意識しなさいよ……
あぁんっ、も~!」
自分から出て行ってしまう熱を抑えるようにさきほどアリスにしたように腕をがぶっとかんでみるけど、収まるはずはない。
次会ったときは押し倒してやろうとコップの中の水を含みながら幽香は決意する。
さてその他は皆狂気のキス
紅魔館に隠されるように存在する地下室。
そこは真っ暗何もない?
「あはっ、かっわいい~!」
いや、きちんと存在している。
部屋の主の真っ暗を照らすような金色の髪のフランドール スカーレットがいる。
フランが近づくたびにじゃりじゃりっと音が鳴る。
それは、フランが破壊しつくしたものがさらに破壊されていく音。
何も無いのではない、彼女以外何も存在できない。
存在しても破壊されてしまう。
「げほっ、がほ」
その部屋の真ん中、おなかを抱えて一人の少女がうずくまっている。
さらりと流れる肩口で切られた金髪、目鼻立ちが整った姿は人形といわれてしまえば納得してしまうほどきれいな顔立ちをしている人形遣いのアリス マーガトロイド。
咳き込み、口からは血が流れている。
「どうい、つも」
ふらふらとしながらも、なんとかアリスは立ち上がる。
本来ならば、フランの地下室などよることもないアリスだが、レミリアに人形劇を見せてやって欲しいと頼まれたからやってきたのだ。
最大限の警戒をしていたが、部屋のドアを開けられた瞬間、内臓部分を蹴られるとまでは思わなかったため、気絶してしまったのだ。
いくら、アリスが人間ではないとは言え、相手は吸血鬼。
身体が壊れなかっただけでも運がよかったほうだ。
次は何をされるかわからないと魔力を練ろうとしたのだが
「あははっ、お人形さんだ~!」
ぎゅうっとフランがアリスに抱きつく。
それを払いのけるためにも魔力を練ろうとしているのだが
「な、なんで?」
全く魔力が練れない状況にアリスはあせっていた。
その様子をフランはくすくすと楽しそうに笑っている。
「やっぱり、かわいいな~」
フランが伸ばす手から逃れるように後ろに下がる。
フランがゆっくりゆっくりと迫る。
『トンッ』
入ってきた扉に当たる。
アリスは必死に出ようとするのだが
「な、なんでよ!」
だが、一向に扉が開く気配はない。
そして、じっと扉を見てようやくアリスは気づいた。
扉に魔方陣が描かれていることに……
「アリス、一緒に遊びましょ♪」
「ふざけないで!」
振り払おうと動かした手はぐっと虫を握りつぶすように握られ
「アリス、ここはね箱庭なの。
私とあなたの二人だけの世界」
「なにいってるのよ」
狂っているのは知っているつもりだった。
しかし、アリスがフランにあったのは初めて……
つまり、自分の中の定規でフランの狂気を判断していた。
狂気などというのが、おそれられるのは相手が思う以上におかしいだからなのに、その判断をアリスは見誤ってしまった。
「うっふふ~、もうね嬉しいの!
ずぅっと、見ているだけの存在がこんなにも近くにいるのよ。
ねえ、アリスはわかってくれる?」
「知らないわよ。
どうでもいいから、ここから出しなさい」
「う~ん、それは私の判断じゃないの。
お姉さまたちの判断だからね」
何かわからないけど、かつがれた?
一体、何をしろっていうのよ。
このこと友達になれって言うの?
アリスは頭を抱えてしまいたいのを我慢しながら
「じゃあ、なにすればいいわけ?」
「付き合ってくれさえすればいいの」
「はじめてのおつかいにでも?」
「うふふ、半分正解。
はじめてのおつかいができるようになるように能力の制御の練習にね」
どうして、私なんかが?と思いながらも、巻き込まれたのなら終わるまで付き合うしかないと頷こうとしたアリスだったが
「それはお姉さまたちを騙すためのただの名目」
「へぇ、狂気の妹様は何をっ」
しゅっと風を切る音と共に押し倒される。
そして、お互いの金糸が絡み合ったと思ったら
「いたっ!?」
鎖骨にフランが噛み付く。
そのまま深く深く吸い付き、赤い花が咲く。
「ねえ、いいでしょ?
今からね、アリスを私色に染めちゃうの♪
目玉も声帯も肺も心臓も全部全部キスしちゃうのっ!」
うっととした表情でフランは笑う。
笑う笑う、楽しくてしょうがないと笑い……
フランの爪はアリスを引き裂く。
そこに響き渡る声は……
悲鳴、それとも?
最後そう来るか。
ある意味、最後でさらりと流されていいのかもしれない。
最後はざまぁとしか言えない
BAD ENDちっくですが、最後のフラアリがよかったです。
り抜け。