Coolier - 新生・東方創想話

外来人報告書

2022/07/08 00:02:18
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ある男の子の場合

200X年 8月X日
発見場所:博麗神社
発見時刻:午後3時頃
迷い込んだ場所:N県A市の神社
性別:男
年齢:8歳
服装:縞々の半袖に青の半ズボン 帽子
所持品:携帯電話

 経緯

 神社の境内で子供の泣き声を聞いたので周囲を調べたところ、賽銭箱の近くに座って泣いている子供を見つける。
 相当混乱していて泣き止まず、話を聞ける状態ではなかったので茶菓子で気を引こうとしたが泣き止まず。
 仕方なく空を飛ぶところを見せてたら泣き止んでくれた。先代の報告書に感謝。
 話を聞くと祖父の実家に帰省していて、近所の神社で遊んでいたらいつの間にか知らない神社にいたという。
 規定に則り、結界を緩めて送還した。

 管理者報告

 無事外の世界への送還を確認。本人は空を飛ぶ女の子を見たと家族に話しているようだ。
 周りからは何かの見間違いだろうと相手にされていないことから介入は不要と判断。
 注)円滑な聴取のためにみだりに外の世界の非常識を見せることは、結界維持の観点から推奨できない。


ある少女の場合

20XX年 9月X日 
発見場所:博麗神社
発見時刻:午後7時頃
迷い込んだ場所:N県A市の神社

性別:女
年齢:16歳
服装:フード付きの服に黒いズボン
所持品:財布 旅行鞄 着替えや洗剤等(本人曰くお泊りセット) 黒い板(香霖堂の商品と類似)

 経緯

 いつもの宴会中に食器を下げていた紅魔館のメイドが洗い場で遭遇した。
 報告を受けた吸血鬼の様子がおかしいと感じ、問いただしたところ「先に見つけたもん勝ち」と称して攫おうとしていた。
 外の人間が妖怪にとっての獲物であることは異存はないが、この神社で、ましてや巫女の目の前で人を襲うことを見逃す事はできない。吸血鬼を負かせば諦めるとのことだったので弾幕ごっこで決めることになった。
 結果は当然私が勝利。吸血鬼は不服そうだったが、勝負のあとは明るい雰囲気で外来人と話をしていた。
 後で聞いた話では弾幕ごっこの最中も他の妖怪が彼女を狙っていたらしいが、山の巫女と人間の魔法使いが目を光らせていたおかげで事なきを得た。
 また、勝負中の私達に黒い板を向け、写真の様な音を鳴らしていたようだ。山の巫女曰く確かにバエるとのこと。

 宴会の後始末が済んでから聴取した結果、外来人は家族との不和で友人宅を泊まり歩いていたようだ。
 今日で友人宅に泊まれなくなり、他の友人の伝手もなくなり途方に暮れていたところをにわか雨に降られる。通りがかった神社で雨宿りしていたら、いつの間にか寝ていてメイドに起こされたらしい。
 外への送還は酒が入っていたので翌日とし、外来人は神社で泊めることにした。
 噂を聞きつけたのか神社の周囲に幾つか妖気を感じたので、魔法使いと寝ずの番で見張ることにしたが、彼女は外来人と話をしているうちに酔いつぶれて寝てしまった。結局私が徹夜で見張ることになった。
 翌日に朝食を摂ってから結界を緩めて送還した。

 管理者報告

 外界への送還を確認。ただし送還先が元々いた神社から約二百里と著しく離れた地点であったことから、結界を弄る際に何かしらの不手際があったと推測。酒気帯び、徹夜明け等、万全の状態でない場合に送還に臨む場合は管理者、または式に連絡すること。
 前回の外来人と同じ場所で迷い込んでいることから、同所は結界が薄くなっているのが想定される。現在は修正済み。
 また、本件の外来人は接触の多かった吸血鬼の能力の影響を受けており、不測の事態に備える必要がある。当分は管理者の監視下に置くこととする。
 本人の性格から本件を外界で触れ回られることを考慮し、幻想郷で見聞きした記憶は忘れるよう処置を施す。撮影された写真の一部についても検閲済み。


ある青年の場合

20XX年 4月X日
発見場所:博麗神社
発見時刻:午前7時頃
迷い込んだ場所:不明

性別:男
年齢:20代
服装:白いシャツに黒のジャケット 黒のズボン
所持品:黒い板 財布 揚げ物

 経緯

 朝食を取っていたら境内から怒声のような声が聞こえたので様子を見ると、男性が灯籠に罵声を浴びせ殴りかかっていた。
 話を聞こうとしたがまるで聞こえておらず怒り狂っている。泥酔もしているが揚げ物のようなものを握りしめるなど異常な様子だったので妖怪か何かの仕業とも思い周囲を確認したところ地獄の妖精が現れた。
 どうやら外来人は松明でイタズラされたようだった。正気に戻すよう命じたが、さらに狂気を強められたらしく、叫びながら持っていたものを投げつけたり半裸になったり発狂してしまったようだ。そのまま奇声をあげて神社裏の森へ走り去ってしまった。
 捜索したものの以後行方不明。妖精は退治して神社で暴れないよう叱っておいたが、あまり聞いてないようだった。

 管理者報告

 森の奥で外来人の遺体を発見。粗雑な扱いをされ、損傷が激しいことから格の低い妖怪やなり損ない、妖獣の仕業と思われる。
 人を喰らい力を強めた妖怪が現れるのが予想される。このような妖怪は分別を知らず、里の人間にも手を出しかねないので注意されたし。



ある女性の場合

20XX年 11月X日
発見場所:無縁塚
発見時刻:午前6時ごろ
迷い込んだ場所:Y県南部の森

性別:女
年齢:29歳
服装:黒の徳利セーターに青いスボン
所持品:黒い板 財布 荒縄 不快な轟音を発する根付(防犯ブザーというらしい)

 経緯

 人間の魔法使いに付き添われて神社を訪ねてくる。曰く日の出の頃に香霖堂店主が無縁塚で外界の漂着物を漁っていたら、楽器とも叫び声とも違うけたたましい音がしたので音源に向かったところ、襲ってきた妖怪に対してバンシーの力を使役する外来人を見つける。
 助ける義理はなかったが、扱いの分からない外界の道具について聞ける千載一遇の好機だと思い、博霊の名を出して退けてきた。それでも襲ってきた輩は護身用の御札で返り討ちにしたという。
 それから香霖堂に連れてこられて店主の質問攻めにされ、今度は魔法使いが入店してきて、再び質問攻めにされる。外来人は神社で聴取する決まりがあるのを思い出した頃には日が沈みかけていたそうだ。
 妖怪が活発になる逢魔ヶ時になる前に出ておけばいいものを、案の定神社までの道中で何度か襲われたらしい。珍しく食べてもいい人類ということで普段よりも手強かったが、いずれも魔法使いの力には及ばなかったとのこと。

 聴取したところ、外来人は自ら命を絶つするつもりでで樹海に来たが死ぬのが怖くなり、引き返そうとしたが迷ってしまい、気がつけば無縁塚にたどり着いたようだ。そこから神社までたどり着けるとはなんて運のいい。
 外界に帰すことを話すと、送還を拒否される。曰く外の労働は過酷で仕事が長く、眠るために家に帰ってはまた働くだけの日々。仕事場から帰れない日すらあった。そのせいで恋人とも疎遠になり、人生に絶望していたという。
 家族のことを尋ねると話したくない様子だったので聞くことはできなかった。
 当人は満身創痍で日が暮れていたことから神社に泊め、翌日人里に引き渡すこととした。

 翌日、外来人と人里に向かい外来人の処遇について相談する。
 外来人は外でゲンバカントクという大工を使役するが本人は大工ではないという不思議な仕事をしていたようだ。
 図面が読めたり建築の知識はあるので街大工に紹介してはどうかと聞くと、寺子屋の先生は、口ばかりで手を動かさなければ大工たちがいい顔をしないだろうとのこと。当人もある種のトラウマで、似た仕事はしたくないらしい。
 御阿礼の子は、外来本の不可解な内容について調べるのに役に立つ。それ以外のは古くて読めないのが問題だが、しばらくは雑用係兼食客ということで雇えないことはないという。
 当人も異存はないとのことだったので、稗田邸で女中として雇われることとなった。

 管理者報告

 稗田邸では普段は他の女中と同じように仕事をしているが、たまに御阿礼の子や鈴奈庵から外来本について相談を受けている。しかし幻想郷に入ってくる本は外来人の彼女にとっても意味不明な本が多く、あまり役に立っていない様子。
 里の人間と違って怪異に対して全く免疫がないため、付喪神や里に出入りする妖怪にとって驚かし甲斐のある相手のようだ。人間だけでなく妖怪にとっても貴重な人材。役立たせてもらう。
 先の会談が天狗の新聞でも報じられ、外界の労働の厳しさが里でも話題となっている。
 過去には外来人の話を聞いて外界への興味を持ち、結界を破ろうとする者もいたが、今回は逆に外界の恐ろしさを啓蒙する良い結果となった。
 とはいえ幻想郷の秩序のためにも、外界のことをあまり派手に喧伝しないよう釘を刺しておいた。
 自分好みな幻想郷の報告書っぽい作品が読みたいけど見つけられなかったので自分で書きました。同じような作品があれば教えていただけると幸いです
 SS?のようなものを作るのは初めてですが大変でした。SS作家って凄い。
 構成は顛末書やゲームに出てくるドキュメントっぽいイメージで書いたので現代的な書き方になりました。実際?はもっとウィットに富んだ内容でしょう。特に管理者報告。
Sierra
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コメント



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2.90東ノ目削除
某財団風味。面白かったです
3.90奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
4.90名前が無い程度の能力削除
良かったです
6.100南条削除
面白かったです
幻想郷に迷い来んだ人たちの顛末と住人たちの反応にリアリティがあってよかったです