僕がこの幻想郷に来てからもう一年が、そして椛さんに初めて会った日から半年が経とうとしていた。
魔理沙が少し幻想郷に慣れてきた僕を色々な場所を案内してくれた時、椛さんを偶然見かけた、完全に一目惚れだった…
それから僕は毎日のように椛さんに会いに行っていた。 椛さんはまだ人語を話せないかったけど椛さんの身振りや手振りで意思疎通をしていた。
椛さんに想いを伝えられないまま半年が経った。
僕は胸にあるモヤモヤした気持ちを少しでも減らすために魔理沙に教えてもらった妖怪のおかみさんがやっている鰻屋台に行っていた。
「おかみさん、うな重一つもらえますか?」
「はいっ! ただいまお持ちしますねっ!」
前におかみさんのうな重の味の秘訣を聞いた事があるが、その時おかみさんはとても照れながら炭がいいんですっと言っていた。
おかみさんもきっと恋をしているんだろうなと感じた。
「おっ、男。 …なんだまた来てたのか?」
魔理沙は僕にこの店を教えてくれる前からの常連らしい。 お代は全部ツケにしているらしいけれど……
「少なくとも魔理沙よりは来てないと思うけどね」
「まっ、そんな事はどうでもいいんだ! どうせ今日も行ったんだろ? 首尾はどうだったんだ?」
魔理沙は裏表がないからか普通は聞きにくい事でもハッキリと聞いてくる。 それが魔理沙のいい所だと思うのだけれどやっぱり少し困ってしまう。
「……いつもどうりだよ…。大体は意思疎通できてるんだけど、怖くて椛さんの気持ちは聞けないままだよ……」
「でも明日も行くんだろ? そろそろ違う方法も試してみたらどうだ?」
「違う方法かぁ……でも、もう少しこのままやりたいかな…椛さんと話すのもすごく楽しいし……」
魔理沙の言う事はもっともだけど、関係が変わってしまう事が怖い僕には中々次の一歩が踏み出せない…
「あぁぁ! なんかじれったいな! いっそ告白すればいいじゃないか!」
「えっ!? 僕の事を好きかどうか分からないから悩んでるのに!?」
「それがどうしたんだよ! そうやってうじうじしてるよりよっぽどいいと思うぞ お前はアイツを何があっても好きでい続ける覚悟があるんだろ? だったら問題ないはずだ! 当たって砕けてみろ!」
魔理沙が簡単そうに言うと本当に簡単にできそうに思えてくる。
「当たって砕けたくないから悩んでるだって言ってるのに… でもそう言われると悩んでた僕が馬鹿みたいに思えてきたよ」
「なんだよ!? それ言い方だと私が馬鹿みたいじゃないか!」
「そんなことないよ。魔理沙のおかげで元気が出たよ、本当にありがとう」
「やめろよ、急に礼を言われると照れるぞ。 でもそう言うって事は…」
「うん、魔理沙の言う通り椛さんに告白してみるよ!」
「よし! その意気だ!」
翌日…椛さんの家に向かう。行くと決めたのに緊張して体が震えそうになる。それでも僕の気持ちをきちんと伝えるためにも行くのをやめる訳にはいかない。
「椛さん~? 少し話したいことがあるんだけどいいかな?」
「がう? がうあうがう」
「も、椛さん、真剣な話だから聞いてほしい。」
「がうがう、がうあ!」
「僕はっ、も、椛さんの事が、好きなんだっ!!」
「が…がうあー!? がうあうがうあー!! がぅ…がうあうあぅ……」
い、言った……これで椛さんの気持ちが……
「が…がうわぅあー!!」
「えっ!? 椛さん…!?
どこに行くのっ?!」
僕はどこかへ走り去ってしまった椛さんをただ立って見ている事しかできなかった…
「そういえば昨日の晩に魔理沙が『明日はおもしろい事が起こるんだぜ!』とか言ってましたけど、今度は何をしてくれるのでしょうか? わたしはスクープになるネタをもらえればそれでいいのですけど、魔理沙ですからね…」
わたしが少し嫌な予感を感じながらそんな事をつぶやいていると、椛が飛んでやってきた。
「がう!がうがうー、がうわ、がうあうがー!」
「あら椛、どうしたのそんなに慌てて…って男がどうしたって?!」
椛が慌ててしゃべるせいで上手く聞きとれない。
「がー、がうがうがあ!!」
「なっ、男に告白された?! どういう事なの?!」
わたしの予感が当たったらしい。どうして魔理沙はいつも厄介事を起こすのかしら……
「がうあー、がうーがうがう!」
「そう… 椛はどう思ってるの?」
この子も男さんの事を好きだったはず、これはいい機会なのかもしれないわね……
「が…がう、がうあ、がうあぅ!」
恥ずかしそうに、でもはっきりと自分の気持ちを言う椛を見てわたしは期待してもいいのかもしれないと思った。
「貴女は覚悟する事ができる? 結ばれても最後には必ず貴女が独りぼっちになってしまうのよ。貴女はそれに耐える事ができるの?」
「…がう!
がうわうが、がうわうがうがうあー!」
「分かったわ…椛、貴女はここで待ってなさい、少し男さんと話してきますから」
「が、がう……」
椛さんが行ってしまった方向から文さんが飛んで来た。
「あっ、文さ…」
「男さん、一体椛に何をしたんですか?」
「も、椛さんに好きだって伝えまし…」
「そんな事は分かってるんです! 貴方はそれがどういう意味になるのか分かってるのかを聞いてるんですよ!」
「少しは分かってるつもりです。 たしかに僕たち人間の寿命は椛さんたちと比べたら一瞬かもしれないです… でも重要なのはそんな事じゃないと思います!」
「大事なのよ。 わたしはあなたの何倍も生きてきて何回も同じ状況を見てきたの。 たしかにあの子も貴方の事を憎からず思っているはずだわ。でもそれだけじゃだめなの。 あなたは人間であの子は妖怪…これだけの差だけれど、この差には絶望的な差があるのよ」
「……僕は、好きな人と一緒にいると幸せになれるから一緒にいたいんだと思うんです。だからそんな差は関係ないと思います」
「貴方は分かってないわ。貴方は死ぬまであの子がそばにいてくれるでしょうからきっと幸せでしょう… でもあの子はどうなるの? 大好きな貴方がいない世界であの子は生きていかなければいけないのよ……」
「…文さんのいってることは正しいのかもしれないです。それでも…絶対に別れが避けられないとしても、最後までそばにいたいと…そう思うことが好きっていう感情なんだと思います。だから僕は人間と妖怪という差なんかで諦めたくありません!!」
「貴方はそんな感情論だけで椛を幸せにできると思ってるの?」
「思います! 僕は好きな人が嬉しくなると自分も嬉しくなれると信じています。そしてどんな事があっても椛さんのそばで幸せであり続けて椛さんを幸せにするという覚悟を持つことを決めたんです!」
「貴方も椛と同じ事を言うのね… 貴方にもそこまでの覚悟があるなら、もうわたしが言える事はないわ」
「えっ!? て事は……!?」
「勘違いしないで。後はあの子が決める事だからわたしから言える事はないだけよ」
「文さん、ありがとうございます!!」
「わたしはお礼を言われるような事をした覚えはないわ。……それにしても人間にも貴方みたいな人がいるのね…」
「あれっ!? さっきは何人かいるみたいな事言ってませんでしたか?」
「あぁ、あれ? あの状況だったから少し大げさに言ったのよ、実際は1,2回、覚悟も考えもないお馬鹿さんたちがやっただけよ。…もうこの話はおしまいにしましょう、椛を呼んでくるわ」
「あっ、はい…」
文さんはそう言って飛んでいった。
「椛っ」
「がうっ!? がうー、がうわう?」
「貴女は人を見る目があるのね。男さんの覚悟と貴女が大好きだという事がよくわかったわ」
「がぅ…… がうわうー、がうあうがう!」
「貴女もお礼を言うのね……まぁいいわ、貴女には一つだけ誓ってほしいの」
「がうがう?」
「絶対に幸せになって! それだけは誓って…」
「がうがうー!! がうが、がうあ!」
「ふふっ、でもその前に貴女は人語を話せるようにならないとおけないわね」
「がうがっ!?」
「大丈夫よ、わたしが教えてあげるから。そのかわり早く覚えるのよ、二人きりで話したい事もあるでしょう?」
「がうぅー、がうわぅ」
「はいはい、それじゃあ行くわよ?」
「がうっ?」
「あっ文さん、それに椛さんも」
「がうわ、がうー、がうがうわうあ!」
「だって貴女こうしないと来なかったでしょ?」
「がうわうがぅ…」
「そんなに怒らないでよ…」
文さんと椛さんが小声で何か話してるみたいだ。
「男さん、この子の事絶対幸せにしてくださいね!」
「…っはい!!」
「じゃあする事分かってるわよね?」
「……はい…?」 「……がう…?」
「はい…?じゃないわよ。キスよ誓いのキス、この状況なら当然でしょ? わたしがこんなスクープを見逃すはずないじゃないですかぁ」
「あ、文さんっ、何言ってるんですか!?」
「いや、別にいいんですよ。それならそれで貴方の覚悟がそんなものだったって事が分かりますから」
「うっ……わ、わかりました… っで、でも椛さんがい、いいって言ったらですけど……」
「椛、貴女はどうなの?」
「が、がうあぅ…」
「ほら、椛もまんざらじゃないみたいし」
「わ、わかりましたよ…」
「分かればいいのよ。ちゃんと写真撮ってあげるからっ」
文さんのいきなりの言葉に動揺を隠せないでいると……
「何ぼーっとしてるの、わたしを待ってるネタはたくさんあるのよ! ネタは早くしないとなくなっちゃうのよ!」
「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ。ぼ、僕にも心の準備が……」
「いいから早くするのよ! もう椛はとっくに準備できてるわよ!」
「えっ!?」
「……が、がぅ……」
消え入りそうな声に合わせて首が縦に振られる。
「…………」
心臓の鼓動が自分でもびっくりするほど早く、緊張で唇が乾ききっている…
それでも心を決めるしかないみたいだ……
「もっ、椛さんっ!」
「が、がうがっ……」
きっと妖怪と人なんて釣り合わないと言われるのだろう。それでも僕はいつか釣り合っているとみんなに言ってもらえるぐらいの幸せを椛さんと共に手に入れる事を心に固く誓った……
カシャッ
猫車さんのあの絵は可愛いよね!
まあ、ただこの話をSSとして見るとかなり問題点が多いように見受けられます。
まず、台詞の前に名前を書いて○○「」というように台本形式にするのはNGなのでこだわりがない限り地の文で誰が発言しているのかわかるようにした方がいいかと。それに///みたいな記号も視覚的に解りやすくて便利ですが、それも出来るなら地の文で描写を。
あと、一人称俺と言ったり、むりやり「ぜ」を連呼する魔理沙もなんとかしたほうがいいかも。
別に二次創作なんだから「俺の中の魔理沙はこうなんだ!」といっても構わないと思いますが、そういうこだわりが特にないなら波風立たせない方がいいかなあと思います。
初めてということなので、これからもがんばってください。
今度はがうがうだけで物語を作ってほしい。
ついついタイトルでクリックしてしまったら……え?結構面白かった
これが「がうがう」の力なのですか;
という冗談は置いといてジャンルの割に結構面白かったです。
次作にも期待してます。