Coolier - 新生・東方創想話

東方相棒風 1

2011/05/03 00:53:49
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  かごめ かごめ かごの中の鳥は いついつ 出やる・・・・・


「随分とご機嫌ね。遅かったじゃない」
 門の影から聞こえた冷淡な声に、彼女は文字通り飛び上がった。
「し、師匠!た、たた、ただいま戻りました。遅くなりまして申し訳ございません・・・・・・」
 思わず落とした風呂敷包みから、里で買ってきた野菜だの油揚げだのが飛び出して門前に散らかったが、それを拾うこともできずに彼女は縮こまる。永遠の時間を生きているくせに、時間にルーズなことをすると師匠は激怒する。ちょっとお茶するくらいいいかと思ってついつい話に花が咲いた、なんて言った日には罰として何をされるやら、と彼女は冷や汗を浮かべたのだが。
「ちゃんと、お使いはしてくれたのよね?・・・・・言伝じゃなくて、本人に渡した?」
「え、は、はい。お届けしました」
「そう、ご苦労様・・・・・・さっさと荷物拾いなさい。晩御飯の支度、もうそろそろ始めて頂戴」
 それだけ言うと、主は家の中へと姿を消した。あまりにあっさりとした会話に、彼女は拍子抜けしてへたり込む。
(今日はどうしちゃったんだろ、何か考え事?新薬の開発中?・・・・・・まあ怒られなかっただけラッキーかな)
 そのまま散らかった食料を集めながら、鈴仙はあれっと首をかしげた。
(こんなにたくさん食料買ったっけ?)




  夜明けの晩に 鶴と亀が滑った 後ろの正面・・・・・




 わらべ歌が不意に止む。ぬいぐるみを抱く手にぎゅっと力を込めて、少女ははっと顔を上げた。
「・・・・・・何者の気配かと思うて覗いてみれば、これは面妖な」
「誰?」
 返事を待たずに、少女は目も留まらぬ速さでぬいぐるみを相手に投げつけた。避ける間はない。だがそれが相手に当たることはなかった。
 風を切るような音と同時にぬいぐるみの頭と胴が離れる。次の瞬間、その両方が内側から弾けた。部屋いっぱいに飛び散った綿くずの中で、少女がにいっと笑みを浮かべた。
「遊んでくれる、ヒトなんだね?」
「・・・・・・お主がそれを望むのならば」
 瞳に歓喜の色を浮かべ少女が手を伸ばす。シュッという音がして気配が逃げる。追いかけるように少女は宙を舞い、何かをすり抜け、そして。

「え・・・?」
 夜風が顔に直に当たる。紛れも無くそこは建物の外だった。背後より低い声がささやく。
「その力は自由に使うべき力。あのような閉じた空間に居るべきものではない」
 全身に月光を浴びて、奇妙な形の羽根が七色に輝く。少女は歓びに体を震わせた。
「ありがとっ。思いっきり行くよ!」
 返事は無いが、相手が構えたのを見て少女は容赦なく拳を突き出す。溢れる力は炸裂する前に散らされる。滅多にない経験に少女は興奮し、周囲に力を解放しながら叫んだ。


 ――アナタハ、ダァレ?  





***



 どんなに厳しい冬の冷え込みの中でも、日差しと温かな飲み物があれば、そこは憩いの場所になりうるもの。
 博麗神社の縁側もそんな場所のひとつで、今日も陽だまりの中で巫女と友人の魔法使いはお茶をすすっていた。
 傍目から見れば平和そのもので、なんの文句のつけようも無い。だが当人たちはこの日常に満足しているわけではないらしい。

「暇だな」
「あら、私は暇じゃないわ。毎日のお勤めもまだ終わってないし」
「境内の掃除か?あれほど不機嫌そうな顔してやってたら、神様も喜ばないぜ」
「だって寒いし、掃いても掃いてもキリないし」
「それ、掃除が嫌いって言ってるのと一緒だって。宴会の準備とかさっさとするのに、掃除となると動きが鈍いんだから」
「万年ガラクタだらけの家に住んでるあんたに言われたくないわ・・・・・優先度合いが低いだけよ」
 ほらやっぱりな、と言って魔理沙はせんべいを手にし、霊夢はお茶をすする。他の季節ならば花見だとか星見だとか紅葉狩りだとかキノコ狩りだとか、それなりにやることもあるのだが、冬は寒いというだけで腰も重くなる。大人数を呼んで鍋を囲んでの宴会という、冬ならではの楽しみは確かに存在するのだが、さすがに毎日することでもない。
「・・・・・・暇ね。異変でも起きればいいのに」
「だよな」
 今日もまったりと時が流れていくかと思われたその時、視界の隅に黒い影が高速で掠めた。


「暇ですか~?おやぁ、つまんない顔して。やっぱり今日も暇そうですねぇ」
「つまんない顔とはなんだよ!」
 空に向かって声を張り上げた魔理沙の顔に容赦なくフラッシュをたきながら、鴉天狗が舞い降りた。降下中に号外を二人に投げつけるという芸当を見せながら、である。
「暇だ暇だって言ってるだけじゃ暇は逃げてくれませんよ。私のように事件を追って西へ東へ飛び回ればいいんです、そうすれば、この通りスクープが」
「あんたのスクープはどうせ自家製でしょ」
 溜息まじりで霊夢は、魔理沙が避けたために地面に突き刺さった号外に手を伸ばす。自分のところに飛んできた方は容赦なく叩き落したので、既に読めるような形状をしていないのだ。
「・・・・・・妖怪の山にて散発的ながら大規模戦闘。当事者は不明、巻き添えで哨戒天狗が数名ケガ。なによ、これ」
「ね?それが私、射命丸文様が取って来た一大スクープですって」
「自分のとこの天狗のケンカがスクープかよ。足元ほじくるって、やっぱ大したことないな」
「天狗はケンカなんかしません。れっきとした事件です」
 魔理沙は笑い飛ばしたが、霊夢は新聞を食い入るように見つめている。
「なお、戦闘はスペルカードルール無視の激しいものだった模様、樹齢数百年の樫の木が三本倒れ、他十数本も類焼・・・守矢神社の風祝の活躍で被害は食い止められ、当事者は消滅。事なきを得た」
「何だって、早苗が?消滅?!」
 やっと興味を持って魔理沙が覗き込んだ新聞には、目の横でVサインをしている早苗の写真がでかでかと載っていた。

「・・・・・・早苗だったら哨戒天狗たちと顔見知りだよな。じゃあ奴らのケンカじゃないか」
「というか、スペルカードルール無視って何なのよ」
「いくら常識の無い早苗でもそれはないだろ・・・・・・おい、続きがあるぜ」
「同様の戦闘が紅魔館周辺や人里付近でも発生したとの目撃談あり。これって・・・・・・」
「異変だな」
「異変よね」
 同時に口にした二人は、そのまま文に背を向ける。
「ほら~、文文。新聞はちゃーんと時事情勢を追いかけているでしょう。買いですよ、買い・・・・・って、あれ」
 文が気づいたときには、紅白と黒白の姿は妖怪の山の方角の空、遥か彼方に消えていた。



***


  
「あら、霊夢さんに魔理沙さん。霊験あらたかな守矢神社にご参拝ですか。どうぞどうぞ、みらくる☆風祝の早苗がご案内いたします」
「・・・・・・早苗、忠告だ。調子乗らないほうがいいぜ」
 一言も喋る前からこめかみに青筋を浮かべた霊夢を抑えつつ、魔理沙は守矢神社の鳥居をくぐった。
「あらすみません。もうどうせ中もご存知ですよね。どうぞどうぞ、今日はいいお茶菓子ももらいましたし、ぜひ上がってください」
「お茶をたかりに来たんじゃないの!」
 いかにも参拝者が多くて賑わっています、と言わんばかりの大きな賽銭箱や、金色に輝く鈴を横目で睨んでますます不機嫌になった霊夢がぴしゃりと言い切る。これは霊夢に任せていては聞きだせることも聞き出せない。魔理沙は一歩前に出て、文文。新聞を突き出した。
「お前に聞きたいことがあるんだ。この記事なんだが」
「わぁ魔理沙さん、ちゃんと読んでくれたんですね、嬉しい。あの日は私、頑張ったんですよ。久しぶりの大物相手でしたし、ほっといたら火事広がっちゃいそうだったんです」
「その話、詳しく聞かせてくれ。相手はどんな奴だ?スペルカードルール知らないって書いてあるけど、どんな戦闘したんだよ」
「スペカルールについて聞いたわけじゃないですよ。でも知ってるはずが無いと思いますし、第一、一言も喋ってませんし。あ、まず人魂って口あるのかな・・・・でもインベーダーに耳が無いか」
「はあぁ?」

 全く用を成さない証言に魔理沙まで苛立ちを覚え始めたとき、早苗はにっこりと笑ってこう言った。
「戦闘の当事者は人じゃなくって、異種格闘技っていうか・・・・・えっと、古式ゆかしい幽霊と、外の世界で見たゲームのキャラクターだったんです」






 ゲームの中で敵として表示されるものがわんさかいて、幽々子や妖夢の半霊よりももっと幽霊っぽいものと争っていたのだと早苗は言った。どこから現れたのかも分からないが、哨戒天狗が攻めあぐねていたからとりあえず弾幕を全力で打ち込み、火が広がりかけたので奇跡の力で雨雲を呼んだのだという。  
「でもね、有象無象って感じで、お互い敵だと思ってるというより、とりあえず出会っちゃったし攻撃しておくか、みたいな感じでしたよ・・・・・・攻め込んでやるっていう統一感がないっていうか。エイリアンvsプレデターとか観ておけばもっと理解できたのかなぁ。あ、これってまさか異変ですかぁ?」
「まだわかんないわ。とりあえず、また何か起きたら私たちにも教えなさいよね」
「えー、異変でしたら私でも解決できますよ!ほら命蓮寺さんの時だって、私の活躍で・・・・・・」


 これ以上の情報は出そうにないと判断した霊夢と魔理沙は、もっと喋りたそうな早苗を振り切って神社を後にした。
「・・・・・・今の話、どう思う」
「そうねえ・・・・・・早苗はあんな子だけど、ウソをつく子じゃないわ。でも、幽霊はまだしも外の世界の空想の怪物が出たって言われてもね」
 にわかには信じがたい話ではある。幻想郷は博麗の巫女と紫による二重の結界に囲まれているから、そう簡単に外のものが入り込むことはない。だがあり得ないことではない。現に外からやってきた早苗が居る。その彼女が外のものと出会った証言している。
「無縁塚なら、よくこーりんが外のものを拾いに行くって言うけど、ここは妖怪の山だぜ・・・・・・あ、にとりだ」
 地上で手を振る河童を見つけ、魔理沙は高度を下げ霊夢が続く。二人が降り立つと、にとりは満面の笑みで迎えた。
「やあ、にとり。何かご機嫌じゃないか。いいことでもあったか」
「ご機嫌もなにも、絶好調だよー!だってさ、香霖堂まで買い物に行かなくてもこの頃近くでいっぱい物が手に入るからね、嬉しくって。改造しまくりさ」
 にとりが振り返って指差した家の前を見て、霊夢と魔理沙は思わず息を飲んだ。
 ブラウン管テレビにテープレコーダー、画面とボタンとスティックのついた机形ゲーム機、レーザーディスクにポケベル、8mmカメラ、CDウォークマン・・・・・・
 ほとんどの名前を二人は知らなかったが、明らかに外の世界の道具とわかるものが山ほど積み上げられていた。




***



 霊夢と魔理沙が早苗の話を苛々しながら聞き始めたころ。
 守矢神社の奥の客間では、張り詰めた空気が漂っていた。
「言いたいことははっきり言ったらどうだ」
「申し上げたとおりです。早苗殿はこの妖怪の山でいつも通り、お二方におかれましては早苗殿をここで静かに見守ってくだされば、と」
「要するに、早苗をこの近辺から外に出すな、私らには静かにしていろ、ということだろ」
「・・・・・・解釈はお任せいたします」
「それは、妖怪の賢者殿の意思か」
「わたくしの言葉は主の言葉、八雲の総意でございます。お忘れなきよう」
 慇懃に頭を下げているようで、言葉の端々に見下したような態度が見え隠れする九尾の狐に、神奈子は苛立っているようであった。
「それならば、八雲紫本人が頭を下げに来るべきではないのか」
「あいにく主人はこの時期は動けませぬ故、わたくしがはばかりながら代理で参りました・・・・・・悪い話ではございますまい。お二方は安泰。早苗殿も楽しそうであられる」
「・・・・・・分かった。その提案、飲もう」
 言葉を返そうとした神奈子を制するかのように、横から諏訪子が声を上げ立ち上がる。
「おい、諏訪子」
「いいじゃないか、神奈子。これは八雲に対する貸しだ」
「さすが、物分りが良くておられる」
 うっすらと笑みを見せた藍を見上げ、諏訪子は一本指を立てた。
「今回は私たちは動かない。約束しよう・・・・・・だが一つ教えてくれ。なぜに介入を嫌がる。お前の主も冬眠中なら、起きてる者に手を汚させれば済むはず」
 諏訪子のまっすぐな視線に藍の目が僅かに泳ぐ。フッと息をついて一旦目を閉じると、藍は尋ねた。
「・・・・・・もし、お二方が早苗殿が起こした事態が異変と呼ばれるとしたら、お二方は他の者に手を下させますか」
「え・・・」
 そういうことですよ、とつぶやく藍の表情は心なしか疲れているように見えた。  
初めまして、緑茶と申します。
天才型の霊夢と努力型の魔理沙のコンビを見ているうちに、某・水9刑事二人物ドラマと重なってしまい、勢いで書き出しました。勢い余って、初投稿で長編・・・(汗)
どこかで見たような居酒屋シーンやら胡散臭い上司やら「暇か」が口癖の誰かさんやら出てきますが、ドラマとは一切関係ありません、念のため。
もちろん「そんなドラマ見てねえよ!」という方でも読めるように考えつつ、キャラを歪ませないよう書いたつもりです。
よろしければ今後ともお付き合いくださいませ。
緑茶
[email protected]
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コメント



0.230簡易評価
5.10名前が無い程度の能力削除
これは酷い
8.10粘土削除
詰め込みすぎでバラバラ?
某刑事ドラマな感じも今のところあまり無い。
今後の成長に期待!
9.30名前が無い程度の能力削除
もう少し整理した方が良かったかもですね。
ストーリーにちょっとついていけませんでした。
雰囲気いい個所もあるし、書ける方だと思いますので今後に期待します。
11.30名前が無い程度の能力削除
今の時点では某ドラマの気配は感じられないな……
話の焦点も分かりづらいし、2話では物語の方向性が見えるところまで書ききったほうがいいんじゃないでしょうか
続きに期待します