「なぁアリス、私さ…チーズを見ていると思うことがあるんだ」
「どうしたのよ突然?」
いつものように私の家に遊びに来た魔理沙が突然、深刻な顔をして呟いた。
さっきまで人間の里でもらってきたと言っていたチーズと睨めっこしていたと思ったら、唐突になにを言おうというんだろうか。
そもそも、チーズを見ながらなんでそんな真剣な顔をしているんだろう。
「チーズ見てるとさ、アリスとキスしたくなるんだ」
「はぁ!? い、いきなりなに言ってるのよっ!?」
突拍子もなく恥ずかしいことを言われてドキっとする。
ど、どうしてチーズから私とのキスに結びつくのよ!?
「いや、だってさ…チーズといえばキスだろう?」
「えっと……………はい?」
「チーズと言えば、ちゅっちゅじゃないか」
「…いや、なんでそうなるのよ」
魔理沙の説明のわけの分からなさに目が点になる。
い、いったいなにを言ってるのかしら…?
「チーズと言えばネズミ。ネズミといえば泣き声はちゅうちゅう。ちゅっちゅはつまりキスのこと。ほら、チーズイコールキスだろう?」
「いや、それあまりにも無理やりだから…」
あまりに強引なこじつけすぎてため息が漏れる。
ねぇ魔理沙、ギャグにしてもそれはレベルが低すぎじゃないかしら…。
「私がキスする相手はアリスしかいないわけだから、チーズを見るとアリスとキスしたくなるのは仕方ないことだな」
「あ~……どこから突っ込めばいいのかしら…」
恥ずかしいことを言われてるはずなのに、残念な感じの魔理沙のせいで全く恥ずかしくない。
なんというか、呆れてものも言えないとはこのことね…。
「なんだよアリス、そんな残念な子を見るような目で私を見て」
「もしこの場に他の誰かが居たら、間違いなく私と同じ目をしていると思うわ」
これだけは自信を持って言える。
この場に誰かいたら絶対同じ目をするに決まってるわ。
だいたいなによチーズ=ネズミ=キスって、ムチャクチャすぎるわよ。
「大丈夫だぜアリス、他には誰もいないから遠慮なくイチャイチャできるぜっ!」
「そ、そんなことを心配してるんじゃないわよばかっ!」
な、なんで魔理沙は基本そっちに思考がいくのかしら!
大体こんな分けの分からないノリでイチャイチャなんかしたくないわ!
「他に誰も居ない上に目の前にチーズがあることだし、ちゅっちゅしようぜアリス」
「いや、後半の理由がおかしいでしょ!? というか、ホントにチーズイコールキスだって言い続けるわけ!?」
「当然だぜ。これは幻想郷の常識…いや、宇宙の真理と言っても過言ではないな」
「幻想郷始まって以来の過言よきっとっ!」
もはや幻想郷縁起に載ってしまってもおかしくないくらいの過言だと思うわ!
そんなことで引き合いに出されるほど幻想郷の常識や宇宙の真理は安いものじゃないわよ!
「まぁとりあえずキスしようぜアリス。大丈夫、チーズの神様もきっと後押ししてくれるさ」
「チーズの神様公認なのそれ!? というか、そんな神様に後押しなんてされたくないわっ!」
チーズの神様っていよいよおかしなことになってきたわね…。
というか、魔理沙まさか怪しい宗教に嵌ってるわけじゃないわよね…?
「まぁまぁアリス、とりあえずちゅっちゅだ。まずそれからチーズについては考えよう」
「いや、事の発端置いといちゃだめよッ! というか最初からキスしたいだけでチーズなんてどうでもいいんでしょ!?」
絶対魔理沙面倒くさくなってるでしょ!?
そこ置いといたらこの会話が成り立たないわよ!
「どうでもいいってことはないだろ!? 世界中のチーズたちに謝るんだアリスっ!」
「そこで怒るの!? 今までの人生の中で一番理不尽な理由で怒られてるわ私っ!」
ここで怒る意味がわからないわよ魔理沙っ!
ホントにあなたチーズ関連の変な宗教とか入ってないわよね!?
魔理沙の意味のわからなさに面食らい、一歩後ずさりすると踵がなにかにぶつかる。
―――そこで異変に気づいた。
「!? い、いつの間にか壁際に追い詰められてる…!?」
突っ込みに必死で気づかないうちに、いつのまにか退路を断たれていた…!
くっ! まさか今魔理沙が怒鳴ったのはそういう意味だったの!?
「ふっふっふ、今頃気づいても遅いぜアリス。これもチーズ神の思し召しだ…!」
「くっ…チーズ神恐るべしね……! ってだからチーズ神ってホントにいるの!?」
流れで認めそうになったけど、そんな神様いるなんて思えないんだけど!
だ、だけどいつも力押しの魔理沙からは考えられないこの作戦は、やはりそのわけの分からない神の入れ知恵なんだろうか…!?
「さぁチーズ神の威光をその身に感じるといい! 発酵「チーズオブラウンドテーブル」!!」
「ちょっ!? それ私のスペルのパクリじゃない!!」
魔理沙がスペルカードを掲げ明らかに私のパクリと思われるスペルカード名を告げると、机の上にあったチーズがふわりと浮き上がり、円陣を組んでゆっくりと回り始める。
「ち、チーズが空中で円形に陣を組んで回ってる…! こ、これが完全に私のスペルをなぞったものだとしたら…」
恐らくあれは私の“騎士「ドールオブラウンドテーブル」”を真似たもの。
あれは円陣に展開した槍を持った人形が、一斉に突きを放つものだ。
つまりそこから予想できる攻撃は……
「や、やっぱり突っ込んできたぁ!?」
足元に一直線に突っ込んできたチーズを寸でのところで避ける。
あ、危なかった…。意外にスピードも早いし、動きを予想できてなかったら間違いなく当っていたわね…。
「諦めるんだアリス。次の瞬間このチーズ達が一斉にお前に襲い掛かり、そのチーズの攻撃がかすりでもすればチーズ神の力でキスせざるおえなくなるんだからな!」
「な、なんて恐ろしい能力なのチーズ神! ってそれ明らかに洗脳の類よね!?」
一つでもかわすのが大変だったのに、あの数が同時に来られたら避けるのは不可能だろう。
こちらの敗北は必至。だとしたら手段なんて選んでられない…。
こ、こうなったら…!
「やめて魔理沙っ! こんなよくわからないノリであなたとキスしたくなんてないわ! 私達の間はそんなチーズなんてものに頼らなきゃキスも出来ない間柄なの!?」
「あ、アリス!? そ、そうだな…私間違ってたぜ…。私達の愛はチーズ神の力を借りなきゃいけないほど弱いものじゃなかったよな…!」
必死な呼びかけに魔理沙も心を打たれたように、手にしていたスペルカードを取り落とす。
そう、チーズなどには消して私達は負けたりしないのだ!
「魔理沙…」
「アリス…」
どちらともなく歩み寄り、互いに優しい笑みを浮かべる。
そしてあと一歩で距離がゼロになるというところで私は―――
「スキありッ!!」
―――魔理沙の腹部に渾身のストレートを放つッ!!
「ぐはぁっ!?」
完全に油断していたのモロに私の拳を受けた魔理沙は、バタリと床に崩れ落ちる。
「あ、アリス……ど、どうして…!」
信じられないという表情で顔だけをあげ、こちらに疑問の視線を送ってくる魔理沙。
その哀れな顔を見下ろし、ニヤリと口元を歪め敗者への情けに理由を告げてやる。
「騙まし討ちも……立派な戦術の一つだと思うのよね」
「は、謀ったなアリス……ガクッ」
悔しそうに呟きながら、それで魔理沙は力尽きたように気を失う。
ふふん、戦術で私に勝とうなんて100年早いのよ。
勝利の余韻に浸りながら、この後のことを思案する。
魔理沙のことはとりあえずこのまま寝かせておいて、事の発端になったチーズを片付けてしまった方がいいかもしれない。
魔理沙が目を覚ましたときに、また同じ展開になったら面倒だし。
そう考えをまとめ、魔理沙から目を離し前を向くと―――チーズが宙に浮いていた。
「って、なんでまだチーズが浮いたままなのよ! 魔理沙は気を失ったはずなのに!?」
あれは魔理沙の魔法によって浮いていたはずだから、魔理沙の意識がなくなれば床に落ちるはずなのに!?
混乱する私に向かって、さっき魔理沙が宣言したとおりチーズが一斉に突っ込んでくる。
不意を突かれたことでかわすことも出来ず、手首と足首を中心に被弾してしまった。
「きゃあっ!? な、なにこれ!? チーズなのに全然剥がれない!?」
さっきまで固形だったはずのチーズは、一瞬液体化したかのように私の手首と足首を壁に固定し、まるで鳥もちのように粘ついて剥がすことが出来ない。
「ふっふっふ、残念だったなアリス」
「ま、魔理沙…!?」
私が張り付いたチーズに夢中で目を離していると、いつの間にか魔理沙が起き上がり不敵な笑みを浮かべている。
「な、なんなのよこの意味のわからないチーズは!? それにあなたが気を失ったのになんで勝手に動いたのよ!?」
混乱して手足をバタつかせている私に向かって、魔理沙は口元を吊り上げ勝ち誇ったように言い放つ。
「騙まし討ちって、立派な戦術の一つだよな」
「くっ…!」
さっき自分が得意げに言った台詞をそのまま返され、悔しくて歯噛みをする。
く、悔しい…! じゃあさっき気を失ったように見えたのも演技だって言うの!?
「さて、じゃあ私をだまし討ちするような悪い子にはお仕置きが必要だな…」
言いながらこちらにゆっくりと近づいてくる魔理沙。
その背後にはなぜかたくさんのチーズが浮いていて、まるで主の命を待つ騎士達のようだ。……チーズだけど。
だ、だけどさっきの話の流れから、魔理沙は私にキスしたいだけみたいだし…この流れでするのは癪だけどそれぐらいで済むなら怖がる必要はないかもしれないわね…。
そう考え落ち着きを取り戻した私に、魔理沙から非常な一言が放たれる。
「なぁアリス……別にキスって―――口以外にしたって構わないよな?」
「…………………………………へ?」
く、口以外……?
口以外ってそんなの……えっ?
い、今の抵抗できない状況でそんなのダメに決まってるわよ…!?
「ま、待って魔理沙! ご、ごめんなさい! 不意打ちしたのは謝るから! 普通のキスならいくらでもしていいから! だからそれはやめ―――」
「―――問答無用だぜッ!!」
「きゃあああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!」
…………―――その後のことは、もう思い出したくもないわ…。
とりあえず、チーズには金輪際係わり合いになりたくないわね…。
チーズって、ホントに怖いわ…。
「どうしたのよ突然?」
いつものように私の家に遊びに来た魔理沙が突然、深刻な顔をして呟いた。
さっきまで人間の里でもらってきたと言っていたチーズと睨めっこしていたと思ったら、唐突になにを言おうというんだろうか。
そもそも、チーズを見ながらなんでそんな真剣な顔をしているんだろう。
「チーズ見てるとさ、アリスとキスしたくなるんだ」
「はぁ!? い、いきなりなに言ってるのよっ!?」
突拍子もなく恥ずかしいことを言われてドキっとする。
ど、どうしてチーズから私とのキスに結びつくのよ!?
「いや、だってさ…チーズといえばキスだろう?」
「えっと……………はい?」
「チーズと言えば、ちゅっちゅじゃないか」
「…いや、なんでそうなるのよ」
魔理沙の説明のわけの分からなさに目が点になる。
い、いったいなにを言ってるのかしら…?
「チーズと言えばネズミ。ネズミといえば泣き声はちゅうちゅう。ちゅっちゅはつまりキスのこと。ほら、チーズイコールキスだろう?」
「いや、それあまりにも無理やりだから…」
あまりに強引なこじつけすぎてため息が漏れる。
ねぇ魔理沙、ギャグにしてもそれはレベルが低すぎじゃないかしら…。
「私がキスする相手はアリスしかいないわけだから、チーズを見るとアリスとキスしたくなるのは仕方ないことだな」
「あ~……どこから突っ込めばいいのかしら…」
恥ずかしいことを言われてるはずなのに、残念な感じの魔理沙のせいで全く恥ずかしくない。
なんというか、呆れてものも言えないとはこのことね…。
「なんだよアリス、そんな残念な子を見るような目で私を見て」
「もしこの場に他の誰かが居たら、間違いなく私と同じ目をしていると思うわ」
これだけは自信を持って言える。
この場に誰かいたら絶対同じ目をするに決まってるわ。
だいたいなによチーズ=ネズミ=キスって、ムチャクチャすぎるわよ。
「大丈夫だぜアリス、他には誰もいないから遠慮なくイチャイチャできるぜっ!」
「そ、そんなことを心配してるんじゃないわよばかっ!」
な、なんで魔理沙は基本そっちに思考がいくのかしら!
大体こんな分けの分からないノリでイチャイチャなんかしたくないわ!
「他に誰も居ない上に目の前にチーズがあることだし、ちゅっちゅしようぜアリス」
「いや、後半の理由がおかしいでしょ!? というか、ホントにチーズイコールキスだって言い続けるわけ!?」
「当然だぜ。これは幻想郷の常識…いや、宇宙の真理と言っても過言ではないな」
「幻想郷始まって以来の過言よきっとっ!」
もはや幻想郷縁起に載ってしまってもおかしくないくらいの過言だと思うわ!
そんなことで引き合いに出されるほど幻想郷の常識や宇宙の真理は安いものじゃないわよ!
「まぁとりあえずキスしようぜアリス。大丈夫、チーズの神様もきっと後押ししてくれるさ」
「チーズの神様公認なのそれ!? というか、そんな神様に後押しなんてされたくないわっ!」
チーズの神様っていよいよおかしなことになってきたわね…。
というか、魔理沙まさか怪しい宗教に嵌ってるわけじゃないわよね…?
「まぁまぁアリス、とりあえずちゅっちゅだ。まずそれからチーズについては考えよう」
「いや、事の発端置いといちゃだめよッ! というか最初からキスしたいだけでチーズなんてどうでもいいんでしょ!?」
絶対魔理沙面倒くさくなってるでしょ!?
そこ置いといたらこの会話が成り立たないわよ!
「どうでもいいってことはないだろ!? 世界中のチーズたちに謝るんだアリスっ!」
「そこで怒るの!? 今までの人生の中で一番理不尽な理由で怒られてるわ私っ!」
ここで怒る意味がわからないわよ魔理沙っ!
ホントにあなたチーズ関連の変な宗教とか入ってないわよね!?
魔理沙の意味のわからなさに面食らい、一歩後ずさりすると踵がなにかにぶつかる。
―――そこで異変に気づいた。
「!? い、いつの間にか壁際に追い詰められてる…!?」
突っ込みに必死で気づかないうちに、いつのまにか退路を断たれていた…!
くっ! まさか今魔理沙が怒鳴ったのはそういう意味だったの!?
「ふっふっふ、今頃気づいても遅いぜアリス。これもチーズ神の思し召しだ…!」
「くっ…チーズ神恐るべしね……! ってだからチーズ神ってホントにいるの!?」
流れで認めそうになったけど、そんな神様いるなんて思えないんだけど!
だ、だけどいつも力押しの魔理沙からは考えられないこの作戦は、やはりそのわけの分からない神の入れ知恵なんだろうか…!?
「さぁチーズ神の威光をその身に感じるといい! 発酵「チーズオブラウンドテーブル」!!」
「ちょっ!? それ私のスペルのパクリじゃない!!」
魔理沙がスペルカードを掲げ明らかに私のパクリと思われるスペルカード名を告げると、机の上にあったチーズがふわりと浮き上がり、円陣を組んでゆっくりと回り始める。
「ち、チーズが空中で円形に陣を組んで回ってる…! こ、これが完全に私のスペルをなぞったものだとしたら…」
恐らくあれは私の“騎士「ドールオブラウンドテーブル」”を真似たもの。
あれは円陣に展開した槍を持った人形が、一斉に突きを放つものだ。
つまりそこから予想できる攻撃は……
「や、やっぱり突っ込んできたぁ!?」
足元に一直線に突っ込んできたチーズを寸でのところで避ける。
あ、危なかった…。意外にスピードも早いし、動きを予想できてなかったら間違いなく当っていたわね…。
「諦めるんだアリス。次の瞬間このチーズ達が一斉にお前に襲い掛かり、そのチーズの攻撃がかすりでもすればチーズ神の力でキスせざるおえなくなるんだからな!」
「な、なんて恐ろしい能力なのチーズ神! ってそれ明らかに洗脳の類よね!?」
一つでもかわすのが大変だったのに、あの数が同時に来られたら避けるのは不可能だろう。
こちらの敗北は必至。だとしたら手段なんて選んでられない…。
こ、こうなったら…!
「やめて魔理沙っ! こんなよくわからないノリであなたとキスしたくなんてないわ! 私達の間はそんなチーズなんてものに頼らなきゃキスも出来ない間柄なの!?」
「あ、アリス!? そ、そうだな…私間違ってたぜ…。私達の愛はチーズ神の力を借りなきゃいけないほど弱いものじゃなかったよな…!」
必死な呼びかけに魔理沙も心を打たれたように、手にしていたスペルカードを取り落とす。
そう、チーズなどには消して私達は負けたりしないのだ!
「魔理沙…」
「アリス…」
どちらともなく歩み寄り、互いに優しい笑みを浮かべる。
そしてあと一歩で距離がゼロになるというところで私は―――
「スキありッ!!」
―――魔理沙の腹部に渾身のストレートを放つッ!!
「ぐはぁっ!?」
完全に油断していたのモロに私の拳を受けた魔理沙は、バタリと床に崩れ落ちる。
「あ、アリス……ど、どうして…!」
信じられないという表情で顔だけをあげ、こちらに疑問の視線を送ってくる魔理沙。
その哀れな顔を見下ろし、ニヤリと口元を歪め敗者への情けに理由を告げてやる。
「騙まし討ちも……立派な戦術の一つだと思うのよね」
「は、謀ったなアリス……ガクッ」
悔しそうに呟きながら、それで魔理沙は力尽きたように気を失う。
ふふん、戦術で私に勝とうなんて100年早いのよ。
勝利の余韻に浸りながら、この後のことを思案する。
魔理沙のことはとりあえずこのまま寝かせておいて、事の発端になったチーズを片付けてしまった方がいいかもしれない。
魔理沙が目を覚ましたときに、また同じ展開になったら面倒だし。
そう考えをまとめ、魔理沙から目を離し前を向くと―――チーズが宙に浮いていた。
「って、なんでまだチーズが浮いたままなのよ! 魔理沙は気を失ったはずなのに!?」
あれは魔理沙の魔法によって浮いていたはずだから、魔理沙の意識がなくなれば床に落ちるはずなのに!?
混乱する私に向かって、さっき魔理沙が宣言したとおりチーズが一斉に突っ込んでくる。
不意を突かれたことでかわすことも出来ず、手首と足首を中心に被弾してしまった。
「きゃあっ!? な、なにこれ!? チーズなのに全然剥がれない!?」
さっきまで固形だったはずのチーズは、一瞬液体化したかのように私の手首と足首を壁に固定し、まるで鳥もちのように粘ついて剥がすことが出来ない。
「ふっふっふ、残念だったなアリス」
「ま、魔理沙…!?」
私が張り付いたチーズに夢中で目を離していると、いつの間にか魔理沙が起き上がり不敵な笑みを浮かべている。
「な、なんなのよこの意味のわからないチーズは!? それにあなたが気を失ったのになんで勝手に動いたのよ!?」
混乱して手足をバタつかせている私に向かって、魔理沙は口元を吊り上げ勝ち誇ったように言い放つ。
「騙まし討ちって、立派な戦術の一つだよな」
「くっ…!」
さっき自分が得意げに言った台詞をそのまま返され、悔しくて歯噛みをする。
く、悔しい…! じゃあさっき気を失ったように見えたのも演技だって言うの!?
「さて、じゃあ私をだまし討ちするような悪い子にはお仕置きが必要だな…」
言いながらこちらにゆっくりと近づいてくる魔理沙。
その背後にはなぜかたくさんのチーズが浮いていて、まるで主の命を待つ騎士達のようだ。……チーズだけど。
だ、だけどさっきの話の流れから、魔理沙は私にキスしたいだけみたいだし…この流れでするのは癪だけどそれぐらいで済むなら怖がる必要はないかもしれないわね…。
そう考え落ち着きを取り戻した私に、魔理沙から非常な一言が放たれる。
「なぁアリス……別にキスって―――口以外にしたって構わないよな?」
「…………………………………へ?」
く、口以外……?
口以外ってそんなの……えっ?
い、今の抵抗できない状況でそんなのダメに決まってるわよ…!?
「ま、待って魔理沙! ご、ごめんなさい! 不意打ちしたのは謝るから! 普通のキスならいくらでもしていいから! だからそれはやめ―――」
「―――問答無用だぜッ!!」
「きゃあああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!」
…………―――その後のことは、もう思い出したくもないわ…。
とりあえず、チーズには金輪際係わり合いになりたくないわね…。
チーズって、ホントに怖いわ…。
暇で必ず投稿できたとしても期待はしませんから。ピャー。
例えるなら、そう、、えっと、その、うん、まぁ、はい、
いや、その、ね? 口以外にキス、で、チーズとくれば、ねえ?
……変なこと考えてすみませんでしたぁ!!
マリアリちゅっちゅ
リズムが一本調子なのが残念