霧雨魔理沙は嫌らしい笑みを浮かべていた。
秋の色が濃くなってきた魔法の森。
きのこが生えてくるこの季節は、研究に向いている。
まさに、研究の秋だった。
そんな中、少し暇ができた魔理沙はちょっとした薬を開発したのだ。
魔理沙の手にある試験管の中で、透明な液体がくるくると回る。
「ちょっと悪戯してやるか」
ここで誰に悪戯をするかを考える。
霊夢に悪戯をすると、後が怖いからパス。
パチュリーにしてもなんか後が怖い。
にとりがいいかとも考えたが、様々な開発をしている最中に、悪戯されると嫌なのは魔理沙も十分わかっている。
となると、
「まぁ、順当にいけばアリスか。近いし」
簡単な脳内会議を終えた魔理沙は、薬を小さな容器に流しこむ。
極少量しかない為、こぼさないように丁寧に、丁寧に。
蓋をした容器をポケットの中にするりと落とすと、ぐっと背を伸ばす。
ずっと丸腰で研究していた為、背を伸ばして一息いれる。
「さてと、それじゃあいくか」
自室の部屋の隅、大雑把に壁に掛けられた帽子を手に取る。
金色のふわっとした髪を真っ黒の帽子が隠す。
玄関のすぐ隣にかけてある箒を片手に取ると、勢い良く扉をあけた。
扉を開けば、視界には色づいた木々達が飛びこみ、秋の冷たい空気が充満していた。
胸いっぱいにそれを吸い込むと、箒に跨り、空を駆けた。
★
「お邪魔するぜ!」
他人の家だろうとノックをしない、それが魔理沙のやり方である。
失礼するぜー! と大声で言った後に入ってくるのだ。
それには周りの者達はなれてしまっているから今更何も言わないのだが。
それよりも迷惑な者が一名いるからかもしれないけれども。
ドアなんて関係無しなのだから困った者である。
「何しに来たのよ」
「いやな、お茶でも飲もうかと思って」
木製の質素な椅子に座り、読書にふけっていたアリス。
せっかくの読書の時間を潰され、僅かに鋭い視線を送る。
その視線は眼鏡越しに魔理沙へと伝わった。
読書の時に限り、アリスは黒縁の眼鏡をかける。
眼鏡をかけるのは、目が悪いわけではなく、なんとなくしっくりくるためだ。
黒縁眼鏡から覗くその瞳には、気だるさにも似た色が混じる。
「私が出さないっていったら?」
「泣く」
「嘘おっしゃい……」
ぱたんと本を閉じ、テーブルの上にそっと置く。
眼鏡を折りたたみ、本の上に置くと、ゆっくりと立ち上がった。
「まぁ、座りなさい。紅茶でいいわよね?」
「おう、頼むぜ」
なんだかんだいいつつやってくれるのがアリスの良いところだ。
なんとなく霊夢に似ている性格だと魔理沙は言う。
確かに霊夢とは似てるのかもしれないなぁといわれてから思った。
しかし、あれほど縛られていない者もいないだろうし、どうなのだろうかとも思った。
せっかくきてもらったのだから、もてなさなければと思い、アリスはキッチンへと向かった。
お盆を取りだし、その上にティーセットを乗せる。
まだ中に冷めた紅茶が残っていたため、それを流しに捨てると、新たに紅茶を沸かした。
何やら向こうで魔理沙がぶつぶつ呟いているのが聞こえる。
何か企んでいるのかもしれないと、少々疑うも、気のしすぎだろうとアリスは無視した。
お盆をしっかり両手で持ち、魔理沙の座るテーブルまで持っていく。
真っ白のカップをコトンとテーブルの上に並べると、ティーポットをそっと傾ける。
中から美しく透き通った紅茶が、真っ白のカップを染めていく。
寒くなってきた季節には暖かい紅茶は身にしみる。
アリスは自分の分と魔理沙の分を入れた後、角砂糖の入ったお皿を置いた。
「ちょっとクッキーは乗らなかったから取りに行ってくるわ」
「なら砂糖入れとくぜ? 何個くらい入れておく?」
「一個でいいわ」
「おうよ」
今日はえらく魔理沙は気が利く。
普段だったら自分の分だけ入れて待ってるだけなのに。
きっと機嫌が良いのかもしれない。
後ろのほうで、小さくトポンと心地の良い音が耳を撫でる。
くるくるとスプーンで混ぜる音まで聞こえた。
アリスは、魔理沙に見えないように小さく微笑みながら、キッチンへと向かった。
お盆を元の場所に戻し、この間作ったクッキーをお皿に盛る。
お皿からこぼれないようにしっかり持ち、テーブルまで運ぶ。
テーブルに慎重に置くと、ゆっくりと椅子を引き、座った。
「砂糖は入れておいたぜ」
「ありがと」
紅茶のいい香りが鼻腔をくすぐる。
とりあえずクッキーを一つ手に取り、口に放る。
甘すぎない、ほんのりとした甘さが口にいっぱいに広がった。
少し間があったため、多少しっとりしてるものの、これはこれで美味しかった。
心の中で自画自讃するアリスは、ふと我に帰る。
先ほどから何か視線を感じるのだ。
前を見ると、ティーカップを口に近づけながらも、じーっと見つめる魔理沙があった。
「……さっきから、何でじーっと私を見てるのかしら?」
「え? あ、なんでもないぜ! ははっ、ちょっくらトイレ行ってくるわ」
立ち上がり、椅子を乱雑に引くと、トイレへと早足で進む魔理沙。
どうかしたのだろうかと首をかしげる。
魔理沙の表情は、どこか楽しそうにも見えた。
「あ、魔理沙は紅茶に砂糖入れたー?」
「いれてないぜー!」
そう魔理沙は返すと、アリスは一人、じゃあいれておくわと返した。
◆
やがて魔理沙がトイレから帰って来た。
自分の焼いたクッキーを食べ、魔理沙が来るのを待っていたのだ。
魔理沙はそそくさと椅子に座り、ティーカップを傾け、紅茶を口に含んだ。
「ん、甘いな。アリスがいれてくれたのか?」
「えぇ。砂糖三つほどで良かった?」
「あぁ、ちょうど良いぜ」
「あのね、さっき魔理沙に砂糖いれてもらったのは良いけど、やっぱり無糖でいいわって思って紅茶変えたの」
「……は?」
その瞬間だった。
アリスの視界から突如として魔理沙が消えたのだ。
それと同時に、魔理沙の服と帽子がすとんと地に落ちる。
「え!? ちょっと魔理沙!?」
突然の出来事に驚きを隠せなかった。
魔理沙がもといた場所まで駆け寄ると、服の中でもぞもぞと動く何かがあった。
帽子がくらくら動いていたので、それを取ってみる。
すると……。
「にゃーん」
「……え?」
黄金色の瞳で、真っ黒の毛並みの猫がアリスを見上げて鳴いた。
もしかして、猫になってしまったの?と心の中で呟く。
すると、その黒猫は魔理沙の服のポケットに顔を突っ込み、もぞもぞとしている。
何をしているのかしばらく見ていると、やがてポケットから顔を出し、それと共に口に紙を銜えていた。
それを見ろと言わんばかりに顔を上げるため、アリスは両手でそれを受け取る。
「なんだろ」
綺麗に二回折られた紙を開くと、魔理沙の文字でこう書かれていたのだ。
◆
猫になる薬
この薬を飲めば、猫になる事ができる。
猫になっても飲んだ者の意識はしっかりあるので、完全に猫になるわけではない。
効果は十二時間までであり、効果が切れれば元の体に戻る。
◆
「おい」
「にゃぁ」
アリスは猫になった魔理沙を持ち上げると、面を合わせる。
宙に浮いてぶらぶらと揺れる足と尻尾。
黄金色の瞳がしっかりとアリスを見ていた。
「あんた私の紅茶に混ぜて猫にさせようとしたでしょ」
「にゃーん」
「私を猫にしてどうしたかったのよ、言ってみなさい」
「にゃぁん」
「にゃぁんじゃないのよ。まったく、ほんと困った奴ね」
説教を続けるアリスの真っ白な手を、ざらざらな猫の舌が撫でる。
突然の感覚に、短く悲鳴を上げると、ぱっと手を離す。
あっ、と言った途端、魔理沙は地面に綺麗に着地。
手を放した瞬間心配したが、猫は高いところから着地するのが上手いことを思い出した。
ばねのように体で衝撃を吸収するからこそできる技である。
心配して損したと言わんばかりの表情。
先ほどのように椅子に座ると、落ち着いた様子で紅茶を飲んだ。
猫になったのは魔理沙の自己責任なので、アリスは極力触れないようにしようと決断したのである。
アリスは何か思い出すように思考に走る。
現在の時刻は午後三時。
十二時間猫のままということは、午前三時まで猫のままということになる。
いくら自己責任とはいえ、猫のまま魔理沙を家から追い返したり、家に戻すのは流石に可哀想だ。
仕方ないが、魔理沙を今夜は家に泊めることにしようと考えた。
とにかく今は、先ほど読みかけていた本を読むことにする。
机の上の本を手に取り、眼鏡をかけた。
すると、足元のほうで魔理沙が尻尾をくねくね動かして、頭を擦りつける。
「にゃぁん、にゃぁーん」
構ってーと言わんばかりに鳴き続けるも、アリスは無視。
しばらく座ってアリスを見つめた後、ぴょんと膝の上に飛び乗った。
膝の上でぐるぐると回った後、膝の上でくるりと丸まった。
太ももの上に、もふもふした暖かい魔理沙がいる。
そんな魔理沙は安心したのか、ゆっくりと目を閉じて、眠りはじめた。
しばらくは暖かいしいいかなぁと思った。
しかし、段々時間が経つにつれてやはり思うものがある。
「……って、重いのよ!」
眠っている魔理沙の前足に手を伸ばし、無理やり起こす。
そのまま魔理沙の体をそっと持つと、そっと床に降ろした。
「うぁーん」
「そんな悲しそうな鳴き声出さないでよ。いくら猫になっても重いものは重いわ」
するとどうだろう。
魔理沙は何も言わず静かになったので、アリスはまた、読書を続ける事にした。
魔理沙が膝で寝ていたせいか、まだほんのりと暖かい。
少々名残惜しいが、読書に集中できないから仕方が無い。
しかし、あまりにも魔理沙が静か過ぎるのが気になり、ふと足元を見る。
ちょこんと座りながら、黄金色の瞳がアリスを見つめていた。
眩しいためか、少し細くなった瞳孔がじーっと見ている。
そんな魔理沙から視線を逸らし、また本へと目を移す。
ページをめくる度に足元を見ると、それでもずっとアリスを見つめているのである。
その潤いに満ちた目は、まるで私に構ってくれといっているようだった。
魔理沙もそういったところを意識して、じーっと見つめているに違いない。
言葉じゃなくても伝わってくる、魔理沙の思い。
構って、かまって、カマッテ! 暇なんだよ、猫じゃ何もできないぜ。
「何よ」
「にゃぁー」
「構って欲しいの?」
すると、アリスの足に頭を擦りつけながら、にゃーんと鳴くのだ。
例え中の人が魔理沙だと分かっていても、容姿が猫だとどうも調子が狂う。
思わず頬が緩み、優しく微笑む。
椅子からゆっくりと立ちあがり、椅子を元に戻した。
眼鏡をかけ、本を抱えたまま、二人が座れるくらいのソファに足を運ぶ。
「ほら、隣にいらっしゃいな」
ぽんぽんと誰もいない隣の席を叩く。
綺麗なフローリングの上に、魔理沙の鋭い爪の音がかつかつと響く。
尻尾を振りながら、ゆっくりと近づいてくると、隣の空席へと飛びこんだ。
アリスが本を膝の上で広げ、それを隣で魔理沙が見つめている。
魔理沙がそれをどのくらい読んでいるかは分からないが、自分のペースで読む。
読むのはそこまで速くないため、別に大丈夫だろうという考えからだった。
普段も魔理沙に読むのが遅いと言われるくらいだ。
きっと今もまだ読んでいるのかと思っているのかもしれない。
「にゃぉー」
「うっさい。まだ読んでるから少し待ってなさい」
「にゃぅ」
前足に爪を立て、アリスの膝の上でポンと乗せる。
そのまま引っ張る姿は、はやくはやくーと急かす子供のようだった。
頭をそっと撫でると、黄金色の瞳がアリスを見つめる。
そのままずっと撫でながら、本を読み進めていく。
魔理沙は、気持ちよさそうに目を細めていた。
しばらく続けると、瞼を閉じて、こくこくと体を揺らしていた。
中身は魔理沙なのに、猫になるとすぐ眠くなるのだろうか。
本を閉じ、眼鏡を外すと、魔理沙の背中をそっと撫でる。
綺麗な毛並みで、触りごこちが良かった。
魔理沙はくるりと体を丸めると、ゆっくりと瞼を閉じる。
「ねーんねーこ、ねんねこやー。かーごのなーかでねーむれー」
頭を優しく撫でながら、子守唄を口ずさむ。
まるで赤子へ向けるような、優しく、甘美な声で。
その声を聞きながら、魔理沙は静かに寝息を立て始めた。
「こうして見るとこれが魔理沙だとは思えないわね」
人差し指で頭を小突くも、目を覚ます事は無かった。
すぴーすぴー、と可愛らしい音を立てて眠っている。
これを私に飲ませてどうしたかったんだろうなぁ、とアリスは思う。
もっと近くで一緒にいたかったから?
普段できないような事を猫相手にやろうと思ったから?
猫になってる間にいろんな場所を漁ろうとしたから?
考えれば考えるほど、たくさんの例が浮かび上がってきた。
それと同時に切りが無いと思い、考えるのを止めた。
ふと、時計を見る。
もう短い時計の針はⅣのところまで来ていた。
「とりあえず紅茶を片付けて、夕飯の準備を少しずつしていきましょうかね……」
眼鏡を外し、本を閉じると、ゆっくりとソファから立ち上がった。
◆
「にゃぁーん」
「あら、起きたの?」
ふと下を見ると、まだ瞼が少し重いのか、半開きの瞳が見つめていた。
時刻を見るともう六時。
すっかり辺りは暗くなっていた。
猫になった魔理沙は何を食べてくれるのだろうか。
そう考え、とりあえず鶏肉と新鮮な魚を買ってきて、それを食べさせる事にした。
自分は面倒だからクッキーの残りと紅茶で十分だし、献立は決まった。
そうして早速料理に取りかかったが、もう六時だとは思ってもいなかった。
「にゃぉーん」
すると、何を作っているんだと言わんばかりに鳴き始めた。
後ろ足を床に、前足を壁にやって体を支え、二本足で立つ。
前足をひょいと伸ばし、見せてーと言わんばかりに鳴いた。
猫の身長の高さに驚きながらも、アリスは魔理沙を叱る。
「危ないでしょ? 前足が切れちゃったらどうするのよ」
「にゃぅー」
諦めきれないのか、くるくると足元で回っている。
鬱陶しいと思いながらも魚を切り、魔理沙が食べやすいようなサイズに切っていく。
鶏肉は炒めて、簡単に塩コショウで味付けをした。
魚は小さく切って、刺身にする。
そのために今魚を切っているのだが、和食派の魔理沙には気になって溜まらないのかもしれない。
慎重に魚を捌いていると、突如視界に黒い塊が目に移る。
手を止め、そちらに目を向けると、魔理沙が見ていた。
「にゃーん」
「おとなしくしてなさい!」
「ぅー」
猫の脚力は大したもので、足からアリスの腰より上に位置するカウンターまで飛んできた。
アリスの言葉で大人しくなりながらも、じっと座って料理を見つめている。
見られながら作るのは何か変な気がしたが、人間とは違う視線に何か頬が緩む。
「それじゃあ夕飯にしましょうか」
「にゃーん」
声色を一段階高くして、喜びをあらわにする魔理沙。
鶏肉炒めと刺身の持ったお皿を持ち、テーブルの方まで足を運ぶ。
その際、鬱陶しいほどにまで足元をふらふらと漂い、上を見つめる魔理沙は邪魔だったのは言うまでもない。
床にお皿を二つ置くと、クッキーと紅茶を取りにキッチンへと戻る。
すると、その後に魔理沙が付いてくるのが、爪音で分かった。
「なぁに、どうしたの?」
「にゃーん」
小走りでアリスを抜いていくと、ぴょんと身軽に飛び、キッチンの上に調味料を差した。
それは、醤油だった。
「醤油がどうかしたの?」
「にゃぉー」
「……あぁ、もしかして刺身にかけてほしいの」
「にゃぁ」
その通りと言わんばかりに鳴く。
お盆にクッキーと紅茶、そして醤油を乗せてテーブルまで戻る。
かけすぎるといけないので、少しばかり刺身に醤油を垂らす。
すると魔理沙は何も言わず、もくもくとそれを食べ始めた。
頬杖をつき、片手でクッキーを摘まみながら魔理沙を見つめる。
ガツガツ食べている魔理沙を見ると、よほどお腹が空いていたと見える。
なんて美味しそうに食べるんだろうなぁとつくづく思う。
すると、魔理沙は口に刺身を銜えて、アリスを見上げていた。
「にゃぅ」
「私に食べろって?」
「ぅー」
「私はいいわ。あなたが食べなさい」
小さく首を傾げ、じーっと見つめる魔理沙はとても可愛らしかった。
尻尾を右へ左へと動かして、まんまるの瞳がアリスを見ている。
しかし、それは魔理沙の為に買ったものであったし、今は食べようとも思わなかった。
だから食べていいのよ、と促した。
「気持ちだけで嬉しいわ、ね?」
微笑んでそう言うと、魔理沙はどこか申し訳なさそうにお皿に刺身を置くと、それを食べた。
気にしなくていいのよ、と呟いて、ほのかに温かい紅茶を飲んだ。
◆
ご飯を食べ終わった後は、食器を洗ってお風呂に入ることにした。
魔理沙もお風呂に入るかと尋ねたところ、ぷいと後ろを向いたので入らないと解釈した。
猫は水が苦手だし、溺れかねないからかもしれない。
服を脱ぐ途中、魔理沙がいることをすっかり忘れていた。
普段なら脱衣所じゃないところでも脱ぐのだが、流石に人前でそういうことはできない。
脱衣所にはいる直前、覗かないでね!と魔理沙に念を押す。
すると、誰が見るかと言わんばかりに頭を掻いていた。
風呂場にはいると、早々にお風呂の中へと入る。
もあもあと立ち上る白い煙を眺めながら、ゆっくり、ゆっくりと。
完全に肩までつかると、ふぅと一息つき、考える。
今日一日過ごして、猫と一緒にいる生活も悪くないなぁとアリスは思っていた。
自分勝手だけど、構ってほしい時はとことん甘えてくる。
今いる猫は中身が魔理沙だが、人間の時と違って喋る事は出来ない。
だからこそ、何かしてほしい時は甘えるかのような態度をしてくるのだ。
前々から動物を飼ってみたいと思っていた。
一人暮らしだから、一緒にペットがいると楽しいかなぁと思ったからだ。
しかし、何か色んなものに手を出してぐちゃぐちゃにされることを恐れて敬遠していたのだが……。
「はぁ、猫かわいい」
今日という日のおかげで、決心がつきそうだ。
◆
髪の毛をしっかりと乾かして、パジャマに着替える。
その後は何をし様かとしばらく思案した。
いつもなら魔法に関しての本を読んだり、人形を繕ったりするのだが、何だか今日は眠い。
今日はおとなしく速めに寝ることにする。
「ふわぁ……」
不意に出たあくびを隠すように手をやると、魔理沙も同じようにあくびをしていた。
「今日は眠いし、寝ましょうか」
「にゃん」
大方アリスの意見に賛成なのだろう、魔理沙も小さく返事をした。
「それじゃあ私は寝るから、魔理沙はソファでいいでしょ」
「うぁーん」
「そんな声出さないでよ。それじゃお休み魔理沙」
「にゃぅ」
どこか寂しそうに鳴く魔理沙を尻目に、部屋の電気を消した。
猫だし、暗いところでも視界は確保できるし、心配はいらないだろう。
アリスは、ゆったりとした足取りで自室へと向かった。
アリスは、ベッドの横にある、小さな電気スタンドに手を伸ばす。
ほのかな明かりが灯り、スタンドの下にある小さな日記帳とペンを取る。
「さてと……」
いつもの日課でもある日記を書く作業に入る。
これは小さい頃から続けていた事で、たまに読み返す事もある。
去年の今日は何をしていたか、なども時々調べることもあった。
アリスは寝転がりながら、ペンを持つ。
日付を記し、ペンを口元へと近づけて今日という日を思い返す。
思えば色んな事があったし、久々に日記にもたくさんの文字が埋まりそうだった。
魔理沙が猫になるだなんて誰もが思いもしなかっただろう。
そう思うと、なんだか笑えてきて、アリスはくすりと声を漏らした。
ごとん。
何やらドアのほうから音が聞こえたので、首だけそちらのほうへと向ける。
すると、そちらには黄金色の瞳が二つ浮いていた。
その瞳はかつかつと音を立てながら、ゆっくりと近づいてくる。
音が止まったかと思えば、ぴょんと跳ねて隣までやってきた。
「にゃぁーん」
「にゃぁーんじゃないわよ。ソファで寝なさいよ。ベッドだと毛がつくじゃない」
「にゃん」
アリスの腕に頭を擦りつけて、ペンを握る手を舐めた。
まんまるの瞳が、お願いと訴えかけてくる。
この時、改めて猫の可愛さは卑怯だと感じた。
「仕方ないわね、別に良いわよ」
「にゃーん」
甲高い声で喜びをあらわにすると、すぐさまくるっと丸まり、目を閉じてしまった。
猫になるとすぐ眠たくなるのだろうか。
アリスは日記帳を閉じると、猫にとっては眩しいと思われる電気スタンドの明かりを消した。
部屋は闇に満ち、アリスは自然と眠気に襲われた。
隣では既に魔理沙が寝息を立てており、なんだか頬が緩む。
今日は気持ち良く眠れそうだ。
「おやすみ、魔理沙」
小さな頭を優しく撫で、眠りについた。
◆
翌朝アリスが目を覚ますと、そこに全裸の魔理沙が眠っていたのは、言うまでもない。
そしてその後どうなったんだい?
丸腰→猫背では?
やっぱりねー!
猫魔理沙可愛いなぁ
それと、猫に醤油はアウトォォォォォォ!!(猫は塩分の分解が苦手)
ですよねー
いや、まぁw
どうしてこうなったw
予想通り
一番良い写真を頼m(マスタースパーク
そりゃあ……そのままニャンニャンしt(アーティフルサクリファイス
けど猫が尻尾を振る=怒ってるときなので尻尾を絡ませるとかのほうがよかったかも
評価ありがとうございます。
にゃんこちゃんかわゆす。
>2 様
評価ありがとうございます。
食べられました。
>3 様
評価ありがとうございます。
ねこはかわいい、一種の兵器です。
指摘ありがとうございます。
>5 様
評価ありがとうございます。
まぁ、このオチは予想できますよねー。
>10 様
評価ありがとうございます。
二番煎じ!? いやまぁ、誰か書いてるかなぁとは思っていましたが、すみません。
猫ちゃんかわゆす、そして塩分の分解が苦手なの初めて知りました、ありがとうございます。
>20 様
評価ありがとうございます。
ですよねー。
>21 様
評価ありがとうございます。
わたしにもどうしてこうなったかよくわからな(ry
>33 様
指摘ありがとうございます。
>41 様
評価ありがとうございます。
まぁ、これは誰もが予測できたかなーって思ってましたわ。
ならもっと工夫したオチを考えろって話ですが。
>46 様
評価ありがとうございます。
にゃーん。
>47 様
評価ありがとうございます。
発想力のなさです、すみません。
>51 様
評価ありがとうございます。
うにゃぅー。
>55 様
評価ありがとうございます。
私が預かりました^^
>62 様
評価ありがとうございます。
私はそれを眺める係です。
>63 様
評価ありがとうございます。
あれは怒ってる時だったのか。てっきり興奮している時なのかと。
>糸目 様
評価ありがとうございます。
とにかく猫は和みます。
>66 様
評価ありがとうございます。
にゃぉーん。