Coolier - 新生・東方創想話

お正月の紅白(歌合戦じゃないよ!)

2010/01/05 16:49:25
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元旦から約一週間。
博麗神社上空。

「おーい。霊夢~。ただ飯食いにきたぜ~」

その言葉とともに箒に乗った魔理沙が空から降りてきた。
霊夢の返事は・・・ない。
寝ているのか、それとも出かけたのか。
はて、どうしたものかと思いながらも境内に降り立った魔理沙はそこで異様なものを見つけた。

「雪が・・・ない?」

元旦過ぎからちらほら振っていた雪は微量づつながらも結構積もっていたはず。
それでも普通の家ならわかる。
しかし、ここはあの霊夢の神社だ。
あの霊夢がここまで綺麗に雪を片付けるとは思わない。
現に数日前、何とかして魔理沙に雪かきを押し付けようとしていたし。
そんな博麗神社の境内の雪が、石畳がところどころ見えるほどまでなくなっていた。
そして霊夢は・・・。

「なによ・・・。うるさいわねぇ。雪かきしないならとっとと帰れ」

寝ていただけだった。
しかし庭の状況を見るとその表情は一変した。

「なんだ。やってくれたんじゃない。ありがと。もう帰っていいわよ」

にこやかにそういって屋内へ戻ろうとする。
すると魔理沙は慌てて縁側に上がろうとした。

「いや、なんでそこで帰れなんだよ。ってか私じゃないぜ。雪」

縁側に立つ霊夢とその一段下に立つ魔理沙。
霊夢は振り向き、魔理沙を見下ろしながら訊いた。

「じゃぁ、誰がやったのよ」
「知らないぜ。心当たりはないのか?」
「ないわよ。みんなただ飯食ってお神酒飲んで賽銭いれないで帰ってくだけだもの」
「それはひどい」
「あんたよ」
そんなやり取りをしているとき、またも上空から声がした。

「まいどー文々。新聞でーす」

そして去っていく。
新聞は賽銭箱に十部ほど詰め込まれていた。

「・・・あのカラス・・・。まぁいいか、いい焚き付けになるし」
「前向きだな」

さっそく霊夢は賽銭箱から抜き出したうちの一部を開いて読む。
一面には騒霊の元旦ライブでの出来事が乗っていた。
そして次のページを開いたとき、雪がなくなっていた原因がわかった。
そこの見出しにはこう書いてある。
『紅魔館で巨大かまくら乱立 その高さギネス級!?』

「・・・ギネスって何?」
「知らないぜ。見に行くか?」
「そうね。うちの雪使ってるみたいだし何かもらっておかないと。その前に朝ごはんね」

そう言うなり霊夢は神社へ入っていく。
魔理沙もそれについて神社へあがる。

「今日の朝飯は何だ?」
「昨日の残りよ。正確に言うと二人で肉じゃが150gのみね」

霊夢は振り向きもせずに返答した。

「少なっ」
「文句言うなら食べないでよ。もしくは食材持ってきなさいよ」
「持ってきてるじゃんか」
「笑いダケは食材とは言いません」

なんなんだろうこの会話は。
とりあえずそんなこんなで朝食を済ませると霊夢は早速出かける支度をする。
魔理沙はそれを待つ。
霊夢の支度が終わるとすぐ、二人は飛び立った。




紅魔館。
いつもちょっと目に痛い紅の館は、積もった雪によって紅がいいアクセントになっていた。
しかし、今ひときわ目をひくのはその庭に立っている数個の大きなかまくらである。
『館より目をひく』というよりも、それが大きすぎて館が隠れている。
それほどに大きいかまくらができていた。
しかもまだすべて完成したわけではなく、咲夜がせっせと働いていた。
霊夢と魔理沙が近づくと雪を固めていた美鈴がこちらに気付き、咲夜に声をかける。

「さくやさーん。紅いのと白いのと白いのと黒いのが来ましたよー」

それに気がついた咲夜は。

「暴れなければあがってもいいわよ」

そういうなり、作業にもどった。
美鈴が固めた雪の塊をナイフで切り落としてゆく。
刻んでいるのか削っているのは早くてよくわからないが。
入り口が出来上がったところで咲夜は懐からスペルカードを出し、叫んだ。

「傷魂「ソウルスカルプチュア」!」

その瞬間、咲夜の目が紅くなりものすごい斬撃を連発し始める。
見る見る間に雪の山の中に空洞ができた。
しかし、中から出てきたのは一抱えの雪と、それを持った咲夜だった。
比率おかしくないか?
すぐに謎は解けた。
咲夜はその雪を美鈴のところへ持っていくと手を離した。
その瞬間には咲夜はもう次のかまくらへ行っている。
美鈴のところへ落ちた雪は、一瞬で膨張し、美鈴を生き埋めにしていた。

「ざぐやざーん・・・びどいでずよーぅ」

雪の中からくぐもった声が聞こえるが気にしない。
まぁ日常茶飯事だし、と思いながら二人は館へ入っていく。
とりあえずこのかまくらの原因というか理由を訊くためにパチュリーの図書館へ向かう。
この時間だとレミリアは寝ているだろうからという理由で。
数分もすれば図書館に着く。

「そういえば妖精メイドがいないな」
「あぁ、それならさっき庭で雪合戦してたわよ」
「そうだったのか?気付かなかったぜ」

他愛もない会話。
それでも霊夢にとってはうれしい時間だった。
いつからだろうか、私の周りにこんなにも人が集まってくるようになったのは・・・人じゃないけど・・・。
昔、まぁそれほど昔でもないけれど、巫女の家系t

「はいはい、シリアスはいいから何しに来たのよ」

後ろから声をかけられた。
レミリアだった。
寝ていると思っていたのに。
まぁいい。
昔語りなんて私には似合わない。

「外のかまくら。あの雪代をもらいに」
「直球すぎるぜ霊夢」
「あらあら、毎年嘆いている雪かきをやってあげたのよ?なにかもらいたいのはこっちだわ」

そこにまた、後ろから声がかかった。

「レミィはなんもしてないじゃない」
「ぱ、ぱ、パーチュリが図書館の外に!?」
「出るわよ。しかも伸ばすとこ違う。友人をなんだと思ってるのよ」
「友人は友人よ。それ以下でも以上でもn」
「はいはいコントはいいからなんであんなかまくら作ったのよ」

霊夢が脱線しはじめた話を元に戻す。

「んー?フランが作りたいって言ったから」
「なんであんなに?」
「多いほうが楽しいと思って。それにあの数あれば宴会もできるしね」
「じゃぁそのときは呼びなさいよ」
「直球だぜ霊夢」
「もちろんいいわよ」
「じゃ私もいくぜ」

魔理沙も真っ直ぐである。

「じゃぁ私も見にいこうかしら」

レミリアはそう言うなり、出口へ向かって歩き出した。
パチュリーもその後についていく。
霊夢と魔理沙も館の中にはもう居る理由もないのだろうか、二人についていく。


扉の前で日傘を用意したレミリアは扉を開け、外に出る。
すると、そのすぐ横に咲夜が姿を現した。

「咲夜。紅茶を用意しておいて」
「かしこまりました」

そしてすぐに消えた。
レミリアは歩き出す。
日光が雪に反射して少しまぶしい。
っていうかレミリア大丈夫なの?
日傘ほとんど意味ないでしょ。
霊夢が不思議に思っていると、パチュリーが振り向いて教えてくれた。

「咲夜の紅茶のおかげよ」
「どういうこと?」
「普通、紅茶には抗酸化作用があって、少しだけだけど紫外線による日焼けを抑えることができるのよ。それを咲夜が最近みつけた増強剤とかいう、素材の効果を跳ね上げる薬をいれた紅茶を飲むと、雪の反射光くらいなんでもなくなるらしいわよ」
「増強剤ねぇ・・・」
「作り方は蜂蜜と・・・虫?」
「あぁそれ以上はいいわ。後が怖い」

霊夢が遮った直後、レミリアの横にティーセットを持った咲夜が現れた。

「お嬢様。紅茶の準備ができました」
「ありがとう。冷めないうちに飲まなきゃね」

そう言って歩き出す先は先ほど咲夜が完成させたかまくら。

咲夜を除いた四人が中に入り、その中ほどに置かれていた炬燵に入る。
みかんもある。
準備いいなおい。
皆が座ったのを確認すると咲夜がレミリアの前に紅茶を音も立てずに置いた。
レミリアがそれを手に取るのを確認すると咲夜は一礼して出て行く。

「あと二つ、穴を開ければ完成です」

そんな言葉とともに。
霊夢がみかんに手を伸ばす。
そして、皮をむきながらレミリアに語りかけた。

「よくこれだけの雪が集まったわねぇ?」
「人里にも行ったらしいわよ。結構ありがたがられたとか」
「ふーん。そういえばフランは?一番の言いだしっぺでしょ?」
「多分どれかのかまくらの中で寝てるわ。夜中ずっと手伝ってたみたいだし」

外からはがりがりと氷を削るような音が絶え間なく聞こえてくる。
その音によって咲夜の仕事が順調なことが分かった。

霊夢が3個目のみかんを半分ほど食べ終えた頃。
外がなにやら騒がしくなった。
霊夢が日陰になれた目を凝らしながら外を見ると、咲夜が、慌てて逃げる美鈴を追っていた。
そんな咲夜にレミリアが声をかける。

「咲夜―。仕事おわったのー?」

すると突然、かまくら内側の壁にナイフによると思われる文字が刻まれた。
『仰せの仕事はすべて終わりました。しかし、やるべきことができたので少々お待ちください』
外の咲夜が少し美鈴に近づいたように見える。
文字を見て魔理沙が言った。

「まるで、ダイイングメッセージみたいだな」
「美鈴・・・、なにをやらかしたのかしら」

それに答えるように、パチュリーが言った。
答えではないが。
レミリアは近くにいたメイド妖精を捕まえて美鈴がなにをしたのか聞きだした。
文字通り捕まえられた妖精は恐縮しながらもレミリアとやり取りをしている。
どうやら咲夜が氷像を作っていて、妖精メイドたちと雪合戦をしていた美鈴が投げた雪球が危うく氷像を壊すところだったらしい。
その雪球も、咲夜が能力をフル稼働してなんとか防いだという。
普通ならあそこまで怒るようなことではない気がするのだが、逆にそのせいで咲夜の氷像の正体が大体分かった。
霊夢は残りのみかんを平らげると立ち上がって言った。

「その氷像、見にいかない?」

外に出ると視界の端に緑と赤の入り混じった、あまり直視したくないものが目に入った。
まぁいつものことだし、気にしない。
歩き出すとすぐに目当てのものは見つかった。
予想通りだった。
咲夜は仕上げに入っている。
高さは2メートルといったところか。
台座が約50センチメートル。
本体が約1メートル半。
1/1スケールである。
にしても細かい。

「あらお嬢様。それにみなさんまで。どうかなされましたか?」
「咲夜が氷像作ってるっていうから見にきたのよ」
「そうでしたか、でもまだ完成していないので少しお待ちください」

咲夜は氷像に向き直り、いつもより細い、刺突用とも思われるナイフを出し、素早く、しかし確実に繊細に削っていく。
時を止めたのか数秒で完成したようだ。

「お嬢様。できました。稚作ですが」
「うわぁ。そっくりねぇ」

レミリアが感嘆の声をあげる。

「はい、すべてのサイズがお嬢様通りでございます」

その言葉に魔理沙がちょっと引いた。
パチュリーも苦笑している。

「でもこれ、溶けたら悲惨なことになりそうね?」

霊夢のその言葉に咲夜が首を振って答えた。

「問題ありません。この氷像は私が時間を止めてありますから。よっぽど特殊で強い攻撃か、あなたの能力でも使わない限り傷つくこともありません。それに宴会が終わったら私の部屋に永久保存します」

魔理沙がまた一歩引いた。

「その氷像にかまけて私を忘れるようなことはないでしょうね?」

レミリアが上目遣いに咲夜に訊ねた。

「もちろん!そんなことありえません!」

そう叫びながら鼻から忠誠心が迸っている。
上目遣いってそんなに強力なのか。
今度、霖之助さんにでも試してみようか。

「そう。それならよかった。それにしてもよくできてるわねぇ」

レミリアは、恍惚とした表情を浮かべながら鼻血を出しているメイド長を気にせず、氷像を眺めている。
あ、日傘はさしてますよ。
そして振り向き、魔理沙と霊夢に宣言した。

「宴会は明日からよ。終日は未定!」
「わかったわ。ということはこれ以上用はないということね」
「じゃぁ、帰るぜ。んでまた明日来るぜ」

霊夢と魔理沙が飛び立つ。
視界の端に緑と赤いものがごちゃまぜになっているものの写真を撮っているカラスがいた。
頼むからあんなもの新聞に載せないでくれよ。

その日、夕刻にあのカラスによって紅魔館発のチラシが幻想郷に配られた。
今回は賽銭箱に多量に詰め込まれることはなかったが。


当日、紅魔館は昼から人が集まり始め、日が傾き始める頃には幻想郷の顔がほとんど集まっていた。
メイド勢は大忙しである。
蝋燭や炬燵やらの準備はあのあとやったのだろうが、料理などはそうはいかない。
作り置きできるものもあるが、大半は直前に作るものだ。
そして、その香りが漂っている。
すでに涎があふれている者一名。
それを窘める従者一名。
日が半分落ちた頃、レミリアがお立ち台に上って1拍。
皆の視線が集まり、話し声が薄くなる。
レミリアはここぞとばかりに声をあげる。

「皆さん、お集まりいただき、ありがとうございます。今宵は宴。騒ぐもよし、食うもよし。存分に楽しめ!」

最初は恭しく、最後は叫び。
それを合図に館からたくさんの料理が運ばれてくる。
それをかまくらの中へ運んで団欒をするグループに、その場で立ち食いをするグループ。
霊夢はとりあえずレミリアの所へ行く。
魔理沙もついてくる。
レミリアはすぐ見つかった。

「あら、いらっしゃい」

二人に気付いたレミリアが吸血鬼とは思えない笑みで迎える。

「おねぇさまー!・・・あ!魔理沙ぁ!来てたのね!」

その後方から駆けてきたのはフランドール。
こちらも吸血鬼とは思えない満遍の笑みだ。
そして駆けてきた勢いのまま魔理沙に飛びつく。

「魔理沙、魔理沙もいっしょにご飯たべよ?」

この笑みでそういわれて断れる人はそうそういないだろう。

「おう。フランが作ったかまくらで食べようぜ」

魔理沙もよく分かっている。
フランは上機嫌だ。
それを横から見ているレミリアに霊夢が声をかける。

「私たちもいきましょ」

レミリアは一瞬下を向き、すぐに顔を上げて。

「・・・そうね」

呟いた。

「行きましょう」


それから宴会は5日続いた。
2日目に見かけた美鈴は3日目でまた見かけなくなった。
4日目、原因は分からないが、フランとレミリアのけんかでレミリアがかまくら内で不夜城レッドを発動(良い子はマネしないでください)。
かまくらが一個吹き飛んだとか。
それがフランの作ったものでなかったのが幸いだった。
ついでにいうと、それによって吹き飛んだ雪の塊がアリス邸宅の庭に創られた魔理沙の氷像を粉々に砕いたのはまた別の話。


Q.E.D.
初投稿です。
お雑煮食って寝てお汁粉食って寝てたら
なんか電波が舞い降りたので書いてみました。
視点が一瞬切り替わるところがあります。仕様です。
もう少しやり方あったかもしれませんが・・・。
拙いSSですが、ほんのちょっとでも笑っていただければ幸いです。
紫蜥蜴
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コメント



0.600簡易評価
8.無評価名前が無い程度の能力削除
なぜそこでりんのすけが出てくる?
13.100名前が無い程度の能力削除
面白かった!! 会話のゆるさが、いかにも東方らしくてイイねっ!!
16.70ずわいがに削除
おおう、愉快愉快
でも部屋に雪像あったら普通に邪魔だろww