ゴォーン……
ゴォーン……
ここは『命蓮寺』人里から近い場所にあるお寺。元々は妖怪のために作られたのだがここの元僧侶、聖の人柄が良いのか沢山の人間も集まってくる。
人間のために作られた博麗神社は妖怪しかこないというのに。これも霊夢の人柄の所為かしらね。
私はいつもだと紅魔館で年を過ごすのだが、今年はぬえに誘われてこいしちゃんと一緒にこの命蓮寺で年を過ごすことにした。
寺って言われたから堅苦しいイメージしかなかったけど案外アットホームな雰囲気だ。この『コタツ』というものも暖かくていい。
「このお蕎麦美味しいわねぇ、誰が作ったの?」
ズルズルッと蕎麦を啜りながら私は聖に聞いた、今まで何回か蕎麦を食べたことがあるがこれだけ上手い蕎麦は初めてだ。
「一輪と雲山ですよ、フランさん。主に雲山が麺うち、一輪がその他の事を担当してますね。あっ、そのおしるこも彼女たちが作ったんですよ」
聖が微笑みながら言う。妖怪の味方をしてる人間と聞いてどんな変人かと最初は思っていたけど、話してみると案外いい奴だ。変わり者には違いなけれども。
「凄くおいしいわぁこのおしるこも♪ あとで作って貰ったお礼でも言いに行こうかしら♪」
こいしちゃんは本当に美味しそうに料理を食べる、作った本人もこれだけ美味しそうに食べてくれるなら本望だろう。
今度私も咲夜に料理でも習おうかしら、これだけ美味しそうな顔をするこいしちゃんの顔が見れるならいつでも見たいものだ。
それにしてもこいしちゃんは食べるのに夢中なようだ、その証拠に口の周りが真っ黒だわ。
「こいしちゃん……」
「んっ? なぁにフランちゃん?」
「口にアンコがいっぱい付いてるわよ」
「あちゃー♪」 とこいしちゃんは舌を出しそのままペロペロと口に付いている餡子を舐め始めた。
ゴォーン……
ゴォーン……
「しかし今年はいろいろな事があって大変だったねぇ」
しみじみとした顔をしながらぬえが言う。
「そうね、あんたが余計な事しなかったらもう少し楽だったんですけど」
ムラサがイジワルそうな顔をしながらぬえに言った。
「いやぁ、あのときは申し訳ない……」
ぬえがしゅんと落ち込みだす。
「ふふっ、もういいんですよぬえ、私のことをちゃんとわかってくれたんですから」
少し落ち込むぬえに聖は優しい顔つきで言った。。
「まったく、聖はやさすしぎるんですよ」
ムラサは相変わらずイジワルそうな顔をしてたが少し笑っているようにも見えた。どうやら最初から本気でぬえを責めてるわけではないようだ。
ぬえ達もつい最近まで地底に閉じ込められてたらしい。少し気になったが私は別に詮索する気にはならなかった。今が楽しい、それだけで十分だ。
ゴォーン……
ゴォーン……
「ところで一輪達はどこへ行ったの?」
ぬえが聖に尋ねる。
「一輪と雲山は外で鐘を突いていますよ、星とナズーリンは外のお客さんに挨拶に行っています」
来年は寅年だから星は張り切ってましたよ。と聖は付け加えた
「あんただけよぬえ、何もしないでぬくぬくと年越しソバを食べているのは」
ムラサがぬえに悪態を付き出した。
「そういうムラサは何をしたのさぁー」
どうせ何もしてないんでしょ? と言いたげな顔だった。
「うぐ、えーと……、今から私たちも外のお客さんに挨拶に行くのよ。ですよね聖?」
私はさとりさんのように心が読めるわけではないが、ムラサの必死な顔から「空気呼んで聖!」という心情が容易にわかった。
「ふふっ、そうですねムラサ、それでは行きますか。あっ、あなた達はゆっくりしていて大丈夫ですよ、大切なお客さんですしね」
「「「ハーイ」」」
と私たち三人は言った。聖は本当にいい人間だ。誰に対しても優しいし、まったくどっかの人間も見習って欲しいわね。
それに聖は強そうだ。当然ここが一番重要なところだ、弱かったらつまらないし。私と同じ魔法使いのようだし本当に楽しみだわ。
私はすぐにでも聖と弾幕ごっこをしようしたのだが、せっかくのお蕎麦が伸びるとあれなのとりあえず食べてからにしよう。そう思って私はズルズルッとそばを食べた。
「あ、そうそうぬえ言い忘れてたけどこのあと掃除お願いするわよ」
ムラサがニヤ~した顔でぬえに言った。
「えーそんなー、私もお客でしょムラサ?」
ぬえがムラサに対して露骨に不満な顔を見せる。
「あんたがお客なわけないでしょうが!」
そう言うとムラサは持ち前の船の碇でぬえに思いっきり突っ込みを入れた。
ゴォーン……
ゴォーン……
「まったく、面倒くさいなぁ掃除なんて……」
ぬえが本当に面倒くさそうな顔で言う。
「あら、家の掃除くらいはするものよぬえ。私だってここに来る前にペット達の大掃除、まぁお風呂に入れてさっぱりさせて来たんだから。お空とお燐……、可愛かったわぁ♪」
「こんな感じで洗ったのよ♪」とジェスチャーしながらこいしちゃんが満面の笑みで言った。手の動きが明らかにいやらしいのはあえて突っ込まないことにするよ。
「そうそう、私だってここに来る前に自分の部屋の大掃除をしたんだから、ぬえもサボったりしちゃ駄目よ」
まぁほとんど咲夜がやってくれたんだけどね。「妹様が汚れたりでもしたら大変ですから」ってどんだけ過保護なのよあのメイドは。
「はぁ、まさかこの恐怖の象徴とも言える大妖怪のぬえが掃除とはねぇ……」
ぬえがため息を付きながら戯言を言い出す。
「なぁにが大妖怪よ、(最近の若い奴は正体不明の物を怖がらなくて困ったなぁ)とか愚痴ってたくせに」
「そーだよー、(脅かそうと思って、ワレワレハウチュウジンダってエイリアンのモノマネしたら巫女に笑われた……)って愚痴ってたくせにぃ♪」
「ふんっ、いいもん、今年は地底から出たばっかりだったから調子悪かっただけだし、来年から本気出すもん」
来年から本気を出すって言う奴は大抵出さないわよまったく。
「「はいはい、ガンバレガンバレ」」
私とこいしちゃんは声をそろえてぬえを冷やかした。
「うるさい!」
バーン! とコタツを叩きながら立ち上がったぬえは少し涙目に見えた。
ゴォーン……
ゴォーン……
「そういえばみんな新年の抱負はなぁに?」
こいしちゃんが私とぬえに尋ねる。
「とりあえず聖と弾幕ごっこしてくることよ!」と、私が言うとぬえが馬鹿にしたような感じで、
「フランそれ抱負って言うの? 妖怪ならもっと大きい事を考えないと~」
と言ってきた。大きい事? さっきまで掃除すら面倒だって言ってた奴がどんな事を考えてるのやら。
「それじゃあぬえはどんな大きな抱負を持ってるのかしら?」
せっかくなのでぬえに聞いてみることにした。
「ふふん、この三人で異変でも起こさない? 絶対に上手くいくわよ!」
あれ、思ったよりいいこと言うじゃないのよ。異変かぁ、お姉様がやってるのを見てたけど確かに面白そうだったなぁ。
「それいいねぇ、私たち三人いればどんな異変でも起こせそうな気がするわ」
「でしょう? この三人が居れば向かうところ敵なしよ!」
私とぬえが盛り上がる。この三人で異変を起こせば霊夢といえども簡単には勝てないわ!
「そうとなると悪魔の妹であるこのフランドールがエキストラボスね! ぬえ、あなたは途中の中ボスでもやってなさい」
そう私が言うとぬえがまたバーン! と力強くコタツを叩いて立ち上がった。
「はぁ? 何寝ぼけた事言ってるのよ、正体不明の大妖怪ぬえ、この私がエキストラボスに決まってるでしょうに」
そうぬえが言うと私もぬえに負けないくらい力強くコタツを叩き立ち上がった。
「あんた天狗にまで写真取られて正体バレバレじゃないのよ! 大人しく私のサポートに回りなさい」
「ふん、小娘ごときが私をサポート役にするなんて千年早いんだよ!」
「ちょっと二人ともー、喧嘩は駄目だよー」
こいしちゃんがいきり立つ私とぬえの間に入って止めに来る。それと同時に私とぬえでこいしに聞く、
「「こいし! あなたの意見を聞かせなさい!」」
こいしちゃんが少し悩みだす。まぁ、こいしちゃんなら私のほうがエキストラボスに相応しいって分かってくれるに決まってるわ。
しかし、彼女の返答は私の予想を上回るものだった、
「んー、私の今年の抱負は地霊殿にもっとペットを増やすことかなぁ♪」
ゴォーン……
ゴォーン……
「さて、そばも食べ終わったことだし聖と弾幕で遊んでこようかしら」
私がそう言ってコタツを出るとぬえが「ちょっと待ってフラン」と言ってきた。
「どうしたのぬえ?」
「せっかくだし三人で一緒に鐘でも突かない? 一輪に頼めば簡単に突かせてくれると思うよ」
鐘って除夜の鐘のことかな? 妖怪の私たちが突いて意味があるのだろうか。
「あれって人間の煩悩を払うためにやってるんでしょ? 私たちがやってもしょうがなくない?」
私が聞くとぬえが少し照れだした。
「いやさぁ……、最後の締めくくりに三人一緒に何かやりたいと思ってね」
ああ、そういうことね。まったく、いつも大人ぶったりしてるくせにこういうところは可愛いんだから。
「そういう事ならいいわよ、じゃあこいしちゃんとぬえと私の三人で行こうかしら。いいよねこいしちゃん?」
私が聞くと、すでにこいしちゃんはコタツから出ていて外にでる準備をしていた。
ゴォーン……
ゴォーン……
こたつに居るときは暖かかったが、外に出るとさすがに肌寒い。暖まった体が一気に冷めてしまった。
寺の中にいるときは気がつかなかったけど、思ったよりも人の量が増えていて混雑している。
こんな人の多いところにいるなんて昔の私じゃ考えられなかったなぁ。
霊夢や魔理沙に会ってから私の世界が変わって、こいしちゃんやぬえに会ってから私の世界は広がった。
今年も本当に楽しかったわ。悪魔が神様にお願いするなんて滑稽だけど、できる事なら今年もこの幸せが続きますように。
ゴォーン……
ゴォーン……
「あらぬえじゃないの、どうしたの?」
一輪が尋ねる、雲山と一緒に鐘を打ってるらしいがそれなりに疲れているように見えた。
「三人で除夜の鐘を打とうと思って、いいかな?」
さっきぬえは「簡単に」と言ったが少し心配しているような顔に見えた。
断れたらどうしようって心配してるのかしら。
「ふふっ、そんな心配そうな顔をしないのよぬえ、別に駄目なんて言わないわよ、じゃあはいこれ」
そういうと一輪は、ぬえの心配をよそに私たちにつきがねを渡してくれた。
「ありがとう一輪、それじゃあみんな、準備はいい?」
ぬえが私達に合図を送る。
「いいわよ」
「うん♪」
私とこいしちゃんはぬえの合図に合わせ、つきがねに付いているロープをしっかりと握り、三人で顔を見合わせた。
「いくよ、せーの!!!!」
ト"コ"ォ"ーン"!!!!!!!!……
……………………
あんこだし
それともこれは地方によって呼び方変わるのか?
やった三人娘の再登場だー♪ 前回よりもだいぶ読みやすくなっていると思います。
「こんな感じで洗ったのよ♪」「んー、私の今年の抱負は地霊殿にもっとペットを増やすことかなぁ♪」
こいしちゃんが皆と一緒に居る理由はまさか…… ふらんちゃんぬえぬえ逃げてー!
最後wwやりおったwww
鐘…南無三…
危ない発言や思考に定評のある三人(?)が集まっているのにちっとも怖くないどころか、見ていて微笑ましいのが笑えました。
そしてやっぱり聖様は凄いなぁ。
三人娘は次は何をやらかしてくれるのやら……期待大です。
と言いますか、この三人娘シリーズ(?)すごく好きです。
前回と比べてとても読みやすくなり、より話に入り込むことができました。
ただ、個人的に気になったのが、中盤の三人の会話部分で
「会話」→地の文一行で説明→「会話」→一行で(ry
となっているのが、バランスが悪い感じがしました。
もう少し会話と会話の間の地の文で、周りの風景や状況を入れる等をすると
文章の見た目も良くなるし、雰囲気が出るのでは、と思いました。
(例えば、~力強くコタツを叩いて立ち上がった。 の後に、屋根の雪がバサッと落ちる音がした。 と一文入れたり)
と、一つ誤字報告を
>一輪に頼べば簡単に突かせてくれると思うよ
→一輪に頼めば~
この三人のほのぼの、読んでてすごく和みます。
この三人は本当にほのぼのしてて良いなぁ。
でも、所々こいしの発言が微妙に危険な気が・・・
あと、誤字報告です。
>「あんたがお客じゃなわけないでしょうが!」
→あんたがお客なわけ~
かな?
なーんでこの三人はトリオが似合うんでしょうねぇ
……曲が似てるからか?ww
みんな可愛いからですよウフフ
曲は三人とも神主っぽい不思議な曲調ですよね。
平成エイリアンは最初聞いたときオーエンかと思いましたw