ご注意
このSSのメインは人間ではありません。妖怪でもありません。動物です。
それなので、人語を解す保証はしかねます。
タグの人名に興味をそそられて見るとご期待に添えない可能性が高いです。
それでもよければ、どうぞ。
「似合いますね、意外に」
「そう?」
二匹の巫女がいた。
否、二匹の女性がいた。
というか、狸の着ぐるみがふたつあった。
「なかなか温いわね。うどんも美味しいわ」
「七味効きますねぇ。一層温かいです」
寒そうな発言とは裏腹に、ぽかぽか陽気なもこもこ着ぐるみ~ず。
はてさてどうしてこんな状況になりましたか。まずはそれを簡単に説明しましょう。
或る処に二人の巫女が在りました。
それぞれ博麗と守矢というそれぞれの神社を
中略
冬の或る日に霊夢の飢えたるを聞きて、捕らうて喰うわ今にありと見た早苗たんは、我が神社に暖と飯の用意有りて云々と甘言にて巫女を誘いたる。
「めんどい」
「あぁん、無精者ー!」
霊夢、一言にて切り捨てる。
しかし思い立ったが乙女はミミちゃんという古語に倣い、早苗諦むるを知らず、食い下がりて誘いたるは、断るを面倒に思うた霊夢、遂に首を縦に振るう。
「ま、いっか」
「おっし」
喜びの余り早苗、ガッツポーズなどをはしたなくかましてみる。剣道であれば一本を無効とされる所業であったが、これは命を削り命を紡ぐ真剣勝負。礼儀や道徳諸々は二百余旬の遥か彼方、今はネグリジェで寝そべる閻魔の頭上も熊の縫いぐるみ抱きて眠りたる神綺の頭上も超えて、かの剣豪、妖忌の側に落ち行けば、妖忌、旅のお供の鬼のひょうたん振りかぶり、華麗かつ豪快なスウィングにて礼儀道徳打ち返す。それは着物を崩しあられもない姿で眠る幽々子の上を、藍にキツく抱き付かれ寝苦しがっている紫の上を超えて、春めいた乙女のどたまに直撃し元通りと相成り申す。
ちなみに今は昼前である。
「はっ!?」
すっかり戻りたる様々な思いに、照れるやら恥らうやら。あうあう唸りて頬を朱に染むる。
「どうしたの?」
「なんでもな、あぁ、首かしげると更に可愛い」
だめぽ。
こうして博麗、守矢の床を踏むに至る。
しかし、此処で事件は起きる。
「あれ、寒い」
「なんか書き置きあるわよ」
「あ、ほんとだ。えっと、何々」
そこには一文。
『悪気はなかった。』
早苗すぐに事態を悟り、駆けて暖房装置を見やる。
あゝ、無常なるかな。暖房装置の中央に窪み有り。書き置きとこの窪みを合わすれば、巫山戯た神様が叩き伏せたるに相違ないこと他易く理解に至った。
神の一撃を賜りし暖房、粛々と佇み事を語らず。
早苗は大いに嘆き神を呪う。
折角霊夢を誘いて我が一国一城に帰りたるを、おぉどうしてその絶好なる機を無に帰そうとなさるのか。お恨み申し上げます。お恨み申し上げます。
※本来の心情とは多少異なりますが、大きく間違ってはいない。
その時、引き戸開く。
「どーも。にとりでーす。修理に来ましたよ」
現れたにとりは、普段と少しばかり衣服が異なっていた。
赤く膨らんだコート。赤く膨らんだズボン。赤く膨らんだ帽子。白く膨らんだ袋。
子に夢と絶望を50:50で運ぶナイスミドルである、聖ニコラオスの幻影。通称・サンタさんである。
そんなにとり、霊夢を守矢神社内にて発見。
「おや、霊夢じゃないか」
「あら。どうしたの?」
「やぁ、さっき此処の神様に頼まれて暖房の修理をね、って、ここ守矢神社だよね?」
中にいた人を見て、軽く不安が生まれたるも、それは軽く頷く霊夢によって解消となる。
「で、なにその格好」
「あぁ、これ。これは吸血鬼の姉妹が広めてきたお祭りに則った姿なのよ。それで、河童一同、しばらくはこの格好で過ごすことにしたのさ」
「へぇ」
実にありがたみがない。
「他にも黄色や青や黒や白と揃ってるよ」
何処かで悪の組織と戦わざるを得ない彩りである。
サンタ姿のにとりと、紅白色した霊夢。似通った色が並び、霊夢もまたXmasのコスモを背負うた。
そこに早苗駆け戻る。
「にとりさん、修理はどのくらいで済みますか!?」
「あ、早苗さん、修理にきま、って理解が早いですね」
「ありがとうございます。で、修理は!?」
一大事につき、早苗の問は揺るがない。
「ま、まだ見てないのでなんとも」
「できる限り早急に!」
「ぜ、善処します!」
努力の末に我が家に連れ込んだ霊夢に様々な衣装を着せるという甘美なる一時を夢見る東風谷の早苗。ここで暖房如きに邪魔だてされてなるものかと、鬼気迫る勢いでにとりに願えば、にとり、蛇を見た蛙というこの神社では比較的多い事態を、ガマの油一滴垂らさぬも再現するに至り、早苗の号令に忠犬の如く駆けて往く。
「……寒いの嫌い?」
「決してそう言うわけでは」
霊夢が驚き半分呆れ半分という顔であった。その顔を見れば、早苗もハッとなり咳払い一つ。
「霊夢さん。暖房が壊れていたので、申し訳ないのですが温かい服貸しますので着てください」
「え、あぁ、蒲団でも好いわよ」
その時、早苗の脳天に稲妻にも似た衝撃が轟き走りたり。
その衝撃の凄まじさは恐ろしく、早苗の鼻より血を噴出せしめた。
「うわっ」
思わず霊夢は飛び退き、寸前立っていた箇所に血が滴る。
「大丈夫?」
「……ちょっと、いえ、だいぶ反省してるので少し待って下さい」
人の空想の発展は素晴らしいものである。
「復帰です。それはまぁ、後でと言うことで、とりあえず着ててくださいよ。食事は居間で食べますし。今取ってきます」
「はーい」
やる気なく片手を上げ早苗を見送ると、霊夢はぼうと天井を見上げる。すると足の裏の寒さに気付き、ぶるりと身を震わせた。
直後、駆けていった早苗が駆け戻る。
手にしていたものは、茶色い着ぐるみであったという。
というわけでした。
ちなみに、にとりは部品が足りないと云うことで一旦帰って行き、また戻ってくるとのことだったので、二人は着ぐるみに身を包み、そしてうどんを食べ始めたのであった。
食べるのは早苗お手製のたまごうどんである。
ちなみに茹でたうどんに生卵を掛けたものではなく、温かい汁に卵をといた温か仕様になっております。
更に寒いので七味たっぷり。
「汗かきそう」
「服脱いで着れば好かったですね」
額に汗を浮かべながら、二人はうどんを食べていく。
ちょっと跳ねたりして、着ぐるみ汚したりしつつ、ぬるい水でも飲みながら一心不乱にブランチを食べていく。
やがて完食すると、二人はその場でばたりと寝転がった。
「暑くなりました」
「今油断すると冷え込むわよ」
「うぅ。ですね。じゃあ脱げません」
じっとりとした汗はとても心地悪かった。
「眠いから寝るわ」
「ええええ!?」
霊夢は寝る場所を選ばないらしい。
「蒲団の代わりにこれ丁度好いじゃない」
「わ、判るけどさ。じゃ、じゃあお蒲団を」
「それは悪いからここで少し眠るわね」
「あぁ、なんでこんなに負けた気持ち!」
修学旅行ちっくな添い寝がしたくて溜まらない乙女であった。
やましい気持ちは多分ない。
「おやすみ」
「あ、待って私も寝るから、片付けるの待ってて!」
そう言うと、丼と箸を速攻洗ってカムバック。
霊夢は寝ていた。
早苗は崩れ落ちた。
「……いじわる」
霊夢の寝息は健やかだった。
「仕方ないので横で寝ます」
もぞもぞ。
……あう。
早苗の顔が霊夢に急接近する。
あんまりに可愛かったので、悪い虫ももぞもぞしてきた。
「お、王子様がキスしたら、起きたりしますか?」
無論無反応。
「……ちょっとだけ」
狸の頭が狸の頭に急接近。
実に色気はない。
しかし、色気は今の早苗に必要なかった。
ただ、なんとなく、知的好奇心というか、キスしてみたいお年頃であった。
「ただいま戻りましたー」
にとり帰還。
早苗は吹っ飛んで転がり、柱に後頭部を打った。
着ぐるみバリアがあったものの、それなりに痛かった。
「…………!!!!」
のたうち回る。
それを見てにとり、首傾げる。
「……どうしたの?」
「なんでもないですから」
恨めしそうに睨む。
「うあ、すぐ直すから睨まないでよ」
「あ、いえ、そういうわけでは」
「はいはい。待っててね」
そういうと、にとりは暖房装置の方へ。
なんか理性がようやく完全な形になったのか、自分のしようとしたことが恥ずかしかったり罪悪感あったりで、なんかまた身悶えてしまった。
「うぅ。寝よう。寝不足なのよきっと」
そんなことを自分に言い聞かせ、それでもなお霊夢の隣に寄って、少し緊張しながら目を閉じた。
穏やかな朝は、ちょっとだけ乱れながら、それでもなお穏やかに過ぎていくのであった。
それから一時間後、やや怯えながら帰宅した二柱は、居間に転がる巨大な二匹の狸に驚き、お互いの額をぶつけあいのたうちまわることになるのであった。
天罰覿面、なのかもしれない。
早苗さんはもっと壊れるべきww
誤字報告
>自分の仕様としたことが
あと、前半で二カ所、「守矢」が「守谷」になってます。
2ボスあたりにひょっこりでてこないかなぁ
タイトルで某東方2次シューを思い出した。
>タイトルで某東方2次シューを思い出した。
なんかあったね!!
この所が鮮明に思い浮かべる事が出来たw
とりあえず着ぐるみふたつ中身入り、いただこうか。緑も赤も可愛すぎるのでテイクアウトの刑。
これは卑怯だwww
あの流れでこの単語は卑怯だろww