Coolier - 新生・東方創想話

酔っ払いの戯言

2009/11/03 21:29:14
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「それじゃアリス、『それ』お願いね?」

至極当然のことのように放たれた霊夢の言葉に、私はハァと疲れたような溜息を吐いて視線を下に落とした。

「・・・『これ』を、ね・・・」

視線の先には、べろんべろんに酔いつぶれた白黒の魔法使いがだらしなく寝っころがっていた。
表情はへらりと幸せそうに緩み、その手には空になった一升瓶を未だに握り締めている。
外見が可愛らしい女の子の姿であることを除けば、飲んだくれのゴロツキの様子とそうは変わらないように見えた。


「・・・少しは加減して飲むってことを考えないのかしら。」

毎回毎回懲りもせずによくもまあ飲むものだと、軽く呆れる。
いつも宴会の度に勢いにまかせて好きなように飲んで騒いで、片づけが始まる頃には気持ち良さそうな顔で眠りこけているのだから、全くもって厚かましい。
それでも周囲から本気で疎んじられることはなく、文句を言われながらもいつも受け入れられている。
そこがこの、霧雨魔理沙という少女の不思議なところだった。


やれやれと周囲を見渡してみると、いつものごとく博霊神社で開かれた宴会もそろそろお開きのようで、集まった面々もぼちぼち帰り始めていた。
「じゃあね」や「おやすみ」などの軽い挨拶が行き交いながら一人二人と減っていき、もう数える程の人数しか残っていない。
私は大抵宴会の片づけをキリの良いところまで手伝うので、帰るのはだいたいいつも最後の方になる。

そして、毎回最終的には「そろそろ帰るわ。」「あ、そう。じゃ、『それ』頼むわね。」という感じの流れで、べろべろに酔いつぶれた魔理沙を家まで送り届けることになるのだ。

魔理沙と家が近いことや、何だかんだ言って日頃からよく関わり合っていることから、霊夢が私に魔理沙を連れて帰る役を頼むのも至極当然の流れで、私の方にも断らなければならないような理由は無い。
いつの間にかそれが当たり前になっていて、周囲の面々も何も気に留めないようになっていた。




「お~、今日も気持ち良さそうにつぶれてるねえ。」

手に杯を持ったままの萃香がにゅっと現れ、寝こけている魔理沙を見てけらけらと笑った。

「本当にね。・・・連れて帰る方の身にもなってもらいたいわ、全く。」

私がフウと溜息を吐いて呟くと、萃香は軽く首を傾げて言った。

「うん?・・・面倒なら、置いて帰っちゃえばいいんじゃない?」
「・・・そうしたいところだけど、そしたら霊夢が大変でしょ。」

不本意そうな表情で、肩をすくめて答える。

「宴会の場所を提供してもらってるんだし、後片付けも大変だろうし、その上こんな手の掛かる酔っ払いを置いて帰れないわよ。」

「・・・ふうん?」

すると萃香は何やら含みのある目でこちらを見つめ、ニヤリと笑った。

「・・・何?」
「いやぁ~、別に。ま、そういうことにしとこうか。」

何か引っかかる言い方だ。
そういうことにしておこうも何も、それ以外に何があるっていうのか。

そう問い返そうとした時、不意にだらしのない声が割って入った。



「ほ~?手のかかる酔っ払いってのは、誰のことだぁ?」


いつの間にか目を覚ました魔理沙が寝転がった姿勢のままで顔をこちらに向けていた。
酔いでほんのりと赤く染まった顔に、ニヤニヤと挑戦的な笑みを浮かべている。


「あんたのことよ。だらしのない野魔法使い。」

むすっとした口調で、できるだけつっけんどんに答えてやる。


「いつもいつも宴会で酔いつぶれたあなたが無事に自宅に帰れているのは誰のおかげだと思ってるの?」
「人徳のある私のおかげだな。」

私の嫌味を笑顔でさらりと返し、魔理沙は軽くよろけながら立ち上がった。

「いや~、やっぱり酒に酔うっていうのは気持ちが良いぜ。まぁだらしなく酔っ払ったりしないお上品な都会派魔法使いさんにはこの気持ち良さはわからないだろうがね?」

へヘンと笑いながら、からかうように舌を出してみせる。
本当に、どこまでも小憎たらしい。

「あんたねぇ・・・って、ちょっと!」

ムッとして言い返そうとした時、魔理沙はふらりとよろめきそのまま前のめりに倒れそうになった。

慌てて駆け寄り、危ないところで支えて止める。
私の方が背が高いためちょうど魔理沙の頭が私の肩に埋まる格好になり、そのままもたれかかってくる体を支えると自然と抱きかかえるような体勢になってしまう。

「気をつけなさいよ!下手にひっくり返って打ち所が悪かったらどうするのよ?」
「んあ~・・・」

むにゃむにゃとよくわからない相槌を返しながら再び夢の世界に意識を飛ばそうとしている魔理沙を見つめ、私は諦めたように目を閉じてその背に腕を回した。
こうしないと崩れ落ちてしまうのだから仕方が無い。


「・・・・・・?」

ふと何やら視線を感じて振り返ってみると、霊夢と萃香が妙に生暖かい目でこっちを見つめていた。

何か微笑ましいものを見るような、ひやかすような、そんな感じの目つきだ。

ニヤニヤという文字が周囲に浮いて見える。



「・・・・・・・・・・・・」

軽い頭痛を感じながら目を閉じ、私は本日何度目かの溜息を吐いた。






「ああもう、ほら、しっかりしてよ。」

箒からずり落ちそうになる魔理沙を半ば抱えるようにして飛び、ようやく魔法の森の彼女の自宅が見えてきたところで私はホッと肩を下ろした。

「魔理沙、着いたわよ。」

玄関の前に降り立ち、朦朧としている魔理沙の肩を軽くゆする。

「んー・・・」
「ちょっと、聞こえてる?」
「あー・・・大丈夫大丈夫。余裕だぜー・・・。」
「・・・・・・」

軽く嘆息し、黙って魔理沙の家の扉に手をかけた。
この様子だと、家の中まで送ってやらないといけないだろう。


「・・・・・・あんたねぇ・・・」

家の中を一目見て、呆れたように呟いた。

「ほんとにいい加減、家の中整理したら?」

相変わらずというべきか、魔理沙の家の中はすさまじいまでに散らかっていた。
本や蒐集品、日用品に至るまでごっちゃになって無造作に放り出されている。
もう見慣れたせいで今更驚きはしないが、初めてこの家に入った時はこれが女の子の家なのかと本気で疑ったものだ。


「・・・ハァ。」

その辺りの物に躓かないように足元を見ながらベッドの側まで連れて行き、ボスンと魔理沙をベッドに倒れこませ、ようやく終わったと息をついた。
やれやれとベッドの傍らに腰を下ろして、辺りを見回す。

「・・・仮にも女の子なんだから、もう少しキレイにすればいいのに・・・」

そう一人ごち、とりあえず彼女が起きた時につまづいたりぶつかったりしそうな辺りのものだけ片付けておいてやる。
お節介だとはわかっているが、このくらいは手を出してもいい範囲だろう。
そう思いながら手を動かしている内に、ふと先刻の霊夢と萃香の表情が脳裏に蘇ってきた。
ニヤニヤとからかうような、生暖かい表情。
口にこそ出さないものの、彼女達の表情は明らかに「お前ら仲良いな。」と言っていた。

「・・・こういうお節介を焼くから、ああいう風に誤解されるのかしら。」

自分の手元を見下ろし、ポツンと呟いた。




霧雨魔理沙とアリス・マーガトロイドは仲が良い。


そんな認識がいつの間にか周囲に広まっていることに気づいたのは、割と最近のことだった。

自分としては仲が良いなどというつもりはさらさら無かったし、おそらく魔理沙の方もそんなつもりは無いだろうと思っている。

確かに同じ魔法使い同士利害が一致すれば協力することもあるし、異変の時には組んで戦ったこともある。
だけどそれはあくまでお互いの利益のためというだけのことで、仲が良いからというわけじゃない。
同じ森に住んでいるから顔を合わせることも多いけれど、交わす言葉はいつも皮肉っぽいやり取りばかりだし、いがみ合って弾幕の打ち合いになることだってちょくちょくある。

それなのにどうして私達の仲が良いなどという誤解が広まるのだろうか。

・・・全くもって不可思議だった。




「・・・ハア。」

軽く頭を振って立ち上がる。
考えてると何だか本格的に頭が痛くなってきた。

とにかく、家に帰ろう。
もう充分義務は果たしたのだし。

「それじゃ、帰るわ。・・・おやすみ。」

返事は期待せずにそう言い置いて腰を上げた時、突然手をぐっと握られた。


「・・・・・・え?」

驚いて振り返ると、ベッドに仰向けに寝転がったままの魔理沙が口を尖らせてこちらを見つめていた。

「・・・もーちょっと居ろよぉ。」
「・・・は?」
「だからぁ、もーちょっとここに居ろって。まだいいだろー・・・。」

・・・また、わけのわからないことを言い出した。

「イヤよ。帰るわ。さっさと離して。」

にべもなく突っぱね、掴まれた手を振りほどこうと引っ張る。

「何で。」
「もうさっさと家に帰って自分のベッドで休みたいの。誰かさんのせいで頭が痛いし。」
「わざわざ帰んなくたっていいじゃないか。ここに泊まってけよ。」
「・・・・・・・・この家のどこに私の寝るスペースがあるっていうのよ?」

ごちゃごちゃに散らかった部屋の中を見渡し、冷たい声で答えてやる。
人を泊めようというなら、せめて身を横たえる場所くらい確保してから言うべきだろうに。
ソファーですら衣類や本が投げ散らかされ物置状態になっているのだから呆れてしまう。

・・・この家で人が寝れそうなスペースなんて、それこそあんたの寝てるベッドくらいのものじゃないの。



「ここ。」

魔理沙はへらっと笑って親指で自分の寝ているそのベッドを指し示した。

「ちょっと狭いけど、詰めたら二人でも寝れるぜ。」


・・・ほんとに何を言い出すのか、この酔っ払いは。

聞こえなかったことにして魔理沙の手を強引に引き剥がそうとすると、魔理沙は抵抗するように両手でがっちりと私の腕を掴み、そのまま抱え込むように張り付いた。

「・・・・・・。」

ものすごく面倒くさい。
そのまま無言でぐいぐいと攻防を続けてみたが、張り付いた魔理沙は一向に取れそうになかった。

「・・・何なのよ、あんたは・・・」

疲れた様に息を吐いて、その場に腰を下ろした。

これだけ酔っているのだから、どうせその内すぐに眠り込むだろう。
それから腕を引き剥がして帰ればいい。

私が腰を下ろしたのを見て、魔理沙は満足そうにニッと笑った。
その能天気そうな笑顔が無性に癪に障る。

どこまでも強引で力ずくで、他人のことなんてお構いなし。
なのにその明るい笑顔一つ見せられるだけでどうしても本気で憎めなくなってしまうのだから、ズルいといったらない。

「・・・何怒ってんだよぉ。」

思いっきり不機嫌そうな顔をしてツンとそっぽを向いてやると、魔理沙は拗ねたような声で言った。

「なー、アリスゥ。」

ああもう、うるさい。さっさと寝ちゃいなさいよ。
何だってそうやって屈託無くじゃれ付いてくるのよ。
・・・そんなんだから。

「・・・そんなんだから、周りに色々誤解されるのよ。」

「誤解?」

きょとんとした声で魔理沙が聞き返してくる。

「・・・私とあんたの、仲が良いとか。」
「・・・へ?」

・・・やっぱり全然気がついてないらしい。
お気楽なものだ。

ブハッと吹き出し、魔理沙は面白そうに笑い出した。

「ははっ、そんな風に思われてるのか、私達。」
「笑い事じゃないわよ。」

仲が良いというだけならまだしも、近頃じゃ一部で私達が付き合っているという噂まで囁かれているらしいのだ。冗談じゃない。

そう言うと、魔理沙はさらに面白そうに大笑いした。

「いいじゃんか。そうだ、どうせならホントに付き合っちゃおうぜ?私達。」

「・・・・・・。」

とてもじゃないけど、もう突っ込みきれない。
返事の代わりに思いっきり冷たい目で見返してやる。
しかし魔理沙はひるんだ様子もなく、掴んだままの私の腕をぐいぐいと引っ張った。

「なあ、そうしようぜ。面白そうじゃないか。お前と一緒に居ると色々便利だし。」
「お断りよ。誰があんたみたいな盗賊と。・・・大体、面白そうとか便利とかじゃないでしょ、付き合うっていうのは。私達には無理よ。」
「何でだよ。」

ああもう、何でこんなことをこいつと話さないといけないのか。

「仲良くするとか付き合うっていうのは、そもそもお互いが相手のことを好きっていう前提で成り立つものじゃない。だから・・・」

私達には無理。そう言おうとした。



「私は好きだぜ?お前のこと。」



「―――――――――な・・・」

不意打ちのような一言に、ドンッと音をたてて心臓が跳ねた。


「・・・・・・。」

・・・聞き間違い、だろうか。やけにはっきり聞こえたような気がするけど。


「・・・ごめん、よく聞こえなかったんだけど。・・・何て?」
「だからぁ、私はお前のこと好きだぜって言ったんだよ。」
「・・・・・・。明日、永遠亭で診てもらった方がいいわよ。ここまで運んでくるときに頭のまずいところをぶつけてしまったみたいだから。」
「失礼だな。私は正常だぜ。」
「・・・・・・」


私は大げさに溜息をついて、魔理沙から目を逸らした。

頭をぶつけたのでなければ、私を驚かせて反応を楽しもうというところだろう。本気で言っているわけがない。
いつもは顔を合わせれば人をおちょくって憎まれ口ばっかり叩いてくるくせに、何が『好き』だか。

もう、酔っ払いの戯言になんて付き合いきれない。
放っておくに限る。ムキになるだけ損だ。

「おい、信じてないのかよ?本当だってば。」
「・・・・・・。」

無視を決め込む。
どうせ、明日の朝には全部忘れてケロッとして、何を言ったかも覚えていないだろう。
クールに冷静に表情を保つ。相手にせず放置というのが、魔理沙に対して一番有効な攻撃のはずだ。

(だから、あんたもいい加減落ち着きなさいよ。)

空いた方の手で魔理沙から見えないように胸を押さえ、先程からうるさいくらいに早鐘を打っている心臓に内心で語りかける。

いつもの冗談だとわかっているのに、やけに動揺してしまっている自分に腹が立った。

「なーアリスゥ。好きだってば。なぁ。」

だらっとした酔っ払い独特の調子で、魔理沙はしつこく繰り返した。

「なのに何でお前はこっちを向かないんだよ?からかっても挑発しても、いっつも肝心のところで顔そむけて、私に興味なんて無いっていうみたいに。」
「・・・・・・。」
「なーアリスー。好きなんだぜぇ。」
「・・・・・・。」
「なぁってば。好ふぃててててっ!!?」

無視を決め込むつもりだったのに聞いているうちに何だかいたたまれなくなってきて、私はぐいっと魔理沙の頬をつねって強引に黙らせた。

変に顔の辺りに熱が上ってくる。腹立たしいような気恥ずかしいようなよくわからない感覚が湧いてきて、とにかくもうこれ以上聞いていられない。



「・・・嘘つき。」


私は魔理沙の頬を引っ張ったまま、ぼそっと呟いた。

「あんたの言うことなんて信用できないわ。いっつも嘘ばっかりついてるくせに。」

意地っ張りでひねくれ者で、意味も無く嘘をつく根っからの嘘つき。
いつだって平気な顔で息を吐くように嘘をつく。

だから今私を好きだって言ってるのだって魔理沙のいつもの嘘なんだから、頼むから。・・・いい加減落ち着いてよ、私の心臓。

頬を引っ張っていた私の手が離れると、魔理沙はムッとした顔で言った。


「・・・じゃー、アリスはどうなんだよ。私のことキライか?好きか?」

折角静まりかけた心臓が、途端に再び跳ね上がった。


「どうなんだよ?」
「・・・・・・私は・・・」

一瞬口を開きかけ、言いよどんで口をつぐむ。

・・・そんなこと、聞くまでもなくわかるだろうに。

わがままで自分勝手で強引で傍若無人で嘘つきで人をからかって楽しんで。


・・・魔理沙なんか。



「・・・あんたなんか、キライだわ。」


そっぽを向いて、そう呟いた。
チクリと心臓に痛みが走った気がするが、気のせいだと思うことにする。


「・・・・・・・・・。」


憎まれ口とか皮肉とか、そんなものが返ってくると思ったのに、魔理沙は沈黙したまま一言も返してこなかった。
そっぽを向いたままなので、魔理沙がどんな表情をしているのかも見えない。
妙な沈黙が部屋を包んだ。

私は黙ったまま、魔理沙から顔を逸らし続けた。




どのくらい時間が経っただろうか。
顔をそむけ続けていい加減首が痛くなってきた頃、ふと規則正しい寝息の音に気がついた。

そろそろと魔理沙の方に目を向けてみると、魔理沙は体をこちらに向けたままぐっすりと眠り込んでいた。

ホッと息をついて安堵して、ずっと緊張していた自分に気づき、また腹が立った。
ドッと疲れが押し寄せてくる。
一体今日は、どうしてこんな展開になったんだったか。

見ると、私の腕を捕まえていた魔理沙の手ももう緩んで抜けていた。



「・・・帰ろ。」

帰って自分のベッドでぐっすり休んで疲れを取ろう。
魔理沙だって朝になって目を覚ませば全部忘れていつも通りのん気に笑ってるはず。
まあ覚えていたところで、「キライ」なんていつも言っていることだし、大して気にもしないだろうけど。

そう頭の中で今日の事柄を完結させ、立ち去ろうと腰を上げかけた。


なのに、私の体は根を張ったように動かなかった。
さっさと立ち去ればいいとわかっているのに、何故だかこの場を離れる気になれない。

「・・・・・・。」

じっと魔理沙の寝顔を見つめる。
本当に、何なんだろうこの白黒は。
つくづくわけがわからない人間だ。
厚かましくて迷惑で、いつも憎たらしいことばかり言うくせに、黙って寝ている顔は異常に可愛いし。

「・・・・・・。」

魔理沙の寝顔を見つめたまま、無意識に、吸い寄せられるように手が伸びていた。

少し癖のある金髪を、そっと撫でる。
思った以上にフワフワしていて、さわり心地が良かった。
そのまま、無言でゆっくりとしばらく頭を撫で続けた。



・・・何をしているんだろうか、私は。

嫌いだと宣言したそばから、どうして嫌いな相手の頭を撫でたりしているのか。
言ってることとやってることがまるで逆だ。
今日の私は色々とおかしい。

「・・・あんたが変なこと言うからよ。」

責任を押し付け、咎めるように魔理沙を睨んだ。


好きだなんて、どうせ酔った上でのいつもの軽い虚言のくせに。

大体魔理沙が、本気で好きな相手に面と向かって好きだなんて言えるわけがない。
筋金入りのひねくれ者の意地っ張りだ。本当に好きな相手が居たらきっと余計に憎まれ口をきいてケンカを売って、自分の気持ちが相手にバレないように必死で誤魔化すだろう。
で、最後には我慢できなくなって、力任せに正面から相手に突っ込んで玉砕する。そんなところが関の山だ。

・・・いや、でも、だとすると普段魔理沙が私にやたら憎まれ口をきいてくるのは・・・。


「いや、無い。有り得ないでしょ。バカじゃないの。」

ブンブンと首を振り、慌てて自分で自分の考えに突っ込みを入れる。
魔理沙が本当に私のことを好きだなんて、有り得ない。
万が一有り得たとしても、だからどうだというのか。
だって私は、魔理沙のことが嫌いなんだし。
だけど、嫌いな相手だったら頭を撫でたくなったりするだろうか。
ということは、私は実は魔理沙のことを嫌っているわけではないのかもしれない。
じゃあ好きかと言われると・・・。


「・・・・・・。」


私は咄嗟に頭を振って、無理矢理思考を中断した。
これ以上考えると、とんでもない結論にたどり着きそうな予感がしたからだ。
まずいと感じたら深く踏み込まないに限る。それが私のスタンスだ。



・・・それにしたって、酔いつぶれた魔理沙を送ってきただけなのにどうして私がここまで頭を悩ませないといけないのだろうか。
当の魔理沙は気持ち良さそうに熟睡しているのに。
・・・そう考えると、何だかまた腹が立ってくる。


いっそのこと、今度の宴会では私もめちゃくちゃに呑んで酔いつぶれてしまおうか。
それで逆に私が魔理沙に絡んでやって、困らせてやったらさぞ愉快だろう。
酔っ払いにわけのわからないことを言われ、あせらされる者の気持ちを一度くらい味わってみればいい。


・・・そんなことをぐるぐると考えながら、気恥ずかしいような腹立たしいような、くすぐったいような苦しいような、ごちゃごちゃとしたよくわからない感情に襲われて。

静かな部屋で、私は一言小さな声で呟いた。



「・・・・・・バカ。」
そんなわけで、初投稿させて頂きました。きりたにと申します。
マリアリが私のジャスティス。
つたない文章ですが、読んでくださった方のお暇つぶしにでもなればこれ幸い。
きりたに
[email protected]
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コメント



0.2800簡易評価
16.100名前が無い程度の能力削除
ナイスマリアリ!
18.100名前が無い程度の能力削除
これは良いマリアリ!!
25.100名前が無い程度の能力削除
素敵な甘リアリ。きゅんきゅんする。
39.100名前が無い程度の能力削除
初投稿でこれは素晴らしいな!!
これからもマリアリ書いてくれ!
42.100名前が無い程度の能力削除
これは良いアリス
57.100名前が無い程度の能力削除
拗ねた魔理沙もかわいい。
63.100名前が無い程度の能力削除
ジャスティス
66.100名前が無い程度の能力削除
うおおぁ、これはキタ。
ナイスマリアリ。