妖怪の山にある、大きな滝の麓で。
眼前一杯に、横に広がったまま自分の方に迫りくる幾多の弾幕の群れ。
それを、犬走椛は己の千里眼でじっと見つめていた。
最初の弾の集団は、前進して身体を僅かな隙間に滑り込ませ、塊を左右に分けて、いなす。
それでも正面にいくらか残っている光弾は。
右に半歩、前に一歩半、その後三分の一秒おいて左に一歩半移動して確実に回避した。
危険な弾を全て後ろへ受け流すと同時に、椛は前方に向かって、居るはずの目標に向かって剣を振り上げる。
振り下ろすと同時に、椛得意の半螺旋弾幕が放たれる。はずであった。
しかし、
「あ……」椛が自身の弾幕を放つ前に、思わぬ声が漏れる。
「今度は、私の勝ちですね」剣を振り上げて、がら空きになった椛の懐に、魂魄妖夢が楼観剣を突きつけていた。
「参りました……投了です」
椛がそういうと同時に、二人の周辺で張り詰めていた空気がたちまち弛緩する。
滝壺に落ちる大量の水が、音となって秋の虫の声をかき消していた。
「じゃ、今日の修練はこれで一段落ですね」
そういって、手ぬぐいで汗を拭いながら、河原の手頃な岩に腰掛ける妖夢さんにならい、私も近くに腰掛けた。
ふう、と息をつく妖夢さんの声が聞こえる。
今日の対戦成績は、私の四勝六敗。近頃の戦績としてはかなり健闘した方だが、やはり負け越してしまった。
こんな事で、山の見張りの役がこれからも務まるのか、と自分でも不安に感じる。
そんなことを考えている間に、妖夢さんは、自分のお弁当を広げていた。慌てて私も持参した笹包みを開く。中身は簡単、おにぎりが二つ。それだけ。
いただきます、とおにぎりの前で手を合わせる。
と、いつものように妖夢さんのお弁当に目がいってしまう。
私はおにぎりくらいしか作れないのに、妖夢さんのお弁当箱はいつも、とってもかわいらしいおかずがたくさん詰まっている。あ、今日もだし巻き卵が入っている。
前に一度味見させてもらったけど、椎茸のおだしがすごく繊細で、私なんかにはとても作れないと思わせるような逸品だった。
いいなあ、うらやましいなあ。私もあんな風にお料理が作れるようになりたいなあ。
椛さんの握ったらしい、かわいらしい小ささのおにぎりと、自分の今あけている二段の重箱みたいな弁当箱を見比べて、いつものことだというのに悲しくなります。
なんで私は、こんなにもおなかがすくんでしょう? 半分幽霊なのに。
百歩譲って、おなかが空くのは許せても、幽々子様みたく、食べてもぜんぜん太らなければいいのに。
それが、食べたら食べたぶんだけ太るなんて。椛さんなんかは、いつもおにぎり二つでおなかいっぱいになるのに。世の中不平等に過ぎます。
あ、椛さんが私のお弁当をみてます。弁当箱がいつになく大きく重く感じて、とても恥ずかしくなりました。
私が見てるのに気がついて、椛さんが顔をそらしました。
やっぱり、このお弁当の量はおかしいのでしょうか? 椛さんに、私は変な子だと、思われちゃったしょうか?
ふと見ると、椛さんのほっぺにご飯粒のおべんとがついてます。こういった、ちょっと抜けてるところがまた女の子らしいです。
私は自分の恥ずかしさにたまらなくなって、それを誤魔化すかのように、そのご飯粒に八つ当たりしてしまいました。ふん、もう自棄です。幽々子様のまねです。
あ、私が妖夢さんのお弁当箱みてるのがばれた。
おかずを物欲しそうにしてると思われちゃったかな? とても恥ずかしい。
慌てて顔をそらす。何の解決にもならないというのに。
と、不意に妖夢さんが
「ほっぺにおべんと付いてますよ」
「えええ、どこですか?」
無様にアタフタする私を意に介さず、妖夢さんは、自分の人差し指で私のほっぺたに付いたご飯粒をとってくれて、
ぱくっ。
食べた!
妖夢さんが!
私のほっぺたについてたご飯粒を!
恥ずかしさと、別の強烈な何かの感情で、私の顔が真っ赤になってしまった。
こういう事を、何でもないかのようにすらっとできますよね、妖夢さんは。
なんというか、妖夢さんはかっこいい。とてもかっこいい。それに私よりも剣術ができるなんて。
しかも、すらっとした体型に、反則的なまでに似合っている髪型とリボンのおしゃれ。どんくさい私なんかとはとても比べものにならない。
かっこよくて、しかもかわいいなんて、正直卑怯だ。あこがれてしまう。
思わず、全てを押し流すかのように、水筒のお茶を勢いよく喉に流し込む。
椛さんが顔を真っ赤にしています。
ここまで初心な反応をされると、こっちが気恥ずかしくなります。
椛さんは、真っ赤な顔色のまま、手にした竹筒の水筒を一気に傾けて、
「ゲ、ゲホッ!」むせてます。
さっきまでピーンと立っていた耳が、咳き込むのにあわせて左右に忙しく動いてる。
しばらくすると落ち着いたのか、椛さんは咽せるのを止め、かわいらしい小さな口をあけ、再び手に持ったおにぎりと格闘し始めました。
もぎゅ、もぎゅ。ごくん。
「おいしー」だって。
それにしても、椛さんはかわいい。こんなにかわいいのに、その上獣耳とモフモフしっぽが付いてるなんて。
その上とっても女らしい。
私なんて胸もちっちゃいし、気が効かないし、かわいいところなんか一つもないのに。その上、私に憑いてるのはお餅みたいな半霊だけ。
正直卑怯です。あこがれちゃいます。
自分のおにぎりの味に集中することで、何とか息を整えて、未熟な自分の心を落ち着かせることに成功した。
一方の妖夢さんは、さっきのおべんと事件にもかかわらず、平然と弁当を食している。
私にとっては大事件だったけど、妖夢さんにとっては、きっと何でもない事なのだろう。
それにしても。
妖夢さんの食事してる光景は、とても様になっている。育ちのためか、とても上品だ。
がさつな私とは比べものにならないくらい。
よく見ていると妖夢さんのお箸の先は、半寸くらいしか汚れていない。
何から何まで、とても素敵だ。私には無理だ。
椛さんは、もうご飯を食べてしまいました。
「おなかいっぱーい」と、本当に幸せそうにおなかをさすっています。
私も慌てて食べるスピードを早めますが、なにぶん量の差があるのでなかなか食べ終わりません。
それにしても、本当に椛さんは天真爛漫です。
足を伸ばして、気持ちよさそうにあくびをだして。
私がしたら、単に、はしたないだけ。あんなかわいくなんて、私には無理です。
一人食べ終えた私がおなかを休めていると、にとりんが川下からやってきた。
「や。まーた試合やってたんだ。二人ともやるねー」
私が妖夢さんと修練しているのを、にとりんはたまに覗きに来る。
最初の頃は、にとりんは妖夢さんが半分人間だからか、少し怖がって居たけど、最近は少し慣れたようだ。
前みたいに、物陰に隠れてこちらを恐る恐る伺う様な事はなくなった。
「そうだ、この前のお礼だ、このきゅうりを受け取ってよ」
にとりさんはさも親しげに、椛さんに話しかけています。きっと仲良しさんなのでしょう。それにしても、「この前」とは、一体何があったんでしょう。少しだけ気になります。
ところでにとりさんと椛さんはどのくらい親しいのでしょうか。
椛さんは、やっぱり私なんかよりもにとりさんの方が親しみやすいのでしょうか。まあ、当たり前ですよね。
「ありがとね。じゃあ天狗を代表して、遠慮無く受け取るよ」
「いやいや、おやすい御用さ」
きゅうりを竹籠一杯荷受けとった私と妖夢さんをみて、にとりんはいきなり、
「それにしても、お二人さんはとっても似合いのカップルだと思うよ、私は」こんなことを言い出した。
「へ?」
「ああ、ついにもみじんも素敵な連れができたか。私も頑張って好きな人見つけようかなー」
「そ、そんなんじゃ無いですってば!」私が慌てて否定するのと同時に、
「そうですよ!」椛さんも一生懸命否定していた。
やっぱり。椛さんは、私なんかにはもったいない位の素敵な女性ですから。
……でも。
「えー、そうかなー」
にとりんは不思議そうに首を傾げる。
当たり前じゃないか。妖夢さんはそこらの妖怪や下っ端天狗などとは比べものにならないくらい高貴な方なのだ。
私と並べるなんて、おこがましいにもほどがある。
……でも。
にとりさんは不思議な顔をされて、私と椛さんを交互に見比べます。
そして、得心がいったように、
「ああ、そうかい。じゃあ、そろそろお邪魔虫は退散するとしましょうか。ごめんね、気が利かなくてさ」
にやけ顔でわざとらしく私達と間をとってしまいました。
絶対、そんなんじゃないですから。にとりさん、貴方の妄想は完全に間違っていますから!
「じゃ、もみじん。烏の上司に、くれぐれも新聞のネタにされないよう気をつけてねー」
去り際のセリフも、とってもいやらしいです!
その後に妖夢さんが弁当を食べ終えた頃、麓の方から文様が飛んできた。私達に気がつくと、文様は降下して、妖夢さんに挨拶された。
確か、今日は冥界に取材に行っていたはずだ。今の時刻から察して、おそらくその帰りだろう。
文様は妖夢さんに、
「取材のお礼に伝言頼まれちゃいました。曰く、ようむ~、ついでになんかおいしいものかってきてね~。だそうです」
そういって文様はあっという間に飛び去っていってしまった。あの調子だと、良い記事ネタをつかんだみたいですね。忙しそうで何よりです。
おいしい物って……
幽々子様、またですか。私は思わずため息をつく。
人里でまんじゅうとか、適当な物を買っておけば良いんでしょうか。
と、そこまでやんわりと考えたとき、
「あの、妖夢さん」椛さんが私に声をかけた。
「実は私。人里に、穴場のおいしい甘味処をしってるんです」
私は精一杯の勇気を持って、喋った。
思わず言ってしまった。
「ぜひ、ご一緒しませんか?」
椛さんにそう、おずおずと言われた。不覚にも胸が高鳴るのを感じます。
でも、いいのでしょうか。私なんかが? 椛さんと?
自分で提案したものの、あまりの変なお誘いに、思わずぎゅっと目を閉じてしまう。
「あ、迷惑だったらごめんなさい!」
返事はまだ無い。それはそうだ。妖夢さんと私とではあまりにも釣り合いがとれない。あまりに妖夢さんに失礼に過ぎるお誘いだと今更ながら思った。恥ずかしい。後悔先に立たずだ。
そしたら、妖夢さんの声で、
「え、いえ、じゃあ、お願いします。……ふつつか者の私ですが」
――え?
信じられないような言葉を、私は聞いた気がした。
「その前に、ちょっと着替えてきますね! 汗いっぱいかいちゃったし!」
なら、こんな地味な服装でなく、きちんとした服を着てこなきゃ!
「そうですね! 私も一度着替えてきます!」
もっとおめかししなきゃ。妖夢さんに釣り合うような格好を!
もしかして。
もしかして。
ででで、
でーと? これ?
眼前一杯に、横に広がったまま自分の方に迫りくる幾多の弾幕の群れ。
それを、犬走椛は己の千里眼でじっと見つめていた。
最初の弾の集団は、前進して身体を僅かな隙間に滑り込ませ、塊を左右に分けて、いなす。
それでも正面にいくらか残っている光弾は。
右に半歩、前に一歩半、その後三分の一秒おいて左に一歩半移動して確実に回避した。
危険な弾を全て後ろへ受け流すと同時に、椛は前方に向かって、居るはずの目標に向かって剣を振り上げる。
振り下ろすと同時に、椛得意の半螺旋弾幕が放たれる。はずであった。
しかし、
「あ……」椛が自身の弾幕を放つ前に、思わぬ声が漏れる。
「今度は、私の勝ちですね」剣を振り上げて、がら空きになった椛の懐に、魂魄妖夢が楼観剣を突きつけていた。
「参りました……投了です」
椛がそういうと同時に、二人の周辺で張り詰めていた空気がたちまち弛緩する。
滝壺に落ちる大量の水が、音となって秋の虫の声をかき消していた。
「じゃ、今日の修練はこれで一段落ですね」
そういって、手ぬぐいで汗を拭いながら、河原の手頃な岩に腰掛ける妖夢さんにならい、私も近くに腰掛けた。
ふう、と息をつく妖夢さんの声が聞こえる。
今日の対戦成績は、私の四勝六敗。近頃の戦績としてはかなり健闘した方だが、やはり負け越してしまった。
こんな事で、山の見張りの役がこれからも務まるのか、と自分でも不安に感じる。
そんなことを考えている間に、妖夢さんは、自分のお弁当を広げていた。慌てて私も持参した笹包みを開く。中身は簡単、おにぎりが二つ。それだけ。
いただきます、とおにぎりの前で手を合わせる。
と、いつものように妖夢さんのお弁当に目がいってしまう。
私はおにぎりくらいしか作れないのに、妖夢さんのお弁当箱はいつも、とってもかわいらしいおかずがたくさん詰まっている。あ、今日もだし巻き卵が入っている。
前に一度味見させてもらったけど、椎茸のおだしがすごく繊細で、私なんかにはとても作れないと思わせるような逸品だった。
いいなあ、うらやましいなあ。私もあんな風にお料理が作れるようになりたいなあ。
椛さんの握ったらしい、かわいらしい小ささのおにぎりと、自分の今あけている二段の重箱みたいな弁当箱を見比べて、いつものことだというのに悲しくなります。
なんで私は、こんなにもおなかがすくんでしょう? 半分幽霊なのに。
百歩譲って、おなかが空くのは許せても、幽々子様みたく、食べてもぜんぜん太らなければいいのに。
それが、食べたら食べたぶんだけ太るなんて。椛さんなんかは、いつもおにぎり二つでおなかいっぱいになるのに。世の中不平等に過ぎます。
あ、椛さんが私のお弁当をみてます。弁当箱がいつになく大きく重く感じて、とても恥ずかしくなりました。
私が見てるのに気がついて、椛さんが顔をそらしました。
やっぱり、このお弁当の量はおかしいのでしょうか? 椛さんに、私は変な子だと、思われちゃったしょうか?
ふと見ると、椛さんのほっぺにご飯粒のおべんとがついてます。こういった、ちょっと抜けてるところがまた女の子らしいです。
私は自分の恥ずかしさにたまらなくなって、それを誤魔化すかのように、そのご飯粒に八つ当たりしてしまいました。ふん、もう自棄です。幽々子様のまねです。
あ、私が妖夢さんのお弁当箱みてるのがばれた。
おかずを物欲しそうにしてると思われちゃったかな? とても恥ずかしい。
慌てて顔をそらす。何の解決にもならないというのに。
と、不意に妖夢さんが
「ほっぺにおべんと付いてますよ」
「えええ、どこですか?」
無様にアタフタする私を意に介さず、妖夢さんは、自分の人差し指で私のほっぺたに付いたご飯粒をとってくれて、
ぱくっ。
食べた!
妖夢さんが!
私のほっぺたについてたご飯粒を!
恥ずかしさと、別の強烈な何かの感情で、私の顔が真っ赤になってしまった。
こういう事を、何でもないかのようにすらっとできますよね、妖夢さんは。
なんというか、妖夢さんはかっこいい。とてもかっこいい。それに私よりも剣術ができるなんて。
しかも、すらっとした体型に、反則的なまでに似合っている髪型とリボンのおしゃれ。どんくさい私なんかとはとても比べものにならない。
かっこよくて、しかもかわいいなんて、正直卑怯だ。あこがれてしまう。
思わず、全てを押し流すかのように、水筒のお茶を勢いよく喉に流し込む。
椛さんが顔を真っ赤にしています。
ここまで初心な反応をされると、こっちが気恥ずかしくなります。
椛さんは、真っ赤な顔色のまま、手にした竹筒の水筒を一気に傾けて、
「ゲ、ゲホッ!」むせてます。
さっきまでピーンと立っていた耳が、咳き込むのにあわせて左右に忙しく動いてる。
しばらくすると落ち着いたのか、椛さんは咽せるのを止め、かわいらしい小さな口をあけ、再び手に持ったおにぎりと格闘し始めました。
もぎゅ、もぎゅ。ごくん。
「おいしー」だって。
それにしても、椛さんはかわいい。こんなにかわいいのに、その上獣耳とモフモフしっぽが付いてるなんて。
その上とっても女らしい。
私なんて胸もちっちゃいし、気が効かないし、かわいいところなんか一つもないのに。その上、私に憑いてるのはお餅みたいな半霊だけ。
正直卑怯です。あこがれちゃいます。
自分のおにぎりの味に集中することで、何とか息を整えて、未熟な自分の心を落ち着かせることに成功した。
一方の妖夢さんは、さっきのおべんと事件にもかかわらず、平然と弁当を食している。
私にとっては大事件だったけど、妖夢さんにとっては、きっと何でもない事なのだろう。
それにしても。
妖夢さんの食事してる光景は、とても様になっている。育ちのためか、とても上品だ。
がさつな私とは比べものにならないくらい。
よく見ていると妖夢さんのお箸の先は、半寸くらいしか汚れていない。
何から何まで、とても素敵だ。私には無理だ。
椛さんは、もうご飯を食べてしまいました。
「おなかいっぱーい」と、本当に幸せそうにおなかをさすっています。
私も慌てて食べるスピードを早めますが、なにぶん量の差があるのでなかなか食べ終わりません。
それにしても、本当に椛さんは天真爛漫です。
足を伸ばして、気持ちよさそうにあくびをだして。
私がしたら、単に、はしたないだけ。あんなかわいくなんて、私には無理です。
一人食べ終えた私がおなかを休めていると、にとりんが川下からやってきた。
「や。まーた試合やってたんだ。二人ともやるねー」
私が妖夢さんと修練しているのを、にとりんはたまに覗きに来る。
最初の頃は、にとりんは妖夢さんが半分人間だからか、少し怖がって居たけど、最近は少し慣れたようだ。
前みたいに、物陰に隠れてこちらを恐る恐る伺う様な事はなくなった。
「そうだ、この前のお礼だ、このきゅうりを受け取ってよ」
にとりさんはさも親しげに、椛さんに話しかけています。きっと仲良しさんなのでしょう。それにしても、「この前」とは、一体何があったんでしょう。少しだけ気になります。
ところでにとりさんと椛さんはどのくらい親しいのでしょうか。
椛さんは、やっぱり私なんかよりもにとりさんの方が親しみやすいのでしょうか。まあ、当たり前ですよね。
「ありがとね。じゃあ天狗を代表して、遠慮無く受け取るよ」
「いやいや、おやすい御用さ」
きゅうりを竹籠一杯荷受けとった私と妖夢さんをみて、にとりんはいきなり、
「それにしても、お二人さんはとっても似合いのカップルだと思うよ、私は」こんなことを言い出した。
「へ?」
「ああ、ついにもみじんも素敵な連れができたか。私も頑張って好きな人見つけようかなー」
「そ、そんなんじゃ無いですってば!」私が慌てて否定するのと同時に、
「そうですよ!」椛さんも一生懸命否定していた。
やっぱり。椛さんは、私なんかにはもったいない位の素敵な女性ですから。
……でも。
「えー、そうかなー」
にとりんは不思議そうに首を傾げる。
当たり前じゃないか。妖夢さんはそこらの妖怪や下っ端天狗などとは比べものにならないくらい高貴な方なのだ。
私と並べるなんて、おこがましいにもほどがある。
……でも。
にとりさんは不思議な顔をされて、私と椛さんを交互に見比べます。
そして、得心がいったように、
「ああ、そうかい。じゃあ、そろそろお邪魔虫は退散するとしましょうか。ごめんね、気が利かなくてさ」
にやけ顔でわざとらしく私達と間をとってしまいました。
絶対、そんなんじゃないですから。にとりさん、貴方の妄想は完全に間違っていますから!
「じゃ、もみじん。烏の上司に、くれぐれも新聞のネタにされないよう気をつけてねー」
去り際のセリフも、とってもいやらしいです!
その後に妖夢さんが弁当を食べ終えた頃、麓の方から文様が飛んできた。私達に気がつくと、文様は降下して、妖夢さんに挨拶された。
確か、今日は冥界に取材に行っていたはずだ。今の時刻から察して、おそらくその帰りだろう。
文様は妖夢さんに、
「取材のお礼に伝言頼まれちゃいました。曰く、ようむ~、ついでになんかおいしいものかってきてね~。だそうです」
そういって文様はあっという間に飛び去っていってしまった。あの調子だと、良い記事ネタをつかんだみたいですね。忙しそうで何よりです。
おいしい物って……
幽々子様、またですか。私は思わずため息をつく。
人里でまんじゅうとか、適当な物を買っておけば良いんでしょうか。
と、そこまでやんわりと考えたとき、
「あの、妖夢さん」椛さんが私に声をかけた。
「実は私。人里に、穴場のおいしい甘味処をしってるんです」
私は精一杯の勇気を持って、喋った。
思わず言ってしまった。
「ぜひ、ご一緒しませんか?」
椛さんにそう、おずおずと言われた。不覚にも胸が高鳴るのを感じます。
でも、いいのでしょうか。私なんかが? 椛さんと?
自分で提案したものの、あまりの変なお誘いに、思わずぎゅっと目を閉じてしまう。
「あ、迷惑だったらごめんなさい!」
返事はまだ無い。それはそうだ。妖夢さんと私とではあまりにも釣り合いがとれない。あまりに妖夢さんに失礼に過ぎるお誘いだと今更ながら思った。恥ずかしい。後悔先に立たずだ。
そしたら、妖夢さんの声で、
「え、いえ、じゃあ、お願いします。……ふつつか者の私ですが」
――え?
信じられないような言葉を、私は聞いた気がした。
「その前に、ちょっと着替えてきますね! 汗いっぱいかいちゃったし!」
なら、こんな地味な服装でなく、きちんとした服を着てこなきゃ!
「そうですね! 私も一度着替えてきます!」
もっとおめかししなきゃ。妖夢さんに釣り合うような格好を!
もしかして。
もしかして。
ででで、
でーと? これ?
いやまぁ、かわいいんだけどね? かわいいけど、もっとかわいくできるはず。頑張れ。
あと背景色がちょっと目に優しくないような気も…
これはいいやばいいいい
俺の矜持にふれた
つーか気がふれた
前々から椛と妖夢はお似合いだと思ってたんだよ
お互い不慣れで初々しいのがたまんないね
剣士二人が集まるとだいたいやることは一つですし
ところでこの作品はまだ続くのですか?
>>16さん
これはこれで一区切りで、終わりです。続きを書くつもりは今のところありません。
もみもみも妖夢もかわいすぎですよ!
直接的な続きでなくても、この2人のお話がもっと読みたいです。
点数はこれからの期待を込めてこのくらいで。
それはさておき、二人とも意識しあいすぎて可愛すぎです!
そして脇役の使い方も巧いですね、とくにゆゆ様ww
ただこの先が気になるし、読めないのは惜しいのでこの点で
次の作品も期待してます!
(ぼそっと一人言)……この続きが読めたらうれs(ry
すいません。PCで読んだらスペース空いてました…
申し訳無いです。
海原先生吹いた。関係なかったらごめんね。
……二人のその後も見てみt(ry