Coolier - 新生・東方創想話

輝夜のお仕事がんばる!

2009/09/25 18:54:18
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秋の太陽が西に傾きだした頃、私とてゐは、未だに惰眠をむさぼっているであろう、永遠亭の姫様こと蓬莱山輝夜を起こしに行く。
それは、師匠である八意永琳に頼まれる、いつもの日課だ。

「姫様ってさあ、なんか仕事しなくてもいいの?」
寝室に向かうてゐがつぶやいたとき、私は気の利いたセリフを返すことができなかった。

「同じ蓬莱人のお師匠様はあんなに働いてるのにねえ」
「あはは……」
師匠の働きぶりは永遠亭一である。

まあ、その他の主な住人たちである兎たちがあまり仕事をしないのこともあるが。
師匠は、誰が起きるよりも早く起き、夜は誰よりも遅くまで寝ず。
日中は常に研究やら人妖の治癒といった、薬士の仕事を毎日欠かさず行っている。
それに加えて、姫様のこまごまとした世話や、永遠亭のみなの食事の用意まで行っているのだ。

私にとって、師匠のそのような働きぶりはまさしく尊敬に値する物であった。
が、師匠自身が愛情を持って仕えている、蓬莱山輝夜は、勤勉とはほど遠い日常を送っている。

いつも昼過ぎまで寝ているので、基本、食事は夕の一回のみ。
それで居て、私たちが寝る頃になると、きまって、
「おなかがすいたー。たすけてえーりーん」と、毎日夜のおやつをねだるのだ。
しかも、一日中のほとんど、部屋にこもっていては、外界から持ち込んでもらったという、こんぴーた? とかいうものをいじくり回しているだけのようだ。

「お師匠様も、よく愛想がつきないものだねえ」
てゐのぼやきも、分からないではない。

館の主であるからさすがに面と向かってはいえないが、月兎の私から見ても、師匠が姫様を慕う理由がさっぱり分からない。
そんなことを考えているうちに、姫様の部屋の前についた。
このあたりだけ、昼だというのにルーミアが出現したような暗闇なのよね。
どういう月の技術のたまものか、姫様が寝ている間は、寝室の中は一切の光が存在できないのだ。
なんという徹底ぷり。なんという技術の無駄遣い。
そんなわけで、姫様を穏便に起こすには、部屋の外から声をかけるしかないのであった。
「姫様、起きてください。もうとっくにお昼回ってますよー」
そんな私の訴えもむなしく、姫様が眠たげなまぶたを擦りながら寝室を出てきたのは、今日も、太陽がもう暮れそうな時刻だった。




「いただきまーす」
「いただきます」
姫様の声に、三人が唱和する。
永遠亭の、いつもの夕餉の風景であった。
師匠が炊いたご飯に、師匠の作った味噌汁。師匠の作ったおかずに、師匠がつけた漬け物。
永琳づくしである。むろん、私も手伝ってはいる。姫様とてゐは知らん。
朝、昼餉はともかく、夕餉だけはこの四人がそろって食べるのが永遠亭での習わしである。
と、いっても、常に遅れ気味なのは姫様ただ一人なのだけど。

「姫様ももう少し早く起きられれば、今日の昼食を一緒に楽しめたんですけどねえ」
永琳がチクリとこぼす。それもそのはず、今日の昼に、豊穣の神からの診療代代わりとして、色々な秋野菜を受け取っていたのだ。
一部は今の味噌汁にも入っているが、あまりにも新鮮だったので、私たちの遅めの昼餉は、皆で秋野菜の天ぷらを楽しんでいたのだった。
「へえ、そんなことがあったんだ。天ぷらなんて久しく食べてないなぁ。うらやましいわ」

「じゃあ、私達が声かけたらすぐ起きてきてくださいよ。今日声かけたときは、師匠の天ぷら、まだ残ってたんですから」
「そんな慶事が毎日あるのなら、もう少し早く起きる努力をしてもいいかもしれないわね」
あら、この人参おいしい、と返す姫様。
いつもの事ながら、そのような薄い反応は少し不満がある。
「姫様、いくら何でも毎日夕方まで寝てるのは寝過ぎですよ」
「他人は他人って言うでしょ? 私はそれくらい睡眠時間が必要なの」
姫様が答えたそれに、師匠が横からきっついボディブローを放つ。
「あら、姫様。蓬莱人は別に寝なくても死にはしませんが?」

うっと、ご飯を喉に詰まらせる演技をする姫様。
「まあ、考えておくわね」
「常識的な睡眠時間であるなら、別に寝てていいですよ、姫様」
フフフ、と師匠が微笑む。

そんな様子を見て、てゐが調子に乗って茶々を入れる。
「姫様はほかにも善処すべき事があるんじゃ無いですか?」
「何?」

「姫様は毎日部屋でごろごろ。食っちゃ寝の生活です。お小遣いだって働きもせずにお師匠様任せ。そのうちお師匠様に見捨てられちゃいますよ」
「お小遣いが無くなる? それは不味いわね……」
ほかに気にすべき事がたくさんあるでしょう、と心の中で叫ぶ私をおいて、話は進む。

「そうならないために、お仕事でも探したらどうです?」
「私だって、お仕事の一つや二つくらいあるわよ」
「盆栽監視員は、お仕事とはいわないですよ」
「ギクッ」
「姫様、兎にぶりっこしてどうするんですか」

姫様とてゐの会話をハラハラして聞いていた私も、基本的にはてゐと同意見だ。
働く、とまではいかなくても、姫様には、もう少し師匠のようにまじめに生きていて欲しい。永遠亭の長であるのならば、なおのこと。

「冗談はそれくらいにして。私には私なりの使命があるのよ」
打って変わってまじめな表情になる輝夜。心なしか、カリスマという見えない外套を羽織っているような気がした。
「何です?」
てゐが聞く。

姫様の使命。それは初耳だった。
ひょっとしたら、私たち兎には気づかないような使命が、姫様にはあるんじゃ無いだろうか?
たとえば、月からの幻想郷への侵略を、日々身を挺して守っているとか?
そうなら、お許しください。この鈴仙、今まで姫様を侮っていました。

姫様は、自慢げに、
「姫様である、という使命よ!」と、言い放った。
駄目だ、こいつ……早く何とかしないと。私はそう声に出すのを懸命にこらえた。
隣で味噌汁を吹き出すてゐ。
それをみて台ふきんを探し始めた師匠は、
「まあ、姫様は姫様だし、ね?」
「さすが永琳! よく分かってるわね!」
「ですが、姫様。家事の一つや二つ、手伝っていただいても、バチは当たりませんよ?」
「……ですよねー」
今度こそは姫様も、善処します、と、肩をすくめてみせたのだった。




夜半を大分過ぎた頃には、地球の兎も月兎の弟子も、既に寝て。永琳だけが独り、研究を続けていた。
少々堅くなった首を鳴らし、背伸びをする。
今日はこれで終わりにしましょうか。と、誰もいない研究室でつぶやく。
その気になれば全く睡眠をとらないことも可能な蓬莱人である永琳だが、彼女は薬士でもあった。
永琳の明晰な頭脳を毎日稼働させるには、寝なければならない。それが薬士としての使命でもある。
彼女は、毎日最低六時間は睡眠をとることを己に義務づけていた。

永琳は廊下を静かに、寝ている兎たちを起こさないように、そっと輝夜が遊んでいる部屋に赴く。
部屋の前につくと、襖越しに、
「輝夜? 私。そろそろ寝たいんだけど」と声をかけると、
「分かったわ。ちょっと待って」と、しばらくすると輝夜の部屋内でずっと低く響いていた電子音が鳴り止んだ。


「入るわね」と永琳。
そこには、
「そろそろ布団を冬の物に変えた方がいいんじゃ無いかしら」既に寝間着姿で、部屋いっぱいにかけられた蚊帳越しに話しかける輝夜が正座していた。
そうかしら、と答えた永琳は、自分も寝間着に着替える。
「蚊帳、お願い」
「ええ」

輝夜が蚊帳の端をわずかに持ち上げると、永琳は部屋の押し入れから一式を取り出し、素早く蚊帳の中に自身の体ごと押し入れた。
これは、二人が永遠亭に住み始めてからずっと変わらぬ深夜の光景である。
この作業は、兎たちにもやらせるわけにはいかない。月人たちの、暗黙の了解であった。
差し入れられた布団は一つ、枕は二つ。

永琳はテキパキと布団を敷き、早速潜り込む。

「永琳、明かり。消すわよ」
それを当然のごとく見届けた輝夜は、自分が今持っている蝋燭の火以外の、部屋内の光源を全て消した。
そうしておいて、枕元にその燭台をそっと置き、自分もしずしずと布団の中に潜り込む。

「明日、起こすのはいつも通りの時間でいいの?」
「ええ、お願いね」
「分かったわ。じゃ、お休み」
「おやすみなさい、輝夜」




枕元の燭台から、橙色のおぼつかない炎が二人の頭を照らす。
(永琳は逆に、蝋燭の光がないと眠れないし)
輝夜と枕を並べている永琳は、既に寝息を立て始めていた。
(私、なんで少しでも明かりがあると眠れないんだろう?)
蝋燭の光にあぶり出された、永琳の安らかな寝顔を見ながらそんなことを考える。
(あの藤原の娘はどうなのかしら?)
あの娘は竹林で野宿していると聞く。彼女ならどんな環境でも眠れるでしょうね、と輝夜はおかしく思った。

(やっぱ暇よね。どう考えてみても)
頭をわずかにずらし、いつもやっているように、戯れに、蚊帳に止まった虫の数を数える。

(片手で、寝ながらできる暇つぶしは無いものか……)
そんな都合のいいものは、そうそう無いかな……?
(私と手をつないでないと、絶対眠れないんだものね。永琳は)
輝夜はそっと上半身を起こし、ちょうど自分の方へ寝返りを打った少女の上へ、はだけた布団をかけ直す。どうやら良い夢を見ているようだ。
(寝返りを打つ回数が減ったし、朝方は足を抱えて寝るようになったわ。やっぱり、明日から布団は冬物に換えるべきね)

姫様の、独りだけの時間が、また始まった。
  えいりん   (゚д゚)  姫さま
      \/| y |\/



         ( ゚д゚) えい姫
         (\/\/



         (゚д゚) えい姫
         (\/\/







                                      もこたん……じつは俺、冷え性なんd

追記:人称が無茶苦茶という、超初歩的なミスを何度も起こしていたことに気づいたので、思い切ってそのあたりをかなり編集、改訂。先に読んでいただいた皆様、お見苦しい文を読ませてしまい、本当に申し訳ありません。
万年
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コメント



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5.70名前が無い程度の能力削除
こっちみんなwww
6.80名前が無い程度の能力削除
こっちみんなww
8.70名前が無い程度の能力削除
な ぜ こ っ ち を 見 る

単なるニート姫ネタじゃなくていいね
13.80名前が無い程度の能力削除
こっちみんなwwwww
なにこのかわいいえーりん。
14.70名前が無い程度の能力削除
あっち見ろw
15.100名前が無い程度の能力削除
こっちみんなwww
えーりんかわいいっ
20.100カギ削除
働いているだと…!(主に永琳の安眠に)
その睡眠スタイルはやりはじめて長いんですか?そこんとこkwsk

ごちそうさまでした
21.100名前が無い程度の能力削除
一ひねり加えられてていいですね
24.80名前が無い程度の能力削除
だから遅くまで寝てるんだな……GJ!!!
それにしてもこっち見んなwwww
25.100名前が無い程度の能力削除
えーりんも姫様もかわいい!
てゐにもうどんげにもまだ隠している二人だけの秘密を持っている
えーてるは最高だ!あと…こっち見んなwww
31.90名前が無い程度の能力削除
読み終わってからタイトルを見直したら、『輝夜、夜のお仕事頑張る!』に見えた
34.90名前が無い程度の能力削除
なんというヤマザナドゥ
このえーてるは間違いなく夫婦
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ラブラブサイコー!