Coolier - 新生・東方創想話

煌く涙は今やもう

2009/07/19 21:52:40
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// 思い立ったが吉日というので、なんとなくタイトルを変更



― 1 ―   BGM.Romantic Children

   踊る 踊る 魔女は踊る
   さりとては 魔女はいつまで踊るのか


「なぁ、アリス」

 唐突に名前を呼ばれる。薄暗い森の中、私と彼女は二人きり。
だから、必然的に私の名前はアリスということになる。さて、私に話しかけているのは一体誰なのでしょう。
人形であるハズはない。だって、私の人形は喋らないから。

「なぁ、聞いているのか?」
「えぇ、聞いているわよ。それで、結局はどうなったの?」
「それでだな、私と霊夢、その他諸々は無事に帰ってこれたという訳だ」

 また、霊夢。もちろん、私の名前は霊夢ではない。私はアリスであって、他の誰でもない。
霊夢とかその他大勢とどこか遠い場所へと行って、無事に帰ってきた。彼女の話を要約するとこういうことになる。

「それで、帰ってきたというのにお土産の一つもないのかしら」
「ないぜ。ただの観光で終わったからな」

 私に対してのお土産は、お話だけ。何もないよりは嬉しいけれど、少し、哀しくもある。

「ところで、どこへ向かっているの? 突然私の家に来たと思ったら、何も言わずに付いて来い、なんだから」
「紅魔館の図書館にだぜ。積もる話もなんとやら、だ。
 ゆっくりと落ち着いて話が出来て、紅茶も全自動で出てくる場所と言ったらあそこしかない」

 紅魔館の図書館。あそこには、もう一人の魔女、パチュリー・ノーレッジがいる。
いつも、魔理沙が入り浸っているところ。そこに、私は入れるのだろうか。入る余地はあるのだろうか。
いつもいつも、能天気で、笑い顔。何も考えてないんじゃないかしら、魔理沙って。
私がいたら、きっと邪魔になるだろう。でも、邪魔をしたくもある。
だって、そうしないと、二人きりで……。
私の心中の暗い部分だけが、どんどんと大きくなっていく。



― 2 ―   BGM.不思議の国のアリス

   揺れる 揺れる 魔女の心
   魔女の舞踏会は いつまで続くのか


「そう」

 魔理沙がここに来た理由を話す。素っ気無い一言で返される。
でも、素っ気無い訳はない。彼女の、パチュリーの顔を見れば分かる。
嬉しいんだ。魔理沙が、ここに来てくれて。でも、その顔には複雑な表情も混じっているのが見て取れる。
だって、私という存在も付いてきているのだから。

「ごめんね、お邪魔させてもらうわ」
「そう」

 彼女はやはり素っ気無くしか言葉を発しない。手元のグリモワールに目を釘付けにしている。
魔理沙はというと、ここに来た目的もどこ吹く風のように、手近な本を物色している。
私はというと、メイド長である十六夜咲夜が入れてくれた紅茶を飲んでいる。
話そうにも話題はないし、彼女にとっても話しかけられたくはないだろう。
どうしてこんなことになったのだろう。その元凶となった要因は、まだ手近な本を物色している。

 空気が、淀んでいる。何か、得体の知れない力が働いているかのよう。
話しかけようにも、やはり話題はない。今回の騒動は、私には全く関係がないことだったから。
ロケットで月へと行った。最初、魔理沙の口から聞いたときは、何のことかと思った。
話を聞くうちに、ロケットとは外の世界の技術であることが分かった。
そして、魔理沙、霊夢、紅魔館、その他色々な面子が影で動いていたことも。
彼女にとっては今や笑い話かもしれない。でも、私にとっては違う。
どこにいっても、魔理沙の姿がなかった。長い間、ずっと。
神社に行っても、魔理沙が行きそうなところに行っても、見つからなかった。
せめて、私に一言ぐらい話をかけてから行きなさいよ……!

「そういえば、ロケットの本はどうしたんだぜ」
「どこかにあるんじゃないの。私は知らないわ。自分で探して」

 素っ気無い一言。でも、私にかけるそれとは明らかに違う。

「ねぇ、どうしてロケットなんて作ったの?」
「レミィが行きたいって言うから……っていうのもあるけど、純粋に興味本位。
 材料も情報も次から次へと入ってくるなんて、そうそうないことだもの。罠だとしても、ね」

 興味本位。それで、私はしばらくの間、魔理沙に会えなかった。
でも、魔理沙は魔理沙。私は私。違う存在だから、束縛なんて出来やしない。

「どうした、アリス。顔色が悪いぜ」
「別に、どうってことはないわ。なんでもないの、ほんと、大丈夫」

 考えれば考えるほど、果ての見えない螺旋階段を延々と上っていくような心地になる。
辛いだけ。辛いだけで、その先にはゴールも望むものも何もない。
でも、考えてしまう。だって……。

「……咲夜を呼ぶ? 吐きそうなら、出来れば図書館の中にはいてほしくないわ」
「おいおい、あんまりだぜ。ここは優しい言葉を掛けるところだぜ」
「……そう」
「………ごめんなさい。きょうは、ここら辺で帰らせてもらうわ。またね、二人とも」

 そういって、逃げ出した。だって、辛すぎた。
帰って、一人きりになりたかった。誰にも会いたくなかった。……こんなにも、辛いのだから。
門を出ると、気分は少しだけ良くなった。寝ている門番を尻目に、魔法の森へと、自分の家へと向かうことにした。

「むにゃ…。さくやさんー、もう、だめですー……」

 お気楽な寝言が彼女の口から漏れている。こんなところ、咲夜にでも見られたら大変なことになるでしょうに。
でも、今は彼女が心底羨ましかった。能天気で悩みなどないように見える。そんな、彼女が。
だけど、彼女も私に似ているのかもしれない。
私は魔理沙に、彼女は咲夜に、特別な感情を抱いているのかもしれないのだから。
……彼女のことはあまり知らない。
けれど、彼女の咲夜を見る目は、どこか普通とは違う。それは、尊敬や畏怖とも違う眼差しだもの。
その特別な感情を抱いているだけが、似ている点ではない。
意中の相手は、自分とはまた違う相手に眼差しを向けている。それも、似ている。
でも、どうしてこんなにも彼女は悩みなんてないように、気楽に眠れるのかしら。そこだけが、謎。
そして、羨ましい。
流石にずっといるのもあれだから、足早にその場を立ち去ることにした。



― 3 ―   BGM.夢消失 ~Lost Dream

   喚き 叫ぶ 魔女の供物
   それ自体が 魔女の心だとは知らずに


 暗い家の中で、ひとりきり。静寂が心地よく感じられる。
だって、静寂は誰も裏切らないし、離れてもいかない。
今、私の周りには、人形がある。絶対に、私を裏切らない人形が。
今頃、魔理沙は何を話しているのだろう。私がいなくなったから、きっと、話は弾んでいるだろう。
私なんて、最初からいらなかったんだ。行かなければ良かったんだ。

 ……あれ、どうしてだろう。涙が、止まらない……。いくら拭いても、後から後から…。

「ぐすっ…、魔理沙ぁ…。どうして、私なんか誘ったのよぉ…!」

 やり場のない哀しみが、声となって出てくる。
私なんか、仲間はずれだったんだから、誘ってくれなければよかったんだ。邪魔になるだけなんだ。
嗚咽が、零れてくる。どうせ、静寂を打ち破るものなんてあるわけがない。
だから、声を押し殺すこともなく、泣いた。ただ、ひたすらに泣いていた。

 泣き疲れて、ベッドに横になる。一陣の月の光だけが、私を照らしていた。
気付いたら、辺りはもう真っ暗。森の中は、昼間より一層静まり返っている。
この森の中の静寂の様に、私の心もまた静寂に取り残されている。まさに一人きりの孤独。
それが一番良いと思っていた。他者と交流することなんて必要ないと思っていた。
でも、交流し始めてから、その考えは段々と変わってきた。交流するのも悪くはないという考えへと。
だけど、こんな哀しいのなら、交流なんて、友達なんていらなかった。
こんな見苦しい感情ばかりが外に出て、こんな辛いことばかり考えてしまうのなら……。

 ふと、窓の外から音が聞こえる。
こんな時間に音を立てるのは、魔理沙か、道に迷った人間かのそのどちらかしかしかいない。
コツン。
窓に小石があたる。こんなことをするのは、あいつ以外いない。

「ちょっと! どうして石なんて投げるのよ!」
「すまない。ちょっと、直接中を覗けなくて…」
「……まさか、見たの…?」
「……あぁ、見ちまったぜ。それに、聞いてもいる。
 本当にごめん。そんなにも、辛かったのなら誘うんじゃなかったな……」
「ち、ちがうの! 誘ってもらったのは嬉しかった。けど、けど……」
「けど、何なんだぜ?」
「……けど、その、あのぅ……。べっ、別になんでもないの!」
「そこまで言われたら、凄く気になるぜ……!」

 でも、流石にそれ以上を聞いてくることはなかった。魔理沙なりに、私を気遣ってくれたのだろうか。

「そういえば、どうしてここに?」
「体調は大丈夫なのか気になったってのもあるけど、もう一つ、な」
「もう一つ?」
「見せたいものがあるから、ちょっと来てくれないか。あー…。嫌なら、別に良いんだぜ……」

 今日、二度目のお誘い。
でも、さっきあんなことを言っていたのを聞いていたせいか、どうも消極的風魔理沙になっている。

「いえ、行くわ。魔理沙のことだもの。きっと面白いものでも見つけたんでしょう?」
「ああ! きっと気に入ると思うぜ。こっちだ」

 私は、ただひたすらに魔理沙の後を追いかけていく。
はぐれないように、手を繋ぐ。その手は、温かかった。



― 4 ―   BGM.Lotus Love

   煌き 光る 魔女の魔法
   魔女の心は ゆっくりひらく


 私と魔理沙は、森から少し離れた小高い丘へと来ていた。

「そろそろ、手を離してもらえると助かるんだが。……その、恥ずかしいぜ」
「ふぇ…? あっ、ご、ごめん……!」

 自分でも、繋いでいることを忘れてしまっていた。
それぐらいに、彼女の存在は私にとって自然だったのかもしれない。

「ところで、見せたいものって何なのかしら」
「ちょっと待っててくれ。あと少しのハズだぜ」

 あと少しで何が起こるのだろうか。私は、少し期待に胸を膨らませていた。
横にいる魔理沙の顔を見る。その顔は、少年のように好奇心で満ち溢れていた。
私にはなく、魔理沙にはあるもの。羨ましいと願ったもの。
きっと、私はそんなところに惹かれて行ったのだろう。
魔理沙は、時間を数えている。一体、何が起こるというのだろう。

「あと、約30秒だぜ」
「一体、何を見せようって言うのよ……!」
「良いから、見逃したら勿体無いぜ。後10秒、9、8、7、6」 「ちょっと、説明ぐらいしてくれてもっ…!」
「5、4、3」 「ねぇ、まーりーさー?」
「2、1、0ッ!」

 その時の光景は、生涯忘れることはないだろう。それぐらいに、鮮烈で、綺麗だった。

「わぁ……!」
「見せたかったのは、これだぜ」

 夜空を切り裂く流星群。月よりも明るい星明りが目の前に広がっていた。
暗い世界は今や、流れ星の作り出すダストトレイルで照らされていた。

「でも、どうして今日に流れ星が降ってくるなんて分かったの?」
「それはだな。月に行く前に図書館で読んだロケットの本に、流星群のことが書いてあったんだ。
 色々と難しい用語ばかりだったが、周期とかの概念は理解したんだ」
「うん、それでどうやって分かったの?」
「まぁ、実はだな。今日改めて見てみると、ピークになる月日や時間帯がまとめられていた訳なんだが……」
「それだと、見れないってこともあったんじゃないの?」
「そうなったらそうなったで、私の魔法で月を穿つぜ」
「逆でしょ、逆」

 この流星群が見れなかったとしても、魔理沙の魔法が見れた。
どっちにしても、私は素晴らしいものを見れたと言うわけ、だったのかな?
まだ、流星群は降り続いている。尽きることのないように、流れ行く。

「魔理沙」
「なんだぜ」
「ありがと」
「……ようやく、笑顔になったじゃないか」
「魔理沙のおかげよ」
「あぁ、なんだ。その……。アリスには、笑顔が一番、似合ってると思うんだぜ」
「……なにそれ。聞いているこっちが恥ずかしいじゃない……」

 魔理沙も私も、赤面してしまう。

「ねぇ、一つだけ。一つだけお願いがあるの」
「……なんだぜ」
「一瞬だけで良い。でも、今だけで良い。……私だけを、見て」
「……しかたないやつだぜ」

 魔理沙が私の方に向く。まだ、赤面している。きっと、私もまだ。
一瞬だけで良いって言ったのに、ずっと見てくれている。恥ずかしい。
けれど、嬉しかった。流星群は、まだまだ尽きることなく空から現れている。
まだ、私と魔理沙の天体観測は終わらないだろう。


 ありがとう、魔理沙。貴女がそばにいる限り、私はずっと笑顔でいたいと思う。
ずっと、ずっと。
その頃のパチェ
「流石に……広範囲を晴れ渡らせる魔法を、こんなに、長い時間……使い続ける、のはっ……無理……」
アリスに冷たくしすぎたと思ったパチェ。
「どうしよう? どうしよう!」なんて慌てふためいて、魔理沙の計画に乗ったのでしたとさ。
細かい時刻計算とかもきっとやってくれたのでしょう。おしまい。

この時期に見える流星群と言えばみずがめ座δでしょうか。
今の私達が見ているものではなく、見えない部分だけが幻想入りしたのでしょう。
じゃないと、そんな綺麗なダストトレイルは見れないでしょう、多分。

ぼーげっしょーネタもびみょんに入っていたり。そういえば、下巻っていつ発売でしたっけ。
結局、オチはどうなったのか気になるところ。わくわく。わくわく。
アリス、中巻でパーティーに出てたけど、大ゴマでは姿が見えない不思議。
きっと、ロケット云々も聞き流しちゃったのでしょう。じゃないと、矛盾ががが。

1とか2とかの後ろに書いてある、BGM云々は、何となく場面に合ってるかなぁっていう音楽を。
微妙に内容とも掛けているようで、掛かってない?

よくよく考えてみると、魔女三人組ってそんなに接点がない?
仲が良いようで、実際はいがみあってるとかだったら哀しいですよね。
設定がよくよく分からないので、根底条件はアレですが、内容はIfなのかもしれません。
メリーベル
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コメント



0.1030簡易評価
21.100名前が無い程度の能力削除
マリアリジャスティスという基本に立ち返らせてくれてありがとう
28.100名前が無い程度の能力削除
『マリアリが俺のジャスティス』

先人は偉大な一言を残していきましたとさ。
うむ。綺麗なお話。
それにパチュリーの慌てようといったらね。