※この作品は、同作者の『「交代日記」 アリス・マーガトロイド』の続きとなります。
この一話でも完結していますが、気が向きましたらそちらも合わせて読んであげてください。
『 7月の明るい日 天気:晴天 』
「う~む……」
一冊の日記帳を前にして、霧雨魔理沙は迷っていた……。
ただの日記帳であれば、別に迷うことも無かった。
明快な魔理沙にとって思ったことを書くのは簡単なことだ。
そう、『普通の』日記であれば……。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「うっしっし……」
一冊の日記帳を目の前にして、私は笑いを隠せずにいる。
「アリスのやつめ、どんなことを書いてるんだろうなー」
そう、この日記帳は同じ魔法使いであるマリス・マーガトロイドの元から奪ってきたのだ。
おっと、奪ったんじゃないぜ? こっそり借りただけだ。
ぱらりぱらりと日記をめくってみる。
「お、一日目から私が登場しているじゃないか」
さっすが私……あれ、なんか紙が落ちてきたぞ。
何か書かれているな……、手紙?
『 この日記帳は二冊で一冊の不思議な日記帳
貴方が一冊を持ち、私が一冊を持つ
貴方が書けば私の方にも同じことが
私が書けば貴方の方にも同じことが
貴方が書いた生活に、私が感想を返す
貴方が書いた悩みに、私が答えを返す
思わず微笑んでしまうような楽しいことでも
早く忘れてしまいたい悲しい過去のお話でも
有り触れたつまらない日常の些細なことでも
貴方の事を少しでも知りたいから
日記に文字が浮かぶ時を楽しみに待っています
~ いつまでも貴方を大切に想う 母より ~ 』
「な、なんだこりゃぁ?」
二冊で一冊の日記帳? 感想を返す?
まさか、と思ってページを飛ばしてその日の終わりまで捲くってみる。
確かに誰かからの返事みたいなのが書かれている。
「交換日記みたいなものか……」
手紙には母より、と書かれている。
アリスの母親……そんなのいたのか?
いや、いるに決まっているか。妖精とかじゃないんだしな。
「そういえばアリス、家族の話とかしないもんなぁ……。ま、私も同じようなもんだけどな」
じゃぁこれは母と娘の交換日記ってことか。さすがに見ちゃあ悪いよな。
でもアリスは確か、日記を三日で辞めたとか言ってたけど、なんでだ?
お袋さんと喧嘩でもしたとか? でもそんなそぶりは見せなかったしなぁ。
気になる、見たい。けどマズイよな。気になる、見たい。けど……
「あーっ、もう!!」
ごろごろごろごろ ガンッ!!
「ぃっっっっー!!」
馬鹿みたいに転がっていたもんだから頭をぶつけちまったぜ。
本当に馬鹿になったらどうするんだ……。
「――そうだ!!」
頭をぶつけたショック療法ってやつか、いいことが浮かんだ。
アリスの代わりにこの日記を書いてやろう!!
知りたがっているアリスのことを、別の視点で書いてあげればお袋さんも喜ぶだろう。
んでその報酬ってことで日記を読ませてもらう、と。
さっすが私! 名案だぜ!
◇ ◆ ◇
そんなついさっきの出来事を思い返しつつ、魔理沙はまだ迷っていた。
「……う~む」
改めて書こうとすると難しいなぁ。自分のことならいくらでも書けるんだが。
よくよく考えたら、私はアリスのことをどのくらい知っているんだろう?
この母親のことだって欠片も聞いたことは無かったしなー。
同じ森の魔法使いで、何度か異変解決でも一緒になったし。
良く家に押しかけて飯をたかったり。でもアイツからくる事って、まずないよな。
アリスにとって、私ってなんなんだろうなー。
……なんだか不安になってきちまったな。
「よし!!」
私はがばっと飛び上がる。
観察日記だ! アリスの観察日記だぜ!
普段のアリスの生活をこっそりと観察して日記に書く。
これで万事OKだぜ!!
「名づけて『マガトロ観察日記』だぜ!」
◇ ◆ ◇
―― AM 8:30 ――
私は今、アリスの家の近くの木の上に隠れている。
手に持っているのは香霖から奪って……借りてきた双眼鏡。
なんでもこいつは『おぺらぐらす』とか言うらしいが、まぁ遠くが良く見えるから双眼鏡と同じだろう。
「おー、見える見える」
どうやらアリスはソファーに座って紅茶を飲んでいるようだ。
この時間だともう朝食は終わったのかな。
くそー、いつもの癖で朝食をたかろうと思って食べてくるのを忘れたぜ。
ちくしょう。クッキーまでつまんでやがる。太るぞーアリスー。
―― AM 9:00 ――
うぅ、なんて生殺しだ……お? アリスが動き始めた。こいつ……動くぞっ!
台所から取り出して来たのは……、バスケットか?
どうやらどっか出かけるみたいだな。お、出てきた。
うーん、上海が持ってるのがさっきのバスケットで。蓬莱がもってる包みは……本か?
つまりアレか!
『魔理沙。め、珍しい魔道書があったから持ってきてあげたわよ!』
『お腹が空いたからお弁当も持ってきたわよ! 別にあんたのためじゃないんだからね!!』
『実は私……魔理沙のことが……』
なーんてな。どうせパチュリーの所に本でも返しに行くんだろう。
おっと、馬鹿なこと考えてたらアリスを見失っちまうぜ。
―― AM 9:30 ――
お、来た来た。紅魔館に先回りしておいて正解だぜ!
さてさて、こっからが腕の見せ所だぜ? アリス。
門の前に立ちはだかる赤い門番、こいつはそう簡単には中に入れてはくれな……
……ですよねー。
くそっ! なんでアリスはすんなり入れて貰えるんだ。
私が行くといつも邪魔してくるのになー。
どうすっかなー、門番倒して中に入るのは簡単なんだが。それじゃあアリスにばれちゃうよな。
良し! 例の作戦で行くか。
「名づけて『ぽかぽか陽気でおねむ大作戦』だ!」
この暖かい陽気だったら、門番はいつもどうりに居眠りを始めるだろう。
そこで私はこっそりと忍び込む。完璧な作戦だぜ。
……いや、私もこのネーミングはどうかと思ったんだぜ?
―― AM 10:30 ――
ぱちん!
「はっ!?」
しまった! 寝過ごした!!
慌てて懐から取り出した時計で時間を確認。げ、もう一時間くらい経っているじゃないか。
『ぽかぽか陽気でおねむ大作戦』恐るべし!!
門番はっと。何者も通さぬとばかりに仁王立ちしているな……けど、あれは寝ているぜ!!
今がチャンスだ……っと、あれ。アリスが出てきた?
なんだ、パチュリーと昼飯を食うわけじゃないのかな。
仁王立ちで居眠りをする門番に呆れつつ、アリスは再び飛んでいった。
まずいぜ、次にどこ行くか検討がつかない。バスケットを持っているんだから家に帰るわけじゃないだろうけど。
仕方ない。こっそりと後をつけるとするか。
しっかし、どこへ向かうんだろうなぁ。あいつの交友関係なんてたかが知れてるんだが。
―― AM 11:00 ――
しまった。これは予想外だった。まさか本当に私の家に来るとは……。
くそー、いつもは全然来ないくせに。
「魔理沙ー、いないのー?」
っていうことはアレか? あのバスケットは本当に私と食べるつもりの昼飯か?
実は私、魔理沙のことが……フラグなのか!?
「……仕方ないわね」
あぁ、待ってくれ。行くんじゃない! 私の……、私の昼飯!!
―― AM 11:30 ――
く~
良し良し、いい子だから泣くんじゃないよ。私のおなか。
私はアリスから距離をあけず、かつ見つからないように地面すれすれを飛ぶ。
アリスは一体どこまでいくんだ? このままじゃ太陽の畑まで行っちまうぞ。
……まさか、風見幽香と!?
『ねぇアリス……。あなたの肌ってお人形さんみたいに綺麗なのね』
『そう言う幽香こそ。お花の様に芳しい香りがするわ……』
「んなアホな!!」
そもそもアリスと風見幽香に接点が無いだろう。なに馬鹿なこと……、
あれ、アリスは!? まさか見失った?
ヒュンッ!
おわっ、なんだ! 弾幕!? 誰だ一体!
あれは……アリスが? 違うな、どうやら妖精達に絡まれているみたいだ。さっきのは流れ弾か。
夏の妖精どもが騒ぎ始めたってところか。アリスもついてないな。
……それにしても、相変わらず無駄に綺麗な弾幕だぜ。
アリスの周りをくるくると飛び回る人形たちは、周りのやつらよりも妖精みたいだし。
中心に居るアリスも、踊るように糸を操って、まるで一つの絵の様だ。
おっと、柄にも無くポエミーになっちまった。
ま、いくら綺麗でも私のパワーにはかなわな――うわっ!!
やっべー!! みとれてたら私まで囲まれてるじゃねーか。
ふん、まぁ良い。アリスとは違う私のパワーのある魔法で……って訳にはいかねーよなぁ。
ここで魔法なんて撃ったらアリスにばれちまう。今までの苦労が水の泡だぜ。
……なんとか逃げ回るしか無いか。
アリスの方も、余裕そうだな。この分ならすぐに片が付きそ――え?
うわっ、被弾した!? バランスが!!
不味い! 次は避けられな――
ジュッ!
……え? 妖精が消えた? なんだ、今のレーザーは。
げげ! お前いつの間に。えぇっと、蓬莱か……。
「な、なぁ。アリスには黙っててくれよ、な?」
「………」
あれれ、行っちまった……。私に気づいていないのか?
うーん。良く判らないぜ。
アリスが言うには、人形は全て自分で操っているらしいけど。どー見てもそうは見えないな。
今のだって蓬莱は私を見てたけど、アリスは気づいた様子も無いしなぁ……。謎だぜ。
お、あっちも片付いたみたいだな。念のためもっと離れておくか。
それにしても、あれだけの数の人形は一体どこから出てくるんだ?
今のアリスをどう見ても、何も持っているように見えないんだけどなぁ。
実はあいつもスキマ妖怪とかじゃないだろうな。なんか一人で隙間にいるの似合いそうだし。
―― PM 12:00 ――
なんだ、ここが目的地だったのか。昔、私が教えた薬草の群生地。
つい最近、薬草が切れそうってアリスに言ったからなぁ。わざわざ誘いに来てくれたのか。
せっかくだから、アリスから離れて私も少し薬草を採っていくかな。
―― PM 13:00 ――
うあぁぁ。生殺しタイム、パート2だぜ。
くそっ、旨そうにサンドイッチなんか食べやがって。
その半分は私の分だったんだろー。太るぞーアリスー。
―― PM 14:00 ――
ご丁寧に食後の紅茶まで楽しみやがって……。
人の気持ちも知らないで!!
いいさ、お返しに変なこと日記に書いてやる!
お袋さんがアーッ!っと驚くようなことを書いてやるぜ。
あれ? あいつバスケットを忘れて行ったぞ。間抜けなヤツだなー。
おいおい、まだサンドイッチが残ってるじゃねぇか。仕方ないなー。
仕方ないよなー。仕方ないよな? 元々は私のために作ったやつなんだから食べてやらないと。
……う、うめぇ。すきっ腹に染みるぜ。
―― PM 14:30 ――
危ない危ない。食べものに釣られて見失うところだった。
さすがアリス、姑息な罠にはまるところだったぜ。
紅魔館、太陽の畑と続いて今度は人間の里か……。あいつ意外と行動派なんだな。
今度は何の用なんだろうな。ただの買い物とかか?
どっかに向かってるってよりは、ぶらぶらと散歩してるって雰囲気だな。
用も無いのに、夜な夜な彷徨う金髪の人形……、ホラーだぜ。っと今は真昼間だったか。
お、前から歩いてくる二人は。慧音と、もこたんじゃないか。
相変わらずあいつら仲良いなー。
アリスも気づいた見たいだな。そっちに向かって歩いて行ったぞ。
どんな話をするんだろうなー、気になるなー。
でもさすがにこれ以上近づいたら危険だよなぁ。
―― PM 15:30 ――
なげぇよ!!
おいおい、あいつらもう一時間近くも立ち話してるぞ……。
隠れて見守る私の身にもなれってんだ。
お前らも足が疲れるだろー……お、移動し始めたな。
あいつらも暇じゃないだろうし、さすがに終わりみたいだな。
―― PM 16:30 ――
……み、みんな暇なんだな。
近くの茶屋に移動して更に一時間。女三人寄ればなんとやら、か……。
「あー、慧音せんせーだー」
「もこーもいるー。こんにちはー」
「お、遊びに行った帰りか? こんにちは」
「もこーって言うな! さん、をつけろさん、を」
なんだなんだ、子供たちが集まってきたな。どうやら寺子屋の生徒たちか。
「あら、私には挨拶は無いのかしら?」
「あ、人形のお姉ちゃん。こんにちはー」
「はい、こんにちは」
うーん、アリスも子供に懐かれてるな。
里でやってる人形劇が影響してるんだろうなー。
一度人形劇を見に行ったが、勝手に私の人形を出しやがって。あの時はさんざんだったぜ。
人形を子供達の周りでくるくると踊らせて、遊んでいる。
アリスって意外と子供好きだったりするのかな?
……うーん、さっきまで三人で会話している時もそうだったけど、あいつ、良く笑うよな。
いつ頃だったか、初めてあいつと会ったときから考えると信じられないくらいに笑うようになった。
今でも、私と居るときはあんなには笑わないし。
――私の中のアリスは、いつも……困った顔をしている。
いつも私は飯をたかりに行ったり、本を勝手に借りてったり。
なんか、迷惑かけてばっかりだしな……。
魔法の研究の話を何時間もすることはあるけれど、あんな風に世間話ってのはあんまり無いなぁ……。
私といても、楽しくないかな?
――なぁ、アリス。
何やってんだろうな、私は。
―― PM 18:00 ――
……やっと、家まで戻ってきたか。
アリスの観察日記。
家に帰ってしまったんだから、もう終わり。
だから、もう隠れる必要ないよな……。
何を悩んでいるんだ? 魔理沙。らしくない!
いつもみたいに勢い良く玄関を開ければいいじゃないか。
腹へったー、飯くわせろーってな。そうすりゃいつもどおりだぜ。
いつもどおりアリスは飯を食べさせてくれるさ。
――いつもどおり、困ったような顔で。
家の中からは、美味しそうなシチューの匂い。
なんでだろう、ろくに物を食べていないのに全然食欲がない。
なんでだろう、ただドアを開けるだけのことが、こんなに怖いのだろう。
なぁ、アリス……。なんで――
ガチャ
……え?
「なにやってるのよ、魔理沙。人の家の前で」
「あ、ぁ」
アリス……、私は……
「とにかく入りなさいよ。どうせまた晩御飯食べさせてって言うんでしょ?」
どこか困ったような顔で、呟く。
やめてくれ、アリス。そんな顔で見ないでくれ。
「……? どうしたのよ、大丈夫?」
「なぁ……」
ほら、勇気だせ魔理沙。
「なぁ、アリス! 私のこと、どう思う? 迷惑なヤツだと思うか?」
「は? どうしたのよ、突然」
「いいから、答えてくれ」
答えてくれ。でも、聞きたくない……。
「…………」
この沈黙が怖い。そんなに考えることなのか? 早く、なんとか言ってくれよ。
「……迷惑に、決まってるじゃない」
――あぁ、そうだよな。
「毎度毎度、こんな時間にご飯食べに来るし、気づいたら物が無くなってたりするし」
ごめんな、アリス。でもさ――
「――でもね」
……え?
「でもね。迷惑じゃないわよ」
なに言ってるんだ?
ついさっき迷惑だって、
「一人で家に引きこもってる私の所にきて、一緒にご飯を食べたり、外へ連れ出したり。
いつも周りを考えない……、そんな貴方に何度も助けられたわ」
少し、恥ずかしそうに
「貴方と会うことが無かったら……、今の私はいないでしょうね。
私にとって魔理沙は――、かけがえの無い友達よ」
そう言って、困ったような笑顔を見せた。
「アリス……」
「ほらほら。早く入りなさい。せっかくのシチューが冷めちゃうわ」
そしてアリスは家の中に入っていっていく。
――ありがとう、アリス
私は、ほんの少し帽子を深く被りなおして、後を追いかけた。
「うめぇー!」
いやー、すきっ腹に染みるぜ。
「ほらほら、そんなに慌てて食べないの」
正面にいるアリスは、じっと私の方を見ている。
「そういうアリスは全然食べてないじゃないか。もたもたしてると全部食っちまうぞ」
「いいわよ。貴方のために作ったんだから」
私のため? 何言ってるんだ。
不思議に思ってアリスの顔を見るが、どこか困ったような笑顔を見せているだけだった。
そう言えばそうだ。アリスはいつもこんな風に私を見ていた気がする。
笑ってなかったんじゃなくて、私が気づいてなかっただけだ。
ははは、私は何を馬鹿なことで悩んじゃったんだろうな。
アリスとは昨日今日の付き合いじゃないんだもんな。
疑うなんて、友達として最低だよな……。
――ごめんな、アリス。
……アリス? どうしたんだ?
さっきからずっと笑顔で私の方を見てるけど。
「なぁ、アリス。私の顔になんか――」
「――ねぇ、魔理沙。なんで?」
なんで?
変な質問をしちまったから不思議に思ってるのか?
アリスが笑顔のまま続ける。
「何で私の後をつけていたの?」
「……え?」
アリスが笑顔のまま続ける。
「何で、私の後をつけていたの」
「な、なにを言ってるんだ? 私は……」
慌てて言い訳をしようとするが。アリスは笑顔のまま続ける。
「何で、私の後を?」
アリスはすーっと立ち上がり、こちらへ向かってくる。
やばい、何かやばい。
「……何で?」
アリスは人形のような笑顔を張り付かせたまま近づいてくる。
――やばい、逃げないと。
「……えっ!?」
体が動かない! なんだこれ!
「美味しかったでしょう? 私のシチューは」
シチュー? 何を言ってるんだ?
「――それはもう痺れるくらいに」
まさか、シチューに薬を……。
「……いい子ね」
アリスは手のひらでゆっくりと私の顔を撫でる。
……冷たい、まるで人形のようだ。
「ふふふ。ゆっくりと、聞かせて貰おうかしら」
辞めてくれ、アリス。そんな顔で見ないでくれ。
やめてくれ、やメテ――
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
その後のことは……良く覚えていない。
気がついたら私は、自分の家のベッドに横になっていた。
一体、なんだっだんだろう……、悪い夢でも見ていたのか?
じゃぁ私は今日一日何をやっていたんだっけな? 思い出せない。
えぇっと、確かアリスについての日記を……。
あれ? もう書いてあるな。えっと……うっ、なんだ!
頭が……痛い。ダメだ、これは読んじゃダメだ。
なんでか判らないけど読んじゃダメだ。
えっと、私は……。そうだアリスについて書こうとしたんだ。
アリスは、そうだな。どちらかと言うとあんまり外に出ないで引きこもりがちだけど。
いつでも優しくて、こんな私にもご飯を作っテくれたりするし……。
あいつのシチューなんて絶品だゼ。
……シチュー?
あれ、おかしいな。美味しいはずのシチューの味が思い出せナイ。
あんなに痺れるくらイに美味しい……。
まさかな? アリスがそんなことするわけないよナ?
あんなにヤサシいんだかラ、アリスさんハ。
……ダメだ、寝よう。頭が痛イ。
忘れよう、もう全て忘れて寝てシマおう。
……この日記を読んでいる人へ。
もし、私に会っても知らん振りをして欲しい。
そして、何があったのかは聞かなイデ――
(日記の文字はそこで途切れている)
シチューを食べて痺れたあとアリスに一体何をされたのか気になりますねぇ。
アリスの後を追いかけたり自分のことをどう思っているのかということなど不安になりながらも
聞いたりしているのが良いですね。
アリス視点の日記とはまた違った面白さがあって良かったです。
ところで日記がまだ魔理沙の手元にあるということは
別視点でとっても面白かったです!!
もう掘ラーでいいや。
魔理沙の喜怒哀楽が激しくて、アリスの観察がダイナミックに描写されていて楽しい作品でした。