Coolier - 新生・東方創想話

雨、夕空は茜色に染まる

2009/05/08 20:01:28
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『そんじゃ、邪魔したな』




******



いつものように神社でお茶を御馳走になり、そう言って霊夢に別れを告げて半刻程。
なにか面白いことはないものかと森の中をふらふらと飛んでいたのだが、特にめぼしい物は見つからず、少女はただぼんやりと森の中を浮かんでいた。

「うーむ……こいつは所謂、暇って奴だな」

ほんの少し、いらただし気にそんな台詞を吐いてみる。
思うところ、暇という時間は決して嫌いなわけではない。
寧ろ暇な時間にぼんやりしながら紅茶を飲んだり昼寝を楽しんだりするのはわりかし好きなのだが、この半刻に限って言えば、少々事情が違った。

───暇で暇で堪らない。

だからといって、何か自分から行動を起こすのも面倒だ。
やる気が何にも起きないのだ。
やることの無さ過ぎるのも問題だが、それ以上に何も行動を起こしたくないことの方がよほど問題だ。

「こうゆう時に限って、何にもないんだよなぁ」

ぼやきながら、ふらふらと森の中を漂う。
口をだらし無く開け、大きな欠伸を一つ―――

―――と、ほんのりと、頬を撫でる風が変わった。
湿った風だ。

刹那。


『   』


-雷-

青白い閃光が瞳に突き刺さる。
少し遅れるようにして、耳に刺さるような轟音が鳴り響く。

「……おおぅ」

東の空に視線を向ければ、木々の間、東の空からゆっくりと流れてくる雲が目に入った。
分厚く、黒い雲……
雷雲だ。

「うーむ」

唸りつつ、少女は森の上空へと急浮上する。
森の上空へ出ると、頬を撫でる風は先程までとは打って変わり、じっとりとしている。
纏わり付く空気はお世辞にも心地よい物とは呼べないし、更に言えば不快と言えなくもない。

「まったく、じめじめして気持ち悪いな……耳にくるし」

深々と被った帽子のつばを指でぴんと弾き、悪態を着く少女。
徐々に広がる黒雲。


『   』

-雷鳴-

先程よりも近い。
徐々に、徐々に、雲は近づいてくる。

「っと……失礼な事を考えたもんだから、雷さんもご立腹のようだぜ」

くわばらくわばら等と言いつつ白黒に身を包み、箒に跨がる少女はくつくつと笑った。


『   』

-神鳴-

音は、より近くから聞こえてくる。
黒雲は、いつの間にやら空全体を覆いつくしている。

ぽつりと、何かが頬に触れた。

「お、ついに降ってきたな」

堰をきったように大粒の雨粒が落ち始め、地面を濡らす。
こりゃ堪らんと少女は高度をさげ、一先ず大きな木の根元に降り立つ。

雨宿りをしよう。


『   』

-神成-

雲は既に頭上を多い尽くし、ゴロゴロと唸りをあげながら西の空へと流れ行く。
次第に雨脚は増し、バケツをひっくり返したような雨が降り始めた。

「雨覆い、空黒く、私は白黒……意味わからんな」

ふぁあと大口を開けて欠伸をする。
雨の刻む一定のリズムが耳に心地よい。

次第に、彼女の意識は闇に溶けていった。



******



「……ぃ……おーい?」
「ん……?」

頭上から降り注ぐ声に目を覚ます。
ゆっくりと目を開くと、見知った顔が立っていた。

「いい加減起きなさいよ。こんなとこで寝てると風邪引くわよ、野良魔法使い」
「そりゃご親切に忠告ご苦労さんだな、都会派魔法使い」

互いに軽い憎まれ口を交わし、ふっ、と頬が緩んだ。
柔らかな木漏れ日が頬を照らし、その眩しさに目を細める。

「おぉ、晴れたみたいだな」
「あんたが寝てる間にすっかりね」
「……何時から居たんだよ」
「さぁね?」

人形の少女はそう言って笑う。
白黒の少女は苦笑いを浮かべつつ、立ち上がってスカートの埃をぱんぱんと叩いた。

木漏れ日が注す。

「さっさと起こせばよかっただろ?」
「あんたがあんまりにも気持ち良さそうに寝てるから、起こしたら悪いかなぁと思ったのよ」
「ふぅん」
「ふふっ、寝顔も可愛かったしね」
「あ、悪趣味だぜ」

ポリポリと照れ臭そうに頬をかきつつ、少女は箒に跨がり、宙へと舞った。



******



黒雲は、既に無い。
空はただ蒼く、高く、広がっている。
舞風を受けて浮かび上がれば――


「おぉ…」


思わず感嘆の声が零れる。

視界に広がるのは、一面の茜色。
輝く世界の色。
じめじめとした空気は既になく、頬を撫でる風は心地よい。

きれいだなぁ、と、白黒の少女は思う。


あのまま家に帰っていたら、きっと気付かず、見ることはなかっただろう。
そう思うだけで心が弾んだ。

さて、と白黒の少女は意気込む。
このまま帰るのも物足りない。
目一杯体を動かしたい、そんな衝動に駆られている。


茜色は、恋の色。

世界はこんなにも綺麗だから――



手始めに、都会派にでも喧嘩を売るとしよう。

白黒の少女、霧雨魔理沙はそう意気込み、茜空へと満面の笑みを浮かべるのだった。
ごめん。
そう、またなんだ。
少々短い気もしますが、きっと気のせいです。
気のせいだって言い張っておきます。
漆野志乃
[email protected]
http://id25.fm-p.jp/166/worldobrake/
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コメント



0.330簡易評価
1.40名前が無い程度の能力削除
うむぅ…雨の中木の下で寝た、ということで間違いないですかね?だとしたら魔理沙めっちゃ汚れるなwwwwww

作品の雰囲気は嫌いじゃないぜ。もう少し広がりを作ってほしかったってことでこの点数で。
2.70煉獄削除
もうちょっと何か欲しいとも思いましたけど、面白いと思います。
雷雨とかそれが過ぎ去った後の綺麗な夕焼けの光景なども想像できました。
魔理沙の、とある日という感じが良かったですね。
3.無評価漆野志乃削除
1》魔理沙めっちゃ汚れるなwwww
↑全く考えてませんでしたwww
いやはや、ダメですね、私。
貴重なご意見ありがとうございました、今後の参考にしたいと思います。
7.80名前が無い程度の能力削除
好し
8.70名前が無い程度の能力削除
情景がとても綺麗な作品ですね
もうひとつふたつ何かがあれば、なおよかったんですが
13.100奇声を発する程度の能力削除
激しい雨の後の夕焼け空はとっても綺麗だ!!!!!
このお話の中の景色を想像したら穏やかな気持ちになりました!
14.100名前が無い程度の能力削除
残念だが気のせいじゃねぇな。
このほのぼのと穏やかな気分はよ!