*だいぶ時間が開いており恐縮ですが、このお話は作品集36掲載「三人のイカレる乙女(作戦立案)」の続編です。
<よくわかる あらすじ>
ちょうシューティングせかい げんそうきょう。
ここには へいわも ちつじょもない。
あるのは だんまくと ボムだけだ。
まほうとしょかんの パチュリーは、としょかんを
へいわな ばしょに するため、
やっかいな きりさめまりさに てっていてきな ほうふくを
くわえようと していた。
<1>
鬱蒼と茂った木々の枝葉をくぐり抜けた、申し訳程度の月光が地面を照らしている。
得体の知れない動物達の声がこだまする森の中を、三つの小さな影が進んでいた。
「魔理沙宅への嫌がらせ」という重大なミッションを背負った、アリスの人形達である。
(※以降、本編中での人形達の会話は副音声でお伝えするものとします)
「結局、ご主人が変な騒ぎに巻き込まれると私たちがとばっちりを受ける羽目になるのよね」
「そうは言いますがね、トカレフさん。ご主人の人脈が広がったことを喜ぶくらいの余裕はあっても良いんじゃないですか?」
「私ゃあんたみたいに悟り開いてないから、そういうのは分かんないのよ。あと、私の名前はトカレフじゃない」
「そうは言いますがね、カラシニコフさん。友人に丸め込まれてちょっとした悪戯に加担する……年相応の少女らしくて良いじゃないですか。ね?」
「あんたはいつも悠長に……これからやる事って“ちょっとした悪戯”レベルなの? なんか嫌な予感するんだけど。あと、私はカラシニコフでもない」
「そうは言いますがね、ボルシチさん……」
「あんたバカにしてんの? コマンドサンボかけるわよ」
「これは失礼、ピロシキさん」
グチグチと不毛な問答を続けているのは、露西亜人形と西蔵人形である。
それなりに長い付き合いの二体だが、西蔵人形は一向に露西亜人形の愛称を固定するそぶりを見せない。
「♪……君、何にでもマヨネーズをかけるのはやめてくれ。総員、ワープに備えろ」
そして二体の後をのそのそと追いつつ独り言を呟いているのは、人形軍団で最狂との呼び声高いグランギニョル座の怪人である。
彼女(詳細には性別不明だが)の周りだけ、夜の闇が一層濃く渦巻いているようにも見える。全身から発散される只ならぬ気配のせいだろうか。
普段は引きこもりがちの彼女だが、今夜は久々のお出かけであった。
「まったくもう。みんなも酷いわ、私と西蔵が相性悪いことくらい分かってるはずなのに……」
「いやあ、面と向かって言われると照れますね。興奮のあまり写経してしまいそうです」
「♪……本日は長野県産キャベツが特価。午後からは西寄りの風、所により、ありおりはべり・いまそかり」
冷静に聞いていると会話になっているとは到底思えないが、そこは第六感でカバーだ。
主人であるアリスは当然のこととして、人形軍団は阿吽の呼吸で意志の疎通を行う戦闘のプロ集団なのである。たぶん。
「♪ア、エ、イ、ウ、エ、オ、ア、オ! ア、エ、イ、ウ、エ、オ、ア、オ!」
「ほら、ギニョさんが呆れていますよ。同じ作戦を遂行するチームなんですから、もっと仲良くいきましょうって」
「……あんたが何故ギニョさんの言葉をスムーズに理解できるのか、小一時間ほど問い詰めたい。……っと、見えてきたわね」
枝葉を掻き分けながら低空飛行を続けていた三体は、魔理沙宅を視界に入れると更に低空へと移った。
時間は深夜。すでに相手は寝ている可能性が高いが、慎重に行くに越したことはない。
「さあ、モスクワさん。例のブツを」
「もう突っ込む気も失せたわ……ほい、これね」
どことなく疲れた仕草で、背負っていた袋をよっこらせ、と降ろす露西亜人形。
袋の中から取り出されたのは……くさやの干物であった。
紫がスキマで拾ったものがたらい回しにされた挙句、何を間違ったのかアリスのもとへやって来たといういわく付きの一品である。
「これが秘密兵器のひとつらしいけど……ただの干物じゃないの? これ」
「そうは言いますがね、ゴルビーさん。これ、相当臭いらしいんですよ」
「……あ、そう。イマイチ分かんないわね」
「まあ私たちの嗅覚はそんなにしっかりした物じゃないですから……今回ばかりは、そこに感謝ですかね」
「♪うん、カニは美味しいよね」
干物を囲んで、身振り手振りで会話する人形達。
真夜中の森という背景も相まって、妙にシュールな光景である。
彼女達は気付いていなかったが、露西亜人形が袋からくさやを取り出した直後には、周囲一帯の動物たちが引き潮のように姿を消していた。
「♪例えれば、切ないメロドラマ」
「なるほど……ギニョさんは流石に冷静ですね」
「ん、何だって?」
「この干物をターゲットに対し、どのように使うのか再確認しよう……とのことです」
「ああ、はいはい。えーっとね……」
懐をガサゴソと探り、折りたたまれたメモを取り出す露西亜人形。
几帳面な字で「遠足のしおり」と書かれている。
アリスのセンスでは「くさや片手に友人に夜襲をかける」というアバンギャルド極まる行為を「遠足」と呼ぶらしい。
やはり人間と妖怪とが分かり合うことなど不可能なのだろうか。悲しいことである。
「えーっと……“最も望ましい使用法:気付かれぬように窓を開け、その隙間から放り込む(顔の真上あたりに落ちるとなお良い)”だって」
「時間が時間だし、鍵がかかってるんじゃないですかねえ。無理やり開けるんですか?」
「“魔理沙は一度寝ると、ちょっとやそっとの事では起きないので大丈夫”とも書いてあるわよ」
「♪あのー アリアハンまでは どう いったら いいんでしょうか?」
しばし考え込んでいた露西亜人形は全身に落ち葉や蔓をくっつけると、くさやを背負って唐突に匍匐前進を始めた。
「飛んでいかないんですか?」
「気分の問題よ」
「時間がかかると思うのですが」
「じゃあスピードアップするわ」
西蔵人形のもっともな疑問に手短に答えた露西亜人形は、言葉通りに凄まじい速さで匍匐前進すると……魔理沙宅の窓がよく見える岩陰で停止した。
「いちいち細かいことを考えててもしょうがないわ。ここから弾丸とくさやを同時にぶっぱなして、窓をぶち破る(早く帰りたいし)!」
事前に十分な作戦を立てておけば済む話ではあるのだが、脊髄反射だけで今までやってきた彼女達に「事前に話し合う」という選択肢は存在しなかった。
と、発射準備に入った露西亜人形にグランギニョルがぎくしゃくと歩み寄る。
「(い、いつの間に背後に……!?)な、何かしらギニョさん」
「♪私は平成のジョン万次郎です」
「……いっしょに撃ってほしいものがあるんだけど、いいかな? だそうです」
これまたいつの間に歩み寄ったのか、西蔵人形がしっかり通訳。
その言葉を受けて、こくこくと頷くグランギニョル。
彼女が取り出して見せたのは、小さな紙片であった。
夜の闇に紛れているため、何が書いてあるのかは判然としない。
と、グランギニョルはその紙片をくさやの口の中へ突っ込んだ。
「???」
「♪ハイもう一度! ハイもう一度!」
「呪いの言葉を書き込んでおいた。これにより精神的にも揺さぶりをかけていくフヒヒ……だそうです」
「呪い、ねえ……」
挨拶しただけで新入りの人形たちを泣かせた彼女が言うのだから、それなりの重みがある。
何が書いてあるのか気になるが、読むのは止めておいた方が良さそうだ。
人形にだって、人並みの想像力はある。
「よし。それじゃあ発射するわよ」
「♪テキストー開いて! テキストー開いて!」
「霧雨魔理沙呪ってやる! 霧雨魔理沙呪ってやる! 露西亜さんがんばれ! だそうです」
気分がノッてきたのか、グランギニョルは発射体勢に入った露西亜人形の背後で怪しい踊りを始める。
くさやの臭いを我慢して戻って来た動物達が、それを見て再び森の奥へすっ飛んでいった。
中には逃げ遅れてモロに踊りを見てしまい、痙攣しながら必死に這い進んでいるものもいるが、話の本筋とは関係ないので詳しい描写は避ける。
「目標、霧雨邸の窓。誤差修正よし……くさや弾、発射」
――狙撃「スターリングラード」――
露西亜人形が弾幕による狙撃を行った次の刹那、ガラスの割れる音が聞こえた。
当初は乗り気でなさそうな発言をしていた彼女が、さりげなく犯罪に加担した瞬間である。
「よし、ヒット……さあ、ずらかるわよ!」
「お見事。さあ、ギニョさんも帰りましょう」
「♪パン屋の地下から、遮光器土偶が出土しました」
大急ぎで枝葉を掻き分け、アリス邸を目指す三体。
彼女ら(特に露西亜人形)が風を切って進むたびに、森には芳しいくさやの香りが散布されていった。
さて、ミッションを無事に終えて戻った三体を待っていたのは……
愛するご主人の「お帰りなさい。……あ、やっぱり臭うわね。特に露西亜が。まあ、詳しい話は洗いながら聞くことにしましょう」
という比較的クールな言葉だった。
露西亜人形は「べ、別に泣いてなんかいないわ! あれはお湯が目に入っただけよ」と主張したが、
西蔵人形は「そうですか。“くさやの臭いがする人形”と言われて凹んだんですね」と愛に満ちた解釈をした。
グランギニョルを含む他の人形達もまた、西蔵人形と同様の見解であった。
この辺りは詳しく話すと長くなりそうなので、これまた割愛させて頂く。
――そんなこんなで、この日を皮切りに人形部隊は夜な夜な魔理沙宅へとみみっちい夜襲をかけに行ったのである。
<2>
パチュリーと小悪魔から「蔵書奪還作戦」への協力を頼まれた霊夢だったが、図書館へ出向いて話をした以降特別なにかをしている訳でもない。
話を聞いてから、もう一週間近くは経っただろうか。まあ、今回はあくまで協力者という立場だし、自分の出番が来ればなるようになるだろう。
そんな風に考えて、いつもと同じように境内を掃除し(実は箒を持ってぼんやりしている時間の方が長い)、縁側でお茶を啜っていた。
出涸らしをケチケチ飲んでいたせいで、ほとんどただのお湯同然になった湯飲みの中身を溜め息吐きつつ眺めていると……
境内の空気がふっと流れるような感覚を覚えた。
どうやら、誰かがここへ来るようだ。小さく息を吐いてから、上空に視線を送る。
――縁側に置かれた湯飲みが音を立てるのを合図にしたかのように、箒に跨った影が降りてきた。
(※以降、霊夢の本心は副音声でお伝えするものとします)
「霊夢、いきなりだが今日は真面目な話だぜ」
「ん……どうしたの急に?」
普段ならわざととしか思えないほどの勢いで落ち葉などを吹き飛ばす魔理沙だったが、今日はどこか様子が違うようだ。
そそくさと着地して適当に箒を立てかけると、懐に手を入れつつ霊夢につかつかと歩み寄る。
「ところでこの怪文書を見てくれ。こいつをどう思う?」
「ところでも何も、まだ話題が何かも口にしてないでしょ(すごく……唐突です……)」
「まあ見てくれ。どうもここ最近、変なんだよ」
そう言いながら魔理沙が差し出した紙片には、ミミズが這った様な筆跡で何かが書き込まれていた。
それを見た瞬間、霊夢の中に閃くものがあった。これは例の作戦が始動したという事ではないのか?
直感がそう告げている。使命を果たす時がやってきたのだ。
先日、作戦への参加を依頼された時のこと。帰る間際にパチュリーたちから「成功したらさらに米俵を弾む」と吹き込まれていた霊夢の心にスイッチが入った。
すぐさま脳裏は米俵のイメージで埋め尽くされたが、ここは冷静に対処すべきだろう。
急いては事を仕損じる、という先人の有難いお言葉もある。
「汚い字ね……これは?(作 戦 は じ ま っ た な)」
「それが、何なのかさっぱり分からん。相手の意図するところが全く掴めないんだ」
「なんて書いてあるのかな……えーっと?(魔理沙、お米の糧になってもらうわよフヒヒ)」
紙片にはこう書き込まれていた。
“霧雨魔理沙(原材料の一部に卵・大豆を含む)”
「なに、これ?(随分と斬新な文面ねえ)」
「霊夢にも分からないか。いや、それがな? 本当に妙な話なんだよ」
そう前置いて魔理沙が語った内容は、確かに奇妙なものであった。
――とある晩、魔理沙がぐっすり寝入っていたところ、窓の辺りで何か物音が聞こえた。
野良猫か何かだろうと判断して二度寝しようとしたが、どうも妙な臭いが漂ってくる。
窓際に置いてあった魔法薬のビンでも倒れたかと思い、寝ぼけ眼を擦りながら状況を確認したところ……
窓が何者かによって割られ、ガラス片が散乱していたのである。
「誰がこんなことを」「掃除がめんどいな」など、寝起きながらもあれこれと思考を巡らせる魔理沙だったが、
ガラス片の中に妙なものが落ちているのに気が付いた。
注意深く拾い上げたところ、それは強烈な臭気を放つ魚の干物であった。
しかも驚くべきことに、臭いの発生源であった干物の口には小さな紙片が突っ込まれていたのだ。
「それが、この妙な紙切れってことね(米……フヒヒ……おっといけない。魔理沙の気持ちをうまく誘導しなくちゃ)」
「一見するとまったくの意味不明だが、なにせ私の名前がモロに入ってるだろ? なんだか心配になっちゃってさ」
「……これ、もう誰かに見せて相談した?(まあ悪くない雰囲気ね。もう少し怯えてもらった方がやりやすいけど)」
「アリスには見せた。家がそこそこ近いし、もしかしたら犯人かも知れないと思ったからさ」
「ふむ、なるほど。それでアリスは何て答えたの?(これでアリスが冷たくあしらうなりしてくれれば……)」
「自分は犯人じゃないってことと、メッセージの意味もよく分からない……としか言えない、もう少し様子を見て考えたら? って」
「なるほどね(うん、無難な対応ね)」
「私もそこまで騒ぎ立てたくなかったから、大人しく家に戻って普段どおりにすることにしたんだ。窓を修理して、投げ込まれた干物を食べて……
そうこうしてるうちに、夜になった」
「また何かあったの?(干物、食べたんだ……)」
「その日の晩は、寝ないで待っているつもりだった。でも結局寝ちゃって……ふと目が覚めたら午前3時ごろになってた」
「そしたら?」
「今度はこんなものが窓に貼り付けられていたんだ。不気味だぜ」
そう言い終えると、魔理沙は再び懐に手を入れた。
“いつになったら、ご両親に私のことを紹介して下さるのでしょうか?”
「いきなり求婚!?(誰だコレ書いたの)」
「また汚い字だろ、これ。しかも思いつめたアイドルの追っかけみたいなアブナい文面……なんだか不安になるぜ」
今までの付き合いや共に経験した事件から、霊夢は魔理沙の心臓には剛毛が生えているものと思い込んでいた。
しかし、思いのほか普通の感性の持ち主だったようである。
そりゃまあ、夜中にいきなりこんな物を貼られたら誰でも不安にはなるであろうが。
「唐突かつどことなくサイコな文面から、私は前日の干物レターと同一人物の仕業じゃないかと推理したんだ」
「そうね……これは何となく只ならぬ感じがするわ。確かに(まずはじわじわと不安を煽る……)」
「――それから、おかしな事に私の周りで奇妙な現象が頻発し始めたんだ」
「た、たとえば?」
ごくり、と唾を飲み込んでから、重々しい口調で魔理沙は言った。
「日が暮れてから、それは始まった……まずはドアをノックする音が確かに聞こえたのに、出てみたら誰もいなかったんだ」
「なんと……!(それって要はピンポンダッシュじゃないの?)」
霊夢の内心でのツッコミ通り、それはただのピンポンダッシュだった。
正確には村のはずれの民家で新聞の勧誘を断られた文が、腹いせに魔理沙宅のドアをぶっ叩いてから猛スピードで飛び去ったのである。
しかし予想外に早く疑心暗鬼になりつつあった魔理沙に、そんな真相が分かるはずもなかった。
「そして家の周囲を、黒猫たちがうろつき始めた……!!」
「不吉な……!(それって橙がそこら辺の野良猫と散歩してたとかじゃないの?)」
霊夢の内心でのツッ(ry それはただ橙が近所の野良猫たちと(ry
正確には藍からお使いを頼まれた帰り道に(ry
しかし思いのほか早く疑心暗鬼になりつつあった魔理(ry
「その晩こそは部屋の中で体勢を整えてサイコさんの正体を突き止めようと思っていた私だったが、いてもたってもいられずドアを開けた。
そしたら……そしたら……!!」
「ま、魔理沙大丈夫?(――あら? 思ってたよりも怯えてるわね。これは私が誘導するまでもないのでは?)」
「私がドアを開けたその瞬間に、頭上から白骨化したケモノの死体が落ちてきたんだよ!!」
「なんてこと……!(それってジャストなタイミングでルーミアが食べカスを落としたのが、たまたま魔理沙の家の前だったとかじゃないの?)」
霊夢の(ry それは(ry
正確には(ry
しかし(ry
――――きりが無いので簡潔にまとめさせて頂きたい。
その日の魔理沙は妙に疑心暗鬼になっていた上に、やたらとツイていなかったのである。
魔理沙はふいに俯き、押し黙ってしまった。
霊夢は妙に優しげな口調で先を促す。
「魔理沙、大丈夫。私がちゃんと全部聞くから……あんまり思いつめるのは良くないわよ(魔理沙カモン!)」
「……その日はもう外に出るのもまずいのかと思っちゃってさ、部屋の中で大人しくしていようと思ったわけだよ」
「そしたら?」
「そしたら……タイミングを計っていたかのように誰かがドアをノックし始めたんだ……」
「むむ……何だか只ならぬ展開ね」
「出て行こうか行くまいか悩んだが、ちょっと躊躇してる間に何者かは去って行ったんだ」
「うーん、不気味な感じよね」
「私は安全確認も兼ねて、慎重にドアを開けて周りの様子を調べた。するとドアにこんな物が貼られていたのを見つけたんだよ!」
不安げな表情で、そう言いつつ霊夢に便箋を差し出す魔理沙。
まあ、あれこれ細かく会話や心理描写などを連ねるのも面倒なので、以下に魔理沙宅のドアに貼られていた文面をそのまま掲載させて頂く。
<文面>
はじあまして。
こっそりおまえをファッキン!
(※酔っ払いが描いたようなグチャグチャの絵が隣に描かれている)
わたしの特技は、奈良の大仏にホウ酸爆弾でジェノサイカタッ!
ぬすんだばいくで安全的虐殺のモノマネをミツツッピ川。
(※なぜか子猫の写真の切抜きが貼られている)
賽の河原で、あなたにあいたい。
犬はたくさんの深海魚のしんぞうを焚きました。
自己的ゴキブリが小指の先とバルサンを逝かす。
思ったよりも安全的地点は肉切り包丁の臭いをかぐと、半笑いのピラニア。
靴下ブルースは思ったよりも人生終了ごぎいます。
(※真っ赤なインクで何かが書いてあるようだが、滲んでいて読み取れない)
鏡の前で電ノコ。
已經死了×××たくさんのおれ!
(※意味不明な記号が多数殴り書きされている)
賽の河原で、あなたにあいたい。
<付属のメモらしき紙片 ※上記の文面と共に貼り付けられていた>
最近、抱いてくれないのね。
――こんなイカレポンチな文章が、ピンクの可愛い花柄の便箋に切り貼りされていたのである。
場違いな便箋のデザインのせいで、怖さ倍増であった。
「………………(なんじゃこりゃあ)」
「……ど、どうして黙り込むんだよ霊夢」
「こっ、これは危険だわ!(これはチャンスね。ここで一気に話を持っていくわ!)」
「やっぱり危ないのか!? 私はこれからどうしたら良いんだ?」
怯えた表情で霊夢にすがりつく魔理沙。普段の態度は見る影もない。
霊夢は出来る限り深刻な表情で、これといった考えもなく適当なことを口走り始めた。
「魔理沙。まず、ここに描かれた絵をよく見て」
「線がグチャグチャでよく分からないけど……何を意味してるんだ?」
「これは何らかの呪詛じゃないかしら。ほら、ここの形とかね……昔、本で読んだような覚えがあるわ」
「じゅ、呪詛!」
実を言うと、グチャグチャの絵は絵心ゼロの咲夜が「取っ組み合いをする子犬」を描いたものだった。
なぜそんなものが切り貼りされているのかを説明すると面倒なことになるので、ここでは詳細をスルーさせて頂きたい。
「それに、この唐突な子猫の写真……」
「これにも何か意図があるのか?」
「文章の一部に、不自然に赤い文字が使われているわね。どうもこの赤い文字から、子猫の怨念のようなものを感じるわ……」
「ヒィッ! 猫の怨念! もしやアレか、赤インクに子猫の血を混ぜたりとか……」
魔理沙、想像力過多。
「そして沢山の怪しげな記号!」
「こっ、これにも隠された意図がっ!?」
なんだかMMRみたいになってきた。
霊夢の背後に胡散臭いメガネをかけた男の姿がチラつく御仁もいらっしゃる事と思うが、どうか我慢して頂きたい。
「この記号の数を数えてみて」
「えーっと……1,2,3……全部で13個だ」
「13。とても不吉な予感がするわね」
「ああ……なんてこった……」
「そして2回繰り返されているフレーズ……“賽の河原で、あなたにあいたい”。送り主は、魔理沙の魂を異界へと連れ去ろうとしているんじゃないかしら」
「私の魂を青森県へ連れ去って、どうしようって言うんだ」
「それは私には分からないけど……他にも、文中で“わたし”や“おれ”、“おまえ”や“あなた”のように、人称がバラバラなのも気になるわね。
これを書いた何者かは多重人格者かも知れないわ!」
まるでキバヤシの如き見切り発車発言の数々。霊夢の意外な才能がひとつ明らかになった。
今の霊夢なら、フリーメーソン陰謀本や大予言本の執筆など朝飯前であろう。
逆さまになった茶碗を見ただけで「アダムスキーが云々」などとほざきかねない。
実を言うと、13個の記号はパチュリーと小悪魔が「工場の地図記号はどんな形だったか」をど忘れして、
あーだこーだと討論しながら描いていたものの一部であった。分かってみればどうという事のない真相である。
「結論から言うと……魔理沙、今一人で家にいるのはまずいと思うの」
「そうか……多少の相手ならマスタースパークでどうにかなると思ってたんだけどな」
「確かに今まではそうだったかも知れないけど、この相手は只者じゃないわ。それにほら、この文章。
切り貼りで作られている上に、筆跡もバラバラよ。もしかしたら個人ではなく集団なのかも……怖いわよ、何かを企んでる集団ってのは」
今の霊夢に言えたセリフではない。
「…………」
「ねえ魔理沙、しばらくここで私と一緒に生活して様子を見ない? ここなら結界だってすぐに用意できるし、
不意をつかれる事態は防げると思うけど……(カモン魔理沙、神社にステイヒア!)」
「い、いいのか?」
「逆に、自分が安心して身を寄せられそうなところを考えてみて。ここが一番じゃないかしら?(博麗神社でトゥギャザーしようぜ!)」
そう問いかけられた魔理沙の脳内で、以下のような思考が瞬時に行われた。
・候補地1……アリスの家:しぶしぶ泊めてくれるのだろうが、迷惑がられそう。おまえも蝋人形にしてやろうかぁー!
・候補地2……紅魔館:日頃から迷惑がられているので望み薄。咲夜あたりに何か手伝わされるかも知れない。血も吸われるかも。
・候補地3……魔法図書館:ここでも日頃から迷惑がられている。パチュリーに説教されて追い出されるのがオチ。
・候補地4……白玉楼:幽々子は気にしないだろうが、妖夢が怒りそう。気付いたら斬られて死んでいた、ということにもなりかねない。
・候補地5……マヨヒガ:行ったら行ったで何とかなりそうだが、帰れなくなるかも知れない。
紫と藍は、最近スキマで拾ったカメラでホームビデオを撮影するのに凝っている。
編集(ほとんど橙が映ったシーン)を手伝わされたりしたら、それだけで日が暮れてしまう。
・候補地6……永遠亭:永琳にヘンな薬でも盛られたら大変だ。悪い奴らじゃないが、安全とも言いがたい。
・候補地7……人里と竹林:説教。頭突き。焼かれる。
・候補地8……無縁塚:一日中説教されそう。それに小町の胸を見ていると、どうしても世界の理不尽さを噛み締めて悲しい気持ちになる。
・候補地9……香霖堂:日頃から顔を出しているので行きやすいのだが、あれこれ踏み倒しているので追求されると困る。
・候補地10……博麗神社:しょっちゅう行くので我が家同然。霊夢は強いし頼れる。何より霊夢ハァハァ。
それに先日盗み損ねた使用済みのサラシを(以降は倫理的に問題のある表現が多発するため、掲載を見送りました)
ぴこーん!
<脳内会議終了:博麗神社に身を寄せるのが吉>
「れ、霊夢」
「どう? 考えはまとまった?」
「……しばらく神社に世話になるぜ」
「ファイナルアンサー?」
「ファ、ファイナルアンサー!」
魔理沙の言葉を耳にした霊夢の唇の両端が、つぅーっと吊り上がる。
だがその表情は、巫女服の脇からチラつく素肌に気を取られていた魔理沙の視界には入らなかった。
悲劇はいつも、こんな些細な擦れ違いから生じるものだ。
「そうよね魔理沙、やっぱりここが安全でしょ?(ケヒヒヒヒヒヒヒヒ)」
「でも何だか悪いな、面倒事に巻き込んじまったみたいで」
魔理沙の存在自体がすでに幻想郷の面倒事なので、今さら気にするようなことでもない。
「気にしないで……むしろ話してくれて良かったわ。私たち、そんなに浅い付き合いじゃないはずよ。ね?(スーパーコシヒカリよ!)」
「れ、霊夢ぅーっ!」
がたがた、がばっ!
少女同士の、美しい友情に基づいた熱い抱擁。
だが、この光景には一つ、余計な成分が混ざっていた。
――米に対する、一途なまでの渇望。
霊夢はこの瞬間、腐れ縁とは言え長い付き合いだった友人よりも米俵を重要だと見なしたことになる。
幻想郷に生きるものたちですら、とある人生の法則から逃れることは適わない。
そう。心にもない事を穏やかな表情で言えるようになった時、人は大人になるのである。
「――ああそうだ、ところで霊夢」
「何かしら?」
「今、熱い友情に感動して抱き合おうと姿勢を変えたときに、そこの卓袱台に乗ってた饅頭の残りが視界に入ったんだが」
「――うん(嫌な予感がする前フリだわ……)」
「感動した勢いで食べちまった。美味かったぜ。友情の味だな! なーんて」
まりさは ザラキを となえた!
れいむは いきたえた!
ドサッ。(霊夢倒れる)
「……あれっ? 霊夢? おい、霊夢どうしたんだよ……くそっ、まさか話に出てた謎の敵の魔手が霊夢に及んだのか!?
くそっ、私のせいで! 私の身に何も起きなかったことに実はホッとしてるがこれは一大事だ!
実力者の霊夢から排除するとは敵ながらなかなかの戦略家と見たぜ! しかし霊夢しっかりしろ!
……霊夢? 霊夢ぅーっ!! うわあああああ!!」
妙に状況説明的な部分が多く見受けられるが、これはこれで魔理沙は慌てている。
少しでもそれが伝われば幸いである。
<3>
さて、その頃魔法図書館では……
陰湿にして勇敢な“蔵書奪還・友の会”の面々が深刻な表情でテーブルを囲んでいた。
「――――むっ」
「……どうしたの、パチュリー?」
「脅迫文に潜ませておいた座標探知魔法が長距離移動したわ。これは魔理沙が神社に向かったと見て良さそうよ」
「まあ先日、魔理沙が家に来た時には適当な事を言ってはぐらかしておいたから、順当な流れでしょうね」
「感謝するわ、アリス。それにしても魔理沙はもう、思ったとおりの行動を取るわね……ふふふふふ……」
「わあ、パチュリー様。笑顔が凄く陰湿ですよ!」
「陰湿とは失礼ね。これは嫌がらせじゃないわ。知略よ」
「あっ、あくまで私が言う陰湿ってのは、誉め言葉ですからね?」
正確に表現すると、三人は深刻な表情を保ったままクッキーをパクついていた。
「これで霊夢が魔理沙を拘束してくれれば、半分は成功したも同然ね」
「お米で釣ったという話だけど……すんなりと話が運ぶかしら?」
「と、言いますと?」
「いつぞやの発電実験のときみたいに、途中からおかしな方向に進むんじゃないかと思っちゃって……」
「あれは……不幸な事故だったわね」
「私が聞いた話では、半分以上は人災だったそうですが……」
じろり、と小悪魔を睨むパチュリー。触れて欲しくない話題のようだ。
「まあ昔のことを振り返るのはやめておきましょう。今は蔵書を取り戻すことに集中しなくちゃ」
「はあ」
「まあ、そうよね」
「そこで、次はコレの出番よ」
胸元をゴソゴソと探ると、何やら取り出すパチュリー。
出てきたのは、小さな水晶玉であった。
「それは何かしら?」
「作戦をより円滑に進めるための小道具よ。これと同じものを、先日霊夢に会った時に渡しておいたのよね」
「霊夢さん、ちゃんと持っててくれてますかね?」
「試しに呼びかけてみましょう……もしもし霊夢、聞こえる? こちらパチュリーよ」
「……………………」
「もしもーし?」
「……………………」
小悪魔とアリスはしばし顔を見合わせていたが、互いに何かを悟ったかのような表情で頷くとわざとらしく紅茶を啜り始めた。
「…………あらっ?」
「ずずーっ」
「……返事が無いわね……」
「……ねえ、パチュリー」
「な、何かしら?」
「もしかしたら、と思うんだけど」
「ええ」
「霊夢、お米のことに気を取られて水晶玉のことを忘れてるんじゃ……」
「そこまで霊夢はうっかりしてないと思いたいけど」
結論から言うと、案外うっかりしていた。
と言うより、今はお饅頭を食べられたショックでそれどころではなかった。
「心配なら、さり気なく様子を見に行った方が良いんじゃないかしら?」
「それとも、霊夢さんを信じてここで成り行きを見守りましょうか?」
「うーん……」
指先で水晶玉を弄びながら、難しい表情のパチュリー。
何となくだが、このまま放っておいても支障は無さそうな気がする。
だが、心の奥底で慎重派の本心が意義を唱えているのも事実だ。
さて、どうしたものか。
「そうね、取り敢えず――」
「はい」
「ここのクッキーを全部食べてから考えましょうか」
「パチュリー様、座ってるだけなのにお腹は減るんですか?」
「燃やすわよ」
To be Continued.
Next Episode is “Bibliomania Inferno (Part-2)”.
小悪魔、その質問は黒か天然か。
むちゃくちゃ加減がつぼに入りすぎて泣くほど笑ったwww
究極戦隊クソワロタw
後手紙がすげえ・・・コレは素晴らしいサイコさんだな!
実は前の話はアップ一日前に知りまして
続きが直ぐに読めてありがたや~でした。
近所迷惑無視で爆笑させて頂きましたが、それ以上に。
露助人形最高ッ!!(ぉ
咲夜さんの絵の詳細が知りたいです
>テキストー開いて!
なつかしいwww
まだ物語の途中ではありますが、レスなど付けさせて頂きます。
>名前が無い程度の能力様
そのお言葉に、こちらが感激です。
お待たせしてしまいました。少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。
>ルエ様
グランギニョル、結局あんまり役に立ってないような気もしますが……
出番のうち7割は独り言を呟いてただけですからねえ。
>名前が無い程度の能力様
ネタに使っておいてアレですが、私はくさやを食べたことがありません。
美味しいんでしょうか? 小悪魔の質問は……わざとっぽいですね。
彼女も一応は悪魔ですから。
>名前が無い程度の能力様
脅迫文、ウケて頂けたようで一安心です。
こんなのが貼られていたら、そりゃあ魔理沙だって引くでしょうね。
>名前が無い程度の能力様
ハロゲン氷酢酸しぶき! ネタを拾って頂き、有難うございました。
ああ究極の戦士よ永遠に。
>時空や空間を翔る程度の能力様
話が途切れ途切れなうえに長引いてしまい、読んで下さる方には
ご迷惑をお掛けしています……。続きは出来るだけ早く書ければと思います。
>rock様
いい手紙でしたか。ですがこれ、冷静に見るとあまり脅迫文になっていないような気も……どっちかと言うと、アングラ劇の台詞のような。
>名前が無い程度の能力様
半年も開いていたにも関わらず、お読み下さったことに感謝致します。
露西亜人形は、どこか損な役回りでしたね。干物臭くなっちゃったし。
仲間の人形達もみんなアレな奴らばかりですから、彼女のように微妙に
真面目な心の持ち主がひどい目に会うのでしょう。
>名前が無い程度の能力様
どうも私の書く話の中では、メイド長は瀟洒に見えない傾向があります。
絵心ゼロ、というのは勝手に思いついたのでそうしてみました。
周りの奇妙な面々に毒されて、色々と良くない影響を受けているようです。
>名前が無い程度の能力様
一昔ほど前のCMネタでした。あのCM、何故か好きだったのでついつい使ってしまいました。
それでは、またお目にかかれることを祈って。
とは言え、オチをどうするか未だに決まっていなかったりするんですが……。
入れて下さった全ての方に心よりお礼申し上げます。
まだ物語の途中ではありますが、レスなど付けさせて頂きます。
>名前が無い程度の能力様
そのお言葉に、こちらが感激です。
お待たせしてしまいました。少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。
>ルエ様
グランギニョル、結局あんまり役に立ってないような気もしますが……
出番のうち7割は独り言を呟いてただけですからねえ。
>名前が無い程度の能力様
ネタに使っておいてアレですが、私はくさやを食べたことがありません。
美味しいんでしょうか? 小悪魔の質問は……わざとっぽいですね。
彼女も一応は悪魔ですから。
>名前が無い程度の能力様
脅迫文、ウケて頂けたようで一安心です。
こんなのが貼られていたら、そりゃあ魔理沙だって引くでしょうね。
>名前が無い程度の能力様
ハロゲン氷酢酸しぶき! ネタを拾って頂き、有難うございました。
ああ究極の戦士よ永遠に。
>時空や空間を翔る程度の能力様
話が途切れ途切れなうえに長引いてしまい、読んで下さる方には
ご迷惑をお掛けしています……。続きは出来るだけ早く書ければと思います。
>rock様
いい手紙でしたか。ですがこれ、冷静に見るとあまり脅迫文になっていないような気も……どっちかと言うと、アングラ劇の台詞のような。
>名前が無い程度の能力様
半年も開いていたにも関わらず、お読み下さったことに感謝致します。
露西亜人形は、どこか損な役回りでしたね。干物臭くなっちゃったし。
仲間の人形達もみんなアレな奴らばかりですから、彼女のように微妙に
真面目な心の持ち主がひどい目に会うのでしょう。
>名前が無い程度の能力様
どうも私の書く話の中では、メイド長は瀟洒に見えない傾向があります。
絵心ゼロ、というのは勝手に思いついたのでそうしてみました。
周りの奇妙な面々に毒されて、色々と良くない影響を受けているようです。
>名前が無い程度の能力様
一昔ほど前のCMネタでした。あのCM、何故か好きだったのでついつい使ってしまいました。
それでは、またお目にかかれることを祈って。
とは言え、オチをどうするか未だに決まっていなかったりするんですが……。