星が、落ちてくる。
空が、落ちてくる。
「ほしが、落ちてきそうだな……霊夢」
隣にいる魔理沙は喜びを滲ませたようにひっそりと呟く。
「……そうね、魔理沙」
星は私たちの頭の上の夜空を飛んでいく。 空を覆い尽くしてしまうような星が飛んでいる。
ちっぽけなふたりぼっちには声を潜めて星が、空が落ちてくるのを見ているしかない。
「なあ、もしも……いや、やめとくか」
「どうしたの魔理沙?」
「いや、やめとく。聞かなかったことにしてくれ」
星が落ちてくるのを見るのをやめて、魔理沙の顔を見る。
今もやけに覚えている。少し悲しそうな、寂しそうな横顔を。
*
「なあ、霊夢。今日の流星群、一緒に見に行かないか?」
ぽかぽかと春の暖かい日差しを縁側で浴びながら日向ぼっこをしていたら、空から飛んできて隣に座った魔理沙がそう言う。
流星群、ね。
「……夜は眠いもの、私は寝るわ」
「そーかよ、それなら永遠に眠ってくれ」
「勝手に殺さないでよ……」
そう言いながら隣に座った魔理沙を見るとふてくされた顔をしている。一緒に見れたらいいとは思うけど、私は一緒に見たくないので断った。
神社の桜がはらはらと舞う。ざあ、と吹き上げた風に乗って空へと散っていった。
「……ほんと桜が綺麗ね」
「神社はよく咲いてるもんな。魔法の森じゃこんな風にはならないぜ」
桜を見ながら答える魔理沙。
「あそこほんとにじめじめしてるものね。湿気を取る魔法とかないの?」
「そんなものあったら洗濯物に使いたいけどな」
「へえ、無いんだ?」
「……探してみるさ!作ったらいいんだからな」
そんな他愛もない話をする。空を見上げると憎いくらいの青空で雲ひとつない。どこか吸い込まれそうな気がする。そのくらい私にとっては綺麗なものだと思えた。
「……そうね、見つかればいいわね」
「今日どうした?なんか物思いにふけってないか……」
「いいえ、そうじゃないわ……」
少し睨まれたように思ったけれど魔理沙は何も言わずにいてくれた。桜がはらはらと舞い散る中で私たちは何も言わずに過ごす。まるで空気がひとつになったみたい。
「私は帰る。気が向いたら来てくれよ、いつもの丘で待ってる」
唐突にそう言い残すと魔理沙は飛び去って行った。横顔が少し寂しそうな顔だった。
断るのは少し悪いことをしたかな、なんて思ったけれど、謝るのは柄じゃないのでしない。私は私の信念たるもので断ったのでそれは悪いことじゃないはずだった。
~*~
夜中、私は寝たはずなのに目が冴えるように起きた。縁側の襖を開けると流星群が空から落ちてきている。
……魔理沙、見てるのかしら。
そんなことを思ったら、私は寝巻きの長袖を着て空を飛び始めていた。いつもの丘、香霖堂の裏手の小さな小さな盛り土のような丘。いつもそこで私たちは流星群を見ていた。
魔法の森の上空を飛んで、香霖堂の丘の前に着く。丘の上に目をやると魔理沙は寝転んで空を見上げていた。
「魔理沙」
「れ、霊夢!?」
びっくりしたのか魔理沙は体を起こして夜の空間に響く声を出す。
「静かに」
「あ、ああ……びっくりした、こんな時間に来るなんてな」
「……悪い?」
「いや、悪くない。むしろ来てくれて嬉しいよ」
「隣、座っても?」
「いいぜ」
そういったのを聞いて私は魔理沙と本、横一冊分くらいのスペースを開けて座った。
「ねえ。綺麗ね」
一定の間隔で星は落ちてくる。私たちの頭上に向けて。星は消え、空は黒く、私たちを包み込む。
「ああ。そうだな」
魔理沙の横顔は見えない。見えるのは落ちてくる星だけだ。
また空を見る。星が落ちてくる。星が落ちてくる。
「ねえ魔理沙……星に憧れるのはどうして?」
「……ん?どうした急に。知ってるだろ?」
「そうだけど……聞いておきたくて」
「星は綺麗だろ?そんな風になりたいんだよ」
星が落ちる。魔理沙の顔を見る。薄ぼんやりと見える顔は笑っていて。なんか腹たってきたな。
「……そう。でもあんたは星にならないでよ」
「縁起でもないな……勝手に殺すなよ」
「違うわよ、殺すとか殺さないとかじゃなくて本当にあんたが星にならないか分からないから目が離せないのよ」
ねえ、本当に……
「あはは、それなら私はもう星だな。星になれてるんだ、それでいいんだ」
本当に楽しそうに笑うものだから私はムッとなる。
「……バカ」
「おい、そこのどこがバカって言葉になるんだ?」
「魔理沙なんて知らない」
私は丘の上に寝転ぶ。星はまだまだ落ちてくる。落ちてくる……
嫌になってくる。綺麗なものなのに落ちてくるの嫌なんて。ああ、本当に、本当に……
「どうしたんだよ霊夢?」
本当に、嫌になってしまう。魔理沙を失うことの意味が。
私は体を起こして魔理沙を見る。
「魔理沙、あんた本当に星にならないでよ」
「……ええ……」
「星になったら私はあんたをボコボコにしてやるから。覚えときなさいよ」
「いや、なんで?」
魔理沙は不思議そうな顔をして頭を傾げていた。
*
もし星になるのなら私は止めてやる。私の自己満足だから。それでいい。
星が落ちてくる。
空が落ちてくる。
星が、
空が、落ちてくる。
「ほしが、落ちてきそうだな……霊夢」
隣にいる魔理沙は喜びを滲ませたようにひっそりと呟く。
「……そうね、魔理沙」
星は私たちの頭の上の夜空を飛んでいく。 空を覆い尽くしてしまうような星が飛んでいる。
ちっぽけなふたりぼっちには声を潜めて星が、空が落ちてくるのを見ているしかない。
「なあ、もしも……いや、やめとくか」
「どうしたの魔理沙?」
「いや、やめとく。聞かなかったことにしてくれ」
星が落ちてくるのを見るのをやめて、魔理沙の顔を見る。
今もやけに覚えている。少し悲しそうな、寂しそうな横顔を。
*
「なあ、霊夢。今日の流星群、一緒に見に行かないか?」
ぽかぽかと春の暖かい日差しを縁側で浴びながら日向ぼっこをしていたら、空から飛んできて隣に座った魔理沙がそう言う。
流星群、ね。
「……夜は眠いもの、私は寝るわ」
「そーかよ、それなら永遠に眠ってくれ」
「勝手に殺さないでよ……」
そう言いながら隣に座った魔理沙を見るとふてくされた顔をしている。一緒に見れたらいいとは思うけど、私は一緒に見たくないので断った。
神社の桜がはらはらと舞う。ざあ、と吹き上げた風に乗って空へと散っていった。
「……ほんと桜が綺麗ね」
「神社はよく咲いてるもんな。魔法の森じゃこんな風にはならないぜ」
桜を見ながら答える魔理沙。
「あそこほんとにじめじめしてるものね。湿気を取る魔法とかないの?」
「そんなものあったら洗濯物に使いたいけどな」
「へえ、無いんだ?」
「……探してみるさ!作ったらいいんだからな」
そんな他愛もない話をする。空を見上げると憎いくらいの青空で雲ひとつない。どこか吸い込まれそうな気がする。そのくらい私にとっては綺麗なものだと思えた。
「……そうね、見つかればいいわね」
「今日どうした?なんか物思いにふけってないか……」
「いいえ、そうじゃないわ……」
少し睨まれたように思ったけれど魔理沙は何も言わずにいてくれた。桜がはらはらと舞い散る中で私たちは何も言わずに過ごす。まるで空気がひとつになったみたい。
「私は帰る。気が向いたら来てくれよ、いつもの丘で待ってる」
唐突にそう言い残すと魔理沙は飛び去って行った。横顔が少し寂しそうな顔だった。
断るのは少し悪いことをしたかな、なんて思ったけれど、謝るのは柄じゃないのでしない。私は私の信念たるもので断ったのでそれは悪いことじゃないはずだった。
~*~
夜中、私は寝たはずなのに目が冴えるように起きた。縁側の襖を開けると流星群が空から落ちてきている。
……魔理沙、見てるのかしら。
そんなことを思ったら、私は寝巻きの長袖を着て空を飛び始めていた。いつもの丘、香霖堂の裏手の小さな小さな盛り土のような丘。いつもそこで私たちは流星群を見ていた。
魔法の森の上空を飛んで、香霖堂の丘の前に着く。丘の上に目をやると魔理沙は寝転んで空を見上げていた。
「魔理沙」
「れ、霊夢!?」
びっくりしたのか魔理沙は体を起こして夜の空間に響く声を出す。
「静かに」
「あ、ああ……びっくりした、こんな時間に来るなんてな」
「……悪い?」
「いや、悪くない。むしろ来てくれて嬉しいよ」
「隣、座っても?」
「いいぜ」
そういったのを聞いて私は魔理沙と本、横一冊分くらいのスペースを開けて座った。
「ねえ。綺麗ね」
一定の間隔で星は落ちてくる。私たちの頭上に向けて。星は消え、空は黒く、私たちを包み込む。
「ああ。そうだな」
魔理沙の横顔は見えない。見えるのは落ちてくる星だけだ。
また空を見る。星が落ちてくる。星が落ちてくる。
「ねえ魔理沙……星に憧れるのはどうして?」
「……ん?どうした急に。知ってるだろ?」
「そうだけど……聞いておきたくて」
「星は綺麗だろ?そんな風になりたいんだよ」
星が落ちる。魔理沙の顔を見る。薄ぼんやりと見える顔は笑っていて。なんか腹たってきたな。
「……そう。でもあんたは星にならないでよ」
「縁起でもないな……勝手に殺すなよ」
「違うわよ、殺すとか殺さないとかじゃなくて本当にあんたが星にならないか分からないから目が離せないのよ」
ねえ、本当に……
「あはは、それなら私はもう星だな。星になれてるんだ、それでいいんだ」
本当に楽しそうに笑うものだから私はムッとなる。
「……バカ」
「おい、そこのどこがバカって言葉になるんだ?」
「魔理沙なんて知らない」
私は丘の上に寝転ぶ。星はまだまだ落ちてくる。落ちてくる……
嫌になってくる。綺麗なものなのに落ちてくるの嫌なんて。ああ、本当に、本当に……
「どうしたんだよ霊夢?」
本当に、嫌になってしまう。魔理沙を失うことの意味が。
私は体を起こして魔理沙を見る。
「魔理沙、あんた本当に星にならないでよ」
「……ええ……」
「星になったら私はあんたをボコボコにしてやるから。覚えときなさいよ」
「いや、なんで?」
魔理沙は不思議そうな顔をして頭を傾げていた。
*
もし星になるのなら私は止めてやる。私の自己満足だから。それでいい。
星が落ちてくる。
空が落ちてくる。
星が、
「あはは、それなら私はもう星だな。星になれてるんだ、それでいいんだ」
星は、日常のシーンによれど目が離せないときもありますね。傷心のさなか、あるいはココロヒソカなる甘い想い。そう思えば、魔理沙がこのように確信したのもうなずけます。
雰囲気がとっても良かったです。
目が覚めたからといってそのまま寝なおさないで魔理沙のところに行く霊夢がかわいらしかったです