Coolier - 新生・東方創想話

第15話 合わせ鏡

2024/09/07 23:12:46
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なまくら刀は本来切れ味も悪く、使うより売った方がいいと言われる程の物に過ぎない。仮に使ったとしても折れて使い物にならないし、まだ警棒の方が仕事している。だがそれは、悪魔で『普通のなまくら刀』の話だ。これはいわゆる妖刀の一種で、作者はあの村正を作った奴と同一人物らしい。奴はそれ以降も刀には村正と名付け、槍にまでも村正と名付けていたそうな。そして妖刀の最大の特徴と言えば、年月が経つほど呪いや呪詛が強くなる事だ。そこに俺の霊力で強化し力を注げば、なまくら刀でも普通の刀と遜色ない程の切れ味をたたき出す。



妖夢の楼観剣はリーチでは有利を取っているものの、それこそ懐に入り込まれてはひとたまりもない。まるで銃が近接戦では刀に勝てないように。妖夢は楼観剣を逆手に回し、後ろからの一振りを防御する。それと同時に衝撃を跳ね返し、龍陽の体制を乱した。胴がガラ空きになった所を追撃するが、胸部に装着された防具にすら傷一つ付けることが出来ない。追撃が思わぬ方向に失敗し、その場から早急に離れた。龍陽は離れてもなお、表情一つ変えず追いかける。着地と同時に二人は刀身を交わせ、妖夢は弾幕を、龍陽は蒼炎(そうえん)を散らす。弾幕と蒼炎は歪な混ざり合いをし両者弾けてしまうが、気にする事なく連撃を続けていた。
互いに距離を取り、妖夢は背中から白楼剣を取り出す。
「剣技ではやや有利ですが、幽々子様の友人を傷つけた罪は重いですよ。この白楼剣と楼観剣にかけて、貴方を斬る!!」
「罪、か。ところでお前さんは皆がチョコケーキを食べたいと言っている時に、自分はチーズケーキを食べたいと思っていると仮定しよう。その時お前さんは自分に合わせるか?それとも仲間に合わせるか?」
突然の質問に妖夢は混乱していた。もし他人に合わせると美味しさは共有出来るが、本当の気持ちは共有出来ない。だからと言って自分だけ違うのはおかしい。しばらくして妖夢は一つの結論を導き出した。
「皆に合わせますかね。自分だけ我儘はいけないので。」
「……素晴らしい協調力だ。」
龍陽は期待はずれの拍手を送る。そして内ポケットに手を伸ばし、ココアシガレットを咥えた。
「俺はガキの頃、よく皆と合わなかったんだ。皆とは違う選択をする事で、自分の気持ちを保っていた。自分は正直に好きな物を言ったって。だが現実は…………そう甘くは無い。ボロカスに言われて、気付いたらひとりぼっち。法の下の平等、多様性、そんなものは存在しない。あるのは深淵に浸かった喪失感だけだ。」
「いや、合わせたらいいだけの話じゃないですか。」
「合わせられたらいいな。奴らはありとあらゆる顔で俺を広め、お前に逃げ場は無いと言っている。まあ小学生(ガキ)の頃の話だ。あの時はまだ兄貴が居てくれたからいいけど。今は気にしていないが、罪悪感は何時までも付きまとう物だ。忘れたくても忘れられない。」
龍陽はポリポリとココアシガレットを食べながら話している。一見何も考えていない様な真顔だが、その目には何処か寂しげのある感情が篭っていた。ココアシガレットを食べ終え、もう一度妖夢に質問を投げかける。
「最近思い始めたんだよ。人生って、馬鹿げた魂のリサイクルに過ぎないって。馬鹿やって、大学入って、就職して、人の金でメシ食う政治家達に税金払って、老いぼれになって死んで、またガキに戻っての繰り返し。これは俺達の目的の一部に過ぎないが、このリサイクル、輪廻転生を破壊する事は素晴らしい事だと思っているよ。飽き性の俺には丁度いい。」
龍陽は話している間に服に付いている通信機か何かを作動させ、少し妖夢から目を離す。再び見上げる頃には妖夢の隣に幽々子が来ていた。幽々子は扇子を広げ、口元を隠しながら交渉する。
「話の途中で申し訳ないけど、いつかは貴方と話したいと思っていたわ。遠くから観察していたけどやはり、どう捉えても体と魂の数が合わない。私は貴方『本人』と話したいのよ。そこにいる貴方じゃなくて本人と面と向き合わせてね。」
「悪いが主人格(メインの俺)は基本、話したくないって言っている。諦めろ。」
俺は村正を取り出し、奴らに斬りかかる。



霊夢達は、妖夢と龍陽の戦闘の隙を見ていた。右に左に交差し、更には空中を舞い攻防する程だ。幾ら百戦錬磨の博麗霊夢でも手の出しようがない。一方魔理沙は、興味津々にその攻撃一つ一つを分析していた。まるで花火大会に来た子供のように。ゴソゴソと懐を漁り始め、烏天狗からパクっt……借りた録画用のカメラをまわす。
「いやー、やっぱり強い奴同士の戦いは勉強になるよな。霊夢、お茶持ってない?」
「…せんべいから反省の色ナシね。」
魔理沙は星空を眺めるように、二人の戦闘を見届けた。実際魔理沙の目にはキラキラと輝いている星が見える。少なくとも隣にいた霊夢はそう感じた。
「抜刀。」
次の瞬間、霊夢の後ろに銀色の刃が現れる。霊夢は拳で刀を破損させ、後ろにいる不届き者に腹パンをねじ込む。続いて魔理沙はギリギリのところで躱し、ミニ八卦炉で焼き払う。不届き者の正体は忍者の格好をした動物霊であり、遠方から続々と忍者達が走ってきた。霊夢と魔理沙を囲み、忍者達より遅れてきたものが出てくる。その人物は今まで倒してきた動物霊とは違い、黒いコートに白いネクタイを身に付け、両目には傷がある。黒い目は霊夢と魔理沙に向けて説明をする。
「やはり見ていたのは君達か。全く、彼も厄介な仕事を送り付ける物だ。それより、彼の組織について話そう。組員は四段階構成で一番下から一般兵、軍曹、将軍、幹部、と言う風な感じでね。ただ、これには例外がある。一般兵から軍曹の中で、忠誠心が極めて高い者達を集結させた部隊がいるんだ。武術、剣術を学び、どんな任務だろうがこなしてくる。それが今君達の前にいる『忍』だよ。指揮権は彼と私だ。存分に遊んでくれ。」
言うなり早く、忍達は手裏剣を飛ばして錯乱を狙う。魔理沙は手裏剣を全て弾き返し、魔法瓶を投げつけた。爆風に紛れ、霊夢は弾幕をぶつけて忍五人を瞬く間に倒していく。
「散。」
黒コートの男が指示を出すと忍達は瞬時に散り、鎖鎌や短刀を取り出す。
面倒と感じた魔理沙は宙に逃げ、ついでに霊夢の襟首を掴み上げる。だが忍達は組体操の様に重なり、着々と距離を詰めていった。すると突然魔理沙は口角を上げ、箒から飛び上がり、八卦炉を掲げる。
恋符『マスタースパーク』
先程放ったマスタースパークとは違い、今度は極太レーザーなので忍達は光の中へ消えていった。大量の忍の山に魔理沙は着地し霊夢を下ろすが、そこに黒コートの男は居ない。
「相変わずの無茶ね。分かっていたからいいけど、血圧下がるから二度としないで。その……本当に無理だから。」
「お、おう。悪かったって。」
霊夢はゼーハーゼーハー息を切らしながら魔理沙を叱る。



俺は幽々子より先に、妖夢を狙う事にした。俺が斬りかかる時に何やら助言を聞いていた素振りを見せたので、対抗手段か何かを伝えたのだろう。妖夢は刀を構え、防御しようとしている。しかしそれより早く幽々子は妖夢を突き放し、俺に蝶の弾幕をぶつけた。生憎俺はいつも通りに再生するが、出血した血が右目に飛び散り目を瞑ってしまう。その隙に幽々子は木刀を妖夢から受け取り、俺のみぞおちを殴打した。肋骨は叩き壊されて、内蔵に刺さるのが感じられる。体中がボキボキと悲鳴をあげているがそんな事はどうでもいい。俺はカウンターがてら幽々子の腕を切断した。一時的に怯んだが、次の瞬間俺の後ろに急に現れたフランに邪魔をされてしまう。吹っ飛ばされはしなかったものの、次は空から無数の弾幕が襲いかかる。フォースシールドを展開し物騒な雨を凌ぐが、雨宿りしていたのは俺だけではないらしい。気づいた頃にはフランは俺の首を断ち切っており、レーヴァテインは心臓を突き刺していた。この衝撃でコアリアクターが壊れてしまい、非常に焦る。すぐさま傷を癒し、距離をとる。
そこに居たのは五大老、神様、鬼、そして天界の我儘娘も来ている。総戦力が来ることは分かっていたが、まさか取り巻きや天界の連中まで来るとは知らなかった。しかも先程通信機で知ったが、ヨシタカはぬえにやられたらしい。恐らく能力を使いデコイを回したんだろうが、計画がここまで狂うと流石にまずい。俺は身の危険を感じ、すぐさまスペルカードを発動させた。
処符『百椀巨人の断罪』(ヘカトンケイルのだんざい)
レジェンドブレイカーが火を噴き、辺りを一掃していく。五大老と神様達にはかすりしかしなかったものだが、鬼達には絶大だ。近づいて来るものには容赦なく切断していき、レジェンドブレイカーのレーザーを回避しても、レーザーの中に爆発物を忍び込ませているので回避先に爆散して仕留める。スペカを発動させている間にもフランは俺の後ろに『ピッタリ』と張り付いており、レーヴァテインを振り回していた。そして一旦距離をとろうと、後ろに飛び退いた事が全ての間違いだった。



そこには聖が張ったであろう結界があり、見事回避先を読まれた。しかも神奈子と諏訪子に固定され、炎とフォースシールドを出すことが出来なくなっている。そこに摩多羅隠岐奈が後ろに扉を張り、幽々子、玉造魅須丸、天弓千亦の三人にボコされる。俺は固定された柱を砕き、再攻撃を試みるが、これもどうやら奴らの計算の内だったらしい。妖夢とフランが地面を蹴り、俺に斬りかかろうとしていく。俺はプラズマキャノンとレールガンで返り討ちにしようとしたが、突然ただの鉄クズに戻ってしまった。横を振り向くと純狐がおり、絶賛能力を発動中だ。苛立たしさを覚えつつも迎撃を止めて、俺は全身の鉄分に熱を加えた。
俺があの時勇儀の打撃を耐えたのは『焼入れ』と言う技術を応用したものだ。焼入れを行うことにより自身の体を硬くして、耐摩耗性や引張強さ、あと疲労強度などの強度を向上させることができる。簡単に言えば鉄を急速に冷やすと、より強固になりますよって事。それを体内で再現し、打撃にも耐えることが出来た。今回も上手くいく。攻撃した後にカウンターを当てる。そう思っていた。
妖夢とフランは互いに共鳴する様にスペルカードを発動する。
禁忌『レーヴァテイン』
『待宵反射衛星斬』
そう、俺はこの二人の特性を知らなかった。その力、『防御無視』に。その反動でフードがめくれ白髪が現れると同時に、双方の袈裟斬りをくらい、仰け反ってしまう。流石に今の一撃には、意識が飛びそうになった。しかし虚しいことにこの最高の一撃も治癒…………されなかった。いきなり口から大量の血が吐き出され、ひ汗が垂れる。



龍陽が斬りかかる五秒前
「あの子を斬る時、体を斬るんじゃなくて次元を斬りなさい。普通に斬っては隙間で再生されてしまうわ。大丈夫。ある程度時間は稼ぐから集中しなさい。」
「幽々子様…………。」
「これはさとり妖怪のアドバイスよ。」
「…………………(-_-;;)」



出血は抑え気味だが、いずれは治療しないと失血死してしまう。だがそれをこいつらが逃す訳がない。村正を地面に刺し体制を整えるが、あまりの痛さに声が出なかった。弱ったのを確信されたのだろう。全員がスペルカードを発動させる。
飛鉢『伝説の飛空円盤』
『反魂蝶-八分咲』
神符『神が歩かれた御神渡り』
祟符『ミシャグジさま』
天気『緋想天促』
『アナーキーバレットヘル』
虹光『光風霽月』
『弾幕のアジール』
『スカーレットニヒリティ』
『天界法輪斬』
それぞれの技をあらぬ方向から集中砲火され、数分で俺は血まみれのボロボロになっていた。骨は砕かれ、左腕は包帯がとれ、頭からも出血し、立っているのがやっとだ。今でも折れたあばら骨がきしむ。苦痛の声をあげる間もなく、次々と攻撃が押し寄せる。
どうやらここまでのようだ。



(もういい、十分やったよ。後は俺がやる。)
(おい待て。お前さんは強いが、人目につきたくなかったんじゃないか。まだ大丈夫。俺がこのピンチを突破する。)
(いや、元々は俺が悪いんだ。どの道、俺は『俺』自身でこの問題を解決しなければならなかった。でもお前が来てからは、全て任せっきりだ。何かしないと気が済まない。だからやらせてくれ。)
(クソ、意識が遠のく……………絶対、死ぬんじゃ、ない、ぞ………)



全ての攻撃が終わり、神奈子と諏訪子が覗きに行くが、そこには龍陽は居ない。次に顔を上げる頃にはすぐそこに龍陽が居た。だが様子がおかしい。白髪だった髪は灰色に、黒い瞳も赤と紫で光っている。そして何より痛みをものもとしない様に立っていた。
「どうも、『初めまして』。俺は空蝉大陽(うつせみはるひ)。これからお前達を処分する男の名前だ。」
大陽と名乗る男はスキマを展開し、村正をしまう。代わりに出てきたのは、とてつもない邪気を宿した剣だった。一同は冷や汗を垂らしながらも、戦闘態勢に入る。
「来い。この『魔剣リアルゴ』がお前達の肉を断ち切ってやる。」
最近、マジでストーリーをどうしようか考え中です。よろしければコメントと評価をお願いします。
m(*_ _)m
SABAMESI
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