俺は残夢の遺体を見つめながら、ヒビと亀裂が入りまくった岩石地帯を去ろうとする。しかし急所は外れたのか残夢は起き上がって、スペルカードを唱えた。
『純霊弾』
流石に俺も慢心していて、この攻撃がくることは予想外だ。俺は岩石地帯から吹っ飛ばされ、先程までいた荒野に落ちようとしている。上手く着地出来たがそこに居たのは驪駒と八千慧で、状況からして仲間達を倒しきった後だろう。俺は残夢から受けた弾幕の槍を腕から抜きながら質疑応答する。
「お久しぶりですね。もしあのまま気付いてなかったら、私達の傘下で一生を過ごす事も出来たのに。まあ、所詮人間ですから代えは幾らでもききますが。」
「そんな一生、死んでもゴメンだ。それに勘違いするな。俺はもうあの時の俺じゃない。その金髪脳みそでよく考えたらどうだ。」
話の途中だが、ある事に気付く。それは八千慧の隣にいた驪駒が居ない事だ。それと同時に頭上から、驪駒が弾幕を放ってくる。俺はすぐさまフォースシールドを展開し、弾幕を防ごうとした。しかし、八千慧の追撃により体制を崩してしまい、二人の弾幕をモロにくらってしまう。驪駒は宙で一回転し、八千慧の横に着地する。肝心の俺は血まみれで、これには鬼傑組の組長もにっこりだ。
「流石の貴方でも幾度かの連戦、それに加えそのダメージなら半刻すら待たずに死ぬでしょう。」
クスクスと笑う八千慧に対して、俺は説明してやる。
「そうだな、確かに……今の攻撃はやばかった。何故避けなかったかと言うと、そもそも避ける必要が無いからな。丁度リセットしたかったし。」
土埃が晴れる頃には傷も治り、砕けた骨もしっかりくっ付いていた。実はこれは従来の体内再生で治癒したのではなく、スキマの応用で治癒したのだ。傷と傷の周りの境界を無くし、そこに元々あった細胞を埋め込む。そうすれば何事も無かったかの様に、完全復活する事が出来る。簡単に言えば、別サイトから画像をコピーして、本書に貼り付ける事と同じだ。
敵の復活に動揺するも、八千慧と驪駒は再び弾幕を放って応戦する。だがフォースシールドで全て防がれ、驪駒の体術にも目が慣れてきてしまう。久々の組手だったが、劣っていなくて何よりだ。こうして八千慧と驪駒の体力を削っていくが、体力の無駄と感じた八千慧はスペルカードを唱えてきた。
龍符『龍紋弾』
円形の弾幕が辺りを包み、逃げ道を無くしていく。俺は動きを制限され、追い打ちに驪駒も混ざってきた。
亀符『亀甲地獄』
『小墾田宮誤踏』
連続スペルカードは珍しく、回避には困難を要する。弾幕が直撃し爆風が舞い上がり、衝撃を伝って瓦礫が粉々になっていった。驪駒は空中を舞い、爆風をかき分けて俺を探している。探している間、八千慧は、驪駒が何か独り言を言っている様に見えた。
「どうしました?見た感じですがかなりの損傷は与えた筈ですが。」
「いや、私の勘が言っているんだよ。あいつがこれで終わりとは思えない。交戦している時、明らかに初めから分かっていた感が出ていたし、何より私の攻撃を最小限に避けてたんだぞ。もしかしたら生きてるんじゃ……」
ご名答通り、俺は爆風から現れ、驪駒の喉元に刃をとおす。驪駒は村正を折ろうと手を伸ばすが、それより早く大動脈を切り離して地表に蹴ってやった。八千慧もこれには動揺して、弾幕の判断がワンテンポ遅れてしまう。その隙に後ろに回り込み、背中の甲羅目掛けてレールガンが火を噴く。八千慧はその場で倒れ、背中から血を流している。とどめを刺そうとするが、念の為遺言ぐらいは聞いてあげようと思い、プラズマキャノンにエネルギーを注ぎつつ話を聞く。
「人間は愚かな下等生物、動物霊にこき使われるだけでも光栄、その意識は、私を殺しても変わりません。そういえば一つ、貴方に弱点があるとすれば、その甘さですよ。」
八千慧からしたら精一杯の捨て台詞だが、俺からすればただの罵詈雑言、負け犬の遠吠えに過ぎない。だが吸収出来るものは一応貰っておこう。プラズマキャノンのエネルギーが完了し、先端が赫く光る。
不死『凱風快晴飛翔蹴』
突然の後頭部の攻撃に、龍陽も仰け反ってしまった。そこには藤原妹紅さん、少し遅れて私、魂魄妖夢も到着した。私は八千慧を見て絶句していたが、妹紅さんだけは龍陽を睨んでいる。
「やはり来て正解だったな。お前の主人はどうも勘がいいらしい。」
「幽々子様に言われてから、行動したまでです。妹紅さんと比べたら、私はまだまだ半人前です。」
確かに幽々子様の判断は正しかった。
龍陽の所に行く十三分前
「………やられたわ。」
幽々子は岩石地帯の爆風を見て、残夢達の敗北を察する。妖夢は残りの一体を片付け、幽々子の元に駆け付けた。いよいよ幽々子も冗談抜きで険しい顔つきになり、丁度近くにいた驪駒と八千慧を見つめている。
「妖夢、貴方は龍陽を足止めして頂戴。死にそうになったら手を挙げてね。直ぐに駆けつけるから。」
「幽々子様、それ歯医者の人が患者に向かって言うやつです。」
以前幽々子は食べ過ぎで歯がボロボロになり、歯医者に行った事を思い出し言ったのだろう。妖夢はそう解釈し適切なツッコミを入れるも、戦況は変わらない。それどころか岩石地帯から龍陽が出てき、八千慧、驪駒方面に向かっている。オロオロしている妖夢とは正反対に、幽々子は変わらない空を見上げていた。それは単に空を見上げたかったのでもなく、意味も無く見上げている訳でもない。
「来たわ。」
妖夢が空を見上げると、そこには炎を纏った鳥、不死鳥(フェニックス)と言う表現が正しいだろう。炎の翼は着地と同時に消えてしまったが、幽々子は予め妹紅が来ることを予想していた。因みに妹紅がこの戦いに参戦した理由としては、単純に暇だったから、らしい。
私は剣技で龍陽を引き付け、妹紅さんが盾になりながら順調に進んでいっている。龍陽は剣技で対応しているが、明らかに型が粗い。そこを逃さず妹紅さんは炎で集中砲火していった。龍陽は軽めに吹っ飛ばされ、ギリギリ仰け反らなかったが、ここで龍陽は剣先を土に向かせ、話しかけてくる。
「藤原妹紅、中級者。魂魄妖夢、上級者寄りの中級者ってとこかな。お前さん達は『道』を歩んでいるだけだ。基礎は出来ているのに折角鍛えた技がギャン泣きしているぞ。」
龍陽は、ポリポリ頭を掻きながら私達を評価してきた。確かに私の剣技は完璧では無い。でも妹紅さんは人間とはいえ、かなりの体術と火力を有している。それをあんな真顔で評価されては、妹紅さんも黙っていない。
「あれだけで私達を評価するとか、中々おめでたい奴だな。いいだろ、不死の力、とことん見せてやる!」
「駄目です妹紅さん!!ただの挑発に乗ってはいけません!」
私の声も虚しく届かず、妹紅さんは文字通り捨て身のタックルを仕掛ける。普通の人なら骨すら残らず灰塵となってしまうが、やはり妹紅さんの攻撃は効かず、しかもずっと押しているのにビクともしない。
龍陽の胸部の防具から、何やら機械音が聞こえ始めた。妹紅さんは依然威力を落とさず押し続けているが、それを無視するかのように機械は作動する。
「妹紅、お前さんは一から炎を鍛え直した方がいい。炎ってのは三段階に分けられ、赤い炎なんてのは基礎中の基の字だ。間にもう一つあるが、それを越した炎、『灰炎』(かいえん)とでも呼んでおこうか。まあでも俺に必殺技を使わせただけ誇れ。お前さんの再生力は厄介だから、こうして突っ込むのを待っていたんだ。そしてこれが間の炎…………『蒼炎』(そうえん)だ。」
胸部の機械からは、コアの様な物が出現し蒼い炎が漏れていた。妹紅さんは後ろに飛び、私に訴える。
「妖夢、危ない!自分の防御に徹底しろ!!!!!」
妹紅さんの炎に私は包まれ、私は戸惑いながらも防御の体制をとる。それと同時にチャージが完了し、私達の周りは蒼炎で覆われた。
『コアブラスト・モデル応龍』
「クソ!こいつら硬すぎる。」
「儂らの弾幕でも傷つけるのがやっとじゃしな。」
ぬえとマミゾウは幹部三機に苦戦していた。いくら弾幕を打っても、シールドで防がれるかアームを使って返されてしまう。終いには強酸ミサイル等、凶悪な兵器でぬえ達をどんどん追い詰めていく。一応里の住民は妖怪に戸惑いながらも、子狸達のお陰もあって無事に避難したようだ。しかし立て続けのミサイルやアームにより、次々と民家が破壊されていく。
「ハッハッハ、どうだ!これが幹部の力だ。お前達が幾ら弾幕を打っても効きやしない!この幻想郷も、もはや風前の灯火に過ぎないだろうな!」
「壊滅させてはいけません。私達の目的は、悪魔で力を示してやる事です。そう組長に言われたでしょう。」
「なに、軽いノリって奴さ。」
「…………………………………。」
ロボット達からはそれぞれの会話が交差し、今も尚ボケとツッコミが続いていた。一機のロボットを除いて。ぬえは話に夢中になっている間に、肩や膝小僧等の関節部分を狙うが、どれも効果は薄い。マミゾウもスペルカードで破壊を試みるが、やはりノーダメージだった。二人は屋根を屋根へと飛び交い思考を巡らせる。
(外部からの攻撃は無意味。破壊しようにもアームかミサイルで体力を削られる。あっちの無言のロボットはハンマーで広範囲の攻撃、及び肩の銃で狙撃される。とすれば………)
ぬえはまず、煙幕でUFOのような何かを出現させ、アーム付近に弾幕を集中砲火で引き付けた。その隙にぬえは三つある内の一つのアームに掴まり、軽い挑発をしてみる。
「その程度の弾幕で手こずるなんて、やっぱり貴方達は相当素が弱いんでしょうね。組長の顔が見てみたいわ。」
「何だと!?俺達の組長を馬鹿にするんじゃねぇ!!そんなに死にたいなら、お望みどおり黒焦げの焼肉にしてやる!!!!!!」
ぬえはアームから殴られ、空中でスタンした。そして一つのアームに捕まり、残りの二つは光球を帯びている。光球はみるみる巨大化し、高熱を放ち始めた。ぬえは逃げようとしたが、ガチガチに固定されて逃げられない。無慈悲にも光球は発射され、黒焦げの物が地面に落下していく。
「ぬえ!!」
「よし、まず一人!」
だがここで操縦席から、マムシんが違和感を抱く。黒焦げになったはずのぬえには手や足が無い。ヨシタカは気付いていない様だが、分析して拡大してみる。そしてある事に気付き、急いで回線を通してヨシタカに伝えようとした。
「ヨシタカ、あれはただの木です!!瓦礫の何処かにあった木か何かを、自分に似せた物に過ぎません!!」
「なんだって!?!?」
アームで遺体を回収したが、そこには正真正銘の黒焦げの木だ。モニターでそれを確認すると、背後からゲンコツを食らいそのまま意識を失っていった。操縦席には通信機能があり、それを使ってぬえは宣言する。
「私の能力、知っているでしょう。『正体を分からなくする程度の能力』。さっきの木に化けさせてまんまと引っかかってくれた訳。マミゾウにも一芝居打って貰ったわ。そしてあんた達の操縦席、首付近の入り口にあるでしょう。予告するわ、あんた達は、直接引きずり出してボコるってね!」
通信電話が切れると同時に、ぬえはヨシタカを連れて機会から出てきた。そしてロボットは爆発し、ただの鉄の塊になってしまった。
「まず一匹!」
マミゾウはヨシタカがぬえにノックダウンされたのを見た後、残りの二機に目を向ける。ぬえもマミゾウの隣に来て、いてぶてしいロボット二機を見つめる。
「さあ、あとふた踏ん張りよ。」
「そうじゃな。これ以上は里が崩壊しかねん。なるべく、早く済ませるぞ。」
「はぁ〜〜〜、これで一体何体目かしら。どんだけ組員が居んのよ。」
「ざっと千、いや五千ぐらいは超えてるだろうな。」
霊夢と魔理沙は相変わらず、組員を処理していた。今は組員だらけの更地も、少し前までは大勢の咆哮が鳴り響いていた連中だ。霊夢は傍の岩に腰掛け、ついでに魔理沙も転がっている組員を椅子にして座る。正直、霊夢にとってはストレス発散になったが、魔理沙にとってはただの雑魚処理と変わらず退屈していた。マスパで焼き払いたい気分だったが、他の連中諸元焼き払う可能性があったので止めておいた。今はようやく落ち着いた様で、こうしていつもの霊夢に戻ったのはいい事だ。そう思いながら魔理沙は椅子代わりにしていた組員から、バキバキと音を立てながら武器を剥がす。その組員が終わると、次から次へとパンのシールを乱暴に剥がす様に剥がしていった。その光景に流石の霊夢も呆れたらしい。
「アンタねえ、加減ってものを知らないの?そんな鉄クズ幾ら集めても使いこなせなかったら意味無いのよ。」
「いや、たまに魔法の実験で爆発した時の盾用さ。頑丈そうだし、ぶっちゃけ使い方が分かろうが、こいつの運命は変わらないぜ。」
作った人が可哀想と思いつつも半分ザマァと思い、霊夢は吹いてしまった。その顔を見て魔理沙も釣られて笑う。渾身のボケが受けたと思って。
二人で笑って居ると、魔理沙の後ろの背景が突然蒼い炎に切り変わる。
二人は笑うのを止めて様子を確認するとそこには龍陽がおり、妖夢と妹紅が火傷しているのが分かった。妖夢は守って貰った分ダメージは浅いが、妹紅はモロに食らって全身が黒焦げだ。
「よし、火力は申し分は無い。あいつらにも感謝しないとな。」
妹紅の再生には時間がかかる。そう判断した妖夢は楼観剣を抜き、構えの体制をとる。それを見た龍陽はスキマに村正を片付け、取り出したのは………なまくら刀だった。
「どういうつもりですか?去むべき相手に情けをかける気ですか?」
「なーに、ちょっとしたただの武士道精神って奴さ。」
互いに神経を張り巡らせ、周りの風の音すら無にする。そして石ころが崩れると同時に互いの刀が火花を散らした。
『純霊弾』
流石に俺も慢心していて、この攻撃がくることは予想外だ。俺は岩石地帯から吹っ飛ばされ、先程までいた荒野に落ちようとしている。上手く着地出来たがそこに居たのは驪駒と八千慧で、状況からして仲間達を倒しきった後だろう。俺は残夢から受けた弾幕の槍を腕から抜きながら質疑応答する。
「お久しぶりですね。もしあのまま気付いてなかったら、私達の傘下で一生を過ごす事も出来たのに。まあ、所詮人間ですから代えは幾らでもききますが。」
「そんな一生、死んでもゴメンだ。それに勘違いするな。俺はもうあの時の俺じゃない。その金髪脳みそでよく考えたらどうだ。」
話の途中だが、ある事に気付く。それは八千慧の隣にいた驪駒が居ない事だ。それと同時に頭上から、驪駒が弾幕を放ってくる。俺はすぐさまフォースシールドを展開し、弾幕を防ごうとした。しかし、八千慧の追撃により体制を崩してしまい、二人の弾幕をモロにくらってしまう。驪駒は宙で一回転し、八千慧の横に着地する。肝心の俺は血まみれで、これには鬼傑組の組長もにっこりだ。
「流石の貴方でも幾度かの連戦、それに加えそのダメージなら半刻すら待たずに死ぬでしょう。」
クスクスと笑う八千慧に対して、俺は説明してやる。
「そうだな、確かに……今の攻撃はやばかった。何故避けなかったかと言うと、そもそも避ける必要が無いからな。丁度リセットしたかったし。」
土埃が晴れる頃には傷も治り、砕けた骨もしっかりくっ付いていた。実はこれは従来の体内再生で治癒したのではなく、スキマの応用で治癒したのだ。傷と傷の周りの境界を無くし、そこに元々あった細胞を埋め込む。そうすれば何事も無かったかの様に、完全復活する事が出来る。簡単に言えば、別サイトから画像をコピーして、本書に貼り付ける事と同じだ。
敵の復活に動揺するも、八千慧と驪駒は再び弾幕を放って応戦する。だがフォースシールドで全て防がれ、驪駒の体術にも目が慣れてきてしまう。久々の組手だったが、劣っていなくて何よりだ。こうして八千慧と驪駒の体力を削っていくが、体力の無駄と感じた八千慧はスペルカードを唱えてきた。
龍符『龍紋弾』
円形の弾幕が辺りを包み、逃げ道を無くしていく。俺は動きを制限され、追い打ちに驪駒も混ざってきた。
亀符『亀甲地獄』
『小墾田宮誤踏』
連続スペルカードは珍しく、回避には困難を要する。弾幕が直撃し爆風が舞い上がり、衝撃を伝って瓦礫が粉々になっていった。驪駒は空中を舞い、爆風をかき分けて俺を探している。探している間、八千慧は、驪駒が何か独り言を言っている様に見えた。
「どうしました?見た感じですがかなりの損傷は与えた筈ですが。」
「いや、私の勘が言っているんだよ。あいつがこれで終わりとは思えない。交戦している時、明らかに初めから分かっていた感が出ていたし、何より私の攻撃を最小限に避けてたんだぞ。もしかしたら生きてるんじゃ……」
ご名答通り、俺は爆風から現れ、驪駒の喉元に刃をとおす。驪駒は村正を折ろうと手を伸ばすが、それより早く大動脈を切り離して地表に蹴ってやった。八千慧もこれには動揺して、弾幕の判断がワンテンポ遅れてしまう。その隙に後ろに回り込み、背中の甲羅目掛けてレールガンが火を噴く。八千慧はその場で倒れ、背中から血を流している。とどめを刺そうとするが、念の為遺言ぐらいは聞いてあげようと思い、プラズマキャノンにエネルギーを注ぎつつ話を聞く。
「人間は愚かな下等生物、動物霊にこき使われるだけでも光栄、その意識は、私を殺しても変わりません。そういえば一つ、貴方に弱点があるとすれば、その甘さですよ。」
八千慧からしたら精一杯の捨て台詞だが、俺からすればただの罵詈雑言、負け犬の遠吠えに過ぎない。だが吸収出来るものは一応貰っておこう。プラズマキャノンのエネルギーが完了し、先端が赫く光る。
不死『凱風快晴飛翔蹴』
突然の後頭部の攻撃に、龍陽も仰け反ってしまった。そこには藤原妹紅さん、少し遅れて私、魂魄妖夢も到着した。私は八千慧を見て絶句していたが、妹紅さんだけは龍陽を睨んでいる。
「やはり来て正解だったな。お前の主人はどうも勘がいいらしい。」
「幽々子様に言われてから、行動したまでです。妹紅さんと比べたら、私はまだまだ半人前です。」
確かに幽々子様の判断は正しかった。
龍陽の所に行く十三分前
「………やられたわ。」
幽々子は岩石地帯の爆風を見て、残夢達の敗北を察する。妖夢は残りの一体を片付け、幽々子の元に駆け付けた。いよいよ幽々子も冗談抜きで険しい顔つきになり、丁度近くにいた驪駒と八千慧を見つめている。
「妖夢、貴方は龍陽を足止めして頂戴。死にそうになったら手を挙げてね。直ぐに駆けつけるから。」
「幽々子様、それ歯医者の人が患者に向かって言うやつです。」
以前幽々子は食べ過ぎで歯がボロボロになり、歯医者に行った事を思い出し言ったのだろう。妖夢はそう解釈し適切なツッコミを入れるも、戦況は変わらない。それどころか岩石地帯から龍陽が出てき、八千慧、驪駒方面に向かっている。オロオロしている妖夢とは正反対に、幽々子は変わらない空を見上げていた。それは単に空を見上げたかったのでもなく、意味も無く見上げている訳でもない。
「来たわ。」
妖夢が空を見上げると、そこには炎を纏った鳥、不死鳥(フェニックス)と言う表現が正しいだろう。炎の翼は着地と同時に消えてしまったが、幽々子は予め妹紅が来ることを予想していた。因みに妹紅がこの戦いに参戦した理由としては、単純に暇だったから、らしい。
私は剣技で龍陽を引き付け、妹紅さんが盾になりながら順調に進んでいっている。龍陽は剣技で対応しているが、明らかに型が粗い。そこを逃さず妹紅さんは炎で集中砲火していった。龍陽は軽めに吹っ飛ばされ、ギリギリ仰け反らなかったが、ここで龍陽は剣先を土に向かせ、話しかけてくる。
「藤原妹紅、中級者。魂魄妖夢、上級者寄りの中級者ってとこかな。お前さん達は『道』を歩んでいるだけだ。基礎は出来ているのに折角鍛えた技がギャン泣きしているぞ。」
龍陽は、ポリポリ頭を掻きながら私達を評価してきた。確かに私の剣技は完璧では無い。でも妹紅さんは人間とはいえ、かなりの体術と火力を有している。それをあんな真顔で評価されては、妹紅さんも黙っていない。
「あれだけで私達を評価するとか、中々おめでたい奴だな。いいだろ、不死の力、とことん見せてやる!」
「駄目です妹紅さん!!ただの挑発に乗ってはいけません!」
私の声も虚しく届かず、妹紅さんは文字通り捨て身のタックルを仕掛ける。普通の人なら骨すら残らず灰塵となってしまうが、やはり妹紅さんの攻撃は効かず、しかもずっと押しているのにビクともしない。
龍陽の胸部の防具から、何やら機械音が聞こえ始めた。妹紅さんは依然威力を落とさず押し続けているが、それを無視するかのように機械は作動する。
「妹紅、お前さんは一から炎を鍛え直した方がいい。炎ってのは三段階に分けられ、赤い炎なんてのは基礎中の基の字だ。間にもう一つあるが、それを越した炎、『灰炎』(かいえん)とでも呼んでおこうか。まあでも俺に必殺技を使わせただけ誇れ。お前さんの再生力は厄介だから、こうして突っ込むのを待っていたんだ。そしてこれが間の炎…………『蒼炎』(そうえん)だ。」
胸部の機械からは、コアの様な物が出現し蒼い炎が漏れていた。妹紅さんは後ろに飛び、私に訴える。
「妖夢、危ない!自分の防御に徹底しろ!!!!!」
妹紅さんの炎に私は包まれ、私は戸惑いながらも防御の体制をとる。それと同時にチャージが完了し、私達の周りは蒼炎で覆われた。
『コアブラスト・モデル応龍』
「クソ!こいつら硬すぎる。」
「儂らの弾幕でも傷つけるのがやっとじゃしな。」
ぬえとマミゾウは幹部三機に苦戦していた。いくら弾幕を打っても、シールドで防がれるかアームを使って返されてしまう。終いには強酸ミサイル等、凶悪な兵器でぬえ達をどんどん追い詰めていく。一応里の住民は妖怪に戸惑いながらも、子狸達のお陰もあって無事に避難したようだ。しかし立て続けのミサイルやアームにより、次々と民家が破壊されていく。
「ハッハッハ、どうだ!これが幹部の力だ。お前達が幾ら弾幕を打っても効きやしない!この幻想郷も、もはや風前の灯火に過ぎないだろうな!」
「壊滅させてはいけません。私達の目的は、悪魔で力を示してやる事です。そう組長に言われたでしょう。」
「なに、軽いノリって奴さ。」
「…………………………………。」
ロボット達からはそれぞれの会話が交差し、今も尚ボケとツッコミが続いていた。一機のロボットを除いて。ぬえは話に夢中になっている間に、肩や膝小僧等の関節部分を狙うが、どれも効果は薄い。マミゾウもスペルカードで破壊を試みるが、やはりノーダメージだった。二人は屋根を屋根へと飛び交い思考を巡らせる。
(外部からの攻撃は無意味。破壊しようにもアームかミサイルで体力を削られる。あっちの無言のロボットはハンマーで広範囲の攻撃、及び肩の銃で狙撃される。とすれば………)
ぬえはまず、煙幕でUFOのような何かを出現させ、アーム付近に弾幕を集中砲火で引き付けた。その隙にぬえは三つある内の一つのアームに掴まり、軽い挑発をしてみる。
「その程度の弾幕で手こずるなんて、やっぱり貴方達は相当素が弱いんでしょうね。組長の顔が見てみたいわ。」
「何だと!?俺達の組長を馬鹿にするんじゃねぇ!!そんなに死にたいなら、お望みどおり黒焦げの焼肉にしてやる!!!!!!」
ぬえはアームから殴られ、空中でスタンした。そして一つのアームに捕まり、残りの二つは光球を帯びている。光球はみるみる巨大化し、高熱を放ち始めた。ぬえは逃げようとしたが、ガチガチに固定されて逃げられない。無慈悲にも光球は発射され、黒焦げの物が地面に落下していく。
「ぬえ!!」
「よし、まず一人!」
だがここで操縦席から、マムシんが違和感を抱く。黒焦げになったはずのぬえには手や足が無い。ヨシタカは気付いていない様だが、分析して拡大してみる。そしてある事に気付き、急いで回線を通してヨシタカに伝えようとした。
「ヨシタカ、あれはただの木です!!瓦礫の何処かにあった木か何かを、自分に似せた物に過ぎません!!」
「なんだって!?!?」
アームで遺体を回収したが、そこには正真正銘の黒焦げの木だ。モニターでそれを確認すると、背後からゲンコツを食らいそのまま意識を失っていった。操縦席には通信機能があり、それを使ってぬえは宣言する。
「私の能力、知っているでしょう。『正体を分からなくする程度の能力』。さっきの木に化けさせてまんまと引っかかってくれた訳。マミゾウにも一芝居打って貰ったわ。そしてあんた達の操縦席、首付近の入り口にあるでしょう。予告するわ、あんた達は、直接引きずり出してボコるってね!」
通信電話が切れると同時に、ぬえはヨシタカを連れて機会から出てきた。そしてロボットは爆発し、ただの鉄の塊になってしまった。
「まず一匹!」
マミゾウはヨシタカがぬえにノックダウンされたのを見た後、残りの二機に目を向ける。ぬえもマミゾウの隣に来て、いてぶてしいロボット二機を見つめる。
「さあ、あとふた踏ん張りよ。」
「そうじゃな。これ以上は里が崩壊しかねん。なるべく、早く済ませるぞ。」
「はぁ〜〜〜、これで一体何体目かしら。どんだけ組員が居んのよ。」
「ざっと千、いや五千ぐらいは超えてるだろうな。」
霊夢と魔理沙は相変わらず、組員を処理していた。今は組員だらけの更地も、少し前までは大勢の咆哮が鳴り響いていた連中だ。霊夢は傍の岩に腰掛け、ついでに魔理沙も転がっている組員を椅子にして座る。正直、霊夢にとってはストレス発散になったが、魔理沙にとってはただの雑魚処理と変わらず退屈していた。マスパで焼き払いたい気分だったが、他の連中諸元焼き払う可能性があったので止めておいた。今はようやく落ち着いた様で、こうしていつもの霊夢に戻ったのはいい事だ。そう思いながら魔理沙は椅子代わりにしていた組員から、バキバキと音を立てながら武器を剥がす。その組員が終わると、次から次へとパンのシールを乱暴に剥がす様に剥がしていった。その光景に流石の霊夢も呆れたらしい。
「アンタねえ、加減ってものを知らないの?そんな鉄クズ幾ら集めても使いこなせなかったら意味無いのよ。」
「いや、たまに魔法の実験で爆発した時の盾用さ。頑丈そうだし、ぶっちゃけ使い方が分かろうが、こいつの運命は変わらないぜ。」
作った人が可哀想と思いつつも半分ザマァと思い、霊夢は吹いてしまった。その顔を見て魔理沙も釣られて笑う。渾身のボケが受けたと思って。
二人で笑って居ると、魔理沙の後ろの背景が突然蒼い炎に切り変わる。
二人は笑うのを止めて様子を確認するとそこには龍陽がおり、妖夢と妹紅が火傷しているのが分かった。妖夢は守って貰った分ダメージは浅いが、妹紅はモロに食らって全身が黒焦げだ。
「よし、火力は申し分は無い。あいつらにも感謝しないとな。」
妹紅の再生には時間がかかる。そう判断した妖夢は楼観剣を抜き、構えの体制をとる。それを見た龍陽はスキマに村正を片付け、取り出したのは………なまくら刀だった。
「どういうつもりですか?去むべき相手に情けをかける気ですか?」
「なーに、ちょっとしたただの武士道精神って奴さ。」
互いに神経を張り巡らせ、周りの風の音すら無にする。そして石ころが崩れると同時に互いの刀が火花を散らした。
どこまで行けるのか今後がとても楽しみになりました