ぶっちゃけ、この能力は小町が言っていた通り本当に扱いづらい。三つ同時に出そうものなら、次の日は確定で筋肉痛になる始末。制御も難しく、何より炎と水のコンボには骨を折った。濃くなりすぎた水溶液を一滴一滴慎重に薄めていくように、少しでもミスると炎がすぐに鎮火されてしまう。だが数ヶ月による激しいトレーニング、ゲームのロード画面の時にも練習してきたので、今ではホイホイと使えるようになった。だがどんな兵器にも、どんな能力にも短所がある。数ヶ月使ってようやく分かりかけてきた。そう、身体の限界だ。俺は戦う時、常に体内に電流を走らせている。これは脳から送られる電気信号を早める為の、言わば加速レールの様なものだ。しかし、馬力のある車程、ボディがあったまる様にいつかは壊れてしまう。もちろん俺は承知済みだが、ここまで早いとは思ってもいなかった。
俺が動揺した隙に周囲は銀色のナイフに包まれ、俺は咄嗟に炎の壁を作りガードする。銀色のナイフはドロドロに溶けるが、そこには咲夜がいない。ザ・ワールド(時止め)にも対応出来そうだし、このまま行けば咲夜にも勝てる。そこで俺は思考を巡らせた。あれ程の猛者が同じ攻撃をし続けるのかと。再び時が止まると同時に、俺は時が止まった世界を見る。
「人間とはいえ、中々の強敵でした。だがお嬢様達には遠く及ばないし、何より貴方に明日は来ないのですから。」
咲夜は定位置に着くと、時計の様な物を取り出して時止めを解除しようとする。しかし時は止まったままであり、それどころかナイフは軌道とは逆方向に移動していた。咲夜は困惑しているが、それどころか咲夜自身の軌道さえも逆走していた。
「これが……王の鎮魂歌(キングレクイエム)αだ。相手の意志をゼロに戻す、どんな攻撃だろうとこれの前では無意味に等しい。」
とどめの斬撃を浴びせながら説明してやっているが、屍に返答は内無いようだ。
時止めが解除され再び時が進む。レミリアが目にしているのは、かつては旧友の仲であった友の亡骸だった。亡骸を抱え、レミリアはグングニルを取り出す。龍陽は空気が変わったのを察知し、村正を構える。
「咲夜は、本当に完璧なメイドだった。料理も美味しくて、掃除もホコリ一つ見逃さない、たまにスキンシップが激しいのがキズだったけど……
ここからは月が赤だろうが新月だろうが、本気で殺す。レミリア・スカーレットの名にかけて。」
龍陽はそれに応える様に、全身に炎を纏わせた。霊夢の目から見ても、二秒以内には矛先と刀身がぶつかる事が理解出来る。
レミリアはまず、龍陽に向かって弾幕を撃ちまくった。爆風で砂埃が舞うが、視界が晴れると同時に互いにインファイトで交戦している。龍陽はレミリアの後ろに周り首を切ろうとしてくるが、レミリアは奇跡的な反射神経で受け止める。だが追撃の弾幕は、スキマを利用してあっさり回避されてしまった。距離を取ろうと龍陽はスキマで逃げるが、逃げた先にはレミリアが待機しており、グングニルの一撃を受けてしまう。体制を崩したのを機に、レミリアは龍陽の体に無数の斬撃と弾幕を浴びせる。体中から大量の血が飛び出るが、それには目もくれずレミリアは追撃を続ける。
「フンッ、所詮はただの人間、家畜の様に一生を迎える貴方には正直驚かされたわ。でも咲夜のためにも、こうしてきっちりとどめを刺しておかないとね!」
「………………うるせえ。」
突然レミリアは濡れたスポンジを捻り潰す様に、ひしゃげてしまった。顔も手も足も全てが潰れていき、最終的に手のひらサイズの黒い球体の死体になる。
「お姉様、…………?」
フランの言葉を気にせず、龍陽はその球体を食べてしまった。
だが飲み込むと同時に何者かが、龍陽の眉間に蹴りをいれる。龍陽はそのまま吹っ飛ばされ、岩石地帯に向かっていった。そう、何処ぞのブロッコリーがベジタブルを叩きつける様に(DB参照)。蹴った張本人は素っ頓狂な顔で、吹っ飛ばした軌跡を眺める。
「あら、案外手加減無しでもあのくらいは飛ぶのね。さてと、私達も始めましょうか。」
そこには茨木華扇、星熊勇儀、そして酔い潰れた伊吹萃香までいた。それぞれの戦闘能力が高く、加えて鬼の四天王ということもあり、その威厳は別格だ。勇儀は霊夢達に取り巻きの処理を任せ、手に持っていた盃の酒を飲み干す。華扇は龍陽を吹っ飛ばした時のおおよその位置を特定し、萃香を引っ張っていく。三人が出発しようとすると、後方から参戦の声が聞こえてきた。
「奇遇じゃな。儂らも混ぜておくれよ。」
残無の後ろには三頭慧ノ子、天火人ちやり、孫美天、豫母都日挟美までおり、これだけの面子が現れるということは、余程の事態ということを魔理沙は再認識した。よって計八人で龍陽の吹っ飛ばした方向に向かって行く。八人が向かって行った後、取り巻きを処理しながら妖夢は幽々子に質問する。
「幽々子様、大丈夫だとは思うんですけど……もし負けたらどうなるんですか?」
「そうねえ〜、最悪私達も死んじゃうかもしれないわ。既に死んでいるけど。」
俺は現在、吹っ飛ばされたせいで岩に埋没している。一応ガードはしたつもりだったが、俺を岩石地帯まで吹っ飛ばすという事はおそらく伊吹萃香か星熊勇儀ぐらいだろう。だが俺の推測は外れ、埋没から脱出して目の前にいたのは茨木華扇だった。その後ろには伊吹萃香、星熊勇儀、そして、
「残無さんか。実物は初めてだな。」
「初めまして。畜生に育てられた人間よ。」
確か仲間の報告には大丈夫という内容だったが、事が大きくなり過ぎて呼び出されたか。それとも自主的に来たのか。どっちにしろ俺は向かうべき真実に対して、服についた土埃を払いながら見つめる。
「お前さん達には……こいつを使おうか。」
俺は胸ポケットから一丁の拳銃を取り出す。それは、仲間の一部が作ってくれた特注の拳銃だ。奴らに銃口を向け、俺は有名なインディーゲームの二次創作のセリフを言う。
「そう身構えるな。これからお前さん達を……蜂の巣にするだけさ。」
俺はトリガーを引いて発砲する。奴らは別々の方向に避けていくが、そんな事は関係ない。これは悪魔で『必中』だからだ。勇儀の足を見るとスコープの様なマークが付いており、同様に七人全員に肩、腕、脇腹にマークが付いている。全て付いているのを確認すると、四方から銃弾が交差して奴らの部位に向かっていく。華扇と残無は紙一重でかわされるが、慧ノ子、ちやり、美天、日挟美、萃香、勇儀には正確に当たったので良しとしよう。華扇は拳法でゴリ押し、残夢は槍を使って回復の時間を稼いでいる。俺は後方に後さずるが、回復を終えた勇儀が弾幕を置いていた。俺は咄嗟に避けるが、慧ノ子が設置したトラバサミにかかってしまい両足を固定されてしまう。固定された後、萃香は巨大化し俺の事を踏み潰す。俺はスキマを使って回避し、トラバサミを取り除く。続いて美天が如意棒っぽい物で牽制し、勇儀が大岩を投げてくる。大岩は命中するが斬撃によってバラバラになっていく。大岩はどんどん投げられるが、その大岩をつたって俺は勇儀に斬りかかる。しかし背後に現れた日挟美とちやりに阻止され、ついでに血も取られて出血してしまった。足場の悪い所に着地し、残夢も一際高い足場に着地する。
「お主、その力どこで手に入れたんじゃ?」
「うちの仲間の研究と努力の成果さ。細胞とDNAを分析して能力の研究を始め、後は発端を理解し注入すれば晴れて能力が使えますって事。要は他人のクーポン券を複製して、商品を買うみたいな事と同じ。」
「いくらクーポン券でも期限があるように、その力にも制限はあるじゃろう。」
その通りであり、この能力にも制限が存在する。まず、本物と比べて100%の力は出せない。出せない事は無いが、体力を激しく消耗するので極力避けたいところだ。次に長い時間は使えない。二十四時間マラソンの様に、発動時間には三分という短い時間しか使う事が出来ず、長く使うとマラソンを完走したようなどっとした疲れが出てくる。
これらの条件はスキマの能力とは相性が良く、基地内ではよく使っていた。しかし戦場では連続的に使う為、いよいよタイムリミットが刻一刻と迫ってくるのを実感する。体力も底を尽きかけ、フラついたのを四人は逃さなかった。
鬼神『ミッシングパワー』
鬼符『鬼気狂瀾』
龍化符『ドラゴンズエイリアンカプセル』
『亡羊のキングダム』
一気に大技をくらい、地面が抉れる。更に追い打ちをかけるように、スペルカードを唱える。
猿撃『モンキーマジック』
三頭『ケルベロスファイア』
呪血『カーストデビル』
執行者『脱獄ストーカー』
全員からの猛攻を受け、俺は血まみれになり服もボロボロになってしまった。お気に入りの服だったんだがな。
「最後のチャンスじゃぞ。悪行を悔い、紫を解放するなら止めてやろう。だが続けるつもりなら、お主を殺さねばならん。十秒待ってやるから、いい返事がかえってくることを祈るぞ。」
「流石残夢様!敵を圧倒しつつも慈悲を投げかけるその優しさ。そして警戒心も解かずに魅せるそのカリスマ性。全てが欠けても最高ですわ!!是非とも私にもその圧をy」
「おいおい、どさくさに紛れて変態がいるぞ。」
俺は、傷だらけの満身創痍の体を見て思う。こんなにも傷を負ったのは久々だ。これだけの精鋭は、畜生界でもかなりレアケースな部類だろう。本当はちゃっちゃと倒してブラウン達の元に行きたいのだが、出し惜しみで負けてしまっては元も子もない。
俺はある物を取り出すように、黒い煙で体を包む。それと同時に四方八方から弾幕が炸裂し、誰から見ても分かるように大きな爆風が舞った。だが、俺は爆風とは別方向に佇んでいる。両腕にはフォースシールドの上にブラスターとプラズマキャノンが二丁ずつ、背中には両翼のジェットパック、肩にレールガンを装填した。そう、紫を倒した時の装備であり、これで危機を凌ぐことが出来る。
「プラズマキャノン15%、ブラスター10%、レールガン発砲準備、デュアルバズソー展開。」
プラズマキャノンとブラスターにエネルギーが集まり、赤く輝く。背中からは黒い煙からアームが登場し、先端には丸鋸が付いている。慧ノ子と美天は何かされる前に攻撃して来ようとしてくるが、もう遅い。エネルギーを集中させたプラズマキャノンとプラズマからは赤々とした光球が放たれ、二発とも命中し二人はそのまま亀裂の入った岩陰に落ちていった。続けて弾幕が飛んでくるが、光球の連射により全てかき消される。そして奴らの足場が崩れた隙に、俺はスペルカードを唱えた。
『鋼牙の刺突』
一直線に突進し、奴らの体を抉りとる。その際横に逃げられないよう、レジェンドブレイカーのレーザーで制限した。そしてレーザーで日挟美を倒し、次に萃香に刺突を当てる。だがギリギリで防御した様で意識はあるが、そのまま先刻の俺の様に吹っ飛ばされた。攻撃が終わるとすぐさま自分を炎で包み、勇儀の打撃を軽減する。かなりキツイげんこつだったが、フードごしとはいえ少量の出血で済んだ。背後からは華扇が迫っており、スペルカードを唱えている。だが見え見えの殺気に気づかないほど、俺は⑨(バカ)ではない。全身に纏わせた炎を左拳に集中させ、スペルカードと同時に衝突する。
龍符『ドラゴンズグロウフ』
『炎皇』
拳と拳が衝突し、岩石地帯の岩が崩落した。押し負けたのは華扇だったようで、勇儀諸元倒れている。
残夢はいつの間にか横に立っており、弾幕の準備をしていた。
「やはり早急に殺しておくべきじゃったな。もうお前さんを人間とは思わん、一人の殺人鬼として、『妖怪』として殲滅してやろう。」
残夢は部下を傷つけられてご立腹だ。鬼神の様な顔に関係なく、俺はいつも通りの普通の顔で答える。
「あの日、俺は畜生として生きると決めたんだ。別に命が惜しい訳じゃない。俺は妖怪として、畜生として奴らの願いを叶える。そのためならこの身投げ出しても構わない。」
肩のレールガンが銃撃音とともに、残夢の心臓を撃ち抜く。そして残夢の弾幕は、虚しくも当たることなく消えてしまった。
「虚無の中でじっとしておいてくれ、残夢さん。」
俺が動揺した隙に周囲は銀色のナイフに包まれ、俺は咄嗟に炎の壁を作りガードする。銀色のナイフはドロドロに溶けるが、そこには咲夜がいない。ザ・ワールド(時止め)にも対応出来そうだし、このまま行けば咲夜にも勝てる。そこで俺は思考を巡らせた。あれ程の猛者が同じ攻撃をし続けるのかと。再び時が止まると同時に、俺は時が止まった世界を見る。
「人間とはいえ、中々の強敵でした。だがお嬢様達には遠く及ばないし、何より貴方に明日は来ないのですから。」
咲夜は定位置に着くと、時計の様な物を取り出して時止めを解除しようとする。しかし時は止まったままであり、それどころかナイフは軌道とは逆方向に移動していた。咲夜は困惑しているが、それどころか咲夜自身の軌道さえも逆走していた。
「これが……王の鎮魂歌(キングレクイエム)αだ。相手の意志をゼロに戻す、どんな攻撃だろうとこれの前では無意味に等しい。」
とどめの斬撃を浴びせながら説明してやっているが、屍に返答は内無いようだ。
時止めが解除され再び時が進む。レミリアが目にしているのは、かつては旧友の仲であった友の亡骸だった。亡骸を抱え、レミリアはグングニルを取り出す。龍陽は空気が変わったのを察知し、村正を構える。
「咲夜は、本当に完璧なメイドだった。料理も美味しくて、掃除もホコリ一つ見逃さない、たまにスキンシップが激しいのがキズだったけど……
ここからは月が赤だろうが新月だろうが、本気で殺す。レミリア・スカーレットの名にかけて。」
龍陽はそれに応える様に、全身に炎を纏わせた。霊夢の目から見ても、二秒以内には矛先と刀身がぶつかる事が理解出来る。
レミリアはまず、龍陽に向かって弾幕を撃ちまくった。爆風で砂埃が舞うが、視界が晴れると同時に互いにインファイトで交戦している。龍陽はレミリアの後ろに周り首を切ろうとしてくるが、レミリアは奇跡的な反射神経で受け止める。だが追撃の弾幕は、スキマを利用してあっさり回避されてしまった。距離を取ろうと龍陽はスキマで逃げるが、逃げた先にはレミリアが待機しており、グングニルの一撃を受けてしまう。体制を崩したのを機に、レミリアは龍陽の体に無数の斬撃と弾幕を浴びせる。体中から大量の血が飛び出るが、それには目もくれずレミリアは追撃を続ける。
「フンッ、所詮はただの人間、家畜の様に一生を迎える貴方には正直驚かされたわ。でも咲夜のためにも、こうしてきっちりとどめを刺しておかないとね!」
「………………うるせえ。」
突然レミリアは濡れたスポンジを捻り潰す様に、ひしゃげてしまった。顔も手も足も全てが潰れていき、最終的に手のひらサイズの黒い球体の死体になる。
「お姉様、…………?」
フランの言葉を気にせず、龍陽はその球体を食べてしまった。
だが飲み込むと同時に何者かが、龍陽の眉間に蹴りをいれる。龍陽はそのまま吹っ飛ばされ、岩石地帯に向かっていった。そう、何処ぞのブロッコリーがベジタブルを叩きつける様に(DB参照)。蹴った張本人は素っ頓狂な顔で、吹っ飛ばした軌跡を眺める。
「あら、案外手加減無しでもあのくらいは飛ぶのね。さてと、私達も始めましょうか。」
そこには茨木華扇、星熊勇儀、そして酔い潰れた伊吹萃香までいた。それぞれの戦闘能力が高く、加えて鬼の四天王ということもあり、その威厳は別格だ。勇儀は霊夢達に取り巻きの処理を任せ、手に持っていた盃の酒を飲み干す。華扇は龍陽を吹っ飛ばした時のおおよその位置を特定し、萃香を引っ張っていく。三人が出発しようとすると、後方から参戦の声が聞こえてきた。
「奇遇じゃな。儂らも混ぜておくれよ。」
残無の後ろには三頭慧ノ子、天火人ちやり、孫美天、豫母都日挟美までおり、これだけの面子が現れるということは、余程の事態ということを魔理沙は再認識した。よって計八人で龍陽の吹っ飛ばした方向に向かって行く。八人が向かって行った後、取り巻きを処理しながら妖夢は幽々子に質問する。
「幽々子様、大丈夫だとは思うんですけど……もし負けたらどうなるんですか?」
「そうねえ〜、最悪私達も死んじゃうかもしれないわ。既に死んでいるけど。」
俺は現在、吹っ飛ばされたせいで岩に埋没している。一応ガードはしたつもりだったが、俺を岩石地帯まで吹っ飛ばすという事はおそらく伊吹萃香か星熊勇儀ぐらいだろう。だが俺の推測は外れ、埋没から脱出して目の前にいたのは茨木華扇だった。その後ろには伊吹萃香、星熊勇儀、そして、
「残無さんか。実物は初めてだな。」
「初めまして。畜生に育てられた人間よ。」
確か仲間の報告には大丈夫という内容だったが、事が大きくなり過ぎて呼び出されたか。それとも自主的に来たのか。どっちにしろ俺は向かうべき真実に対して、服についた土埃を払いながら見つめる。
「お前さん達には……こいつを使おうか。」
俺は胸ポケットから一丁の拳銃を取り出す。それは、仲間の一部が作ってくれた特注の拳銃だ。奴らに銃口を向け、俺は有名なインディーゲームの二次創作のセリフを言う。
「そう身構えるな。これからお前さん達を……蜂の巣にするだけさ。」
俺はトリガーを引いて発砲する。奴らは別々の方向に避けていくが、そんな事は関係ない。これは悪魔で『必中』だからだ。勇儀の足を見るとスコープの様なマークが付いており、同様に七人全員に肩、腕、脇腹にマークが付いている。全て付いているのを確認すると、四方から銃弾が交差して奴らの部位に向かっていく。華扇と残無は紙一重でかわされるが、慧ノ子、ちやり、美天、日挟美、萃香、勇儀には正確に当たったので良しとしよう。華扇は拳法でゴリ押し、残夢は槍を使って回復の時間を稼いでいる。俺は後方に後さずるが、回復を終えた勇儀が弾幕を置いていた。俺は咄嗟に避けるが、慧ノ子が設置したトラバサミにかかってしまい両足を固定されてしまう。固定された後、萃香は巨大化し俺の事を踏み潰す。俺はスキマを使って回避し、トラバサミを取り除く。続いて美天が如意棒っぽい物で牽制し、勇儀が大岩を投げてくる。大岩は命中するが斬撃によってバラバラになっていく。大岩はどんどん投げられるが、その大岩をつたって俺は勇儀に斬りかかる。しかし背後に現れた日挟美とちやりに阻止され、ついでに血も取られて出血してしまった。足場の悪い所に着地し、残夢も一際高い足場に着地する。
「お主、その力どこで手に入れたんじゃ?」
「うちの仲間の研究と努力の成果さ。細胞とDNAを分析して能力の研究を始め、後は発端を理解し注入すれば晴れて能力が使えますって事。要は他人のクーポン券を複製して、商品を買うみたいな事と同じ。」
「いくらクーポン券でも期限があるように、その力にも制限はあるじゃろう。」
その通りであり、この能力にも制限が存在する。まず、本物と比べて100%の力は出せない。出せない事は無いが、体力を激しく消耗するので極力避けたいところだ。次に長い時間は使えない。二十四時間マラソンの様に、発動時間には三分という短い時間しか使う事が出来ず、長く使うとマラソンを完走したようなどっとした疲れが出てくる。
これらの条件はスキマの能力とは相性が良く、基地内ではよく使っていた。しかし戦場では連続的に使う為、いよいよタイムリミットが刻一刻と迫ってくるのを実感する。体力も底を尽きかけ、フラついたのを四人は逃さなかった。
鬼神『ミッシングパワー』
鬼符『鬼気狂瀾』
龍化符『ドラゴンズエイリアンカプセル』
『亡羊のキングダム』
一気に大技をくらい、地面が抉れる。更に追い打ちをかけるように、スペルカードを唱える。
猿撃『モンキーマジック』
三頭『ケルベロスファイア』
呪血『カーストデビル』
執行者『脱獄ストーカー』
全員からの猛攻を受け、俺は血まみれになり服もボロボロになってしまった。お気に入りの服だったんだがな。
「最後のチャンスじゃぞ。悪行を悔い、紫を解放するなら止めてやろう。だが続けるつもりなら、お主を殺さねばならん。十秒待ってやるから、いい返事がかえってくることを祈るぞ。」
「流石残夢様!敵を圧倒しつつも慈悲を投げかけるその優しさ。そして警戒心も解かずに魅せるそのカリスマ性。全てが欠けても最高ですわ!!是非とも私にもその圧をy」
「おいおい、どさくさに紛れて変態がいるぞ。」
俺は、傷だらけの満身創痍の体を見て思う。こんなにも傷を負ったのは久々だ。これだけの精鋭は、畜生界でもかなりレアケースな部類だろう。本当はちゃっちゃと倒してブラウン達の元に行きたいのだが、出し惜しみで負けてしまっては元も子もない。
俺はある物を取り出すように、黒い煙で体を包む。それと同時に四方八方から弾幕が炸裂し、誰から見ても分かるように大きな爆風が舞った。だが、俺は爆風とは別方向に佇んでいる。両腕にはフォースシールドの上にブラスターとプラズマキャノンが二丁ずつ、背中には両翼のジェットパック、肩にレールガンを装填した。そう、紫を倒した時の装備であり、これで危機を凌ぐことが出来る。
「プラズマキャノン15%、ブラスター10%、レールガン発砲準備、デュアルバズソー展開。」
プラズマキャノンとブラスターにエネルギーが集まり、赤く輝く。背中からは黒い煙からアームが登場し、先端には丸鋸が付いている。慧ノ子と美天は何かされる前に攻撃して来ようとしてくるが、もう遅い。エネルギーを集中させたプラズマキャノンとプラズマからは赤々とした光球が放たれ、二発とも命中し二人はそのまま亀裂の入った岩陰に落ちていった。続けて弾幕が飛んでくるが、光球の連射により全てかき消される。そして奴らの足場が崩れた隙に、俺はスペルカードを唱えた。
『鋼牙の刺突』
一直線に突進し、奴らの体を抉りとる。その際横に逃げられないよう、レジェンドブレイカーのレーザーで制限した。そしてレーザーで日挟美を倒し、次に萃香に刺突を当てる。だがギリギリで防御した様で意識はあるが、そのまま先刻の俺の様に吹っ飛ばされた。攻撃が終わるとすぐさま自分を炎で包み、勇儀の打撃を軽減する。かなりキツイげんこつだったが、フードごしとはいえ少量の出血で済んだ。背後からは華扇が迫っており、スペルカードを唱えている。だが見え見えの殺気に気づかないほど、俺は⑨(バカ)ではない。全身に纏わせた炎を左拳に集中させ、スペルカードと同時に衝突する。
龍符『ドラゴンズグロウフ』
『炎皇』
拳と拳が衝突し、岩石地帯の岩が崩落した。押し負けたのは華扇だったようで、勇儀諸元倒れている。
残夢はいつの間にか横に立っており、弾幕の準備をしていた。
「やはり早急に殺しておくべきじゃったな。もうお前さんを人間とは思わん、一人の殺人鬼として、『妖怪』として殲滅してやろう。」
残夢は部下を傷つけられてご立腹だ。鬼神の様な顔に関係なく、俺はいつも通りの普通の顔で答える。
「あの日、俺は畜生として生きると決めたんだ。別に命が惜しい訳じゃない。俺は妖怪として、畜生として奴らの願いを叶える。そのためならこの身投げ出しても構わない。」
肩のレールガンが銃撃音とともに、残夢の心臓を撃ち抜く。そして残夢の弾幕は、虚しくも当たることなく消えてしまった。
「虚無の中でじっとしておいてくれ、残夢さん。」
そろそろ物語も終盤でしょうか
最後まで走り切ってほしいです