Coolier - 新生・東方創想話

第12話 開始のコングと博士の言葉

2024/08/19 23:09:39
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奴らの方向を見て、血に染った刃を向ける。それと同時に霊夢はお祓い棒を構え、質問を投げる。
「アンタが紫を攫ったの?何故?何のために?」
「うーん、まあ世直しと改革が主な二つかな。」
そう、と同時に霊夢は俺の懐に潜り込み、陰陽玉をぶつけてくる。俺は回避するが、右手と左頬に傷を負ってしまった。その傷を気にする間もなく、霊夢はインファイトで詰めてくる。やはりこの巫女は勘がいい。俺に弾幕が通じない事を見抜き、接近戦に持ち込みやがった。更には後ろで弾幕での援護により動きが制限されるので、この上厄介な事は無い。俺は引き続き回避しているが、回避先に結界を張られてしまい動けなくなった。
「確かに上等な結界術だ。しかし……」
俺は体に炎を纏わせ、縛っていた御札を燃やす。霊夢は殺意を込めて攻撃するが、目が慣れてきたのであっさり回避されてしまう。
目も慣れたので攻撃に転ずるかと思ったが、ここで俺は仲間から通信で吉報を得る。それは、例の試作品が完成したという報告だ。完成した試作品にはヨシタカとマムシん、ブラウンが搭乗して、例の場所に向かっているらしい。俺は攻撃をやめ、霊夢達に忠告する。
「とても勢揃いのメンツだが、自分達の住処を野放しにするのは疎かじゃないか?」
「はあ?何言ってんだ。」
「百聞は一見にしかず、さ。」
俺はスキマを利用して、奴らの脳内にライブ中継をする。



そこに映るのは、必死に逃げる里の人達であり、動物霊が銃を構えて追ってきている。人々は恐怖に取り憑かれ、逃げる間もなく次々と拘束されていった。銃口が小さな子供を捉えた時、数匹の影が動物霊を拘束する。その正体は狸であり、店の玄関からは二ッ岩マミゾウが出てきた。
「全く、最近ようやく動物霊が落ち着いたと思えば今度はなんじゃ。無差別拉致に若い芽を摘むつもりか?本当に畜生界は野蛮な奴らが多いのう。ほれ、嬢ちゃん。あっちに逃げなさい。」
そう言ってマミゾウは囚われた里の人を解放して行くが、中部付近で思いも寄らない出会いをする。
「マミゾウ!?アンタも来ていたの!?」
「そう言うお主こそ、命蓮寺を守らなくて良いのかの?」
思いも寄らない出会いとは封獣ぬえのことであり、二人とも互いの出会いに驚愕している様だ。封獣ぬえと二ッ岩マミゾウは古くからの友人であり、互いに意気投合していた時期もあったぐらいだったが、この展開は予想出来なかったらしい。
ぬえとマミゾウは襲ってくる動物霊をなぎ払いながら、状況を整理している。向かう先は二ッ岩商店だが、取り巻きが多いせいで三十分以上かかってしまった。着く頃には店内は避難した人でいっぱいで、二人は従業員専用の部屋に移る。
「はて、霊夢達はこれ以上を相手しているのかのう。だとすれば相当深刻な事態じゃぞ。」
「聖姐さんからは断られちゃったけど、やっぱ居て正解だったわ。今は邪仙が見張っているからいいけど、またいつ来るか分からない。」
ぬえは天狗の新聞を見ながらため息をつく。その見出しには
『幻想郷の賢者拉致! この世の終わりか!?』
と大文字で記載され、妖怪専用なこともあったので人間の耳に入る事は無かった。だがこの状況では関係なく、人間達も異変に気が付いた様だ。
店内は大パニックに陥り、騒ぎ立てる人もいた。
「何なんだよ、せっかく動物霊が落ち着いたって言うのに。これじゃあ商売も出来ないじゃないか!」
「落ち着け。俺達には博麗の巫女がいるじゃないか。きっとすぐ治まるさ。」
すると突然ズシン、ズシンと地響きが始まり、爆風が起きたと思えば店は木っ端微塵になっていた。
「人間共、諦めて我々に従え!さもなくば辺り一面を火の海と化すぞ!」
そこに現れたのは三機の大型ロボットであり、妖怪の山より大きいことが分かる。一体は三本の大きなアームを装着しており、もう一体はスピーカーと触手の先にあるレーザー砲で民家を破壊している。残りの一体は人型のロボットで手にレールガン、肩に砲台、もう片手にはハンマーなどの武器が備えられている。無情にもロボット三機はぬえとマミゾウを見るなり、射撃や強酸性のミサイルを撃っていく。



映像が終わると霊夢達は俺が元いた方向を向く。だがそこに俺はおらず、背後にいた事を気付かれる。
「今日は素敵な日だ。いつものように計画を練って、リラックスし、そしてこんな猛者達と出逢えた。」
俺は一歩一歩散歩をするように、奴らに話しかける。だが話が長かったのか、聞く気が無かったのかはさておき、フランが剣を振りかざしてきた。避けながらも俺はあの名言を言う。有名なインディーゲームのキャラのセリフだが、この場所、この時こそ言うのがぴったりだ。
「こんな日に、お前さん達みたいな奴らは………」
セリフに夢中になりすぎたためか、全方位からの弾幕が俺を包む。しかしそんな事は知ったことでは無い。村正で相殺し、今は亡き左目で奴らを見つめる。
「絶望の底に堕ちるのが相応しい。」
開戦の合図と共に、それぞれがスペルカードを唱える。
霊符『夢想封印』
恋符『マスタースパーク』
人鬼『未来永劫斬』
やはり三つ以上の弾幕は高密度で、回避先がない。あと数秒もすればもろにくらうだろう。だが如何なる時でも、自分の道は自分で切り開かなければならないのだろう。俺もスペルカードを唱え、身構えるとしよう。
処符『初見殺しセット』
スペルカードを唱えたと同時に、レジェンドブレイカーが辺りを覆い尽くし、四角、十字、X字とランダムに射出される。たちまちスペルブレイクしていき、追加で霊夢の左肩にレーザーを当てることに成功した。
「変わっちまったな、龍陽。あの頃はまだ慈悲深くて好きだったんだが。」
「誰のせいだと思っているんだ。」
驪駒は優雅にジャンプし、ライダーキックを入れてくる。俺は腕で防御し、そのまま足を掴んで八千慧の方向に投げた。一息入れる暇もなく聖と星が突っ込んで来て、霊夢も混ざり三対一の近距離ファイトになった。
戦いの最中ふと思う。確かに少しは変わったなと。剛欲同盟に入りたては情熱のように燃え盛っていた炎も、今では灰色の炎になっており、青々とした水も、色を失い水溶液ではなくなった。電気も黄色ではなく白になっていたので、少しどころか大分変わった気もする。体術も能力も上がる一方で、俺は何かを失っている様にも感じた。従来の人間には絶対にあり、自殺前の俺が持っていたもの。はっきりとは分からないが、段々と薄れてきている様な。まるで噛めば噛む程、味が薄くなっていくガムの様な感じだ。だがそれに比例するかの様に、体術や能力、弾幕だって少しは出来るようになった。しかしどれだけの鍛錬を積んでも、こうして戦っている時でさえ思ってしまう。まさかとは思うが、博士と一緒に見たあの光景のせいなのか。それとも、まだ自殺した時の気持ちが蘇ってきたのか。追求したい気持ちは山々だが、今は目の前の事に集中するとしよう。戦闘中に考え事にふっけるのは良くないからな。



霊夢達が交戦している間、永琳は岩陰で饕餮の治療に手こずっていた。切り傷の損傷が激しく出血も酷いため、むやみに動かせば例え剛欲同盟の長と言えど危険な状態になるかもしれなかった。だが止血と縫合が終わりようやく一息ついている。一息ついたら自分も戦いに参戦しようと思っていたが、ここで一つ不可解な点を考えた。
「それにしても、あの兵器は何処から持ち出したのかしら。月の連中が、手を貸すとは思えないけど。」
「それは私だよ。」
突然背後から話しかけられたので、永琳は後さずりする。その男は黒いコートに白ネクタイ、両目に傷が着いており、黒い目は全てを飲み込まんとする様に焦点が無かった。永琳はすぐさま身構えるが、男は構える気配が無い。どうやら争うために来たようではなさそうだ。男は傍にあった石を浮遊させながら話してくる。
「彼らの武器開発に協力したのは私だ。ご最も、私は人前は嫌いでね。こうやって、意思を集めて形として話すのが精一杯だが。」
永琳は話を聞きながらも、警戒心を解いていない。もしこの黒コートの男の言っている事が本当ならば、月の技術力を遥かに凌ぐ高度な戦術があるかもしれないからだ。永琳の頬に冷や汗が垂れると、男は気付いた拍子にこんな事を言い始めた。
「何故協力したのか、不思議そうな顔だね。それは…………」
突如、男の胸部に刀が現れ、男は話すのをやめる。刀は男の心臓部位を貫き、刺した本人は永琳とはかけ離れた存在だった。
「あら、豊姫、依姫、久しぶりじゃない。」
「あの紫がやられたのでしょう。私達も参加するのは、おかしな話しではないでしょう。」
実際、紫は月に月面戦争を仕掛けた張本人でもあったので、紫の強さは痛いほど知っている。そのためこの異変を聞き逃す程月の連中も黙っておらず、全力でぶつかり合う事を決意していた。永琳は思わぬ増援に喜びながらも、饕餮の意識が戻った事に気付き、手当を続行する。だが饕餮は
「ワリイ、少し寝る」と言って寝てしまった。更に後ろからは、玉兎の兵士が続々と駆けつけ銃や盾を持っている。
「いいかみんなー!博麗の巫女側を全力でサポートするぞー!!!」
「オォオォオォオォーーー!!!!!!!」
意気込みは十分だ。早速玉兎達が目指す敵、空蝉龍陽のいる戦場へ羽ばたいた。
だがその途端、三人は急激な圧に押し潰されそうになった。蛇に睨まれた蛙、鷹の前の雀、猫の前のネズミ、どれもこの状況を表すのには足りない。玉兎達は圧に耐えきれず次々と倒れていき、結果誰一人戦場に向かう事はなかった。
「一体何が、…………そしてこの圧は、………………」
「やはりあの子は、私の期待を裏切らない。本当にとても興味深いよ。」
パチパチと拍手をしているのは、先程依姫に刺されたはずの黒コートの男だった。万遍の笑みで拍手をしているが、胸の傷はついたままで動けないはず。だがその男は出血もせず、苦しむ様子もなく佇んでいる。
「言っただろう、私は意志の集まりだと。意志の集まりである私に攻撃は効かない、ましてや干渉する事さえ難しいだろう。さて、彼は本当に成長した。私を凌ぐ程にも、半径1kmの敵を殲滅できる程、今私はかつてない好奇心にそそられているよ。」
男は永琳達の周りを迂回するように話しかける。先程攻撃してこなかったのは、しないのではなく、出来なかったからだろうと永琳は結論づけた。圧が解けると同時に、依姫は素早く神降ろしを行い攻撃を試みる。しかし攻撃は空を裂き、気が付いたら依姫は元にいた位置に戻っていた。
「おっと、長話をするのは悪い癖だ。早急に失礼するとしよう。それと………………」
男は塵となって消えかかっているが、何かを言いたげな顔だ。それは遺言の様にも捉えられたし、怨嗟の様にも感じた。だが男から発する声には、何かを託すような声色に感じられる。
「私が彼のどこに興味を持っているかと言うと、それは…………限り無い喪失感と劣等感、自尊心の低さ。この三つのうち一つが欠けても、彼は強くなって行くだろう。後は彼がどうやって『ケツイ』を掴むかだ。」
男は完全に消え、そこには塵どころか何も残っていない。ただ荒野の風がそこにあったホコリを運ぶだけだった。



多くの疑問が残るが、それでも前に進まなければならない。そう悟った豊姫は依姫と永琳に話しかける。
「もしあの圧が敵だとしたら、地獄の女神かそれ以上ね。気を付けて行きましょ。」
「ええ、うちの弟子たちも一筋縄ではいかないでしょう。」
「姉様。ここは饕餮を連れて早く戦場に向かいましょう。」
三人は饕餮を抱え、何も残らない荒野を走る。



霊夢は魔理沙と二人がかりで隙を作り、早苗が背中に弾幕を浴びせる。しかし男が炎を纏い、弾幕は全て正確に三人を弾き返した。続いてレミリアとフランも仕掛けるが、結果は何一つ変わらない。
「まさかもう終わりじぁ、ないよな。まだ摩多羅隠岐奈や星熊勇儀、茨木華扇とも戦ってないし。まだピンピンしてるだろ…………」
突然話をやめ男は手を口にあて、咳をする。男は抑えた手を見て、少し驚く。その手には赤々とした液体があり、今も手のひらからポタポタと落ちている。
「………………ようやくか。」
最近夏休みが三日しかない事に気付き、萎えてしまいました。よろしければ評価とコメントをお願いします。
(/∀\;;)オネガイシマスッ
追伸 夏休みが終わった時の顔ノ°(6ᯅ9)
SABAMESI
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