Coolier - 新生・東方創想話

寅丸星の憂鬱

2022/12/31 17:25:58
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〈虎&兎〉

「大黒天様のお手伝い?」
「はい。しばらくお暇をいただきます」

ナズーリンが出し抜けに申し出たのは、年末年始の商戦に向けて何かと忙しい師走の初めだった。例年通りナズーリンにも寺の手伝いを頼もうと思った矢先だったため、星は出鼻をくじかれる。

「どうして急に大黒天様が出てくるの?」
「それがですね」

ナズーリンの本来の主人・毘沙門天と大黒天は同じ七福神のよしみで付き合いが長い。大黒天もまた鼠を使いとしているのだが、急な伝染病で使い達がバタバタと死んでしまったらしい。代わりの使いが見つからず、大黒天は仕事が回らなくなり、困って毘沙門天に相談を持ちかけたそうだ。

「それで貴方がお使いに行くのね」
「毘沙門天様からお前なら不足はないだろうと太鼓判を押されましてね」

ナズーリンは鼻をひくひくさせる。実力を買われて得意なのだろう。
星は大黒天に同情を寄せる。多忙な毘沙門天には星だって千年の間でも数えるほど会ったかという具合で、ましてや大黒天など偶像でしか知らないが、福の神の化身としてシンパシーを感じる存在なので心配だった。

「大黒天様もお気の毒にね。私からのお悔やみを伝えておいて」
「はい。お寺も忙しくなるのに、留守にするのは申し訳ないのですが……」
「いいわ」

星としては猫ならぬ鼠の手も借りたい状況でナズーリンを送り出すのは手痛いのだが、そういう事情なら仕方ない、と割り切った。

「お寺の方は私達で何とかするから、貴方は気兼ねなく大黒天様のところへいってらっしゃい。毘沙門天様の弟子として恥ずかしくないよう、立派にお手伝いを務めるのですよ」
「ええ、早めに仕事を片付けて、クリスマスまでには帰ってきますよ」
「露骨にフラグを立てるのはやめなさい」

そもそも西洋の文化であるクリスマスは未だ幻想郷に馴染みがないのだが、それはさておき、支度を整えたナズーリンは早々に命蓮寺を旅立った。

「いってらっしゃい、気をつけてね」
「……私のいない間、鬼の居ぬ間の洗濯ですかね。ご主人様、くれぐれも羽目を外さないように。特に失せ物は……」
「早く出発なさい!」

星が怒ったふりをすると、ナズーリンは肩をすくめて歩いていった。
まったく、いつまで宝塔喪失の件を蒸し返すんだか。星は不満だが、自分の失態だとわかっているぶん、強く言えないのが難点だ。

「うん?」

星が寺の内に戻ろうとしたその時、遠くから足音が聞こえてきた。あんなセリフを残しておきながら、ナズーリンが何か忘れ物をして戻ってきたのだろうか。
やがて土煙を立てて、まさしく脱兎の勢いで垂れ耳の妖怪兎が鼻息荒く飛び込んできた。

「今、大国主様の話した!?」
「してませんよ!?」

即座に否定したものの、兎特有の真っ赤な目が間近でギラついて、星は内心バクバクしている。
「あれ、違ったの?」とぼやくのは因幡てゐ、迷いの竹林を根城とする妖怪兎だ。駆けてきた方角からして、彼女は人里からやってきたらしい。人里に行商に来るのは別の兎だと聞いていたが、てゐも人里に来るのだろうか。よく見れば衣服には耳を隠すためのフードがあり、何やら重たげな背負子も背負っている。
しかし命蓮寺が人里に近いとはいえ、門前での星とナズーリンの会話を聞きつけたのなら恐ろしい地獄耳である。

「ええと、なぜ貴方がお寺に?」
「お寺の方から『ダイコク』ってワードが聞こえたもんだから、てっきり大国主様のことかと思ったのよ」
「……要は早とちりじゃないですか」
「何さ、あんた、お寺の妖怪なら大黒様くらい知ってるでしょ? いやだねー、最近の若いモンは怠惰で歴史も神話もまともに勉強しないんだから」
「若いモン……」

ふてぶてしくため息をつくてゐに星は顔を引き攣らせる。星だって平安生まれの妖怪だが、もしもてゐが神話の『因幡の素兎』と同一人物(同一兎?)なら、恐ろしく長い時を生きていることになる。てゐからしたら星は赤子同然なのかもしれない。
とはいえ星は七福神が一柱、毘沙門天の化身、当然大黒天と大国主の関わりは知っている。馬鹿にされたままでは寺の沽券に関わると、星は襟を正した。

「知ってますよ。“大国”は“ダイコク”とも読めるので、大国主命は仏教の大黒天と同一視され、習合されたのです」
「それだけじゃない、大国主様は鼠の手助けで須佐之男命の難題を逃れたでしょう。鼠に縁がある同士でもあるのよ。言っとくけど大国主様のが先だかんね。仏教サイドがパクってんだかんね」
「パク……」

歯に衣着せぬ物言いに絶句してしまうが、下手に反論すると拗れそうだ。ついでに言えばブディストの星は大黒天なら大国主より大日如来の配下を想像するのだが、この兎の前でそれを言ってはいけない気がした。

「つまり、貴方は大国主命を信仰しているのですね?」
「信仰っていうか崇拝っていうか、憧れみたいなものかな。凛々しいお顔立ち、慈悲深いお心、数多の妻と子を抱える甲斐性……地上の兎はみんな大国主様に憧れるのよ」

てゐはうっとりした表情をしている。恍惚とした眼差しは恋よりも熱烈で、愛というにはいささか独りよがりな感情だ。これが噂に聞く“推し”って奴だろうか、と星はぼんやり思う。
ところで星はまだ仕事が残っている。いい加減引っ込んでいいかな、とじれったくなってきたが、てゐは勘違いだとわかってからも帰ろうとしない。それどころかニヤニヤ星の顔を覗き込んで、

「ま、後付けだとしても、私は大国主様、すなわち大黒天のゆかり。あんたは毘沙門天の代理。気が合うと思わない?」
「思いません」
「仲良くしようよー。私、いい商売の話とかできるんだよ? 財宝の神様なら飛びつきたいでしょ」
「ですから、結構ですって」
「そんな貴方におすすめの品物がこちらです」
「あの、私の話、聞いてます?」

こちらに口を開く暇を与えずに喋りまくる兎だ。喋り上手は詐欺師の必須条件みたいなもの。そういえば、いっとき人間の間で兎がブームになった時も裏でてゐが絡んでいたと聞くが、噂は本当かもしれない。
てゐは籠をまさぐって、木彫りの兎を仰々しく手渡した。

「なんです、これは」
「来年は卯年でしょう? 新年を迎える縁起物よ」

よく見れば木彫りの兎は大黒天を模して、立派な大袋と小槌を携えている。

「大黒……大国主命とお揃いですか。凝ってますね」
「ふっふっふ、これを飾っとけば大国主様のご利益でお宅は商売繁盛間違いなし! どう、悪い話じゃないでしょう? あ、心配しなくてもお金は取らないよ」
「……本当に?」
「ほんとほんと。気になるなら後で永遠亭のお師匠様にしっかり確認してみなよ」

てゐは笑顔で言うが、星は警戒心が募る。世の中、タダより高いものはない。まして押し付けてくる相手が曲者と名高い因幡てゐでは尚更だ。
てゐは星の警戒をほぐすようにぺらぺら捲し立てる。

「これも妖怪兎としての一種の営業、布教活動って奴だよ。今日はこれを配るために人里まで足を運んだの。あんたも今年の十二支の虎でしょ? 正月は忙しかったんじゃないの?」
「そういえば、一月いっぱいは結構引っ張りだこでしたね」
「んでもって二月頃には急速に忘れ去られると」
「……あの、それをわかっていてわざわざ配っているのですか?」

星はてゐの贈り物を受け取るに受け取れない。星も昨年の年末から今年の一月にかけては、今年は寅年だからとあちこち駆け回る羽目になった。それも落ち着けばやれ節分だの涅槃会だのひな祭りだの、次の行事で寅年など忘れられたかのように世間は大人しくなったが。
てゐだって十二支は年末年始限りで持て囃される縁起物だとわかっているはずだ。どうせ時間が経てば物置の隅で埃をかぶるに決まっているのに、何故。

「わかってないね。ハレの日の浮かれ騒ぎでも、乗るかそるかなら乗ったもん勝ち。ほんのいっときのブームだって、なんの実も結ばずに終わるとも限らないのよ」

もっともらしく言うてゐに、星も一時的とはいえ、虎妖怪の星が表に出ることで命蓮寺に恩恵がなかったわけではないと思い出した。

(まあ、大黒天様のゆかりと思えば、毘沙門天代理の私がこの兎と縁を持っても損はないでしょう)

これもまた仕事のうちだ。てゐの謎の推し活に付き合ってもいいか、と観念した。さっさと帰ってほしかったのが本音ではあるが。

「わかりました。ありがたく頂戴します」
「うんうん、物分かりのいい素直な子は私も好きよー。大事に飾ってあげてね」

てゐは満面の笑顔で帰っていった。



木彫りの兎を脇に抱えて寺の内に戻るなり、星は聖に声をかけられた。

「あら、星……それは?」
「妖怪兎に押し付けられました。どうも引き下がってくれそうになくて」

聖は星の抱える木彫りの兎を注視した、と思ったら、みるみる眉間に皺が寄っていった。

「貴方も押し切られたの」
「貴方も、とは?」
「最近、人里で木彫り兎を押し付けていく奴がいる、と噂なのですよ」

顎に手を当てる聖の表情は険しい。やっぱりいわくつきのものだったか、と星は不安になる。
星の視線に気づいてか、聖は微笑んでみせた。

「安心していいわ。それ自体はただの木彫りで、妙なまじないや術はかかってません。ただし、いずれ厄介なものになるかもしれない」

ほっとしたのも束の間、聖の声音は真剣で、思わず背筋が伸びる。

「今はただの道具でも、歳月を経れば別のものに変化する可能性は大いにあります。付喪神が典例でしょう」
「なら、その前に処分してしまえば」
「妖怪兎は縁起物だと言わなかった? 彼女が敬愛する大国主に託けた品物です。貴方も仏に帰依する身として、捨てるのは悪い気がするでしょう」
「……はい」
「まあ、処分の前に供養するのがよろしいかと思います。もっとも、ものぐさな人間は供養もせず忘れたまんま物置や部屋の片隅に放置、が一番考えられますがね」

聖は鷹揚に言ってのけた。さすがにてゐの目論見はお見通しだ。
てゐが布教活動と言ったのは間違いではない。昔、人間に捨てられた兎達が妖怪と化して新たな人間の脅威となったように、今度は兎を模した道具で勢力拡大を図ろうというわけだ。
兎と大黒天を混ぜ合わせた縁起物が付喪神と化したら、どうなるか……。そこまで考えの及ばなかった星は、てゐとの年季の差を思い知る。聖は手を差し伸べて、

「貸しなさい。せっかくの縁起物です。お寺のどこに飾るか、どう扱うか、考えてみましょう」

星は素直に木彫り兎を聖に預けた。聖に管理してもらうのが一番いいだろう。

「それにしても、マミゾウといい、あの兎といい、妖獣達は勢力拡大に余念がないわね。星、貴方はどうなの?」
「私は別に。幻想郷の虎といえば山の仙人のペットくらいしかいませんし、虎の妖怪は私以外に見当たりません。かといって無闇に仲間を増やしたいとも思いません」
「同じことをムラサにも言ってやれば、あの子の悪い癖も少しは治まるかしらね」

苦笑する聖は、舟幽霊を増やすのに未だ舟を沈めたがるムラサに手を焼いているのだ。星は木彫りの兎を見つめて、

「宝船の木彫りをたくさん作るのはどうでしょう? ムラサにはそれで我慢してもらって」
「宝船を沈めるなんて縁起が悪いですよ」
「……ですよね」

速攻で却下された星はちょっぴり落胆した。プレゼン能力はあの兎に劣るらしい。
後日、人里には正月飾りに兎の縁起物があちこち並ぶようになった。素朴な人間達はまんまとてゐの罠に引っかかってしまったわけだ。

(昨年末に売り出された虎の縁起物は、ちゃんと供養されているのかしら)

星はそれを気がかりに思った。



〈ああっ弁財天さまっ〉

ナズーリンが旅立って、ついでに厄介な兎が押しかけてきてから一週間後、またも珍客が訪れた。琵琶の付喪神、九十九弁々である。

「ここは困ってる妖怪を助けてくれるお寺よね」
「もちろんです。ただ、今は忙しいのでできれば手短かにというのが本音ですが」
「馬鹿正直だねー。ま、いいや、とにかく私の話を聞いてよ」

弁々は本体とも分身ともつかぬ古琵琶を抱えてため息をついた。

「八ツ橋と揉めたの」
「貴方のユニット上での妹さんでしたっけ。どのような理由で?」
「音楽性の違い」
「はあ……」

なんだかミュージシャンは誰も彼も、細々とした事情は棚に上げて解散理由を“音楽性”とやらに集約している気がする。
しかし二人とも抱えた楽器からして、生まれた時代は大差ないと思われる。彼女達の音楽性は何がどう違うのだろう。

「最悪よ、よりによってこんな時期に喧嘩別れだなんて。今年も大晦日に紅白妖怪歌合戦が待ってるのに!」
「楽しそうですね」

妖怪達も人間の催しに影響を受けるらしい。だが女の子ばかりで、どうやって紅組と白組に分かれるのだろう。
ひとまず星は不貞腐れる弁々のとりなしを試みた。

「八ツ橋さんと今までずっと活動を続けていたのでしょう。仲直りしてはいかがですか」
「いいや、あいつの身勝手な言い分には今度という今度こそ頭に来たわ。何さ、事あるごとに直線的だの古臭いだの文句ばっかつけちゃって。もう姉妹ユニットなんかやめて、新ユニットを立ち上げてやろうと思ったのよ」
「そうですか。どなたかあてはありますか」
「音楽仲間はたくさんいるけど、ぜんぜんなしのつぶて。雷鼓は最近プリズムリバーんとこで忙しいのよ。あんたのお寺の山彦と夜雀じゃ音楽性がまったく合わないし」
「は、はは……」

どうしてもというなら響子を紹介しようか、と思っていた星は苦笑いする。またもや音楽性に阻まれたが、星にもパンクロックは理解できないので、響子達を擁護してやれそうにない。

「では、今年は出場を辞退するのは……」
「いいや、歌合戦は私達みたいな目立たない妖怪が名前を上げる貴重な機会よ! おめおめ辞退なんかできるもんか」

ギラギラと野望に燃える弁々の眼差しは熱く、星は何だか嫌な予感がした。

「そうだ、貴方、私と組まない?」
「いやいや、なんで私ですか?」
「貴方って財宝神・毘沙門天の化身でしょう? だったら妙なる琵琶の音を響かせる神様を知っているよね」

回りくどい言い回しだが、星は弁々の言いたいことが読めてしまった。
毘沙門天とゆかりのある琵琶を弾く神といえば、弁財天だ。
しかし音楽に疎いのに突然相方にと誘われても……星は少し考える。

「なるほど、話はわかりました。しかし私は貴方と初対面です。貴方がどこの馬の骨とも知らないのにユニットなんて組めますか」
「ふっ、知らざあ言って聞かせやしょう、浜の真砂と五右衛門が、歌に残せし盗人の、種は尽きねえ七里ヶ浜……って、そっちの弁天じゃなぁーい!!」

弁々はツラネの途中で床を叩いた。案外ノリのいい九十九神である。彼女が演じる弁天小僧菊之助を見てみたいものだ。

「弁天といえば、琵琶の名手で美貌の持ち主で、福と財と智慧を授けるありがたい七福神の一柱でしょうが!」
「確かに貴方は格好こそ弁財天に似てますが……琵琶の付喪神だから弁財天とは安直では?」
「心機一転して新しいイメージで売り出すのもいいじゃない。これでも天女と見紛うルックスなんて謳い文句がついたこともあるのよ」
「広報は往々にして誇大広告になりがちですがね」
「喧嘩売ってる? 貴方大人しそうに見えて意外といい性格してるでしょ?」

弁々は眉をつり上げたものの、すぐに和やかな表情に戻って、

「心配しなくても音楽の手解きならやってあげるし、私とユニットを組むことで貴方にもメリットはあるわ」
「メリットとは?」
「ズバリ、七福神抱き合わせ商法! 私の名を売るついでに貴方の知名度ももっと上げちゃいましょ」
「……七福神は七柱揃ってこそですよ? 二人じゃ足りないでしょう」
「だけど幻想郷にははなから七福神が揃ってないじゃない。大黒天なんかは恵比寿天と一緒に祀られることが多いんだから、七福神で二人組ユニットもアリなのよ。どっちも富と財を授けてくれる神様、売れればガッポガッポと儲かる予感しかしないわ」

ウハウハと手揉みをして笑う弁々に、またか、と星はうんざりする。年末は誰も彼もお金絡みで気が緩みがちだ。緩まった財布の紐を狙い撃ちする輩の絶えないこと絶えないこと。
財宝神の代理としてはここが掻き入れどきと張り切るべきなのだが、一妖怪としての星は乗り気がしない。財宝目当てで寄ってたかられたり都合よく持ち上げられたりするのが苦手なのだ。

「だとしても、毘沙門天と弁財天ではいまいち収まりが悪いですよ。大黒天を中心にした三天合体なら聞いた覚えもありますが……」

そこまで口にしてから、先日押し付けられた木彫りの兎を思い出す。大国主と習合した大黒天。大国主と縁の深い因幡の素兎……。

(いやいや、あの食えない妖怪兎はありえませんって!)
「何、大黒天役に心当たりがあるの?」
「ありません、何もありません!」
「仕方ない、なら先に楽器でも決めようか」
「だから私は引き受けるとは一言も……」
「笙の笛なんかどうかしら。貴方の名前は星だし」
「この期に及んでこじつけですか!?」

普段は大人しい星もつい声を荒げてしまう。忙しいのに拍車をかけるように厄介が次々に舞い降りて、いささか気が立っているのである。
そこへ廊下から誰かが走り抜けてくる音がした。

「探したわよ姉さん!」

いきなり格子を開け放ったのは、弁々の妹分・八ツ橋だった。急いできたのか、見事な弦が踊るスカートは見苦しく乱れていた。

「や、八ツ橋? あんた、今更何をしに来たのよ」
「ごめんね姉さん、私も意地になって言い過ぎたわ。一人で琴を鳴らしても味気ないし、姉さんの他に誰も相方を見つけられなかったの」

少し身構える弁々に対して、謝る八ツ橋はいやに素直である。八ツ橋も喧嘩別れしてから相方探しをしていたのか。義理とはいえ姉妹、考えることは似通っているらしい。

「姉さん、やっぱり考え直そうよ。解散なんて駄目だよ。もう一度、姉妹ユニットを組みましょう」
「八ツ橋……」

弁々は何だか涙ぐんでいる。もううんざりだなんて文句を言っていたものの、弁々だって本心では八ツ橋との仲違いがひっかかりだったのだろう。
二人はしかと手を取り合った。

「ううん、こっちこそごめんなさい、私の相方はあんたしかいないわ!」

姉妹の危機は去った。女子二楽坊、再結成である。
そして星は完全に蚊帳の外である。

「それじゃあね、毘沙門天の化身さん!」
「あっ、はい、お達者で……」

天女と見紛う笑顔を浮かべて、弁々は八ツ橋と仲良く寺を後にした。
結局何しに来たんだか。どっと疲れた星は、なんでこうも厄介な招かれざる客ばかり来るんだろう、と机に突っ伏した。

(ナズーリンが旅立った日からろくなことがないわ)

星はふと思い出す。現代でこそ鼠は害獣として嫌われがちだが、昔は毘沙門天や大黒天にまつわる縁起物としてありがたがられることもあった。鼠が住み着く家は縁起がいい、などが典例である。また勘のいい鼠が家を逃げ出す時は、その家に災厄が訪れる前触れだとも。

(ナズーリンって勘がいいし、逃げ足も早いのよね……って、まさか)

そんなはずはない、と否定する。普段から寺に棲みつかないので、とっくにナズーリンと星達は別居状態だ。今更鼠の迷信と今の災難を結びつけるのもおかしい。
ただ、厄介を少しでも多く片付けるためにも、クリスマスと言わずとにかく早く帰ってきてほしかった。



〈疫病来たりてホラを吹く〉

「妖怪でありながら福の神を名乗る不届き者め、聞いて驚け! 私こそが富をもたらす福の神、吉祥天なのよ!」
「へーそうなんですか」

高笑いする女苑に対し、星はどこまでも冷め切っていた。
年の瀬が日に日に近づくある日、またしても命蓮寺に招かれざる客が現れた。例によって対応に駆り出された星は適当に流す。
星は自称福の神・女苑の妄言などまったく信じちゃいなかった。疫病神の言うことを間に受けてはいけない。

「自慢話ならよそでやってください。私は忙しいのでこれで」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! 元居候にいくらなんでも冷たすぎない?」
「貴方はとっくに破門された身ではありませんか」
「冗談はよしのすけ。私の方から出て行ってやったのよ、こんな辛気臭い寺!」
「その辛気臭い寺にわざわざ足を運んでくださるとは、相変わらずお暇なようで羨ましい限りです」
「あんた普段にまして毒舌ね。ストレス? 坊さんなら自己管理くらいなさいよ、だらしない」
「ストレッサーが目の前にいるものですから」

応酬する二人の間にバチバチ火花が飛び散るようだ。
女苑はかつて聖の計らいで命蓮寺の一時預かりとなった。星もまた金銀財宝にばかり無駄に執着する女苑が『本当の豊かさとは何か』を真面目に考えるのなら力になろう、と思っていたのだが、結局は寺を逃げ出し『金こそすべて』と元の木阿弥に戻ってしまい、星は世の無常を噛み締めたのであった。
星の冷淡な態度にもかかわらず、女苑はしぶとかった。ふん、と鼻で笑い、

「あんた、私と契約結婚しない?」
「……はい?」

星は己の耳を疑った。突飛な話を持ちかける輩に一ヶ月で二度も会ったおかげで耐性がついていたが、仮にも僧侶に結婚を持ちかける奴は初めてだ。

「だって吉祥天は毘沙門天の妻とも言われるんでしょう? 七福神に入る場合もあるらしいし」
「妹だって説もありますがね」
「そんな瑣末なことはどうだっていいのよ、私は福の神、あんたも紛い物だけど福の神、なんとも縁起のいい組み合わせじゃない。しかも契約から始まる仮初の恋なんてロマンチックじゃん、ドラマ化されれば高視聴率マークに主題歌大ヒット間違いなし!」

お金と欲望に塗れた結婚に誰がムズキュンするというのだろう。そりゃあ外の世界で流行った契約結婚の話は、結婚理由に経済的な事情も大いにあったけれど。
星は頭の悪い企みに頭痛がしてきた。年末年始は何かと金の動く季節、金にがめつい強欲姉妹が大人しくしているはずがなかったのだ。
石油騒動での無責任な行動といい、女苑は、もとい依神姉妹は外の世界の皮層な人間の映し鏡みたいなものだ。そして星は財宝の輝きの危うさを知らず、金で誰かの心を動かせると思っている輩には容赦しない。

「ところで、どこから貴方が吉祥天だなんて話が出てきたのです。またお得意のホラですか」
「人を嘘つき呼ばわりしないでよね。れっきとした由来があるのよ」

女苑の話はこうだ。
吉祥天と黒闇天の姉妹。方や富を与える福の神、方や富を失くす貧乏神。涅槃経によれば、吉祥天だけを招いて黒闇天を追い出すと吉祥天の恩恵を受けられず、貧乏神の黒闇天も受け入れることで初めて本当の福を招けるという。
星だって涅槃経は当然知っているが、やはり目の前の派手派手しい疫病神が吉祥天には見えないのである。

(というか、この子と結婚したら自動的に姉までついてくるの?)

なお、紫苑はいつのまにか女苑の隣にいたのだが、二人の問答には参加せず無言で勝手に戸棚の茶菓子を取り出し勝手に貪り食っている。ぬらりひょんか。
星の視線に気づくと、紫苑は菓子を食いながらにたりと笑って、

「なあに、私はひもじい思いをしなくて済むなら何でもいいから気にしてないよ。コブつきだとでも思っときゃいいの」

コブどころか極めて悪性の高い腫瘍である。
涅槃経に絡めて姉まで売り込んでくるのは厄介払いなのか、石長姫を木花開耶姫と一緒に邇邇芸命に勧める大山祇気取りなのか。あいにく星は生まれつきの一人っ虎なのできょうだいの事情はわからない。
呆れを通り越して心が無に近づいてきたが『ああこれが無の境地なのね』と現実逃避してる場合じゃない。その間にも疫病神は好き放題くっちゃべるし貧乏神は好き放題食い散らかすのである。

(破邪は私の役目なのよねえ。毘沙門天も楽じゃないわ)

それにしても仏教になじまず、修行に飽きて早々に寺を逃げた女苑が涅槃経の話に自力で辿り着くとは大したものだ。商魂逞しい限りで、その涙ぐましい努力だけは素直に評価できなくもない。

「一応聞いておきます。毘沙門天とか福の神とかを抜きにして、貴方は私をどう思っているのですか」
「嫌い寄りの嫌いかなー」
「そうですか」

現代の結婚は当事者の合意があって初めて成立する。別に世の中は結婚がすべてではないし、結婚を選択する理由も人それぞれあっていいが、星は打算だけの結婚など到底受け入れられない。まして価値観の噛み合わない相手との無理な結婚ほど双方にとって不幸なものはない。

「ま、この際欠点の一つや二つには特別に目をつぶってやるわ。なんたって財宝を好きなだけ出せる相手と結婚すれば、私は左うちわの優雅でセレブな専業主婦……」
「そうですか、あいにく私はどちらかといえば共働き派なので貴方とは今生でご縁がなかったようですね、残念無念また来世」

結局本音はそれか。傍迷惑な結婚詐欺師にはお引き取り願おう。開き直った星は宝塔を高く掲げ、レーザーをぶっ放した。

「「やな感じー!!」」

お騒がせ姉妹は揃って吹っ飛んでいった。キラーンと真昼の一番星になった姉妹を見送って、星は合掌した。願わくは憐れな神が御仏の慈悲に救われんことを。

「なべて世は泡沫の夢。南無三宝南無三宝」

まったく、あんなじゃじゃ馬と結婚だなんてとんでもない。仮初にでも、結婚するなら……。

「星、どうしたんです、ずいぶんと喧しいではありませんか」
「ひ、聖がいいなんてぜんっぜん思ってませんよ!?」
「なんの話です?」

本気で考えたわけではなかったが、本人の顔を見ると気まずくて慌てて誤魔化した。訳の分からない聖はひたすら首を傾げていた。



〈正邪が寺にやってくる〉

「はーい、今年もイラストあがったよー」
「また同じデザイン? 変わり映えしなくない?」
「よく見てよ、ちゃんと舟に兎を乗せといたから」

師走も下旬に入りいよいよ今年も終わりだ、という実感が強まる中、年賀状の仕上げに取り掛かるムラサと星の元へやってきたのは一輪と雲山だ。
これまた毎年恒例となりつつある、年末に配る聖輦船を模した宝船に七福神の乗ったイラストだった。今年は七福神と一緒に虎を乗せていたが、来年は卯年に合わせて乗客は兎だ。
しかし無料配布とはいえ、根拠もないのにこれを枕の下に入れて眠れば吉夢が見れると宣伝するのは若干詐欺の領域である。

(まあ、いいわ、喜んでくれる人がいるのなら)

星は今更異を唱えない。これも仕事のうちだ。
そのまま一輪は星達と一緒に作業を始めた。初めは真面目に仕事に取り組んでいたものの、一輪もムラサも同じ作業の繰り返しに次第に退屈してきたのか、

「一輪、これ読んでみてよ」

と、ムラサがふざけて物の散乱する床から無地の巻物を投げてよこした。いわゆる“勧進帳”に使うものだが、未使用なので当然何も書かれていない。ムラサの意図を察した一輪は口元をつり上げ、恭しく巻物を広げた。

「えー、命蓮寺勧進上人、雲居一輪、敬って申す」

一輪がそのままめちゃくちゃな文言を適当にべらべらしゃべり、それを聞いたムラサは腹を抱えて笑う。仕舞いには雲山まで便乗して弁慶の如く一輪を打擲するふりをするので、

「真面目に仕事なさい」
「はーい」
「へーい」

星が一喝すると、一輪達はまた本殿の掃除はどうの、梵鐘の手入れはどうの、と仕事の話に戻っていった。

(何もこんな時に主従の結束を謳う物語を演じなくてもいいじゃない)

いささか八つ当たりじみた感想だが、最近の星は厄介な招かれざる客の相手ばかりしてるせいかどことなくナーバスというか、憂鬱なのである。
今日は十二月二十五日、西洋でいうところのクリスマスだが、寺なので特に催しはない。ナズーリンはやはり帰ってきそうになかった。届いた手紙には『大晦日までには帰る』とあったが、たぶん間に合わないだろうと星は踏んでいる。
ナズーリンに早く帰ってきてほしい。そして可及的速やかに仕事を手伝ってほしい。改めて有能な労働力の損失の痛手を思い知った。

「きっと大黒天様は猫の手も借りたいくらい忙しいのよ」

と、ムラサが慰めるように言う。一輪が乗っかって、

「だけど大黒天様のところに猫なんか送り込んだら一貫の終わりね」
「やめてよ、縁起でもない」
「そんなこと言ったら、虎んとこに鼠を送り込む毘沙門天様もどうかしてない?」
「あのね、私はとっくに肉食を断っています」
「でもお酒は断てないのよね」
「もう!」

ああ言えばこう言う、一輪達の揶揄する態度にまたピリピリしてきた星は席を立った。

「ちょっと星、どこ行くの?」
「響子の手伝いをしてきます」

響子は水場から掃き掃除まで寺中のあちこちを駆け回っているはずである。
星の姿が見えなくなってから、ムラサは一輪に耳打ちする。

「最近の星、なんか機嫌悪くない?」
「年末は変なお客さんが多いからねー。ストレスも溜まるでしょ」
「早いとこ解決してほしいんだけどね。星が不機嫌なまま新年を迎えられたら、初詣のお客さんもいい気がしないわ」
「大丈夫でしょ。星、仕事じゃ手を抜かないもの」

断言して、書類の整理に飽きてきた一輪は「障子の張り替え、いつやる?」と雲山に話しかけた。
さて、響子は廊下を勢いよく駆け抜けながら雑巾掛けをしており、星が門前はどうかと聞けばこれからだと言う。

「私が掃き掃除をやってもいい?」
「いいですけど、星さんのお仕事は?」
「一輪達に任せておけばいいわ」

ふざけていてもやる時はやる仲間だ、放っておいても問題はない。一緒にいてまたキツく当たってしまうのも嫌で、少し外の風に当たって気を鎮めたかった。
掃除道具を持って石段を降りると、寒風の吹き荒れる中でも、年末のためか人通りは多かった。「あれ、毘沙門天さんだ」とつぶやく通行人には会釈をして(はて)と星は考え込む。

(私が門前にいると目立つかな。でも箒を持ってるんだから、仕事中だってわかってくれるはずよね)

もう少しラフな格好にすればよかったかな、といつも通りの虎柄に毘沙門天を模した衣装を見下ろして思う。星はそのまま黙々と掃除を始めた。

「よお、妖怪の裏切り者」

気がつくと塀の上に妖怪がぶら下がっていた。天邪鬼だった。星は手を止めて天邪鬼を見上げた。

「裏切り者とは、どういう意味でしょう」
「馬鹿を言え、妖怪のくせに対魔の毘沙門天なんぞのコスプレしてる奴が裏切り者じゃなくてなんだっていうんだ」

ニヤニヤ笑いながら見下ろす天邪鬼に、また面倒な客が来たなとため息をつく。寅年の暮れにせっかくだからゲン担ぎに寅丸星に構っとけ、とでも噂が流れているのだろうか。
思えばこの天邪鬼、正邪とは因縁があった。といっても大したものではなく、弾幕花火大会で正邪が一方的に星に難癖をつけた、それだけだ。
正邪は塀から降りて不服そうに星を指差した。

「妖怪は酒池肉林でなんぼだ、なのにお前は自分を閉じ込める竹林なんぞを作りやがる」
「私は仏門の妖怪です。酒も肉も戒めるべきものですよ」
「と言いながら、本当はお前だって野性を剥き出しにして暴れたいんじゃないか?」

下卑た笑いからは邪気しか感じないが、おそらく正邪は本気で星や命蓮寺の現状に不満があるのではない。天邪鬼として現状を“ひっくり返す”行為そのものに意義を見出し、心血を注いでいるのだ。
単なるイチャモンに過ぎないし、真面目に相手をすべきでない。挑発に乗って怒ろうものなら、天邪鬼の思う壺だ。

「どうなんだ、ここの修行僧の悪い噂なんていくつも聞くぜ。お前は本当にこのままでいいのか? 真面目に修行するなんざ馬鹿らしいと不満が溜まるんだろう?」
「待ち望んだ仲間達との平穏な暮らしに何の不満がありましょう」
「はっ、仏教が本当に妖怪を救うか? そんなもんで虐げられた弱き存在を救えると本気で思ってるなら甘っちょろいな、レジスタンスを舐め腐ったチョロ甘だ」
「少なくとも、仏教のおかげで私は耐え難き千年を持ち堪えたと思っています」
「妖怪のくせに神を偽る、仏教のおかげと言いつつ不妄語戒と矛盾しないか?」
「過去の所業に言い訳はしません。ですが、この仕事は私の誇りです。財宝の神として、護法の神として、今の私は聖の祈りを受け止めるのみ」
「その聖白蓮だが」

聖の名を聞いた途端、正邪の目が意地悪く下衆なものに変わった。このままでいいのかと揺さぶってもなしの礫だと矛先を変えたのだろう、星も(ああ、来るな)と箒を手放して身構える。

「あれが本物の聖者かね? 坊さんのくせに定命を拒んで生にしがみつく、なんと醜い、醜い魔女だ。そのうえ人も妖怪も平等にと甘美な言葉でたぶらかす、いやあ、そんじょそこらの妖怪じゃああはならないね、元人間だからこそできる所業だよ」

正邪はわざとらしく顔を邪悪に歪めて貶し言葉をぶつける。今更その程度で揺さぶられまい、と星は癇に障りつつも聞かぬふりをする。構わず正邪は次々に畳み掛ける。

「恥知らずの悪僧だ、面が欲の皮を張ってぶ厚い。よくもおめおめ人前に出て来れるもんだぜ」
「……」
「哀れだな。所詮、短命の人間は歳を取っても老成しない。人間性がより頑なになるだけだ。そんな奴を尊敬する輩の気が知れないね」
「……」
「あの尼僧が美しいか? 確かに見た目こそ若々しいが、中身は醜女よりも醜悪な老婆じゃないか」

中身のない罵倒に耳を貸す必要はないわ――星は沈黙を保っていたのだが、次第に正邪に千年前の人間の姿が重なってきて、過去の忌まわしい記憶がフラッシュバックする。

――聖白蓮、世に類い稀なる悪僧であった。
――ありゃ悪魔の使いだ。人間は騙せても御仏の目は誤魔化せぬ。
――そもそもあんな若い尼僧が聖の如き験力を使うのがおかしかったんです。
――やはり尼僧は信用ならん。道心が浅くて成仏できぬのじゃ。
――あやつめを退治してくださってありがとうございます、毘沙門天様。
――これでやっと我らは本当に夜に怯えずに済むのです。
――妖怪に魅入られた悪僧など、さっさと死んでしまえばよかったのに。

聖と仲間達が封印された後、数多の無知な人間が聖を侮辱しても、星は決して怒らなかった。
笑っていた。
穏やかな笑顔を浮かべて、黙って人々の話を聞いていた。
――本当はどんなに口惜しく、腹わたが煮え繰り返っていたか。お前達に聖の何がわかる、と怒鳴りつけてやりたかったか。

『いけません』

と、ナズーリンは事あるごとに釘を刺した。

『怒りに任せて正体を明かせば貴方も囚われの身だ。当然、毘沙門天様の代理も辞めさせられる。そうなったら、誰が聖達を助けに行くのですか』

――ではナズーリン、貴方は私に黙って耐えろというの。
私の大好きな人が、誰よりも大切な人の誇りが踏み躙られているというのに、私は我が身可愛さに笑ってやり過ごしているだけ。
それが“忍辱”だというの?

――ねえ、このまま本心を押し殺して偽りの神であり続けたら、本当の私はどこへ行ってしまうの?

星のかすかな揺らぎを感じ取ったのだろう、正邪はさらに追い討ちをかける。

「お前だって本心から聖を信頼なんざしていない。恨んでるのさ。どうして私にこんな役目を押し付けて一人逃げたのかと……。それはそれはさぞかし不幸な、いや、“世にも幸せな”千年だったんだろうな?」

正邪が満面の笑みで言い放った刹那、星の中に眠る猛虎が牙を剥いた。



元より人里近くに構えた命蓮寺の門前だ。多くの人間が星と正邪の諍いを目撃していた。

「皆さん、とくとご覧あれ」

気絶した正邪を踏みつけた星が、高らかに宣言する。人間達は「なんだなんだ?」「また決闘かね?」「それとも年末の催しかな?」と囁き合う。
星の表情は晴れ晴れとしていた。
星は決して野性を剥き出しに正邪へ襲いかかったのではない。
忌々しい記憶と重なる正邪を憤怒に任せて問答無用でねじ伏せようとした寸前(待って)と星の理性が戻ってきた。

(このまま天邪鬼を懲らしめていいの? 仮にも毘沙門天の化身を務める私が衆人環視の中で暴れ回ったら、人々は命蓮寺をどう見るでしょう)

寺の面目も大事、かといって昔のように黙ってやり過ごすなんてもう繰り返したくない、嘘つきな自分が許せない。

(目の前にいるのはあの時の人間じゃない。ただの妖怪よ。落ち着いて、今の私は毘沙門天の代理なんだから、正義の威光を放つ毘沙門天の――)

相反する心に惑う中で、星は正邪が“対魔の毘沙門天”と言ったのを思い出す。

(そうだ。毘沙門天は仏敵を、邪なものを退治する神様だ)

となれば――腹を括った星は正邪に立ち向かった。星の目論見に気づかない正邪は、そら来たと笑って攻撃を一切避けなかった。
不得手な体術で組み伏せ、足らぬ力は宝塔のレーザーで補い、打ちのめした末に足蹴にした。あくまで軽やかに、秘めた怒りなど感じさせない涼しい表情を保ったまま、厳かな儀式を行うように。

「これぞかの有名な“天邪鬼を踏む毘沙門天像”にございます。毘沙門天は邪鬼を抑えるありがたい神様です。皆様、年越しと初詣には是非とも命蓮寺へお越しください」

深々とお辞儀をした星に、ギャラリーからやんやの喝采が上がる。どうやら星の目論見はうまくいったらしい。

「どうしたの星、これはいったい……」

そこへ騒ぎを聞きつけた聖が飛び出てきた。聖は星にたどり着く前に人間達に囲まれ、

「いやあ、住職殿もお人が悪い。こんな催しをサプライズとして隠しておくなんて」
「前もって告知してくれたのなら、家族を連れて来たのにね」

訳のわからぬままもてはやされ、聖は困惑している。気絶した正邪はまだ目覚めそうにないし、星も興奮した人間達に囲まれて聖に近づけそうにない。遠くから不安そうな聖と目の合った星は、

――どうです聖、私、けっこう演技派なんですよ。

嘘偽りのない、心からの笑顔を浮かべてみせた。



「後悔してませんよ」

騒動が落ち着いた後、星は聖にきっぱり言い放った。
あの後、ひとまず正邪を寺の中に運んで介抱したが、目覚めた正邪は「思ったのと違う」とぶつくさ文句を言い、迎えに来た小人と共に帰っていった。もう命蓮寺に現れることはないだろう。
聖は正座して、厳しい面持ちで星を見つめている。

「星、私の言いたいことがわかりますか」
「よくわかっています。私欲で暴力を振るうべからず、と」
「だけど貴方、同じことが起きればまた牙を剥くでしょう」
「はい。でも安心してください、私はもう虎にはなりません。昔、聖と約束した通りに。今日の私は虎でしたか? みんな毘沙門天だと言ったでしょう?」
「……私の名誉なんて、気にしなくていいのですよ」
「聖のためじゃありませんよ」

責任を感じているのか俯く聖に対して、星は緩やかに首を振る。

「私が踏みつけたかったのは、過去の私。仲間が悪く言われても、ずーっとニコニコ笑って周りに合わせて、自我も矜持も何も失くしてしまった腑抜けな私。結局、自分のために動いただけなんですよ」

自分の立場も、自分の大切な人も、どちらも守りたい。そのために毘沙門天の持つ対魔の面が星の怒りを昇華させた。まあここのところストレスが溜まりがちで憂さ晴らしをしたかった、というおまけの目論見は聖に見抜かれているが。
かつて星を苦しめた毘沙門天の役目が救いになる日が来るとは、僧侶の言うことではないが、長生きはするものかもしれない。
そんなわけで、多少の不満はあれど、星はまあまあ現状に満足している。が、聖はそうでもないらしい。

「人々を怯えさせずに事を納めたのは立派だと思いますよ。だけど、貴方にはやはり留守番を任せるのが一番よさそうですね」

ため息をついて、聖は部屋を後にした。

(ごめんなさい。だけど、こればかりは聖の頼みでも聞けないわ)

星は聖を慕っている。ゆえに、いついかなる時も聖に従うとは限らないのだ。
しかし、と星は考える。
『お前はこのままでいいのか?』――正邪の囁きが反響する。さて、星はいかに生くべきか。



〈地獄の中心で財を喰らった獣〉

ぐらぐらと、視界が揺れている。
陽炎のように立ち昇るのは真っ赤な血潮。見渡す限り一面の赤、鉄臭いにおい。時折聞こえてくるおぞましい叫び声は、かつて血の池地獄に堕ちた亡者達の悲鳴だろうか?

(ムラサが目を回すのも無理はないわ。あの子意外と小心者だもの)

かく言う星も気分が悪くなってきて口元を覆う。長居は禁物だ、早く目的の獣を見つけなければ……一面赤の世界に、ぼんやり白い背中が見える。星よりずっと背の低い、もしかしたらナズーリンより小さいかもしれない子羊だった。

(間違いない、こいつが饕餮だ)

饕餮は星の気配に気づくとはっと振り返った。

「誰だお前!」
「はじめまして、寅丸星と申します。いつぞやは仲間の舟幽霊がお世話になりました」
「舟幽霊……なるほど、妖怪寺の一味か」

饕餮は丁寧に挨拶する星をじろじろと遠慮なく観察して、大きな得物を片手に唸った。

「しかしどうなってんだ。お前はあの灼熱地帯を通り抜けられそうにない。また例の強欲姉妹がツアーでも始めたか?」
「いいえ、その件なら霊夢さんがきっちり片付けたはずですよ」
「ならお前は一体どこから……」

首を捻って、やがて思い当たる節があったのか「まったく、厄介な秘神様だよ」とぼやいた。

「で、お前は何をしに来た? オオワシ霊達の開く隠し芸大会なら年明けだぞ」
「酔狂なことやってますね」

畜生達も愉快に年末年始を過ごしているようで何よりだが、元より滅多に寺の外に出ない星が畜生界の催しなど知る由もない。

「それじゃあ何か? その眩しい宝塔をくれるのか?」
「預かり物を渡すわけにはいきません」
「なら喧嘩かね? いいぜ、ちょうど暇してたんだ、喜んで受けて立つ」
「違いますよ。私は喧嘩が苦手なのです」
「なんだなんだ、まさかそんな真っ青な顔をして観光に来たわけじゃあるまいし」

饕餮がうんうん唸る傍ら、星は気分の悪さを指摘されたのに内心冷や汗をかく。
これでも修行を積んだ身、長年精神を鍛えてきたはずだが、少しでも気を抜くと旧血の池地獄の積もり積もった怨嗟に心をやられそうになる。早く用事を済ませなければ、饕餮の餌食になるかもしれない。

「確かめたかったのですよ。何もかもを喰らう貴方なら、欲望だって食べてしまえるのではないかと」
「……ほう?」
「まだ石油噴出の原因が明らかでなかった頃、聖は石油を、旧地獄の怨嗟を抑えてくれる貴方をありがたい存在ではないかと考えていました。私も貴方がどんな妖怪か自分の目で見てみたくなったのです」
「敬愛する師匠のために、か?」
「いえ、私のためです」

星は笑ったつもりだったが、うまく笑顔を作れていたかわからない。緊張と悪心で、ただ立っているだけでも己の中の何かが蝕まれてゆく実感があった。

「なるほど、お前の目的が読めた」

饕餮は牙を剥き出しに笑う。饕餮の牙は虎の牙――虎妖怪であるはずの星よりずっと鋭利だった。

「煩悩の消滅は仏教の目的だもんな。――頼むから欲を食ってくれ。欲が失くなれば、綺麗な僧侶に生まれ変わって浄土へ行けるから……そうじゃないか?」

饕餮の笑いに呼応するように、血の池地獄から血飛沫が舞った。星の視界が真っ赤に染まり、いよいよ意識が遠のく気配がしてきた。

(まるで赤気だわ)

朦朧とした意識で、星は昔読んだ書物を思い出す。聖徳太子の晩年に天に赤気が現れ、百済の法師が『これは蚩尤の赤気です。太子の死後に逆臣が子孫を滅す前兆です』と奏上し、太子も頷いたという、嘘だか本当だかわからない話である。

(もしかしてこの子羊、饕餮じゃなくて蚩尤なのかしら)

蚩尤とは、大陸において黄帝と矛を交えた逆臣の代名詞だ。そして、毘沙門天と同じく軍神の一面を持っている。
しかし星の武力は聖はおろかムラサや一輪・雲山にも劣り、軍神としての星は無力だ。饕餮には到底敵いそうにない。

(私が喰われておしまい? 欲だけ吸い取られて……悪くないかもしれない、けど)

ぐらぐらして思考が纏まらない。饕餮と蚩尤を混同し始めたのも、饕餮の持つ只者ならぬ気配と地獄の怨嗟が星の判断力を鈍らせるせいだろう。
それでも星の生まれ持った野生の勘は、このままでは危険だと告げる。

「さあ、どうする、虎のお嬢ちゃん?」

ぐらっと身も心も傾きかけたが、星は両足の裏に力を入れ、踏ん張って踏みとどまる。

「私の欲を残さず食べてほしい――なんて、私が本気で言うと思いましたか?」

気力だけでも負けないように、星は口元をつり上げてみせた。
無様な姿は晒せない。毘沙門天の代理として、命蓮寺の僧侶として。
生きることは苦しみであり、長寿の妖怪であればなお苦しみは増すが、どんなに生が苦痛でも、星は饕餮に己の命運を委ねたくない。

「私が確かめたかったのは、貴方が煩悩を消してくれるかじゃない。そんな魅力的な能力を持つ貴方を前にしても、なお自分を保っていられるかです」
「どう見てもフラフラだけどな」
「ええ、本当に吐きそうで倒れそうで……でも、貴方に食べられたくないので」
「吐くならエチケット袋にしてくれよ、掃除が面倒だ」
「た、耐えます。……嘘もついた。酒も呑んだ。遠い昔に何人も殺して肉を食った。犯した罪は貴方に頭から丸かじりされたってきっと消えない。それでも私は、今の寅丸星がいいのです」
「おい、私を勝手に訴え仏にするなよ」
「ああ、すみません、もう自分でも何が何だか……」
「ったく、無駄話を聞かされるだけじゃ大損だ。まさかタダで帰れるとは思ってないよな?」

饕餮がドスの利いた声で迫ってくる。星は気力を振り絞って、宝塔を掲げた。瞬く間に財宝の山が饕餮と星の間に築かれた。
饕餮が目を丸くする。法の光は怨念だらけの地獄からも財宝を生み出せるようだ。

「こりゃたまげた。お前、僧侶がヤクザ者に金品を渡す意味がわかっているのか?」
「今日の私はただの妖怪として来ました。私の仲間は誰一人、今、私がここにいることを知らない。そしてここには貴方の他に誰もいない。私的な取り引きですよ」
「詭弁だな」

饕餮が大きく口を開き、獰猛な牙が剥かれる。
獣の咆哮が響き渡った次の瞬間、星が出した財宝はすべて饕餮に吸い込まれて失くなった。

「ああ、クソまずい、噛んでも味がしない」

唖然とする星の前で、饕餮が膨れてもいない腹をさすりながらぺっと唾を吐いた。

「宗教家ってのはどいつもこいつもストイックで欲望の味が薄いんだ。お前程度の欲望じゃ小腹満たしにすらなりゃしない」
「……」
「わかるかい? 欲は生きている証だ。私はそんな欲望まみれの連中が大好物ときている。その点、あの強欲姉妹は魅力的だったねえ」

恍惚とよだれを垂らす饕餮に、何というゲテモノ喰いか、お腹を壊さなければいいけど、と思ったが、星はもはや口を挟む余裕がない。

「それでも、もしお前が山の神みたいな本物の神なら、まだ交渉の余地も考えたがね。虎のお嬢ちゃん、それなりに修羅場は潜っているようだが、ヤクザ者と取引するには経験不足だな。こちとら特定の宗教団体から献金をされるのはごめんだ」
「……そうですか。私も考えが甘かった……」
「だからこの話は“なかったこと”にしてやる。証拠の金銀財宝はどこかへ消えちまったしなあ」

――証拠なら、貴方の胃袋にあるくせに。
饕餮はもはや星に興味を失くしたのか、血の池に飛び込んで悠々と泳ぎ出した。遠ざかる背中はやはり小さく、伝説に語られる軍神・蚩尤と同一かは定かでないが、まごうことなき大物の妖怪であったと星は悟る。
緊張の糸が切れて膝をついた星の背後で、扉が開く音がした。

「話は終わったみたいだな。約束通り、帰り道を用意してやろう」

星は用意された扉を辛うじてくぐったか否か、判断がつかないうちに記憶が途切れた。



目が覚めて、真っ先に飛び込んできたのは心配そうな聖の顔だった。

「ああ、よかった! 突然いなくなるから、どうしたのかと……」
「……ひじり」

抱き起こされて、星はようやくここが命蓮寺の星の私室だと気づいた。

「本当に心配したんですからね。大人しくなさいと戒めたばかりなのに、貴方はちっとも聞いてくれないのね」

聖の話によると、聖の背後に突然扉が開き、隠岐奈がぐったりした星を抱えて出てきたそうだ。驚く間もなく隠岐奈は「そいつをしっかり休ませてやりな。新年は大黒天を拝むように」と言って扉と共に消えた。
星はしばらく意識不明のままだった。身体に染みついた血のにおいで星の行き先を悟った聖はいたく心配したらしく、辺りには薬箱やら魔除けの護摩やらが散らばっている。

(そうか、摩多羅神が)

まだ気分は悪かったが、地獄の怨嗟から離れたおかげか意識は次第に鮮明になる。
すべては星の背後に現れた扉から始まった。
大晦日まで残り一週間を切り、いよいよ年越しの準備も大詰めとなる中、扉の開く音がしたと思ったら秘神が突然背後から現れて「旧血の池地獄に行きたいか?」と出しぬけに聞いてきたのである。
星はあまりに突飛な出来事に目を白黒させたが、新たな招かれざる客だと思えばどうでもよくなった。この一ヶ月で変な耐性がついたものだ。
隠岐奈の目的は不明で、星が旧血の池地獄を気にしていたのをどう聞きつけたのかもわからないが、隠岐奈と対話を続けるうちに、ふっと(行ってもいいかな)という気になってしまった。

――だけどこの神様は、たとえ私が饕餮に食われても、地獄の狂気に精神を壊されても、助けてはくれない。

承知の上で星は隠岐奈の誘いに頷いた。饕餮と話をしたかったからぜひ連れて行ってほしい、ただし、話が終わったら必ず命蓮寺まで帰してくれ、と念を押して。隠岐奈の目論見は依然として謎のままだが、約束はきちんと果たしてくれたようだ。

(やっぱり本物の神様は侮れないわね)

大黒天を拝めと残したそうだが、摩多羅神もまた大黒天と同一視された神であり、密教とも縁が深い。星は心の中で隠岐奈を少しだけ拝んで、険しい顔の聖に微笑みかけた。

「星、正直に話しなさい。どうして一人で勝手に旧血の池地獄まで行ったのですか」
「そうですね……自分探し、みたいなものでしょうか」
「はい?」
「招かれざる客に会いすぎて、いっそ私自身が招かれざる客になろうと思ったのかもしれません。こないだの天邪鬼に何かひっくり返されましたかね」
「はあ……?」

星自身、こんな大胆な行動をすると思っていなかったのだ、まして聖は予想外の返答に呆気に取られたようだった。人間の若者が使う『自分探し』を長寿の妖怪に当てはめるのもおかしいが、今の星にはそれ以上にしっくりくる表現が他にない。
星は旧血の池地獄での出来事を思い出す。宗教に対する嫌悪感を示しながら、饕餮は『欲こそ生きた証』と割と核心に近いところを突いてきた。その昔、出家とは生きながら死者の世界に身を置くようなものとされた。生は苦、苦は煩悩すなわち欲望より生ずる。煩悩を消そうと修行に励む僧侶の欲が常人より薄いと認識されるのは当たり前かもしれない。
そうだ、その饕餮に詰め寄られて、星は財宝を渡してしまった――。普段、財宝の扱いを戒める身でありながら、いざとなれば命を惜しんで金を差し出すとは、なんたる無様な。星は自嘲の笑いが溢れてきた。

「聖、ムラサを改めて労ってやってくださいね。あんなおぞましいところに行かせて。無茶させちゃ駄目ですよ。それから、自分の欲望はやはり自分の力で解決しないといけません。饕餮に会って改めて思い知りました」
「……」
「私、宝塔、使っちゃいました。……ふふ。普段あんなにお金の話を嫌いながら、結局は私も追い詰められればお金で命乞いをするんですね」
「追い詰められた者には相応の行動しかできません。決して貴方の本性などではないわ」

叱ってくれた方が楽なのに、こういう時に限って聖は優しい。しかし聖のそんな優しさに救われているのも事実である。

「私が饕餮の話をしたのを覚えていたのね。だけど危ない橋を渡るのはやめなさいな」
「私が自分で決めてやったことですよ」

心配そうに覗き込む聖に、星は笑って答える。今度はうまく笑顔になれたと思った。

「いつだってそうです。聖の弟子として出家したのも。毘沙門天の代理を引き受けたのも。……あの時、聖達を見捨てたのも。ぜんぶ私の意志です」
「……星」
「だから、聖も変に気負ったりしないでくださいね」

聖は眉を下げ「困った子」と笑った。
自分を追い込んでわかったのは、星は星以外の何者にもなりたくないということだ。だがありのままの星はただの妖怪だ。本物の福の神じゃないから、敬愛する人に幸せをあげられない。力不足で軍神としても役に立たない。
それでも星にできることはあるはずだった。

(聖。貴方の苦しみが少しでも減るように、貴方が幸せであるように、私はそう祈っているのよ)



〈誰が為に毘沙門天は在る〉

いよいよ大晦日を明日に控えた昼下がり、星は本堂の点検をしていた。
本堂はぴかぴかに磨かれ、絢爛豪華な設えの仏壇、仏具の光が眩しい。

(除夜の鐘は亥の刻の終わりから。年が明けたらお雑煮を振る舞って、新年早々に聖からのお説法……)

段取りを頭の中で確認する。結局、大晦日にもナズーリンは間に合いそうにないが、星の役目は例年通りだし、何なら寅年でなくなるぶん今年より落ち着いているかもしれない。
閼伽もよし、花もよし、奥に控える仏様も穏やかな顔つきである。

「相変わらず、ここは煌びやかで目眩がするね」

その時、不意に背後から忍び寄る者がいた。星が振り向くと、思ったとおり、聖の宿敵・豊聡耳神子がわざとらしく笏とマントの裾で顔を覆っていた。

「質素倹約の心得を説くのに、仏壇を煌びやかに飾るのは矛盾ではないか?」
「仏様のおわす浄土は見る者の目を奪う金銀財宝や美しい花々で溢れています。願わくば、来世は厭わしい穢土を離れて浄土へ――そんな祈りを、仏具に込めているのです」

神子は鼻で笑ったらしかった。仏教を日本に広めた立役者の神子がそれしきを知らないはずがないのだ。

「大日如来は、大いなる宇宙の真理であり、世界の体現者です。世界には煌びやかな装飾品も存在する。当たり前のことでしょう?」
「なるほど、人も妖怪もあまねく受け入れん――聖白蓮の思想とも合致するわけだ」
「その聖でしたら、今はちょうど出かけていますよ。聖に何かご用があったのではないですか?」
「知ってるよ、あいつが留守だってのは」

神子が寺に来る時は、決まって聖や一輪・雲山と決闘するか弁舌を戦わせるか、どちらかだ。では何をしにきたのか。首を捻る星を、神子はしげしげと眺める。

「しかし、改めて毘沙門天も風変わりしたものだ。私が祀った毘沙門天はこんな姿ではなかったね」
「この世のすべては移ろいます。移ろわぬものがあるとしたら」
「不死を追求する私、かな」

神子はにやりと笑う。最近は聖も神子と事を構える回数が減ったと聞いていたが、やはり根本的な思想は相容れないようだ。
それはさておき。本物の神じゃないだの毘沙門天っぽくないだの今まで散々言われてきたが、では飛鳥時代の毘沙門天はどんな姿だったのだろう、と星も気になってきた。

「第一、私が祀ったのは四天王が一員、多聞天と呼ばれたものだ」
「守屋を討つ戦勝祈願として、でしたっけ。仏敵を倒すため、国家安穏のため……は、建前ですね」
「まあ、武力を頼みにしたのは間違いじゃないよ。後世の軍神に近い。もう少し勇ましい形をしていたはずなんだがなあ」
「私が軍神らしくないとおっしゃりたいのですか?」
「この寺じゃ山彦と並んで一番弱そうだ。とはいえ軍神の性格を持つ神ならすでに山の神がいる。はなから勝負にならないのなら、客の取り合いにならなくていいね」
「そうですね、元より私は軍神ではありませんけど、護法の神として、どなたかよりは本気で三宝を敬っているつもりですよ」

弱そう、の挑発にもめげずに星は食らいつく。どうやら神子の目的は最初から聖ではなく星だったようだ。星個人は今の神子に因縁などないのだが、商売敵として喧嘩を売られたら勇んで買うぐらいはする。

「貴方が今年最後の招かれざる客のようですね」
「今年はまだ明日があるけれど?」
「明日のお客様はすべて招かれるべきお客様ですから」

星はつとめて穏やかに笑う。これしきの来客ではもう動じなくなっていた。

「そうだ、せっかくですし、私も神子さんにお聞きしたいことがあります。貴方の晩年に赤気が立ち込めて子孫が滅びる予言があったと。あれは本当ですか?」
「そんなの嘘だよ」

神子はあっさり明かしてしまう。

「いや、本当を言えば、予言はあったが、残したのは百済の法師でなく私だ。しかし自分で末代だと予言するのは出来過ぎているからな」
「だから百済の法師の手柄にしたのですか?」
「子孫が途絶えるなんて当たり前だよ。私の子孫なんか、初めから一人もいないんだから」

涼しい顔で言ってのける神子に、まあそうだろうなと星は納得する。交わりがなくとも子がなせたのは神代のことで、どこぞの逆転大奥みたいに妃の方が男だった、とでもない限り、神子に血のつながった子はいないはずだ。

「こちらからも一つ、聞いていいか。私の祀った毘沙門天を拝んだ聖命蓮は、本当に醍醐帝の病を治したのか?」
「あら、そんなの、嘘です」

星もあっけらかんと聖から聞いた話を語った。

「弟様は優れた験力をお持ちで、お召しがあったのは本当ですけど、祈祷の甲斐もなく帝は崩御しました。だから弟様を大僧正に任ぜようなんて話が出るわけないんです」

世間に広く流布しているのは、地味で呆気ない記録よりも華やかな絵巻とそれについた詞書の方だ。空想は時に事実を凌駕する。なぜそんな仰々しいことに、と思わなくもないのだが、流布した伝説のすべてが誤りでもないので放っておいている。

「なぜ否定しない? お前達にとって都合がいいからか?」
「信じる人達にとっては本当のことですから。弟様は特に民衆に広く慕われたお方でした。民の素朴な希望を摘み取ってしまうのも殺生な話でしょう?」

神子だって、厩の話を『嘘だ』と言ったりはするが、聖徳太子にまつわるすべての伝説をいちいち肯定したり否定したりはしない。放置した方が都合がいいのはお互い様なわけだ。

「お前はさっき、軍神としての毘沙門天ではないと言ったな」
「はい」
「では、何のための毘沙門天だ? 一介の僧侶にあらず、ただの妖怪にも戻れない。いくら聖白蓮の頼みとはいえ、お前が神を騙る理由はどこにある?」
「おかしなことを」

やけに質問の多い人だ。そんなことを聞くために、忙しい年末に訪ねてきたのだろうか。とはいえ厄介な商売敵に適当な返答をするわけにはいかない、星は襟を正した。

「昔、聖や弟様が信仰した毘沙門天は、護法の神です。仏敵と戦い、仏法に帰依する者を守護する守り神。そして何より、聖の祈りを受け止めるために私がいるのです。たとえ神としての私が偽りでも、私自身の信仰心や、聖や衆生への思いは本物です」

聖は初め、妖怪に毘沙門天の代理を任せる理由をこう説明した。
妖怪も、人間も、三宝を篤く信仰する者達を分け隔てなく守ってほしい。毘沙門天は護法の神様だから。妖怪は恐れるけれど、妖怪の星が代わりになってくれれば、きっと毘沙門天の加護が届くはず――。
思えばいくら優秀だと太鼓判を押されても、神の代理を務めるのは苦難の道で、自分には不向きだったんじゃないかと考えたり、辛くて投げ出したいときもあった。そこまで深刻にいかずとも、億劫で面倒な時もあった。
それでも今の星は胸を張って言える。この仕事は自分の誇りだと。聖が星を信じて毘沙門天の代理を任せてくれたことに、感謝していると。
神子は自分から問いかけたくせに、さして興味もなさげに「そうか。ところで」と急に話題を変えた。

「平安の都はどこにあったかな」
「どこって、山城国の北方ですよ」

そこで星は神子の思惑に気づく。
毘沙門天は北方の守護神であり、鬼門とされる丑寅は北東のことだ。御所は都の北部におかれ、上皇の院を警備するのも“北面の武士”である。
そもそも、密教と国家権力が切っても切れない繋がりを持つ。護法の神はすなわち護国の神でもあるのだ。

「濁すのはよくないな」
「濁したわけではないのですがね」

無意識に権威主義的なものから距離を置こうとしたのを見破られて、星は苦笑いをこぼす。聖なら「それが何です?」と容赦なく弁舌で叩き返してくれそうだが、星はそこまでやり合えそうにない。
毘沙門天はとかく多様な性格を持つ。帝釈天の配下・四天王が一員の多聞天として動き、十二天の一人に数えられ、七福神が一柱となり、単独で毘沙門天として祀られる。本物の毘沙門天が多忙極まりないわけである。

「お前は都合よく毘沙門天の多面性を使い分けている。ある時は財宝神、ある時は仏敵と戦う正義の軍神、ある時は護法の神。だから妖怪の身でありながら神の化身が務まるのさ」

神子が星との距離を詰める。饕餮の時もそうだったが、背丈と威圧感は必ずしも伴わない。見下ろすのはこっちなのに、天から見下ろされているような感覚に陥る。

「頑丈な精神は、聖白蓮とよく似ている」
「褒め言葉と受け取っていいんでしょうか?」
「面の皮が厚いってことだよ」
「でしょうね」

聖徳太子が信ずべし、貴ぶべしと唱えたことに由来する信貴山。そこで星は聖と出会い、仏門に帰依し、毘沙門天の代理となった。
そう考えれば、神子との出会いも偶然でなく宿世なのだろう。まさか聖徳太子がこんな人だったなんて知りたくなかった、という気持ちがないと言えば嘘になるが。

(まあいいでしょう、結果的に聖は楽しそうだし)

自分に本物の幸福を与える力はない、とは思ったが、心配しなくても聖は自分で勝手に幸せになれそうである。その手を携える相手には多分に思うところがあるが、たぶん自分は何も言わないんだろうな、と思う。

「初詣にはおいでになるんですか」
「道教(こっち)はこっちで忙しいんだよ。第一、私はお前みたく複雑怪奇な毘沙門天を今更拝む気にはなれないね」
「そうですか、安心しました」

またも神としての星は見放されたが、星だって偽りの伝説に塗れた聖徳太子に祈られたくはなかった。

「虎は死して皮を留め、人は死して名を残す。私はきっちり名を残した。妖怪のお前は何を残すだろう」
「何も残らなくても、爪痕くらいは残しておきたいものですよ。できれば貴方の喉元にでも」
「こんな風に?」

神子はにんまり笑って、懐から一枚の紙を取り出す。見覚えのある宝塔の絵柄に星はぎょっとした。

「アビリティカード、だったか? ずいぶん巷を騒がせたのに、今やすっかり落ち着いてしまったな」
「そ、それをどこで……」
「魔理沙が蒐めていたのを聖白蓮に渡したそうだ。それを私が聖白蓮から預かった」
(聖ー!!)

そういえば前に魔理沙が魔法使いのよしみだとかで、聖にカードを見せに来た。まさか星の書き文字を見られたのかと焦ったが、何も言われなかったため、聖は見ていなかったものと思っていたが。よりによって神子に渡さなくたっていいじゃないか。
頭を抱える星を神子は愉快そうに見下ろす。

「何とまあ、控えめに見えて自己主張が激しいというか。しかし、たった二本で魔理沙に対抗するのは無理があるんじゃないか?」
「言わないでください、何も言わないでください」
「どうせ凄いぞアピールするならもっと大きく出てみろよ。お前に屠られた数多のシューターの魂が救われないだろう」
「シューターは死んじゃいないんですよ」
「ふっ。あいつ、自分で諭すよりこっちの方が効くってよくわかっているね」
「……なんで商売敵の頼みを聞いちゃうんですか」
「たまには敵に塩を送ってやってもいいと思ってな」

星はぴくりと耳を動かす。言わずもがな、毘沙門天を厚く信仰した上杉の龍が宿敵の甲斐の虎に塩を送った話は、有名な後世の美談である。この場合、現在進行形で毘沙門天に帰依する星より過去に信仰した神子の方が上杉の龍にあたるわけか。

「気を落とすなよ。因果は巡り巡って、行いに応じた報いを与える。お前達がよく唱えていることじゃないか」

傷口に塩を塗り込むような物言いに、星はいたたまれなさで顔を上げられない。確かに効果は抜群だ。聖から「無闇に己の力を誇示するのではありません」と叱られる方がどんなに気楽だったか。神子の来訪の目的はこれだったわけだ。もっともらしい問答で引き延ばすとは意地が悪い。
神子はからから笑って「では、よいお年を」と颯爽と帰っていった。
プレッシャーから解放された星はそのまま座り込む。

(聖ったら、聖ったら……)

自分には、命蓮寺の看板を背負ってあのけったいな聖人の相手をするのは無理だ。改めて思い知った。



日が落ちる頃になって、聖はようやく帰ってきた。星が梵鐘磨きの手を止めて聖を恨めしく見上げると、聖はすまし顔で、

「あら星、仕事熱心で何よりです」
「意地悪ですよ、聖」
「その様子だと、神子はしっかりやってくれたようね」
「あの人のどこがいいんですか?」
「何が駄目なの?」
「ええと……いや、やっぱりいいです」

神子と聖、二人が歪み合いになっても困るが、勝手に結束されるのも考えものだった。なまじ頭脳や行動力があるぶん、どう転ぶかわかったもんじゃない。
文句の言う気が失せた星の目線は、綺麗に磨かれた梵鐘に向く。

「今年もまたつくんですよね」
「はい」
「素手で?」
「素手で」
「……普通に撞木を使えばよろしいのでは」
「住職が直接ついた方が、ありがたみあって煩悩も消えるでしょう」
「うん、まあ、変わった寺ですよね、うちって。住職は物理だし神の化身は妖怪だし」

それこそ今更というか、妖怪僧侶がうようよいる寺がまともなわけないのである。

「星。やっぱり、毘沙門天の代理は嫌ですか?」
「いいえ」

星はきっぱり否定する。神子には見事に一杯食わされたが、己の在り方を再確認できたのも事実である。

「聖が認めてくれたほど、私は優秀じゃないけど、私は今の私に満足していますよ」
「前向きね」
「どうせなら後悔しないように、ただそう心がけているだけです」

冬の日は瞬く間に沈んで、寒気は一段と厳しい。そろそろ中に入ろうと思ったところで、

「私は後悔したことなんて、数えきれないほどあるわ」

聖がぽつんと言った。墨染の袈裟が夕闇の中に溶けてしまうようだった。

「みんなが心配だった。一輪や雲山やムラサは、地の底とはいえ、三人が仲違いでもしない限り、仲間がいて心強いでしょう。だけど地上の貴方は監視役と二人きり。貴方の正体が露見してしまったら……私は大変なことを押し付けてしまったんじゃないかと、後悔したわ」
「……聖」

たまらず星は聖の手を取った。聖は外出のため、星は拭き掃除のためにどちらも手が冷たい。互いに温もりを求めるように、手のひらを擦った。

「そう思ってくれていただけで、充分です。ナズーリンとも色々ありましたけど、今は仲良くやってますし。……もうすぐ新年です。おめでたい時に暗い顔は、やめましょう?」
「……ええ、そうね。新しい年が来るんですもの。明日の大仕事もありますし、笑顔でなくちゃね」

聖も星の手を撫で摩って、笑った。
二人も、命蓮寺の僧侶達も過去を忘れたわけではない。最終的には悩みのなくなった無我の境地を目指すのだろうが、今はまだ、穢土に足をつけて生きる者として、過去を携え、その上で今を楽しく生きてゆきたい。
「ああ、そうそう」と聖は懐から何かを取り出した。それは妖怪兎に押し付けられた兎大黒天の木彫りだったが、見た目が少し違うようだ。

「今日はこれを人里の職人さんから受け取ってきたの」

星が渡された木彫りを観察すると、兎の持つ大袋の部分が毘沙門天、小槌の部分が弁財天に細工し直されている。そして中央は来年主役の兎を模った大黒天。
いささか風変わりだが、三柱の福の神を合わせた三面大黒天である。

「期間限定ですが、もう二柱くらい神様がついていてくれれば、貴方も少しは楽になるでしょう?」
「……聖」

片目をつむる聖から、星は木彫りを恭しく受け取った。三面大黒天は豊臣秀吉が拝んだ立身出世の縁起物、妖獣の成り上がりである星には相応しい。
聖はいつのまに依頼していたのだろう。ずいぶん改造してしまったが兎の大黒天はそのままだし、てゐも怒りはしないだろう。しばらくこの三面大黒天は命蓮寺に飾られることになりそうだ。
そこへ「星ー!」と一輪の元気のいい声が飛んできた。

「ナズーリンから手紙だよ! 大晦日には間に合わないけど、元日には帰ってこれるって!」
「本当ですか!」
「あら、よかったわね、やっぱり今はあの子がいないと落ち着きませんもの」
「なんでも仕事ぶりが大黒天様に気に入られて、毘沙門天様も大喜びで、おかげで年末年始のボーナスが弾むってさ」
「もう、またお金の話!」
「いいじゃないですか、星。たまにはお年玉でもあげたら?」
「ナズーリンが嫌がりますよ、子供扱いするなって」

と言いながら、星はもうそんなにお金のことで怒っていない。本当にお年玉を用意してもいいかもしれない。

(ナズーリンが帰ってきたら、何から話そう)

思えばナズーリンのいない一カ月でいろんなことがあった。迷惑な招かれざる客達、星から飛び込んだおぞましい地獄の記憶、聖と確かめ合った絆。ナズーリンはうんざりしつつも聞いてくれるだろう。
星は苛立ちも憂鬱もすべてが吹き飛んで、心は軽やかである。まだまだ仕事は山積みで年明けからもっと忙しくなるのだが、大晦日も新年も気持ちよく迎えられそうだ。



寅丸星。虎の妖怪にして聖白蓮の弟子たる命蓮寺の僧侶。
――そして何より、財宝神にして軍神にして護法の神である、毘沙門天の代理だ。


寅年に間に合った! というわけで『寅丸星と毘沙門天信仰』がテーマの話です。またの名をこじつけ合戦。何だか大黒天の話ばかりしていた気もしますが。
できれば神奈子も書きたかったんですが神子と役割が被ってしまうので没になりました。あと藍も例によって出る予定でしたが毘沙門天に掠らないわ文字数食うわでオミットされました。そのぶん星と聖に焦点がいって話がすっきりした気もしますが。
よいお年を!
朝顔
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コメント



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1.90奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
2.100alias削除
星ちゃんがこじつけ合戦の中で自分の在り方を改めて確認できてよかったです。
一年間ありがとうございました。
3.100巳己巳削除
毘沙門天周りの様々な伝承を絡めた軽妙なやり取り、読んでいてとても面白かったです。
こういうこじつけ、大好きです。
4.100東ノ目削除
幻想郷の毘沙門天周りのキャラ、こうしてみるとナズ星以外にも色々いるけど、ナズ星以外どいつもこいつもろくでもねえなと笑いながら読んでいました。今年もよろしくお願いします。
5.100植物図鑑削除
星の聖を思う気持ち、命蓮寺の方々、その他色々な登場人物が入り乱れてとても良い読後感でした。色々な関係性が味わえてとても楽しいお話だったと思います。ありがとうございました。
6.100ヘンプ削除
信仰の考え方がとてもキャラごとに出ていてとても面白かったです。この星とても可愛い……
7.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです。
全体として明るい雰囲気で、分量の割に読みやすかったです。
オムニバスながら一連の話がしっかりとテーマに則っており、一つの話として綺麗に創られていたと思います。
有難う御座います。
8.100名前が無い程度の能力削除
己の帰依する毘沙門天について見つめなおす星がとても良かったです。個人的にはてゐとの邂逅が好きでした。
9.100Actadust削除
年末のドタバタ感のコメディと、その中で寅丸星の内面を綿密に描いたその退避が面白くて惹かれました。
10.100夏後冬前削除
文体はあっさりで、内容が超濃密で、これはめちゃくちゃ面白いに決まってるやつ。星の内面が万華鏡のように鮮やかにいろんな面をだしてくれてて素晴らしかったです。大みそかに読むべきだったなぁ。
11.100南条削除
とても面白かったです
自分の在り方を見つめなおす星がよかったです
命蓮寺はやっぱり素手で鐘を突くのか
12.90のくた削除
星司会のバラエティトークショーのような流れが面白かったです