終.
幻想郷、某年某月某日、冬の頃。
その端、艮の方角。
その大きさに見合わずひっそりと、ともすれば他の目から隠れているような、異な佇まいの屋敷。
「八雲邸」にて。
八雲紫は疲れていた。
「……ええ、とりあえずそれでいいわ。ご苦労様」
急繕いにはなったが、粗方の調整が終わったと藍から連絡が届く。
リラックスしていたところを突然叩き起こされたような気分だ。
全く、何を考えているのだろうあの娘は。
結界の緩みに気が付いて急いで駆け付けたらふんぞり返って「ストーブとかいうやつの燃料、持ってんでしょ?寄越しなさいよ」ときた。
ただでさえ月が遠い冬は結界の修繕管理やらなにやらで調子が出ないというのに。
心なしか鼻がむずむずする。
この私の体調を崩させるとは、もう少しきつめに灸を据えたほうがよかったかしら。
本人はちょっとした呼び鈴くらいに思っているみたいだけれど、あの結界の揺らぎ(と管理する私の体調不良※重要)によって多少の影響が出るかもしれない。
内外どちらか、それとも両方か、何時の何処か。
さしたる問題にならない程度だろうというのは、その通りではあるのだけれど。
とりあえず必要な対処は終えた。
考えた傍から境界の揺らぎに呼応して世界が揺らぐ。
恐らく似通った環境が整えば干渉してしまうだろうけれど。そうそう偶然もないでしょうし、気にしない方向で。
なんにせよやれることは全てやったので、これ以上の後処理は藍に任せて一息つくとしましょう。
ああ、とても疲れた。
「やっぱり、駄目ね、冬は」