少女時代、空を飛びたいと思ったことは一度もない。
トンと境内から飛んでいけば、何処までも飛んでいくことができた。
私に行けない場所はない、と意思や決意はなく、ただ漠然とした感覚で理解していたような気がする。
胸に秘めた想いは力に変わる。心が生み出す熱量がそのまま現実に解き放たれた。感情の機微が心を乱し、されども感情の落差が力を跳ねあげた。あの頃はなにもかもがときめいて見えた。弾幕の投影は自己表現、心と心のぶつけ合いは胸が踊る。普段、面倒くさいと思うばかりの私でさえも否応なしに高揚させられる。想いを力に、だから私は何処までも飛んでいけた。それこそ夜空に浮かぶ月にさえだ。私を止められる者は誰もいないという無根拠な万能感、とはいえ孤高ではなくて、周りもみんな追い縋ってくる。抜きつ抜かれつ、抜いて抜いて抜き去って、勝ったと思った瞬間に足首を掴まれて引き摺り込まれる。形振り構わない一幕にも、秩序があり、終わった時は後腐れなく、誰もが笑って幕を閉じる。そんな毎日が私は嫌いではなかった。何時までも続く気がして、でも何処かで終わりは確実にやって来て、できることなら次の世代まで繋がって欲しいと願いを込める。
いつから私は空を飛びたいと願うようになったのだろうか、いつから私は他人の弾幕に見惚れるようになってしまったのだろうか。誰も彼もの弾幕が眩いばかりにときめいており、想いは力にならず、熱量は高まらず、焦る想いが少しあって、どこか諦めてしまったような、それに抗う気持ちが鬩ぎ合って、私の体はいつしか飛べなくなっていた。トンと境内から飛んでいけば、大空に飛び上がることができる。でも、もう何処までも、という無根拠な自信を持つことはできなくなった。私の飛ぶ空は窮屈だった、誰かの飛ぶ空は何処までも自由だった。同じ空を飛んでいるとは思えないようで、心を力に、気持ちはパワーに、感情は夢を現実に変えるエンジンで、衝動でかっ飛べ成層圏! どこまでも早く、もっと速く、ずっと疾く、危なかっしさ全力全開、生き急ぐように私の天井を突き抜ける。
ロケットが空を飛んでいる、白い尾を引きながら空高く飛び上がっていった。
思わず伸ばした手は何を掴むのか。足首を、引きずり落とすのではなくて、私もその場所に行きたいからと必死になって追いすがる。私は何時から追われる側から追いかける側になったのか、羨望の眼差しは私が受けるものだったはずだ。もう一度、あの高みへと、あの場所へと連れていって欲しいと全力でしがみついた。
成層圏に突入して、私の心はこれ以上ないほどに燃え盛り、心も体も魂も全てを燃やして燃やし尽くして、それでもなお加速する少女の足を私は掴み続けることができなかった。ふよふよと宇宙に漂う中、私は確かに月までは行けたんだよ、と微笑みかける。少女は月すらも飛び越えて、太陽系からもすっ飛んで行ってしまった。ああ、そうか、と私は胸を握りしめて、太陽へと吸い込まれるように流れていった。
結局の話、博麗の巫女とは少女にしか務まらない仕事のようだ。
トンと境内から飛んでいけば、何処までも飛んでいくことができた。
私に行けない場所はない、と意思や決意はなく、ただ漠然とした感覚で理解していたような気がする。
胸に秘めた想いは力に変わる。心が生み出す熱量がそのまま現実に解き放たれた。感情の機微が心を乱し、されども感情の落差が力を跳ねあげた。あの頃はなにもかもがときめいて見えた。弾幕の投影は自己表現、心と心のぶつけ合いは胸が踊る。普段、面倒くさいと思うばかりの私でさえも否応なしに高揚させられる。想いを力に、だから私は何処までも飛んでいけた。それこそ夜空に浮かぶ月にさえだ。私を止められる者は誰もいないという無根拠な万能感、とはいえ孤高ではなくて、周りもみんな追い縋ってくる。抜きつ抜かれつ、抜いて抜いて抜き去って、勝ったと思った瞬間に足首を掴まれて引き摺り込まれる。形振り構わない一幕にも、秩序があり、終わった時は後腐れなく、誰もが笑って幕を閉じる。そんな毎日が私は嫌いではなかった。何時までも続く気がして、でも何処かで終わりは確実にやって来て、できることなら次の世代まで繋がって欲しいと願いを込める。
いつから私は空を飛びたいと願うようになったのだろうか、いつから私は他人の弾幕に見惚れるようになってしまったのだろうか。誰も彼もの弾幕が眩いばかりにときめいており、想いは力にならず、熱量は高まらず、焦る想いが少しあって、どこか諦めてしまったような、それに抗う気持ちが鬩ぎ合って、私の体はいつしか飛べなくなっていた。トンと境内から飛んでいけば、大空に飛び上がることができる。でも、もう何処までも、という無根拠な自信を持つことはできなくなった。私の飛ぶ空は窮屈だった、誰かの飛ぶ空は何処までも自由だった。同じ空を飛んでいるとは思えないようで、心を力に、気持ちはパワーに、感情は夢を現実に変えるエンジンで、衝動でかっ飛べ成層圏! どこまでも早く、もっと速く、ずっと疾く、危なかっしさ全力全開、生き急ぐように私の天井を突き抜ける。
ロケットが空を飛んでいる、白い尾を引きながら空高く飛び上がっていった。
思わず伸ばした手は何を掴むのか。足首を、引きずり落とすのではなくて、私もその場所に行きたいからと必死になって追いすがる。私は何時から追われる側から追いかける側になったのか、羨望の眼差しは私が受けるものだったはずだ。もう一度、あの高みへと、あの場所へと連れていって欲しいと全力でしがみついた。
成層圏に突入して、私の心はこれ以上ないほどに燃え盛り、心も体も魂も全てを燃やして燃やし尽くして、それでもなお加速する少女の足を私は掴み続けることができなかった。ふよふよと宇宙に漂う中、私は確かに月までは行けたんだよ、と微笑みかける。少女は月すらも飛び越えて、太陽系からもすっ飛んで行ってしまった。ああ、そうか、と私は胸を握りしめて、太陽へと吸い込まれるように流れていった。
結局の話、博麗の巫女とは少女にしか務まらない仕事のようだ。
素敵だと思います。良かったです。
それがいい方向に作用している気もした。
「無根拠な万能感」この言葉がこの作品を表しているように感じます。根拠がないから、もう手に入らない。同じ方法で取り戻すことが出来ない。自分が燃え滓だとわかっているのに、認めたくない。少し悲しいお話だと感じました。面白かったです。御馳走様でした。
とても良かったです。
なんと言うのか 自分の想像する霊夢像に近い
内面の描写がとても丁寧。
人間の宙を飛ぶという憧れ、浮遊感からくる体のみではなく心の解放感。そして成層圏から連想される少女の儚さ!!!