Coolier - 新生・東方創想話

ハルトマンの妖怪少女

2019/05/18 00:17:44
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「それが、私の過去。私の目が視えなくなった経緯」
 こいしは懐かしい顔をして遠くの方を見る。燐は聞き惚れていたのだが、ようやく口を開くとこんなことを問うた。
「だから、あのメダルを?」
 燐が指したのは食器棚の上に置かれていた十字のメダルのようなものだった。
「うん、あの功績が認められてね。騎士鉄十字章を総統閣下から授与されたの」
 燐は意外なるこいしの過去を知って、圧倒されたようであった。
 その時である。
 部屋の扉をノックする音が響いた。
「お燐、居るのね? 入るわよ」
 その音の主はこいしの姉であり、燐の主人である古明地さとりであった。
「全く、こんな所で油売って。仕事が溜まってるのよ?」
 溜息を吐きながら腕を組むさとり。それに対し燐はまた一つ謎を抱いた。
「……私も国防軍に所属していたのか。ですって? 全く、こいしの法螺話に乗せられたのかしら」
 心を読んで呆れたように話すさとり。燐は肩透かしを食らったように崩れそうになった。
「えっと、つまり……?」
「全部こいしの妄想よ。昔っから私達はこの地霊殿に住んでいたわ。国外になんて出たことすらないわよ」
「じゃ、じゃあ! あの勲章は!?」
 燐はさとりの言に反論するように尋ねる。だが、これにもさとりは極めて冷静に答えた。
「無縁塚で拾ってきたものでしょう。何でもかんでも拾ってくるんだから、もう」
 燐は思わず振り返ってこいしを見た。
 こいしはただちろっと舌を出して戯けるのみであった。
 ――全く、読めない人だ
 燐はそう思いながらさとりと共にこいしの部屋を後にした。
(エーリッヒ)ハルトマンの妖怪少女
上条怜祇
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コメント



0.100簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
うーんこれはこいしちゃん。唐突に始まった軍記もので変な声が出ました。良かったです。
2.100名前が無い程度の能力削除
落ちのまとめ方がものすごく好きです。良かったです!
3.90奇声を発する程度の能力削除
お話しが纏まっていて面白かったです
4.90名前が無い程度の能力削除
2ページ目がちょっと読みにくかったですが
最後まで読むとほんとにこいしって感じで良かったです
5.90保冷剤削除
ちょいちょい差しはさまれるドイツ語がたいへんに、外連味があっていいです。こいつぁいいぜ!
先へ先へ引きずるように進行する状況が、後から振り返ってみるとこちらを丸め込もうとする話術の妙を感じさせるようで、これもにくい。
地霊殿メンバーが今までどういう経歴をたどってきたのか、この点に思いをはせるのは楽しいですねえ、よかったです。
6.100終身削除
まさかそそわで本格的な戦争モノの扉を叩くことなるとは思いませんでした テーマが重苦しくて残酷だからこそ洒落に富んだ口上がより格好良く引き立っていてちょっとニヒルっぽさも有って良かったですm
7.100小野秋隆削除
果たして本当に”法螺話”なのだろうか……というリアリティ。面白かったです。
8.100南条削除
面白かったです
こんな話がすらすら出てくるこいしちゃんのトーク力が高すぎて笑えました
9.100仲村アペンド削除
地霊殿での描写が妙に淡々としているのがツボでした。面白かったです。
11.100こしょ削除
すさまじい話で面白かったです