【質問その4】
『かつて大仙人として仙人界を闊歩したというレミリアさんに質問です。仙人である茨木華扇は、常にシニョンをしていて外した姿を一度も見たことがありません。あのシニョンを外すと一体どうなってしまうのですか』
「えー……そもそもね、あれは外すもなにもないのよ」
「え?」
「あれは体の一部よ」
「一部? 血が通ってるってこと?」
「そそ。パチェはラクダって知ってるかしら?」
「知ってるわ。砂漠に住む馬に似た生き物でしょう」
「あれと一緒よ」
「は?」
「ラクダってのはよくできた生き物でね。過酷な環境下で生き抜くための仕組みが体に備わっているのよ」
「もしかして……」
「そ。ラクダのあのコブ。あんなごっついの2個もつけて。あれって中身が脂肪みたいなもんでね、エネルギーを貯めておけるのよ」
「あの仙人も……なの?」
「ええ。あいつ仙人のくせにごっつ食うでしょ?」
「な、なるほどね、エネルギーを貯めてるのね」
「そういうことそういうこと」
「仙人のくせにねぇ……」
「しかもけっこ~おいしいのよねぇアレ」
「え?」
「まさしく珍味ってやつよ。ほんとたまにしか市場に出回らないから、私も何回かしか食べたことないんだけど」
「ちょっと待って、食べれるの? アレ」
「食べれる食べれる! 当たり前じゃない!」
「くぅおっ……てりしててねぇー! 私も一個とひとさじくらいが限界だったんだけど……」
「でも不思議とクセになるのよね。また食べたくなるわ。めっちゃゲンキでるし」
「ただ次の日顔の油が半端じゃないけどね」
「うーん……食べたいような食べたくないような……。それってどうやって獲れるわけ?」
「シニョンハンターハンターシニョンみたいなのがいるわけよ」
「なんで繰り返すのよ」
「まあその子達にかかっても年に五、六個くらいしか獲れないらしいけど。やっぱ相当過酷な狩りなんでしょうね」
「何者なのよその子達は……」
「そういうわけだからね。仙人のアレは大切なエネルギー源なのよ。やっぱ世間ではどれだけ粋がってようが、霞だけじゃやっていけないってこと」
「というか他の仙人もラクダでいうコブ持ってるからね」
「そ、そうなの?」
「例えばあの青い邪仙。あいつのコブはかなり特殊な例ね」
「どこかしら……」
「芳香よ」
「は?」
「芳香。いっつもそばにいるあのキョンシー。あいつごっつ食うでしょ?」
「ああ、エネルギーを貯めてるのね」
「そそ。あとは元仙人、つまり天人にも同じことが言えるわ」
「あ、ひょっとして」
「桃よ。あいつが頭につけてるやつ」
「なるほどねえ……。こうしてみると、仙人も大変なのね」
「まあ結局霞なんかゼロカロリーもいいとこだからね。その環境下ではいかにコブの栄養で生きながらえるか、そのやりくりが仙人には肝要なの。むしろそのコブを作り出すのが仙人になる第一歩というか登竜門的課題なのよ」
「だからもしパチェが仙人を倒したかったら、まずそのコブを見つけて壊して帰りなさい。そうすれば勝手に弱っていくわ」
「勉強になるわ……」