「私の好きな音はね」
フランドールが白く巨大なベッドに横たわり暗い天井をじっと見つめて言った。
無限に広がるような暗闇が平衡感覚を狂わせ、燭台に照らされた埃が煌めいて漂う。
「星が砕ける音、とっても遠くから、澄んでいて、力強い感じがするの」
「へえ、いいなあそれ。いかにもロマンチックじゃないか。いつ聞けるんだ?」
魔理沙は、フランドールからは手を伸ばしても届かない距離、ベッドの端に深く腰掛けていた。
「適当な星をきゅっとすればいつでも。ああ、今は駄目よ。お姉様に怒られちゃう」
「一度くらい聴いてみたいけど、バレるもんかな」
「そりゃあね、響くもの。お姉さまケチだし」
フランドールは息をついた。
「魔理沙はなんの音が一番好き?」
「一番って言うと難しいな。魔法の音。弾幕の音。風を切る音。星の……一番は決められないなあ」
魔理沙はあまり寝ていないのか、眠たげに答えた。
「なにそれずるい。一番を聞いてるんだから一番を答えてよ」
「だって音なんて、こんな地下室に篭ってでもいない限り幾らでもあるじゃないか。大体、好きなものの序列なんてナンセンスだ」
フランドールは、やっぱり魔理沙はずるいと思った。魔理沙の耳と心はフランドールよりもずっと多くの音を経験しているに違いないし、それをこれみよがしにひけらかすのだから。
地下室の照明はベッドと扉を挟む位置の燭台だけであった。フランドールは真っ暗な天井に手を伸ばして、白い指の間に見える闇がどれも同一であることを確かめた。ベッドに沈んだ体を回転させて、魔理沙のほうを向こうとしたが、背中から伸びる羽がつっかかり、仕方ないので起き上がることにした。
「ほっ」
勢いをつけてフランドールは起き上がった。背中から伸びた魔石がゆらめき、微かにりんと鳴った。
「そうだ、その音結構好きだぜ」
魔理沙が、思いついたように言った。
「え、これ?」
フランドールが右手で右羽の魔石を軽く弾くと静かに、不思議に澄んだ音が再び響いた。深層の鉱石のような音色だった。
「なんていうか、星っぽい音がいい」
「ふーん」
フランドールが、手持ちぶさに枯れ木のような羽をゆらゆらと揺らしてみせると、それぞれの魔石が触れ合い、小鳥たちのささやかな輪唱を奏でる。羽の魔石が七色に点滅し、フランドールは魔理沙に尋ねた。
「触ってみる?」
「いいのか?」
魔理沙の目の奥に期待と好奇心の輝きが灯った。
「まあ、別に……触るくらいなら」
フランドールは言いながら目を逸らす。
よく考えたら、あまりに直接的というか、恥ずかしいセリフを言ってしまったのではないかと思った。「触ってみる?」だなんて。
慣れない褒められかたをしたからかもしれない。
魔理沙は向かって左側の羽の、枝のような部分のちょうど真ん中あたりをそっと両手で包み込んだ。
フランドールは魔理沙の手に温められる枯れ木のような羽を感じた。魔理沙の手を暖かく感じるということは私の体温はやはり冷たいのだろうとぼんやりと思った。
「おお…」
魔理沙の両手は枝を包み込んだまま、するすると滑った。
「いいな、これ」
フランドールは自分の背後に伸びるものを神妙に眺める魔理沙にどう反応していいのかもわからず居心地が悪くなった。
(お化粧するべきだったかな。でもこの羽をどう飾り付ければいいんだろう)
ひとに自分の体をこうも触られるのは、なにかの展示品になった心持ちで、絵や彫刻たちはどうしてあんなに堂々とできるのか不思議であった。
魔理沙はさらに、指を波打たせながら羽の根本、肩甲骨に向かって右手を滑らせた。魔石は羽から多少に浮いていて、手を遮ることはなかった。
フランドールは羽の真ん中から降りてきた魔理沙の右手が肩甲骨に触れて止まるのを感じた。触れる手の温度を感じるのは、悪くない気がしてきた。
突然、魔理沙がフランドールの羽に舌を這わせた。
「わっ!」
背中が粟立ち、フランドールの体が咄嗟に跳ねる。
「なに!?」
「味はないな……無味無臭……」
頷きながら魔理沙はいつの間にか持っていた手帳にペンを走らせた。
「いきなりひとの羽を舐めるな!私はキノコじゃないんだよ!」
「いやあ素材が気になって。全然わからんな」
当然の如くフランドールは抗議したが、魔理沙はどこ吹く風だ。
肩甲骨の延長線上のぬるりとした感触が頭から離れなかった。
「びっくりしたあ。もう。人間が吸血鬼の味見するなんて、どっちがモンスターなんだか」
「あーすまんすまん。まあなんだ、お詫びに今朝採ったなめこでもどうだ?なんなら私を舐めるか?」
「えっ……いいの?」
「ほう、なめこか。待ってろ」
魔理沙は帽子の下に手を差し入れて物色を始めた。
「いやなめこじゃなくて。っていうか帽子のなかになめこ入ってるの?ぬるぬるになるよ?頭大丈夫なの?」
「なめこが人体に寄生ことはまずない。心配ご無用だ」
「そっちの心配はしてないよ……」
魔理沙はきのこでフランドールの機嫌を取ることはどうやら難しそうだと気づいたのか、帽子を漁る手を止めた。
「じゃあなんだ。私を舐めるって?いやはやそこに食いつくかねエロ吸血鬼さん」
「エロ魔法使いのくせに」
「探求家と呼んだまえ」
「なら私もそれで」
魔理沙は少しだけ考えて首をひねった。
「…そんなに気になるもんか?別に、お前らがいつも食ってる普通の人間と大差ないと思うぞ?」
「うん。舐めたい。というか食べたいんだけど。それにお詫びとしては対等でいい条件じゃん。前から気になってたし、魔理沙味。絶対おいしいと思うの。あ、もしかして恋の味とかするの?」
フランドールはマジだった。いつだってマジなので、それが狂気と呼ばれることもあったかもしれないのであった。
「恋の味かー。私って何味なんだろうな」
「うんうん気になるよね。だから確かめさせてよ」
「うーむ」
魔理沙は、自分が何味なのかという疑問は置いておいて、妖怪に対する冗談にはふさわしくない内容だったかもしれないなと少々後悔し始めた。
そもそも吸血鬼の味見などという無謀を犯さなければ発生しなかった事態であったが、魔理沙はそのことに関してはみじんも後悔していなかった。魔法を使う者にとって知識欲はなにより重要なのである。そういった原則に基づくと、身体を差し出してみるのも悪くないように思えたが、ついでに何をされるかわかったものではなかった。吸血鬼になにかをされるというのは基本的に自由の終焉を意味する。まだ日の光の下で生きていたきていたいのだ。
「やっぱり駄目だ。お前危ないし。どさくさに紛れて吸血鬼にされそうだ」
「えー、今更そんなこと言ったってねえ。もう私は決めちゃったよ」
フランドールがベッドを這い、魔理沙ににじりよる。
魔理沙は嫌な予感がして距離を取ろうとしたが、いつの間にか手足に嵌められた手錠が魔理沙の自由を奪っていた。
「待て。なんで私は動けないんだ」
「手錠っていう道具があってね。はめた」
「おい、いつだ。いったいどこにそんな時間があった。お前行間にかまけてるんじゃないぞー!」
魔理沙は腰の後ろで嵌められた手錠をバタバタと振りながら抗議する。
「じゃあ咲夜がやったー。さっすが瀟洒なメイド、気が利くねー」
フランドールは満足に動けない魔理沙に覆いかぶさると、その口元を徐々に魔理沙の首筋に近づいていった。
魔理沙は近づいてくる吐息に体をこわばらせ、これからの出来事に、紅色から桃色までのあらゆる想像をして備えさせられた。
「そんなに固くならなくたってまだ何もしないよー。まだ見てるだけだよー」
「……こうされてみると緊張するもんだ」
「私の気持ちがわかった?」
「ああ、お前は私の気持ちがわかったか?」
「うん。楽しいね」
「ひとの気持ちが分かる子になってうれしいよ。さあ、もういいだろ」
「ええー。こんなに美味しそうなのにー」
フランドールは全身がひきつったような魔理沙の首筋にさらに接近すると、くすりと笑った。そして不意に、魔理沙の耳元に息を吹きかけた。
「ふー」
「ひゃー」
予想外の攻撃に、魔理沙は空気の抜けた風船のようになった。
「はい。これで許してあげる。驚いた?」
フランドールは何事もなかったように密着した体を引き離した。
魔理沙はしばらく唖然とすると、いつの間にか自由になった両手で首筋をなぞり、嘆息した。
「ああ、なんというか…」
そう言うと魔理沙はベッドに仰向けに倒れこんだ。黒い魔法使いがゆっくりと白いシーツに沈む。
「なに?」
「……あ、このベッドやわらかい。すごいな。ちょっと寝るから、もう襲うなよ」
「自由だなあ」
しばらくすると、本当に寝息が聞こえてきた。
仮にも吸血鬼の部屋でここまで堂々と眠るとは、生物種のなかでも魔理沙は類稀な豪胆なのかもしれない。
フランドールが軽やかに手を振ると、部屋の唯一の明かりがふっと消えた。
聞こえるのは微かな寝息だけだった。
こうなっては仕方ないので、フランドールも寝てしまおうか迷ったが、少しだけ悪戯心が沸いた。
フランドールは静かに魔理沙の上に跨がった。そしてそのまましなりと魔理沙の胸に倒れ込むと、心臓の鼓動や、呼吸に合わせて浮き沈みする胸や、熱い血液の流れの上に頭を置いた。
耳を当てると心臓の鼓動がはっきりと聞こえる。いろいろな音を聞いてきた心。
この音も好きかな、とフランドールは思った。
フランドールが白く巨大なベッドに横たわり暗い天井をじっと見つめて言った。
無限に広がるような暗闇が平衡感覚を狂わせ、燭台に照らされた埃が煌めいて漂う。
「星が砕ける音、とっても遠くから、澄んでいて、力強い感じがするの」
「へえ、いいなあそれ。いかにもロマンチックじゃないか。いつ聞けるんだ?」
魔理沙は、フランドールからは手を伸ばしても届かない距離、ベッドの端に深く腰掛けていた。
「適当な星をきゅっとすればいつでも。ああ、今は駄目よ。お姉様に怒られちゃう」
「一度くらい聴いてみたいけど、バレるもんかな」
「そりゃあね、響くもの。お姉さまケチだし」
フランドールは息をついた。
「魔理沙はなんの音が一番好き?」
「一番って言うと難しいな。魔法の音。弾幕の音。風を切る音。星の……一番は決められないなあ」
魔理沙はあまり寝ていないのか、眠たげに答えた。
「なにそれずるい。一番を聞いてるんだから一番を答えてよ」
「だって音なんて、こんな地下室に篭ってでもいない限り幾らでもあるじゃないか。大体、好きなものの序列なんてナンセンスだ」
フランドールは、やっぱり魔理沙はずるいと思った。魔理沙の耳と心はフランドールよりもずっと多くの音を経験しているに違いないし、それをこれみよがしにひけらかすのだから。
地下室の照明はベッドと扉を挟む位置の燭台だけであった。フランドールは真っ暗な天井に手を伸ばして、白い指の間に見える闇がどれも同一であることを確かめた。ベッドに沈んだ体を回転させて、魔理沙のほうを向こうとしたが、背中から伸びる羽がつっかかり、仕方ないので起き上がることにした。
「ほっ」
勢いをつけてフランドールは起き上がった。背中から伸びた魔石がゆらめき、微かにりんと鳴った。
「そうだ、その音結構好きだぜ」
魔理沙が、思いついたように言った。
「え、これ?」
フランドールが右手で右羽の魔石を軽く弾くと静かに、不思議に澄んだ音が再び響いた。深層の鉱石のような音色だった。
「なんていうか、星っぽい音がいい」
「ふーん」
フランドールが、手持ちぶさに枯れ木のような羽をゆらゆらと揺らしてみせると、それぞれの魔石が触れ合い、小鳥たちのささやかな輪唱を奏でる。羽の魔石が七色に点滅し、フランドールは魔理沙に尋ねた。
「触ってみる?」
「いいのか?」
魔理沙の目の奥に期待と好奇心の輝きが灯った。
「まあ、別に……触るくらいなら」
フランドールは言いながら目を逸らす。
よく考えたら、あまりに直接的というか、恥ずかしいセリフを言ってしまったのではないかと思った。「触ってみる?」だなんて。
慣れない褒められかたをしたからかもしれない。
魔理沙は向かって左側の羽の、枝のような部分のちょうど真ん中あたりをそっと両手で包み込んだ。
フランドールは魔理沙の手に温められる枯れ木のような羽を感じた。魔理沙の手を暖かく感じるということは私の体温はやはり冷たいのだろうとぼんやりと思った。
「おお…」
魔理沙の両手は枝を包み込んだまま、するすると滑った。
「いいな、これ」
フランドールは自分の背後に伸びるものを神妙に眺める魔理沙にどう反応していいのかもわからず居心地が悪くなった。
(お化粧するべきだったかな。でもこの羽をどう飾り付ければいいんだろう)
ひとに自分の体をこうも触られるのは、なにかの展示品になった心持ちで、絵や彫刻たちはどうしてあんなに堂々とできるのか不思議であった。
魔理沙はさらに、指を波打たせながら羽の根本、肩甲骨に向かって右手を滑らせた。魔石は羽から多少に浮いていて、手を遮ることはなかった。
フランドールは羽の真ん中から降りてきた魔理沙の右手が肩甲骨に触れて止まるのを感じた。触れる手の温度を感じるのは、悪くない気がしてきた。
突然、魔理沙がフランドールの羽に舌を這わせた。
「わっ!」
背中が粟立ち、フランドールの体が咄嗟に跳ねる。
「なに!?」
「味はないな……無味無臭……」
頷きながら魔理沙はいつの間にか持っていた手帳にペンを走らせた。
「いきなりひとの羽を舐めるな!私はキノコじゃないんだよ!」
「いやあ素材が気になって。全然わからんな」
当然の如くフランドールは抗議したが、魔理沙はどこ吹く風だ。
肩甲骨の延長線上のぬるりとした感触が頭から離れなかった。
「びっくりしたあ。もう。人間が吸血鬼の味見するなんて、どっちがモンスターなんだか」
「あーすまんすまん。まあなんだ、お詫びに今朝採ったなめこでもどうだ?なんなら私を舐めるか?」
「えっ……いいの?」
「ほう、なめこか。待ってろ」
魔理沙は帽子の下に手を差し入れて物色を始めた。
「いやなめこじゃなくて。っていうか帽子のなかになめこ入ってるの?ぬるぬるになるよ?頭大丈夫なの?」
「なめこが人体に寄生ことはまずない。心配ご無用だ」
「そっちの心配はしてないよ……」
魔理沙はきのこでフランドールの機嫌を取ることはどうやら難しそうだと気づいたのか、帽子を漁る手を止めた。
「じゃあなんだ。私を舐めるって?いやはやそこに食いつくかねエロ吸血鬼さん」
「エロ魔法使いのくせに」
「探求家と呼んだまえ」
「なら私もそれで」
魔理沙は少しだけ考えて首をひねった。
「…そんなに気になるもんか?別に、お前らがいつも食ってる普通の人間と大差ないと思うぞ?」
「うん。舐めたい。というか食べたいんだけど。それにお詫びとしては対等でいい条件じゃん。前から気になってたし、魔理沙味。絶対おいしいと思うの。あ、もしかして恋の味とかするの?」
フランドールはマジだった。いつだってマジなので、それが狂気と呼ばれることもあったかもしれないのであった。
「恋の味かー。私って何味なんだろうな」
「うんうん気になるよね。だから確かめさせてよ」
「うーむ」
魔理沙は、自分が何味なのかという疑問は置いておいて、妖怪に対する冗談にはふさわしくない内容だったかもしれないなと少々後悔し始めた。
そもそも吸血鬼の味見などという無謀を犯さなければ発生しなかった事態であったが、魔理沙はそのことに関してはみじんも後悔していなかった。魔法を使う者にとって知識欲はなにより重要なのである。そういった原則に基づくと、身体を差し出してみるのも悪くないように思えたが、ついでに何をされるかわかったものではなかった。吸血鬼になにかをされるというのは基本的に自由の終焉を意味する。まだ日の光の下で生きていたきていたいのだ。
「やっぱり駄目だ。お前危ないし。どさくさに紛れて吸血鬼にされそうだ」
「えー、今更そんなこと言ったってねえ。もう私は決めちゃったよ」
フランドールがベッドを這い、魔理沙ににじりよる。
魔理沙は嫌な予感がして距離を取ろうとしたが、いつの間にか手足に嵌められた手錠が魔理沙の自由を奪っていた。
「待て。なんで私は動けないんだ」
「手錠っていう道具があってね。はめた」
「おい、いつだ。いったいどこにそんな時間があった。お前行間にかまけてるんじゃないぞー!」
魔理沙は腰の後ろで嵌められた手錠をバタバタと振りながら抗議する。
「じゃあ咲夜がやったー。さっすが瀟洒なメイド、気が利くねー」
フランドールは満足に動けない魔理沙に覆いかぶさると、その口元を徐々に魔理沙の首筋に近づいていった。
魔理沙は近づいてくる吐息に体をこわばらせ、これからの出来事に、紅色から桃色までのあらゆる想像をして備えさせられた。
「そんなに固くならなくたってまだ何もしないよー。まだ見てるだけだよー」
「……こうされてみると緊張するもんだ」
「私の気持ちがわかった?」
「ああ、お前は私の気持ちがわかったか?」
「うん。楽しいね」
「ひとの気持ちが分かる子になってうれしいよ。さあ、もういいだろ」
「ええー。こんなに美味しそうなのにー」
フランドールは全身がひきつったような魔理沙の首筋にさらに接近すると、くすりと笑った。そして不意に、魔理沙の耳元に息を吹きかけた。
「ふー」
「ひゃー」
予想外の攻撃に、魔理沙は空気の抜けた風船のようになった。
「はい。これで許してあげる。驚いた?」
フランドールは何事もなかったように密着した体を引き離した。
魔理沙はしばらく唖然とすると、いつの間にか自由になった両手で首筋をなぞり、嘆息した。
「ああ、なんというか…」
そう言うと魔理沙はベッドに仰向けに倒れこんだ。黒い魔法使いがゆっくりと白いシーツに沈む。
「なに?」
「……あ、このベッドやわらかい。すごいな。ちょっと寝るから、もう襲うなよ」
「自由だなあ」
しばらくすると、本当に寝息が聞こえてきた。
仮にも吸血鬼の部屋でここまで堂々と眠るとは、生物種のなかでも魔理沙は類稀な豪胆なのかもしれない。
フランドールが軽やかに手を振ると、部屋の唯一の明かりがふっと消えた。
聞こえるのは微かな寝息だけだった。
こうなっては仕方ないので、フランドールも寝てしまおうか迷ったが、少しだけ悪戯心が沸いた。
フランドールは静かに魔理沙の上に跨がった。そしてそのまましなりと魔理沙の胸に倒れ込むと、心臓の鼓動や、呼吸に合わせて浮き沈みする胸や、熱い血液の流れの上に頭を置いた。
耳を当てると心臓の鼓動がはっきりと聞こえる。いろいろな音を聞いてきた心。
この音も好きかな、とフランドールは思った。
初心を思い出しました
ごく自然な二人の会話の一部を切り取ったかのようで
とても良かったです
猫系、うん猫系かあ、確かに。
また書いて欲しい
とてもよいじゃれあいでした
心がほっこりする作品で良かったです!