今日の幻想郷も平和だ。
魔理沙は相変わらず私の家で紅茶を飲んでいる。
「暇だぜ」
暇でいいではないか。
私は外に出たくないし、知り合い以外の人間と会いたくない。
知り合いを増やしたいとも思わない。
静かで、自由な時間こそ最高の贅沢なのだ。
「いいじゃない、好きな本を読んだり、好きな音楽を聴いたり、お洋服を作ったりすれば」
「もっと、スリルがほしいんだよ。スピードを出してコーナーに突っ込んでくような、スリルが・・・。」
ブレーキを踏め。
そんなことをやってるから、すぐにタイヤがツンツルテンになるのだ。
しかし、私はスピード狂ではないが、確かにスピードを出すと楽しいのは分かる。
私の場合はエンジン音の唸り声に興奮するのかもしれない。
「じゃあ、ドライブでも行って来れば」
「アリスも行くか」
「あ、だめじゃない、魔理沙の車は今日、あなたの家のガレージでしょ」
そもそも、今日は雨が降っている。
雨の日に、あの車で走りたくない。
「ミニがあるじゃないか」
「あなたのスピードで走ったらエンジンが燃えちゃうわ、絶対にだめよ。それに、雨の日に走ったら、車が湿気ちゃうじゃない」
あれとミニを一緒にしないでほしい。
「暇だぜぇ」
その時、私の電話が鳴った。
「はい、もしもし」
「霧雨です。魔理沙の調子はどうですか」
電話の先は魔理沙のお父様だ。
彼とはよく電話やメールで連絡を取っている。
「ええ、いつも通り元気ですよ」
「ちゃんとご飯を食べているでしょうか」
「ええ、毎日一緒に食事をとっているので大丈夫です」
「ありがとうございます。魔理沙をよろしくお願いします。」
「ええ、もちろんです」
「私は、魔理沙が危ないことをしていないか心配で」
「大丈夫ですよ、魔理沙は強いですし、あなたの娘だって知らない人はいないですからね」
魔理沙は少し機嫌が悪い顔になる。
話している相手の察しがついたのだろう。
「そうですが、何かあったら遅いので」
この話は毎日聞いている。
彼との話しは全体の80%をスルーしても、いつもと違うキーワードさえ拾えれば問題ない。
「ええ、そうですね。本当に危ないことをするときは、私もついて行くので大丈夫ですよ」
「本当は、もう少し落ち着いてもらって、危ないことをしなくなるといいのですが・・・。」
それについては同意だ。
「そうですね」
「長話も悪いですね。魔理沙をよろしく頼みます」
「あっ、ちょっと待ってください」
何を思ったか、私は彼を引き留めてしまった。
受話器を手で押さえて魔理沙に小声で話しかける。
「魔理沙のお父様だけど、話してあげたら」
「話すことなんてない」
「分かったわ」
いつものことだ。
仕様がない。
「あ、もしもし、引き留めてすいません。では失礼します。」
私は電話が切れたことを確認して携帯をしまう。
先ほどの電話は霧雨魔理沙の父親だ。
魔理沙は家出をして、両親とは別居している。
しかし、彼は魔理沙を溺愛している為、今すぐにでも帰ってきてほしいと願っている。
そして、その望みが叶えられない限り、毎日私に電話がかかってくるのだ。
私は彼の望みを叶えるため魔理沙に問いかけた。
「魔理沙、お父様と仲直りしたら」
「やだ」
魔理沙は頑固だ。
「じゃあ、こないだの写真見せてあげていい?喜ぶわ」
「絶対だめだ」
「お父様はあなたのことをとても大切に思っているのよ。あなたがお父様の電話を着信拒否するから、代わりに、私の携帯に毎日電話がかかってくるんだから」
「アリスも着信拒否したらいいんだ」
「だめよ、そうすると昔みたいに毎日訪ねてくるようになるわ」
「迷惑な奴だな」
「魔理沙のことが心配なのよ、魔理沙が家に戻ったら、きっとお父様は心臓麻痺を起すぐらい喜ぶわ」
「アリス、それじゃ会いに行くにも、行けないぜ」
「そうね、でも、電話か、手紙あたりからリハビリしないと、本当に心臓麻痺ぐらい起こるんじゃないかしら。でも、死因が魔理沙なら本望じゃない」
「そういう問題じゃないぜ、私が原因で死なれたら後味悪いじゃないか」
「それもそうね、じゃあ1年目はメール、2年目は電話、3年目に面会という形で、リハビリしてみたら、それで死んじゃったら仕方ないんじゃない。それか、永琳と一緒に会いに行くか」
「そんな大がかりで、親父に会いに行きたかねぇよ」
確かにそうだ。
でも、思っていたよりも魔理沙の父親に対する好感度は低くないのではと思った。
「でも、お父様に死んでほしくないってことは、魔理沙はお父様のことを嫌いじゃないのね」
「嫌いに決まってるだろ。だからこそ家出して、一人で暮らしてるんじゃないか」
「別に一人暮らしと両親との不仲は関係ないわ、私も一人暮らししてるけど、私のお母様と一緒に買い物をしたり、ライブに行ったりして、仲よくしてるわ」
これは意外と問題なことだ。
魔界の神が勝手に城を抜け出して、買い物をしているわけだ。
暴れん坊将軍を素で行く人だ。
さらに性質の悪いことにお母様は身分を隠していない。
娘としてびっくりだ。
まあ止めても止まらないのだから、あきらめて便乗した方が面白い。
どうせ後片付けは私の仕事ではない。
夢子の仕事だ。
「アリス、あいつが何したか知らないわけじゃないだろ?あれは絶対に許せないぜ。」
魔理沙が彼を嫌いになった経緯はよく知っている。
彼は娘を自慢するために写真集を自費出版で作成し、村の人に配った。
彼としては、全く悪気はなかったのだが、魔理沙はそれを知ると激怒して、結果として家出した。
その後、魔理沙は写真集を一冊ずつ焼いて回ったが、私の手元にはまだ1冊残っている。
「あの事件はかわいい娘を見せびらかしたい、親心なのよ。わかってあげなきゃ。魔理沙ももう、大人なんだから」
「アリスの写真集が勝手に出回ってたらどうする。いやだろ、一冊残らず処分したくなるだろ」
確かにそうだが、宗教戦争等であれだけ派手にやったのだからもう関係ないのではないかとも思う。
文が発行するブロマイドは村で人気商品だ(やはり1番人気は霊夢らしい)。
あれの方がきわどいアングルが多くて恥ずかしい気がする。
「処分したくなるのは分かるけど、でも文のブロマイドは容認してるでしょ。それと同じで許してあげたら」
「そういう問題じゃないぜ。アリスも最初の頃だいぶ怒ってたよな。なんで許したんだ」
それは文から魔理沙のブロマイドの供給を受けているからだ。
戦闘時のスピードの被写体を納めるのは相当の腕が必要だ。
また、たまに自分と魔理沙が2ショットになっているのがうれしくてよく貰っている。
自分の写真は文と交渉(一方的な弾幕ごっこ)の末、写真の検閲をすることで販売を許可した。
勿論そんなことは言うことができないので適当に嘘をつく。
「言ってやめるような奴じゃないでしょ。面倒くさいから無視してるのよ」
「でも、恥ずかしくないか。知らないやつが私の写真を見てるんだぜ」
想像すると確かに嫌だが、実害はない。
村に行ったときに目線が集まる程度だ。
逆に宗教戦争後、ナンパされることは減って便利になった。
「それは、気にしないことね。自分と写真は別だと割り切ればいいのよ」
「まあ、そうなんだが・・・。」
「そうでしょ、だから、お父様のことも許してあげたら」
「むぅ、そうかなぁ」
理論的ではないが、適当に話をすり替えることで、魔理沙を納得させられることがある。
今回もそのパターンで攻略できそうだった。
この方法は彼女によく検討させてはならないため、迅速に押し込む。
「お父様もいつまでも生きてる訳じゃないし、親孝行しなきゃ。電話だけでもしてみたら。」
「まぁ、そうだな」
「そうそう、お父様の電話番号知ってる」
「知らない」
「じゃあ、私の携帯でかけて」
私は、魔理沙の父親の電話番号を探しダイヤルする。
そして、携帯を魔理沙に渡した。
私も耳をスピーカに近づける。
「はい、霧雨です。アリスさん、魔理沙に何かありましたか?」
「いや、魔理沙だ」
「ま、魔理沙か?」
あの彼が動揺している。
そして、何か衝撃音がした。
やはり刺激が強くて携帯を取り落としてしまったのだろうか。
数十秒たって、携帯がやっと拾われた。
周囲が少々騒がしい。
「もしもし、だれですか」
これはおそらく、霧雨商店で雇われている小僧の声だ。
「店主の娘の魔理沙だ」
「何を言ったんですか!店長が突然倒れられたんですよ」
刺激が強すぎたらしい。
「は?いや、挨拶しただけだ。で、どうなった」
「いま、偶然近くにいた兎の方に、貰って手当してもらっています。医者も呼びました。」
「死にそうか?」
「死ぬことはないみたいですが、今は気を失ってますね」
「で、どうしたらいい」
「いや、どうしたらって、とりあえずこっちに来て看病されてはどうですか」
それはダメだ。
かすっただけで気絶なら、直撃したら即死だ。
「ちょっと待ってくれ、アリスどうする」
魔理沙がマイクのあたりに手を添えて私に聞いた。
「行っちゃダメよ、というか雨も降ってるし、足がないでしょ」
箒はあるが、それだと濡れることになる。
また、車で行くという手段もあるが、残念ながら雨の日にミニを出すつもりはない。
「まあそうだな、死なないみたいだし、いいか」
「そうよ、大丈夫よ」
「ああ、もしもし、ああ、鈴仙か、ああ、ありがと。そうだな。いや、ただ挨拶しただけだ。うん、そっちに行かない。ああ、足がないんだよ。へ、まあ、別に大丈夫だろ。うん、じゃあな」
魔理沙が電話を切ると私は聞いた。
「お父様どうだって」
「いや、気絶したらしい。鈴仙がいうには、倒れたときに後頭部を打って、出血があるらしいが、命に別状はないそうだ」
さすが魔理沙の破壊力は絶大だ。
遠距離で殺人事件が起きるところだった。
私は命に別状はないということを聞いて安心した。
「よかったわね」
「ああ、名乗っただけで気絶したのは、こっちがびっくりしたぜ」
「そうね、やっぱりメールぐらいから慣らす必要があるわね」
「そうだな、なんか面倒くさくなっちぃまったな」
「そうね、まあ忘れましょう。冷やしておいたチョコレートケーキあるんだけど、食べる?」
「食べるぜ」
「じゃあ、食器の準備を頼むわ」
「了解」
私たちはケーキを食べて、また、暇な午後をすごした。
その後は、一緒に夕食を作って、食べて、無駄な話で盛り上がって、少し夜更かししてから、寝る準備をした。
今日も、魔理沙は帰らない。
雨の日は帰るのが面倒なためだ。
そして今日も平和な一日が終わった。
魔理沙は相変わらず私の家で紅茶を飲んでいる。
「暇だぜ」
暇でいいではないか。
私は外に出たくないし、知り合い以外の人間と会いたくない。
知り合いを増やしたいとも思わない。
静かで、自由な時間こそ最高の贅沢なのだ。
「いいじゃない、好きな本を読んだり、好きな音楽を聴いたり、お洋服を作ったりすれば」
「もっと、スリルがほしいんだよ。スピードを出してコーナーに突っ込んでくような、スリルが・・・。」
ブレーキを踏め。
そんなことをやってるから、すぐにタイヤがツンツルテンになるのだ。
しかし、私はスピード狂ではないが、確かにスピードを出すと楽しいのは分かる。
私の場合はエンジン音の唸り声に興奮するのかもしれない。
「じゃあ、ドライブでも行って来れば」
「アリスも行くか」
「あ、だめじゃない、魔理沙の車は今日、あなたの家のガレージでしょ」
そもそも、今日は雨が降っている。
雨の日に、あの車で走りたくない。
「ミニがあるじゃないか」
「あなたのスピードで走ったらエンジンが燃えちゃうわ、絶対にだめよ。それに、雨の日に走ったら、車が湿気ちゃうじゃない」
あれとミニを一緒にしないでほしい。
「暇だぜぇ」
その時、私の電話が鳴った。
「はい、もしもし」
「霧雨です。魔理沙の調子はどうですか」
電話の先は魔理沙のお父様だ。
彼とはよく電話やメールで連絡を取っている。
「ええ、いつも通り元気ですよ」
「ちゃんとご飯を食べているでしょうか」
「ええ、毎日一緒に食事をとっているので大丈夫です」
「ありがとうございます。魔理沙をよろしくお願いします。」
「ええ、もちろんです」
「私は、魔理沙が危ないことをしていないか心配で」
「大丈夫ですよ、魔理沙は強いですし、あなたの娘だって知らない人はいないですからね」
魔理沙は少し機嫌が悪い顔になる。
話している相手の察しがついたのだろう。
「そうですが、何かあったら遅いので」
この話は毎日聞いている。
彼との話しは全体の80%をスルーしても、いつもと違うキーワードさえ拾えれば問題ない。
「ええ、そうですね。本当に危ないことをするときは、私もついて行くので大丈夫ですよ」
「本当は、もう少し落ち着いてもらって、危ないことをしなくなるといいのですが・・・。」
それについては同意だ。
「そうですね」
「長話も悪いですね。魔理沙をよろしく頼みます」
「あっ、ちょっと待ってください」
何を思ったか、私は彼を引き留めてしまった。
受話器を手で押さえて魔理沙に小声で話しかける。
「魔理沙のお父様だけど、話してあげたら」
「話すことなんてない」
「分かったわ」
いつものことだ。
仕様がない。
「あ、もしもし、引き留めてすいません。では失礼します。」
私は電話が切れたことを確認して携帯をしまう。
先ほどの電話は霧雨魔理沙の父親だ。
魔理沙は家出をして、両親とは別居している。
しかし、彼は魔理沙を溺愛している為、今すぐにでも帰ってきてほしいと願っている。
そして、その望みが叶えられない限り、毎日私に電話がかかってくるのだ。
私は彼の望みを叶えるため魔理沙に問いかけた。
「魔理沙、お父様と仲直りしたら」
「やだ」
魔理沙は頑固だ。
「じゃあ、こないだの写真見せてあげていい?喜ぶわ」
「絶対だめだ」
「お父様はあなたのことをとても大切に思っているのよ。あなたがお父様の電話を着信拒否するから、代わりに、私の携帯に毎日電話がかかってくるんだから」
「アリスも着信拒否したらいいんだ」
「だめよ、そうすると昔みたいに毎日訪ねてくるようになるわ」
「迷惑な奴だな」
「魔理沙のことが心配なのよ、魔理沙が家に戻ったら、きっとお父様は心臓麻痺を起すぐらい喜ぶわ」
「アリス、それじゃ会いに行くにも、行けないぜ」
「そうね、でも、電話か、手紙あたりからリハビリしないと、本当に心臓麻痺ぐらい起こるんじゃないかしら。でも、死因が魔理沙なら本望じゃない」
「そういう問題じゃないぜ、私が原因で死なれたら後味悪いじゃないか」
「それもそうね、じゃあ1年目はメール、2年目は電話、3年目に面会という形で、リハビリしてみたら、それで死んじゃったら仕方ないんじゃない。それか、永琳と一緒に会いに行くか」
「そんな大がかりで、親父に会いに行きたかねぇよ」
確かにそうだ。
でも、思っていたよりも魔理沙の父親に対する好感度は低くないのではと思った。
「でも、お父様に死んでほしくないってことは、魔理沙はお父様のことを嫌いじゃないのね」
「嫌いに決まってるだろ。だからこそ家出して、一人で暮らしてるんじゃないか」
「別に一人暮らしと両親との不仲は関係ないわ、私も一人暮らししてるけど、私のお母様と一緒に買い物をしたり、ライブに行ったりして、仲よくしてるわ」
これは意外と問題なことだ。
魔界の神が勝手に城を抜け出して、買い物をしているわけだ。
暴れん坊将軍を素で行く人だ。
さらに性質の悪いことにお母様は身分を隠していない。
娘としてびっくりだ。
まあ止めても止まらないのだから、あきらめて便乗した方が面白い。
どうせ後片付けは私の仕事ではない。
夢子の仕事だ。
「アリス、あいつが何したか知らないわけじゃないだろ?あれは絶対に許せないぜ。」
魔理沙が彼を嫌いになった経緯はよく知っている。
彼は娘を自慢するために写真集を自費出版で作成し、村の人に配った。
彼としては、全く悪気はなかったのだが、魔理沙はそれを知ると激怒して、結果として家出した。
その後、魔理沙は写真集を一冊ずつ焼いて回ったが、私の手元にはまだ1冊残っている。
「あの事件はかわいい娘を見せびらかしたい、親心なのよ。わかってあげなきゃ。魔理沙ももう、大人なんだから」
「アリスの写真集が勝手に出回ってたらどうする。いやだろ、一冊残らず処分したくなるだろ」
確かにそうだが、宗教戦争等であれだけ派手にやったのだからもう関係ないのではないかとも思う。
文が発行するブロマイドは村で人気商品だ(やはり1番人気は霊夢らしい)。
あれの方がきわどいアングルが多くて恥ずかしい気がする。
「処分したくなるのは分かるけど、でも文のブロマイドは容認してるでしょ。それと同じで許してあげたら」
「そういう問題じゃないぜ。アリスも最初の頃だいぶ怒ってたよな。なんで許したんだ」
それは文から魔理沙のブロマイドの供給を受けているからだ。
戦闘時のスピードの被写体を納めるのは相当の腕が必要だ。
また、たまに自分と魔理沙が2ショットになっているのがうれしくてよく貰っている。
自分の写真は文と交渉(一方的な弾幕ごっこ)の末、写真の検閲をすることで販売を許可した。
勿論そんなことは言うことができないので適当に嘘をつく。
「言ってやめるような奴じゃないでしょ。面倒くさいから無視してるのよ」
「でも、恥ずかしくないか。知らないやつが私の写真を見てるんだぜ」
想像すると確かに嫌だが、実害はない。
村に行ったときに目線が集まる程度だ。
逆に宗教戦争後、ナンパされることは減って便利になった。
「それは、気にしないことね。自分と写真は別だと割り切ればいいのよ」
「まあ、そうなんだが・・・。」
「そうでしょ、だから、お父様のことも許してあげたら」
「むぅ、そうかなぁ」
理論的ではないが、適当に話をすり替えることで、魔理沙を納得させられることがある。
今回もそのパターンで攻略できそうだった。
この方法は彼女によく検討させてはならないため、迅速に押し込む。
「お父様もいつまでも生きてる訳じゃないし、親孝行しなきゃ。電話だけでもしてみたら。」
「まぁ、そうだな」
「そうそう、お父様の電話番号知ってる」
「知らない」
「じゃあ、私の携帯でかけて」
私は、魔理沙の父親の電話番号を探しダイヤルする。
そして、携帯を魔理沙に渡した。
私も耳をスピーカに近づける。
「はい、霧雨です。アリスさん、魔理沙に何かありましたか?」
「いや、魔理沙だ」
「ま、魔理沙か?」
あの彼が動揺している。
そして、何か衝撃音がした。
やはり刺激が強くて携帯を取り落としてしまったのだろうか。
数十秒たって、携帯がやっと拾われた。
周囲が少々騒がしい。
「もしもし、だれですか」
これはおそらく、霧雨商店で雇われている小僧の声だ。
「店主の娘の魔理沙だ」
「何を言ったんですか!店長が突然倒れられたんですよ」
刺激が強すぎたらしい。
「は?いや、挨拶しただけだ。で、どうなった」
「いま、偶然近くにいた兎の方に、貰って手当してもらっています。医者も呼びました。」
「死にそうか?」
「死ぬことはないみたいですが、今は気を失ってますね」
「で、どうしたらいい」
「いや、どうしたらって、とりあえずこっちに来て看病されてはどうですか」
それはダメだ。
かすっただけで気絶なら、直撃したら即死だ。
「ちょっと待ってくれ、アリスどうする」
魔理沙がマイクのあたりに手を添えて私に聞いた。
「行っちゃダメよ、というか雨も降ってるし、足がないでしょ」
箒はあるが、それだと濡れることになる。
また、車で行くという手段もあるが、残念ながら雨の日にミニを出すつもりはない。
「まあそうだな、死なないみたいだし、いいか」
「そうよ、大丈夫よ」
「ああ、もしもし、ああ、鈴仙か、ああ、ありがと。そうだな。いや、ただ挨拶しただけだ。うん、そっちに行かない。ああ、足がないんだよ。へ、まあ、別に大丈夫だろ。うん、じゃあな」
魔理沙が電話を切ると私は聞いた。
「お父様どうだって」
「いや、気絶したらしい。鈴仙がいうには、倒れたときに後頭部を打って、出血があるらしいが、命に別状はないそうだ」
さすが魔理沙の破壊力は絶大だ。
遠距離で殺人事件が起きるところだった。
私は命に別状はないということを聞いて安心した。
「よかったわね」
「ああ、名乗っただけで気絶したのは、こっちがびっくりしたぜ」
「そうね、やっぱりメールぐらいから慣らす必要があるわね」
「そうだな、なんか面倒くさくなっちぃまったな」
「そうね、まあ忘れましょう。冷やしておいたチョコレートケーキあるんだけど、食べる?」
「食べるぜ」
「じゃあ、食器の準備を頼むわ」
「了解」
私たちはケーキを食べて、また、暇な午後をすごした。
その後は、一緒に夕食を作って、食べて、無駄な話で盛り上がって、少し夜更かししてから、寝る準備をした。
今日も、魔理沙は帰らない。
雨の日は帰るのが面倒なためだ。
そして今日も平和な一日が終わった。
良かったです
>指導云々
少しづつ語彙を増やすとか?
よりコントロールして斜め方向に飛ばせる様になれば良いんでない?