Coolier - 新生・東方創想話

寂しい時~ Imperishable Night

2014/09/27 04:06:22
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輝夜と妹紅 妹紅死ね♪



 地上から見る月は美しい。かつてそこに住んでいた私としては思うところは勿論あるが、それでも地上の民と同じく月は美しいと思う。美しくそして本当にそれだけだ。



「貴方はよく月を見てるわよね。一体何を思っているのかしら?」



 後ろから抱きしめるような形で抱えている妹紅に尋ねてみる。勿論死んでいるので返事はない。妹紅とゆっくり話せるのはこんな形でしか無い。だから私はよく死んでいる妹紅に触れて話しかける。



「ふふ……妹紅……」



 早く生き返らないと退屈な反面、私はこの時間もとても愛おしい。妹紅が私のものだとより強く実感できる。珍品コレクターとしても永遠を生きる者としても、妹紅の存在は大切だ。

 私から端を発した蓬莱の薬は永き時を越え、不死鳥に姿を変えて私のもとに舞い戻ってきた。しかもその不死鳥は私に殺意を向けてるときた。愛でも憎悪でもない複雑な感情を抱きながら、それでも私を殺そうと全力で舞うその姿は私にとって愛おしく何よりも美しい。誰にだって渡すつもりはない。

 永遠を生きる私には全てを肯定し、望みを全て叶えてくれる相棒が一人いる。だからもう一人私の全てを否定し、私の望みを打ち砕こうとするものが必要なのだ。永琳と妹紅、最低限この二人の永遠がいる限り私は生きていくことが出来る。



「でも最近の貴方、少し様子が変よね?」



 元々から建前でしかなかった復讐だが、最近では益々影を潜めてしまっている。となれば元々殺生を好むわけではない私達の殺し合いは惰性で成り立っている。今に始まったことではないが、あまり好ましくない。妹紅が私と和解したいと望むなら別に構わない。それどころか私から手を差し伸べたっていいくらいだ。



「貴方と『友達』になるのは構わない。でもね……『仲間』にはなれないわ」



 私の『隣』は既に埋まっている。妹紅にはどこまでいっても私の『正面』にいて欲しいのだ。



「愛してるわ、妹紅」



 少しずつ妹紅の身体が再生していく。直接触れていると妹紅が生き返る瞬間をより確かに感じられる。これも死んでいる妹紅に触れる理由だ。少しずつ身体に熱が戻り、心臓がゆっくりと鼓動を始める。あぁ……返ってくる、私のもとに。

 もう意識が戻っているであろう妹紅を最後にもう一度だけ強く抱きしめる。こうすれば妹紅のことはなんだって分かる気がする。妹紅はそのまま左手で私に肘打ちを入れるだろう。



「離れろ」
「きゃっ」



 そして右手で握っていた砂で私の視界を封じてくるのだろう。それはいただけないので手でかばいつつ、砂が目に入ったふりをする。



「このっ」
「んっ」



 そしてそのすきを突いて不死鳥に姿を変えて、私を焼き殺すのだろう。



「喰らえ!」



 何度見ても見惚れてしまう。それほどまでにこの不死鳥が私のお気に入り、そしてその炎が様々な感情を抱きながら私を焼くその瞬間こそが最も美しい。



「ふふっ……熱いわ妹紅……」
「……」



 燃えている私をなんとも言えない表情で妹紅が眺める。うん、これを見るためなら死ぬのも悪くないかもしれない。それだけ私は妹紅に夢中なのだ。



「待っててね妹紅……」



 次は私が殺してあげる。今度は死んだ貴方を見たいから。大丈夫、すぐに返ってくるから。寂しい思いなんてさせないから。


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