・健全です
・シリーズ物ですが前後作品を読む必要は全くありません
・なんなら好きなキャラの出てくるページだけ読んでいただいても結構です
妹紅と輝夜 輝夜死ね?
傍にあった大きめの石に腰掛けてぼんやりと月を眺める。そうしていると側で何かが動く気配がしたので目を向けてみるが、どうやら気のせいのようだ。輝夜はまだ死んだままだ。
「早く生き返ってよ……」
生憎死体を辱める趣味は持っていないし、今の間に自分に有利なように小細工するつもりもない。手段を選ばなくなって困るのはこちらだ。ただでさえまともにやりあえば輝夜に勝てるはずなんて無いのだから。同じ蓬莱の薬を飲んだとしても、月人と地上のそれも一般人とではそれだけの差がある。それでも今目の前で輝夜の焼死体が転がっているということは
「遊ばれてるんだよなぁ……」
初めて見た時から力量の差はわかっていた。戦えば戦うほど輝夜の背中はどんどん遠くなるように感じた。だが……実際には五分の殺し合いになっているのはそういうことだ。そのことに対して憤りは感じない。そもそも私は輝夜のことをあまり恨んでいない。正確には今はあまり恨んでいないだが。
「別の形で会ってたら……いやこんな形以外で私がまだ生きてることはあり得ないか」
千年以上、人間として生まれた身ではあり得ない年月を生きてきた。そんなにも長い間生き続けられるほど人間の精神は強くできていない。少なくても私は強くはない。千年という年月は恨みの炎を消してしまうには十分すぎるほどの時間だった。だが千年という月日はその残り火にでも縋らなければいけなくなるには十分すぎるほどの時間だった。
輝夜の身体が少しずつ再生していく。この罪でもある美貌は何時見ても目を奪われる。月に照らされたその白い肌は、世界中の何よりも神秘的に見える。こうして輝夜の再生を待っている時に常々思う。もし輝夜が私に手を差し伸べた時、私はどうなるのだろうか。
きっと私は拒めない。私が生きていくのには輝夜が必要だし、輝夜のことは恨んでいない。そして私は今までの自分の人生を否定して新しく生きていく……ことができるのだろか。恨みの次はその恨んでいた相手に縋って生きていくことになるのだろうか。
そもそもを考えれば輝夜が手を差し伸べるほど私に好意を抱いているわけはないのだし、どちらかと言えば飽きられて無視されるか、手も足も出ないくらい圧倒的な力で殺される可能性のほうがずっと高いだろう。でも不思議とその可能性を考慮したことはない。
「不思議なものね……私が生きていくのにはどうしても貴方が必要みたい」
輝夜の近くに行き、顔にかかっているきれいな黒髪をゆっくりと払ってやる。
「こんな時しか言えないけどさ……私はあんたのことを……!?」
輝夜が突然目を開けたかと思うと髪を触っていた私の手を引き、そのまま私を倒して馬乗りになった。
「あら妹紅、おはよう。今宵もとても月がきれいね」
「……起きるのが遅すぎるわよ」
「ごめんなさい、寂しい思いをさせちゃったかしら?」
「全くだ。生きてなきゃ殺せない」
輝夜がクスクスと笑う。そうするとなんだか私も楽しくなってきて笑ってしまう。
「さて貴方は何をしようとしてたのかしら?私に見惚れちゃった?」
「そんなわけないでしょ。汚い身体が外に晒されているのが耐えられなかったから服着せようと思っただけ」
「えっち」
「うるさい」
「顔が赤くなってるわよ」
「それはお前が私の首を絞めてるからでしょ」
馬乗りになった輝夜は少し苦しくなるほどの力で、私の首を絞めている。お遊びのようなものでこれで殺すつもりがないのは分かっている。
「服着なよ」
「誰が焼いたと思ってるのよ。貴方が弁償できるような代物ではないのよ?」
「悪かったね。無職の根無し草なもんで」
「じゃあ命で払ってもらおうかしら」
「それなら得意。でも取りあえず服を着なよ」
夜の迷いの竹林に私達以外いるとは思えない。が万が一ということもある。
「しつこいわよ妹紅」
「千年以上も片思いしてるくらいだからね」
「あら素敵、そんなに想われてる相手はさぞかし幸せなんでしょうね」
「どうだか」
「幸せよ」
輝夜が顔を近づけて私の耳元で囁く。
「私は貴方にこんなにも想われて幸せよ」
「……服着てよ」
「大丈夫、私は簡単に肌を見せるほど安い女じゃないし、貴方以外に殺されてやる気もさらさら無いわ。ところで妹紅、本当に服を着て欲しい?」
輝夜が妖艶に笑う。
「……」
「妹紅?」
「……服着ろ」
「残念ね。そこまで言うなら貴方が起きた頃には服を着ておくわ。安心していいわよ、貴方が起きるまで側で待っていてあげるから。じゃあお休みなさい、私の妹紅」
そして輝夜は宝具を振るい、私の命は為す術もなく絶たれた。恨みの炎は残りカスだし命の灯火は今消えたけど、心に出来たこの温かい火はまだ消えることはなさそうだ。
・シリーズ物ですが前後作品を読む必要は全くありません
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妹紅と輝夜 輝夜死ね?
傍にあった大きめの石に腰掛けてぼんやりと月を眺める。そうしていると側で何かが動く気配がしたので目を向けてみるが、どうやら気のせいのようだ。輝夜はまだ死んだままだ。
「早く生き返ってよ……」
生憎死体を辱める趣味は持っていないし、今の間に自分に有利なように小細工するつもりもない。手段を選ばなくなって困るのはこちらだ。ただでさえまともにやりあえば輝夜に勝てるはずなんて無いのだから。同じ蓬莱の薬を飲んだとしても、月人と地上のそれも一般人とではそれだけの差がある。それでも今目の前で輝夜の焼死体が転がっているということは
「遊ばれてるんだよなぁ……」
初めて見た時から力量の差はわかっていた。戦えば戦うほど輝夜の背中はどんどん遠くなるように感じた。だが……実際には五分の殺し合いになっているのはそういうことだ。そのことに対して憤りは感じない。そもそも私は輝夜のことをあまり恨んでいない。正確には今はあまり恨んでいないだが。
「別の形で会ってたら……いやこんな形以外で私がまだ生きてることはあり得ないか」
千年以上、人間として生まれた身ではあり得ない年月を生きてきた。そんなにも長い間生き続けられるほど人間の精神は強くできていない。少なくても私は強くはない。千年という年月は恨みの炎を消してしまうには十分すぎるほどの時間だった。だが千年という月日はその残り火にでも縋らなければいけなくなるには十分すぎるほどの時間だった。
輝夜の身体が少しずつ再生していく。この罪でもある美貌は何時見ても目を奪われる。月に照らされたその白い肌は、世界中の何よりも神秘的に見える。こうして輝夜の再生を待っている時に常々思う。もし輝夜が私に手を差し伸べた時、私はどうなるのだろうか。
きっと私は拒めない。私が生きていくのには輝夜が必要だし、輝夜のことは恨んでいない。そして私は今までの自分の人生を否定して新しく生きていく……ことができるのだろか。恨みの次はその恨んでいた相手に縋って生きていくことになるのだろうか。
そもそもを考えれば輝夜が手を差し伸べるほど私に好意を抱いているわけはないのだし、どちらかと言えば飽きられて無視されるか、手も足も出ないくらい圧倒的な力で殺される可能性のほうがずっと高いだろう。でも不思議とその可能性を考慮したことはない。
「不思議なものね……私が生きていくのにはどうしても貴方が必要みたい」
輝夜の近くに行き、顔にかかっているきれいな黒髪をゆっくりと払ってやる。
「こんな時しか言えないけどさ……私はあんたのことを……!?」
輝夜が突然目を開けたかと思うと髪を触っていた私の手を引き、そのまま私を倒して馬乗りになった。
「あら妹紅、おはよう。今宵もとても月がきれいね」
「……起きるのが遅すぎるわよ」
「ごめんなさい、寂しい思いをさせちゃったかしら?」
「全くだ。生きてなきゃ殺せない」
輝夜がクスクスと笑う。そうするとなんだか私も楽しくなってきて笑ってしまう。
「さて貴方は何をしようとしてたのかしら?私に見惚れちゃった?」
「そんなわけないでしょ。汚い身体が外に晒されているのが耐えられなかったから服着せようと思っただけ」
「えっち」
「うるさい」
「顔が赤くなってるわよ」
「それはお前が私の首を絞めてるからでしょ」
馬乗りになった輝夜は少し苦しくなるほどの力で、私の首を絞めている。お遊びのようなものでこれで殺すつもりがないのは分かっている。
「服着なよ」
「誰が焼いたと思ってるのよ。貴方が弁償できるような代物ではないのよ?」
「悪かったね。無職の根無し草なもんで」
「じゃあ命で払ってもらおうかしら」
「それなら得意。でも取りあえず服を着なよ」
夜の迷いの竹林に私達以外いるとは思えない。が万が一ということもある。
「しつこいわよ妹紅」
「千年以上も片思いしてるくらいだからね」
「あら素敵、そんなに想われてる相手はさぞかし幸せなんでしょうね」
「どうだか」
「幸せよ」
輝夜が顔を近づけて私の耳元で囁く。
「私は貴方にこんなにも想われて幸せよ」
「……服着てよ」
「大丈夫、私は簡単に肌を見せるほど安い女じゃないし、貴方以外に殺されてやる気もさらさら無いわ。ところで妹紅、本当に服を着て欲しい?」
輝夜が妖艶に笑う。
「……」
「妹紅?」
「……服着ろ」
「残念ね。そこまで言うなら貴方が起きた頃には服を着ておくわ。安心していいわよ、貴方が起きるまで側で待っていてあげるから。じゃあお休みなさい、私の妹紅」
そして輝夜は宝具を振るい、私の命は為す術もなく絶たれた。恨みの炎は残りカスだし命の灯火は今消えたけど、心に出来たこの温かい火はまだ消えることはなさそうだ。