パチュリーとフラン ~~とかどうかな?
地下室へ向かってくる足音が聞こえる。この足音は……。嫌な顔をされないように周りを少し片付けてついでに身だしなみを整え、笑顔で迎える準備をする。
「こんばんわフランドール」
「久しぶりだね、パチュリー!」
パチュリーの手をとってベッドに導く。ベッドにパチュリーを座らせてその足の間に私が座って少し体重を預ける。そのまま背中で押し倒してしまわないように加減は要注意だ。こうして背中で感じる心臓の鼓動が何となく私を癒やし、落ち着かせてくれる。そうしてしばらく甘えているとパチュリーの方からゆっくり肩に手を回してきた。いつもは嫌がるかなされるがままなのに。
「あれ、今日はなんだか反応が違うね」
「……」
「お姉様最近来てくれないの?」
「……」
パチュリーが私の部屋に来る理由はひとつ、『寂しさを埋めるため』だ。パチュリーは寂しがりやなのに決して自分からお姉様に会いに行かない。昔理由を聞いたけど私にはよく判らなかった。そうしてお姉様がなかなか来なくて耐えられなくなったら私を『代わり』に使うのだ。
「ふーん……まぁいいや。パチュリーが優しいのは嬉しいし」
「……ならいいでしょ」
「もっと言えば私のことを見て欲しいんだけどね」
私には紅魔館で直接の繋がりがお姉様しかいない。咲夜や美鈴は『お嬢様の従者』、パチュリーは『お嬢様の親友』。だから私は直接の繋がりが欲しくて歩み寄った相手がパチュリーだ。お姉様を見てたらなんとかなると思ったんだけどなぁ……。
「そんなに好きなら会いに行けばいいのに」
「……余計なお世話よ」
「咲夜あたりにとられちゃうよ?」
「それなら私はそれまでってことよ。それにレミィには咲夜との時間も大切にして欲しいし」
「それは余裕?それとも哀れみ?」
「咲夜は人間、それ以上は言わなくても分かるでしょ?」
「優しいねー、とても昨日図書館で喘息の発作が出て『だめ……わ、私……し、死んじゃう……』なんて涙目で言いながらビクンビクンしていた人物と一緒とは思えないや」
「……見ていたなら助けてくれてもいいのに」
「確かに襲っちゃうチャンスだったね」
それでも決してお姉様の名前を呼ばなかった当たり筋金入りだと思う。尊敬はしないけど。
「ねぇ分かってる?私がその気になれば今だってそのチャンスなんだよ?」
「……大丈夫よ、信じているもの」
「嘘でしょ」
「本当よ」
「私のこと知ってるでしょ?不安定になったら最後、理性なんて無いよ?」
「大丈夫よ」
「何が?」
「『貴方が絶対に間違いを起こさない』とは思えないけど『貴方が間違いを犯してもそれを受け入れる覚悟』はあるわ。だから大丈夫よ」
「勝手だね」
「知らなかった?そもそも信じるって言葉自体が勝手なものだと思うけど」
パチュリーがそう言って後ろから優しく抱きしめてくれる。だが分かっている、私はあくまでお姉様の『代わり』だ。……だったら
「ねぇ……えっと……パチェ」
「!?」
パチェ……いやパチュリーは明らかに機嫌を損ねたといった様子で私を睨みつけてきた。
「フランドール、初めてのことだから気の迷いとして許してあげる。でも次はないわ」
「……ごめんなさい」
「私を『パチェ』と呼ぶのは……そう呼んでいいのはたった一人の『愛しい親友』だけよ。覚えておいて」
はっきりとした拒絶。親しくなってきたとはいえ所詮は『代わり』、薄々そうなるだろうと思っていた。受けたショックの大きさは予想以上だったが。
「貴方が私に何を求めているかは薄々気づいているけどそれはいいわ。私だってそもそもはレミィの好きなモノを好きになりたいってだけだったし。……ただ、それはあくまで昔の話。……今では貴方も私にとっては『大切な友人』であることはたしか。だから……その……貴方が別のアダ名を考えることまでは文句はないわ」
「……いいの?」
「えぇ。素敵なアダ名をよろしくね、フランドール」
そう言って私の頭を優しく撫でてくれる。
「絶対に素敵な奴考えるから」
「楽しみね」
いくつか出した私の提案に複雑な顔をしているパチュリーだけど、何となく距離が縮まった気がした。
この作品はそれが最大の褒め言葉です。頭空っぽにして気軽に読んで頂ければという作品なので。
絶望さん
この長さの説明しか無いのに、パチュリーこんなキャラにして大丈夫なのかという思いはありましたが、なんとかなった……んですかね?
非現実さん
一応今回は『紅魔館』ではなく『紅魔郷』ですので次回作は『妖々夢』です。ルーミアやチルノも書きたかったんですが、何分紅魔館は書きやすすぎる……。
必要かどうかは分かりませんが、一応補足を。
作品は紅・妖・永・風・地・星・神のつもりです。他の作品は何分登場キャラが少なかったりで……。ひょっとしたら黄昏の括りで一作くらいは書くかもしれませんが。
みんな幸せ過ぎてまぶしかったです