「パチュリー様、こんなところに本棚ありましたっけ?」
咲夜が尋ねた。
「最近、来たのよ」
私は答えた。来た、ですか…?咲夜が首を傾げる。
そうね、これが来た話でもしましょうか。
ある日、突然、私の大図書館に知らない扉が現れた。軽く調査をしてみると、どこかにつながっているらしい。しかし、それがどんな所かまではわからなかった。
「なら、行ってみよーぜー」
魔理沙の提案。確かに、自分の部屋が知らない所と通じているのは、気分がよくなかった。だから、私もそれに乗った。それが間違いだった。私達は扉に入ったのだった。
扉の向こうは暗い一本道。魔理沙を先頭に、アリス、私と続いた。魔理沙の八卦炉がまっすぐな光を出し、行き先を照らす。結構便利ね、八卦炉。そのままいくらか進むと突き当たりになった。
「おい、どーすんだよ、行き止まりだぜ」
魔理沙が行き止まりを叩く。
ダンダンガンダン
ん?
「ちょっと待って、そこだけ音が違わない?」
アリスも気付いたよう。確かに自分の手で確かめてみると、そこだけひんやりと冷たい。この向こうがどうやら、目的地のようね。
ガシャン!ガシャン!
魔理沙もそう思ったのか、体当たりを繰り返す。
「ちょ、やめなさいよ」
アリスが魔理沙を止めに入る。
「アリス、お前も手伝えー!」
逆に手をとられ、二人で壁に激突。何か金属が曲がる音がして、向こうが開けた。
勢い余った二人はそのまま向こうの世界の床にひっくり返っている。
ご苦労様。
向こうの世界の床にひっくり返った二人を見ながら、私も向こうの世界に入った。
ペタペタと歩きながら、周囲を観察する。やや広い部屋に小さめの椅子や机が整然と並んでいる。全部で30くらいかしら。そして、一番前にあるあれは、
黒板ね。
紅魔館にもあるから、わかるわ。字を書いたり消したり出来る便利な板。左側には窓があって、外が見える。右側は廊下かしらね。
「ここはどこだー?」
尻もちをついていた魔理沙が起き上がる。アリスの腕を取り、彼女も起こす。そして、フラフラと窓に近づいた。
「お、おい、あれ見ろよ」
急に魔理沙が窓の外を指差して叫んだ。
「どうしたの?」
「見てみましょう」
私とアリスは頷いて、魔理沙の指差す方向を見た。そして、言葉を失う。
「…大きい」
「あのサイズは…」
私達が驚いたのは、窓の外、この部屋から見下ろした位置にある大きな魔方陣だった。
眼下に広がる大きな土の地面。雑草の一本も許さないようきれいに整備されている。さらに何か大きなローラーのようなもので平らにしたのだろう。そこに白い線で楕円が描かれていた。その周囲には花壇、それに何かわからないけれど、金属棒を組み合わせたモノもあった。
「これだけの大きさの魔方陣、何に使うのかしら…?」
アリスが青ざめながら言う。確かにこれだけのモノ、どんな魔法を使うにしてもタダゴトではない。
「誰かいるのかー?」
その時、廊下側から男の声が聞こえた。
「ひぃぃ!」
アリスが叫んでしまった。誰だー!という声が近づいて来る。
「逃げるぞ!」
魔理沙が私達の手を引いて、廊下に飛び出した。
ピカーッ
廊下の向こうからまぶしい光が目を刺す。逆光で向こうを確認出来ない!私達は、魔理沙に手を引かれるまま近くの階段を上がって、目の前の扉に入った。
扉を閉め、一息つく。あんなに走ったのいつ以来かしら。深呼吸をしながら、また周囲を見回す。今度の部屋はさっきとは景色が違った。椅子や黒板は同じような配置だが、机の形が違った。黒っぽい大きな机の周りに椅子がある。
「棚になんか薬品がいっぱいあるぞ!」
魔理沙が八卦炉で辺りを照らす。私もアリスの手を引きながら、周囲の棚を確認する。試験管、ビーカー、あれはアルコールランプ。魔理沙が見た棚も確認したが、なるほど、様々な薬品瓶がある。みれば、HNO3、HCL、高価な薬品だらけだわ。
「凄い、こんなキレイな結晶、見たことないわ」
アリスも他の棚にある鉱物を眺めている。一体ここは、どんな施設なのか?段々とそれがわかってきた気がする。
「二人とも聞いてちょうだい。ここはきっと、魔法使いの養成所よ」
私は口を開いた。特にアリスを怖がらせないために極力ゆっくり話した。
「これだけ高価なモノや大きな魔方陣、それにさっきのはここを守るガーディアンね」
棒を持っていたし、かなり知性のある使い魔ね。油断は出来ないわ。その私の分析を聞いて魔理沙。
「なら、私達は、とんでもないところに迷いこんじまったんじゃないか?!」
「イヤーー!」
その言葉にアリスが過敏に反応する。確かに魔法使いが他の魔法使いのテリトリーに踏み込んだとなれば、それは戦争を意味する。それがわからないような私達ではない。なんとかして、ここから幻想郷に戻らなきゃ。
「落ち着きなさい、貴女達。こういう時は冷静さを失った者から死ぬのよ」
取り乱す二人を制しながら、私は言う。しかし、私もかなり震えていた。ここは幻想郷ではない。弾幕が通用するかもわからないのだ。でも、私の大図書館とここが繋がったということは、その原因がこの建物にあるはず。どんな世界にも因果律はある。だから、原因を探れば幻想郷に帰るルートもわかる。
「探すわよ、因果を」
とは言え、闇雲に歩き回っても疲れるので、まずは先程、私達がたどり着いた部屋に戻ることにした。幸い、あそこはまだ紅魔館と繋がったままなので、そこを拠点にすれば……
「パチュリー、鍵が締まってるぜ」
魔理沙が扉を揺すりながら言う。
え?
ということは、私達は脱出路を断たれたというの?お、お、お、落ち着きなさいパチュリーノーレッジこれは往々にして予見できたはずよさっきの使い魔が各部屋の見回りをしていたとしたら……
冷や汗が止まらない。
アリスはすでに気を失いかけている。
これはなんとしても因果を見付けないと帰れないということね。
結局、薬品やらがたくさんある部屋に戻って作戦会議になったわけだけど、誰も何も思い付くはずもなく、時間だけが過ぎていく。緊張とそれに伴う疲れがみえてきた。その時、
ガチャガチャ
私達のいる部屋のドアが動いた。
「おかしいなぁ、鍵は全て……あれ、誰だー?!」
あの使い魔だ!こちらに気付いたのか、灯りをつける。うぅ、暗闇に目が慣れていた分、一層眩しく感じる。
「パチュリー、逃げるぞ!」
言われなくても!魔理沙が別の扉を蹴り開け、それにアリス、私と続く。
「走れぇぇぇ」
声の限りに魔理沙が叫ぶ。全力で走る私達、その後ろから使い魔が追いかけてくる。
「ハァハァ、あれ、ウソ……」
どんどん重くなる私の脚。魔理沙達はすでに向こうにいる。こんなときに日頃の運動不足がでるなんて。
「パチュリー!」
アリスが振り返るが、魔理沙に引っ張られ廊下の角を曲がってしまった。
このままでは、捕まってしまう。ええい!ままよ!すぐ近くの部屋に私はなだれこんだ。しばらくして、やっと呼吸が落ち着いてきて、この部屋の状況がわかってきた。
「ここは…?」
ずいぶん大きな部屋だ。壁には変な髪型の男の肖像画がいくつも飾ってある。きっとこれらはこの世界で名を馳せた魔法使い達なのだろう。やはり、たくさんの椅子。そして、なにより目を引くのは、この部屋にあるピアノ。
「恐らく、ここで詠唱の練習をするのね」
詠唱はタイミングが重要だ。だから、ここでピアノの伴奏に合わせて練習するのだろう。しかし、ここも椅子がたくさんある。これだけの魔法使いが一斉にスペルを唱えるのかと思うとゾッとした。やはり、ここは魔法使いの育成を旨とした施設、しかもかなり高度なものと判断出来る。
さて、ここで休みながら、私は考えなくてはならない。
どうしたら、幻想郷に戻れるか?
そして、なぜこの施設と大図書館が繋がったのか?
「だいたい、なんで大図書館なのよ、魔理沙の所でもアリスの家でもいいでしょうに」
少し余裕が出てきたのか悪態をついてみる。その通りね、アリスの家なら可愛い人形がいるし、魔理沙の家ならごちゃごちゃと何かあるに違いない。では、なぜ大図書館だったのか?大図書館にあって、他にはないもの、それが鍵?
考えるのよ、パチュリー。本なら大図書館ほどとは言わないまでもアリスの所にも魔理沙の所にも沢山あるじゃない。
ん?本…違うわ、そういうことね。
わかったわ、何が原因で大図書館がこの施設と結び付いたのか。
そう思うと私はすぐさま行動に出た。ピアノの部屋を出ると、階段を下る。下ったのはなんとなくだ。もしかしたら、目的地は上の階かもしれない。しかし、それを考えるのは後だ。今は行動あるのみ。
「あー、見つけたぞ!お前、何してるんだ!」
階段を降りきった瞬間、右側からガーディアンに見付かってしまった。ならば、左に走るしかない! もうすぐ因果が見つかる!目の前に大きな扉が見えた。他の扉とは違う頑丈そうな扉だ。その扉を挟んで私の反対側から魔理沙とアリスの姿も見えた。
「パチュリー、生きてたか?!」
「魔理沙、パチュリーが使い魔に!」
何か叫んでいる。いいから、早く助けなさいよ!
「任せろ!」
魔理沙の手元が明るく光る。彼女の周りに星が煌めく。
それって、まさか…!!
「避けろ、パチュリー!」
『魔砲・ファイナルスパーク』
極太のレーザーが発射。
「んんんー!」
このスペカは、このタイミングで避けきれる!ギリギリのタイミングで身体を反らし、ファイナルスパークを回避。魔理沙の放ったレーザーは私の後ろのガーディアンを吹き飛ばした。 目的の扉の前で再会を喜ぶ私達。
「ふぅー、危なかったな、パチュっ?!」
どの口がそれを言うのかしら?魔理沙の頬引っ張る。アリスはだいぶ落ち着いていた。
「パチュリーも無事でよかったわ」
「でも、なんでここにやってきたんだ?」
頬をさする魔理沙の問に私は答えた。
「私はこの施設の図書館を探してるの。そして、そこに私達が幻想郷に帰る鍵があるはずよ!」
図書館はすぐ見つかった。結局、あの扉の先が図書館だったのだ。なんだかうまくいきすぎている気がするが、今はそんなことに構っていられない。大きな扉が開いた。大きさの割に随分と軽い扉だった。いや、この扉が別の力によって開けられたのかもしれない。
「要するにここが図書館だから、大図書館と繋がるキッカケになったと」
「そうね、でも図書館同士は媒体であって、何か別のモノが原因と考えているわ」
私の予想通り、扉の向こうには無数の本があった。どうやらここは本当に図書館のようだ。
「さて、どれがその原因なのかしらね」
アリスが周りを見ながら言う。なんとなくだけど、私にはわかっていた。本と共にあり続けた私なら。
「きっとあの奥よ」
指差す方向には取り分け古い本達が並んでいた。
「うひょー、なんだこれ?」
「草とか虫、動物の絵が多いわね」
二人がその本を手に取り眺める。
「それらは図鑑と呼ばれる本よ。それで人間は草花の名前や特徴を調べるのよ」
私が図鑑の本棚に近づくと、本棚が輝いた。驚く二人。
「ふーん、そういうことね、貴方達、忘れ去れてしまったのね」
いつだか妖怪の山の巫女が言っていた。なんでも外の世界ではネットとやらが普及して調べものもそれで済んでしまうらしい。
きっとこの図鑑達もその波を受けたのだろう。
「いいわよ、いらっしゃい。私達と一緒に幻想郷に行きましょう」
本棚だけでなく、図鑑達も輝きを増す。
「さぁ、その本棚に捕まって!帰るわよ、幻想郷に!」
大きな光が私達を包んだ。
「帰ってきたのか?」
魔理沙の声で目が覚めた。見れば、周りの景色は見慣れた紅魔館、大図書館だった。
「そうみたいね」
アリスも嬉しそうに声を上げる。もう目の前に私達が入った扉はなかった、しかし、そこには立派な図鑑を蓄えた大きな本棚があった。
~終わり~
咲夜が尋ねた。
「最近、来たのよ」
私は答えた。来た、ですか…?咲夜が首を傾げる。
そうね、これが来た話でもしましょうか。
ある日、突然、私の大図書館に知らない扉が現れた。軽く調査をしてみると、どこかにつながっているらしい。しかし、それがどんな所かまではわからなかった。
「なら、行ってみよーぜー」
魔理沙の提案。確かに、自分の部屋が知らない所と通じているのは、気分がよくなかった。だから、私もそれに乗った。それが間違いだった。私達は扉に入ったのだった。
扉の向こうは暗い一本道。魔理沙を先頭に、アリス、私と続いた。魔理沙の八卦炉がまっすぐな光を出し、行き先を照らす。結構便利ね、八卦炉。そのままいくらか進むと突き当たりになった。
「おい、どーすんだよ、行き止まりだぜ」
魔理沙が行き止まりを叩く。
ダンダンガンダン
ん?
「ちょっと待って、そこだけ音が違わない?」
アリスも気付いたよう。確かに自分の手で確かめてみると、そこだけひんやりと冷たい。この向こうがどうやら、目的地のようね。
ガシャン!ガシャン!
魔理沙もそう思ったのか、体当たりを繰り返す。
「ちょ、やめなさいよ」
アリスが魔理沙を止めに入る。
「アリス、お前も手伝えー!」
逆に手をとられ、二人で壁に激突。何か金属が曲がる音がして、向こうが開けた。
勢い余った二人はそのまま向こうの世界の床にひっくり返っている。
ご苦労様。
向こうの世界の床にひっくり返った二人を見ながら、私も向こうの世界に入った。
ペタペタと歩きながら、周囲を観察する。やや広い部屋に小さめの椅子や机が整然と並んでいる。全部で30くらいかしら。そして、一番前にあるあれは、
黒板ね。
紅魔館にもあるから、わかるわ。字を書いたり消したり出来る便利な板。左側には窓があって、外が見える。右側は廊下かしらね。
「ここはどこだー?」
尻もちをついていた魔理沙が起き上がる。アリスの腕を取り、彼女も起こす。そして、フラフラと窓に近づいた。
「お、おい、あれ見ろよ」
急に魔理沙が窓の外を指差して叫んだ。
「どうしたの?」
「見てみましょう」
私とアリスは頷いて、魔理沙の指差す方向を見た。そして、言葉を失う。
「…大きい」
「あのサイズは…」
私達が驚いたのは、窓の外、この部屋から見下ろした位置にある大きな魔方陣だった。
眼下に広がる大きな土の地面。雑草の一本も許さないようきれいに整備されている。さらに何か大きなローラーのようなもので平らにしたのだろう。そこに白い線で楕円が描かれていた。その周囲には花壇、それに何かわからないけれど、金属棒を組み合わせたモノもあった。
「これだけの大きさの魔方陣、何に使うのかしら…?」
アリスが青ざめながら言う。確かにこれだけのモノ、どんな魔法を使うにしてもタダゴトではない。
「誰かいるのかー?」
その時、廊下側から男の声が聞こえた。
「ひぃぃ!」
アリスが叫んでしまった。誰だー!という声が近づいて来る。
「逃げるぞ!」
魔理沙が私達の手を引いて、廊下に飛び出した。
ピカーッ
廊下の向こうからまぶしい光が目を刺す。逆光で向こうを確認出来ない!私達は、魔理沙に手を引かれるまま近くの階段を上がって、目の前の扉に入った。
扉を閉め、一息つく。あんなに走ったのいつ以来かしら。深呼吸をしながら、また周囲を見回す。今度の部屋はさっきとは景色が違った。椅子や黒板は同じような配置だが、机の形が違った。黒っぽい大きな机の周りに椅子がある。
「棚になんか薬品がいっぱいあるぞ!」
魔理沙が八卦炉で辺りを照らす。私もアリスの手を引きながら、周囲の棚を確認する。試験管、ビーカー、あれはアルコールランプ。魔理沙が見た棚も確認したが、なるほど、様々な薬品瓶がある。みれば、HNO3、HCL、高価な薬品だらけだわ。
「凄い、こんなキレイな結晶、見たことないわ」
アリスも他の棚にある鉱物を眺めている。一体ここは、どんな施設なのか?段々とそれがわかってきた気がする。
「二人とも聞いてちょうだい。ここはきっと、魔法使いの養成所よ」
私は口を開いた。特にアリスを怖がらせないために極力ゆっくり話した。
「これだけ高価なモノや大きな魔方陣、それにさっきのはここを守るガーディアンね」
棒を持っていたし、かなり知性のある使い魔ね。油断は出来ないわ。その私の分析を聞いて魔理沙。
「なら、私達は、とんでもないところに迷いこんじまったんじゃないか?!」
「イヤーー!」
その言葉にアリスが過敏に反応する。確かに魔法使いが他の魔法使いのテリトリーに踏み込んだとなれば、それは戦争を意味する。それがわからないような私達ではない。なんとかして、ここから幻想郷に戻らなきゃ。
「落ち着きなさい、貴女達。こういう時は冷静さを失った者から死ぬのよ」
取り乱す二人を制しながら、私は言う。しかし、私もかなり震えていた。ここは幻想郷ではない。弾幕が通用するかもわからないのだ。でも、私の大図書館とここが繋がったということは、その原因がこの建物にあるはず。どんな世界にも因果律はある。だから、原因を探れば幻想郷に帰るルートもわかる。
「探すわよ、因果を」
とは言え、闇雲に歩き回っても疲れるので、まずは先程、私達がたどり着いた部屋に戻ることにした。幸い、あそこはまだ紅魔館と繋がったままなので、そこを拠点にすれば……
「パチュリー、鍵が締まってるぜ」
魔理沙が扉を揺すりながら言う。
え?
ということは、私達は脱出路を断たれたというの?お、お、お、落ち着きなさいパチュリーノーレッジこれは往々にして予見できたはずよさっきの使い魔が各部屋の見回りをしていたとしたら……
冷や汗が止まらない。
アリスはすでに気を失いかけている。
これはなんとしても因果を見付けないと帰れないということね。
結局、薬品やらがたくさんある部屋に戻って作戦会議になったわけだけど、誰も何も思い付くはずもなく、時間だけが過ぎていく。緊張とそれに伴う疲れがみえてきた。その時、
ガチャガチャ
私達のいる部屋のドアが動いた。
「おかしいなぁ、鍵は全て……あれ、誰だー?!」
あの使い魔だ!こちらに気付いたのか、灯りをつける。うぅ、暗闇に目が慣れていた分、一層眩しく感じる。
「パチュリー、逃げるぞ!」
言われなくても!魔理沙が別の扉を蹴り開け、それにアリス、私と続く。
「走れぇぇぇ」
声の限りに魔理沙が叫ぶ。全力で走る私達、その後ろから使い魔が追いかけてくる。
「ハァハァ、あれ、ウソ……」
どんどん重くなる私の脚。魔理沙達はすでに向こうにいる。こんなときに日頃の運動不足がでるなんて。
「パチュリー!」
アリスが振り返るが、魔理沙に引っ張られ廊下の角を曲がってしまった。
このままでは、捕まってしまう。ええい!ままよ!すぐ近くの部屋に私はなだれこんだ。しばらくして、やっと呼吸が落ち着いてきて、この部屋の状況がわかってきた。
「ここは…?」
ずいぶん大きな部屋だ。壁には変な髪型の男の肖像画がいくつも飾ってある。きっとこれらはこの世界で名を馳せた魔法使い達なのだろう。やはり、たくさんの椅子。そして、なにより目を引くのは、この部屋にあるピアノ。
「恐らく、ここで詠唱の練習をするのね」
詠唱はタイミングが重要だ。だから、ここでピアノの伴奏に合わせて練習するのだろう。しかし、ここも椅子がたくさんある。これだけの魔法使いが一斉にスペルを唱えるのかと思うとゾッとした。やはり、ここは魔法使いの育成を旨とした施設、しかもかなり高度なものと判断出来る。
さて、ここで休みながら、私は考えなくてはならない。
どうしたら、幻想郷に戻れるか?
そして、なぜこの施設と大図書館が繋がったのか?
「だいたい、なんで大図書館なのよ、魔理沙の所でもアリスの家でもいいでしょうに」
少し余裕が出てきたのか悪態をついてみる。その通りね、アリスの家なら可愛い人形がいるし、魔理沙の家ならごちゃごちゃと何かあるに違いない。では、なぜ大図書館だったのか?大図書館にあって、他にはないもの、それが鍵?
考えるのよ、パチュリー。本なら大図書館ほどとは言わないまでもアリスの所にも魔理沙の所にも沢山あるじゃない。
ん?本…違うわ、そういうことね。
わかったわ、何が原因で大図書館がこの施設と結び付いたのか。
そう思うと私はすぐさま行動に出た。ピアノの部屋を出ると、階段を下る。下ったのはなんとなくだ。もしかしたら、目的地は上の階かもしれない。しかし、それを考えるのは後だ。今は行動あるのみ。
「あー、見つけたぞ!お前、何してるんだ!」
階段を降りきった瞬間、右側からガーディアンに見付かってしまった。ならば、左に走るしかない! もうすぐ因果が見つかる!目の前に大きな扉が見えた。他の扉とは違う頑丈そうな扉だ。その扉を挟んで私の反対側から魔理沙とアリスの姿も見えた。
「パチュリー、生きてたか?!」
「魔理沙、パチュリーが使い魔に!」
何か叫んでいる。いいから、早く助けなさいよ!
「任せろ!」
魔理沙の手元が明るく光る。彼女の周りに星が煌めく。
それって、まさか…!!
「避けろ、パチュリー!」
『魔砲・ファイナルスパーク』
極太のレーザーが発射。
「んんんー!」
このスペカは、このタイミングで避けきれる!ギリギリのタイミングで身体を反らし、ファイナルスパークを回避。魔理沙の放ったレーザーは私の後ろのガーディアンを吹き飛ばした。 目的の扉の前で再会を喜ぶ私達。
「ふぅー、危なかったな、パチュっ?!」
どの口がそれを言うのかしら?魔理沙の頬引っ張る。アリスはだいぶ落ち着いていた。
「パチュリーも無事でよかったわ」
「でも、なんでここにやってきたんだ?」
頬をさする魔理沙の問に私は答えた。
「私はこの施設の図書館を探してるの。そして、そこに私達が幻想郷に帰る鍵があるはずよ!」
図書館はすぐ見つかった。結局、あの扉の先が図書館だったのだ。なんだかうまくいきすぎている気がするが、今はそんなことに構っていられない。大きな扉が開いた。大きさの割に随分と軽い扉だった。いや、この扉が別の力によって開けられたのかもしれない。
「要するにここが図書館だから、大図書館と繋がるキッカケになったと」
「そうね、でも図書館同士は媒体であって、何か別のモノが原因と考えているわ」
私の予想通り、扉の向こうには無数の本があった。どうやらここは本当に図書館のようだ。
「さて、どれがその原因なのかしらね」
アリスが周りを見ながら言う。なんとなくだけど、私にはわかっていた。本と共にあり続けた私なら。
「きっとあの奥よ」
指差す方向には取り分け古い本達が並んでいた。
「うひょー、なんだこれ?」
「草とか虫、動物の絵が多いわね」
二人がその本を手に取り眺める。
「それらは図鑑と呼ばれる本よ。それで人間は草花の名前や特徴を調べるのよ」
私が図鑑の本棚に近づくと、本棚が輝いた。驚く二人。
「ふーん、そういうことね、貴方達、忘れ去れてしまったのね」
いつだか妖怪の山の巫女が言っていた。なんでも外の世界ではネットとやらが普及して調べものもそれで済んでしまうらしい。
きっとこの図鑑達もその波を受けたのだろう。
「いいわよ、いらっしゃい。私達と一緒に幻想郷に行きましょう」
本棚だけでなく、図鑑達も輝きを増す。
「さぁ、その本棚に捕まって!帰るわよ、幻想郷に!」
大きな光が私達を包んだ。
「帰ってきたのか?」
魔理沙の声で目が覚めた。見れば、周りの景色は見慣れた紅魔館、大図書館だった。
「そうみたいね」
アリスも嬉しそうに声を上げる。もう目の前に私達が入った扉はなかった、しかし、そこには立派な図鑑を蓄えた大きな本棚があった。
~終わり~
あと魔理沙とアリスが大図書館に来た目的が書かれてない。
ついでに言うと頬をつねられたときの表現も足りません。
内容は良かったと思います。魔女がお好きなんですね。
勢いに任せて一日で書いてしまいました。
次からはもう少し表現を練ってみたいと思います。
でも先生かわいそうw
面白かったんですが、起承転結の転結だけをぶち抜いて持ってきたように感じたのが残念です。
面白かったです。ただ、アイデアが良かっただけにちょっと短いのは残念。
しかし、見回りの先生は南無三
やはり勢いだけでは、足りない部分があるということがわかりました。
また、改善点なども示して下さり、有り難いです。
やはり勢いだけでは、足りない部分があるということがわかりました。
また、改善点なども示して下さり、有り難いです。