Coolier - 新生・東方創想話

風神太平記 第五話

2013/02/27 00:02:50
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「どうしよう、眠れぬ」

 目尻をこすりながら、か細い声でそう呟く。

 祭祀者との公式な謁見、時季の節目ごとの儀式など、昔から重要な行事の前には緊張して眠りが浅くなる。そんな気がする洩矢諏訪子であった。まことの人間ではないのだから、体質くらい受肉と顕現の際にいくらでも調節できそうなものだと、自身、不眠のたびに思うのだが、おそらくは体質よりも己の性情に根差すことゆえ如何ともしがたい。こんなにも眠れない夜は、いつかの年に供御(くご)の献上を受ける儀礼の前日以来のことだと思う。

 いざ行幸前夜というその晩もまた、夜半、寝床ですっかり眼が醒めた。

 少々だらしなくも布団を足先で蹴り飛ばし、半身を起こして自室の暗みに視線を走らす。辺りは静かだ、夜風が扉を撫でる音さえ今日はすまい。何せ、明日からは八坂政権の威を科野人士に見せつけるべく始まる十数日の行幸である。王の供奉として選抜された五百名の将兵はもちろんのこと、留守居役として城に残る者たちにも、貴賎なき大役が与えられていると言える。寝息のひとつも起こらないほどぐっすりと休み、英気を養っているに違いなかった。加えて神奈子は風神の権能を持つ。風の鳴り音ひとつとっても、自らの威を乗せることは容易ではないのだろうか。

 ふたたび布団に身を横たえ、ごろりと転がること二、三度。

 再び眠気がやって来るまで書見でもしようかと思った。だが、寝に入るときに明かりはすでに伏せていたから、書見のためには灯明にもういちど火を入れなければならない。油もただではないのだから、それも何か億劫ではある。では、何をしよう。この時点で、おとなしく眠ることに努めようという意識は諏訪子の頭のなかから消え去った。

 神奈子の元に酒でも飲みに行こうか。
 ……否だ。科野行幸は八坂神奈子にとって一世一代の晴れ舞台である。翌朝にまで尾を引くような酔いを食んで、恥をかかせてしまうのは甚だ都合が悪い。後の憂いともなりそうだ。

 では、モレヤと話でもしに行こうか。
 ……それも否だ。やはり子供らしく、彼は早々に寝所に入って寝ついてしまった。それを自分の都合で起こすのは勝手が過ぎるというものだろう。

 暗みに慣れていく自身の視覚を疎ましく思いながら、しばし諏訪子は思案していた。依然、眠気はやって来ない。夜は静かだ。諏訪子という人さえも、誰かが夢のなかで思い描く空想ででもあるかのように。

「誰か。誰か居らぬか……」

 寝所と廊下とを隔てる扉へ向け、ごく小さな声を発する諏訪子。
 一応、侍女か舎人が宿直(とのい)として部屋の前に控えているということには決まっている。だが、応えが帰って来ることまでは期待していなかった。たまたま自分が声を発したのが宿直の交代の刻限なら、眠れぬ夜のつまらない戯れであるのだと、未だしも納得することができたはずなのだ。

「誰か、居らぬか」

 と、再び声を掛けてみる。
 かたかたと、扉が揺れたのは風のためではない。ごく細く開かれた扉の向こうからは、手にした紙燭(しそく)の明かりで顔を照らされた侍女がひとり、心配そうにこちらを見つめているようだった。

「何か、ご用でございましょうか。諏訪子さま」
「ああ、いや……うん」
「眠れないのですか。お腹が空いたのでしょうか。喉が渇いたのであれば、直ぐに白湯(さゆ)を用意して参りますが」

 未だ十三、四歳といったところの歳若い侍女は、眠気を押し殺すような声で諏訪子に接したのであった。明かりで照らされた彼女の顎や頬に、小さな“にきび”の跡があることに諏訪子は気づいた。諏訪子付きのこの侍女は、最近、とみににきびが増えたように感じる。歳若い者が十分に眠らぬ夜を幾日も過ごすと、にきびはよく吹き出てくるのだと聞いたことがある。それを思うと、ただでさえ宿直の務めで身を縛しているにもかかわらず、このうえさらに自分の戯れのために呼びつけることに、幾らかの申しわけなさが先に立った。

「実はだな。そのう……」
「どうされたのです」
「厠だ。寝る前に水を飲み過ぎたらしい。少し、厠に行ってくる」
「あ、そうでしたか。申しわけございませぬ、気づきませんで……」

 ゆっくりと寝床から脱すると、諏訪子は扉を自ら押し開き、ぐいと廊下に身を立たす。
 王の御前を畏れ多いと思っているらしいが――、侍女はいちども諏訪子の顔を直に見ることはなかった。その代わり、早足で諏訪子の前に立つと、厠までの先導のために紙燭を闇のなかへ差し伸ばした。そのとき、同時に彼女の背がぶると揺れる。あくびを噛み殺したときの仕草だった。むろん、無礼な振る舞いである。だが、その無礼さをついやってしまうほどには、侍女の正気は眠気のために削れているのかもしれなかった。

 そんな侍女の後を、諏訪子がついていくことはない。

 裸足の指をわずか曲げて、その爪先で廊下をこするようにする。焦れるような気持ちでいると、ようやく侍女の方でも、諏訪子がその場に留まり続けていることに気がついてくれたのだった。

「あの、諏訪子さま。厠へ行かれるのでは……」
「うん。今夜は何処(いずこ)の厠へ行こうかと思うていた。諏訪を飛び越え、安曇か高井か。出雲の厠を見てみたくもあるし、はるか北方の果てにあるという東日流(つがる。青森県津軽地方の古名)の国の厠も気になる」
「はあ。王さまの仰せになることは、何だかよく解りませんが」

 突拍子もない冗談を受けて、侍女はかすかに首を傾げた。
 くすりとした笑いを噛んでもいるが、あくびほどには顕か(あきらか)に現れる情ではなかったらしい。その姿が、歳若い彼女を介すれば余計に痛々しく見えてしまう。

 紙燭の明かりで照らされぬよう気をつけながら、諏訪子は「ふふン」と唇を歪めていた。

「解らぬかな。つまりは遠きところの厠へ行くゆえ、当夜はもう寝床に帰らぬというのだよ。……今日の宿直は、もう交代したか」
「はい。今夜は私めが最後にございます」
「そうか。ならば良い。では朝になって諏訪子が戻って来るまで、儂の寝床に潜り込んで身代わりの役を負ってはくれぬか」
「えっ! そ、そんな、私が諏訪子さまの寝床に入るなど、あまりにも畏れ多いことにございます……」
「ばかっ、あまり大きな声を立てるとばれてしまうぞ」

 と、たしなめる素振りを見せながらも、諏訪子はあくまで愉しげでなのである。

「何も難しいことはない。朝まで儂の布団で、其許がひと眠りすれば良いというだけの話。其許の様子を見るに、近ごろはよく眠れていないのであろう。これは先の諏訪国主による王命ぞ。宿直の辛きこと、解らぬ諏訪子にあらず。今夜だけは大人しう眠るのだ。帰ってきたら、また起こしてやるゆえな」

 言うと、侍女の手から紙燭を奪い取る諏訪子だった。
 奪い取るとは言っても、相手の方には何の抵抗もない。ただ諏訪子よりされるがままに手指を開き、消極的に明かりを譲り渡しただけであった。

「では、諏訪子は厠に行ってくる。厠にな」
「はあ。お気をつけ、くだされませ」

 息をするのも忘れたかのように、侍女はただ黙り込んでいた。
 くるりと、諏訪子が彼女に背を向けて歩きだしたとき、「ありがとうございます」という声を、ほんの薄らとだが聞いた気がした。


――――――


 部屋から出歩いてみれば、案の定、風はほとんどなかった。
 
 けれど諏訪子が手にした紙燭の火はときおりひどく揺らめいて、あちこちの壁や床に少女の影を大きく照らし出す。朧な明かりのなかに、黒い化け物が現れ出て諏訪子に襲いかからんとしているような情景であったかもしれなかった。とはいっても、暗中に差す明かりから生じた幻ゆえ、火の種が尽きかける頃になると、そんな居もしない化け物はなにもせぬうちに消え去るばかりであった。それに何より――今夜は、月が明るい。灯など、必要なかったとも思えるほどに。

「満月か」

 と、そう彼女は独語した。

 夜の天上に雲を橋として立つ月の蒼さは、気づけば人工の光である紙燭などよりはるかに明るくなっている。月光は陰の気を持ち、人であれ化生であれ昂ぶらせずにはおかぬという。元が祟り神である諏訪子にとれば、自らの郷里である諏訪に未だ生き残っているはずの神霊たちの声を、わずかでも聞くことができる夜であってもおかしくはなかった。だが、いま彼女の心にあるのはほんの小さな気づかいだけ。身代わりとして寝所に置いてきた侍女は、今ごろぐっすりと寝入ってしまっているだろうか。それとも、やはり緊張でがちがちに固まって眠れずにいるのだろうか。もし後者だとしたら、申しわけないことをしたと思う。

 ともすれば古の荒ぶる神としての自らを、覚醒しながらの虚ろな夢として懐かしみたがる諏訪子を、未だしも人の言葉で理解できる姿に押し留めているもの。人並みの気遣いと平安に浴している己自身を、彼女は自ら面白がった。それを当夜に為さしめているものは、かつて人質だったころに耳にした、ひとつの『弦楽』であった。

 びィィ――ん、びィィ――ん、と、一定の律を宿して弦を弾く音が、諏訪の柵の城中に響き渡っている。寝所を出、城中、方々の廊下を歩き、月の光に凶気を取り戻すことなく人らしい正気を装っていられるそのきっかけ。鳴弦の気は、諏訪子がこれまで耳にしたことのあるいかなる弦楽とも異なっている。音階らしい音階もあえて設けられている様子がなく、音のくり返しも単調かつ単純である。だが、聞いていると何か落ち着くものがある。肉よりも霊に作用する、そのような力がかの鳴弦の格を他より違えているかもしれないのだ。

「あの鳴弦の音に、聞き惚れているのでございまするな」

 音の合間を縫うように、聞き覚えのある男の声が響いてきた。

「稗田、か」
「は。確かに稗田阿仁にございまする」

 廊下と地面とを繋ぐ階のかたわら。
 八坂神奈子の祐筆は、涼やかに笑んで頭を下げた。

 その拍子に彼の背後の景色が眼に入り、諏訪子は今の自分がどんな場所に立っているのかをようやく察する。畑を模したごく小さな畝(うね)に、所狭しと並んだ草々の群れ。一隅に設けられた庵からは、土とも草とも石とも知れないにおいの香る気配。否、より正しくは種々の薬種の混じり合ったにおいとでも言えようか。とすれば、畝に植わった草々も、乾すなり臼で挽いて粉にするなどして使う薬用の植物であるのだろう。

 出雲人が初めて諏訪に攻め入ってきたとき、ミシャグジ蛇神たちは瘧(おこり)の病を撒き散らして反撃した。だが出雲軍中に身を置く異装の薬師が、瘧をたちまち祓ってしまったと聞く。とすれば、この場所はかの薬師の庭である。ううむ、と、諏訪子は唸った。諏訪の柵に暮らして一年近く、――何せ、人と同じかたちに受肉しているとはいえ、元が頑強な神の肉体だ。怪我だの病だので薬を必要とすることもなかった健やかさゆえ、このような空間が城内にあることなど思いもよらなかったのだ。出雲人は、諏訪子の知らぬ技術を知っている。顔さえ知らぬ薬師もまた、その例に漏れない人物であるのかもしれなかった。

「畑に植えられてある草は……これは、麻か?」
「ああ、“ここ”の薬師どのが植えられたものにございまする。麻は麻でも、大陸から持ちこんだ薬効の強いものであるとのこと。麻の葉には痛みを和らげる効き目があるゆえ、いくさの際には重宝するのだと」
「その薬師とやらから聞いたことか」
「それがしのは、しょせん生兵法。それに薬師どのは、八意(やごころ)の叡智をお持ちとはいえ少しばかり変わったお人にございまする。倭国中に留まらず、海を越えてまで学びを広げ、周礼(しゅらい。紀元前三~四世紀に周公旦が編纂したという中国最古の医学書。儒教の経典のひとつ)や寒傷論(しょうかんろん。春秋戦国時代の医学書を、張仲景が後漢から三国時代にかけて集大成した書物とされる)といった医学の書の写しまで所蔵しておられる。その一方で、弓矢の道にもまた明るい」

 口髭を撫でながら、稗田は言った。
 諏訪子のように、寝巻を着たままこの場に留まっているわけではない。着物は平常のまま。ただ、頭に冠(こうぶり)することだけを欠き、髻(もとどり)が露わになっている。それでも、普段と違う姿を諏訪子に見られることに恥じらう様子は、稗田には少しもないのであった。

「弓矢の道。……その薬師というのは、武人でもあるのか」
「少し、違いまする。薬師は病ある人の血や尿(いばり)、咳(しわぶき)に接し、其を癒し、ときに人の死を看取るが職掌。それは、つまり“穢れ”と直に相対するということ。人の生くるに穢れは避けられませぬ。ゆえに薬師どのは“祓え”として弓矢をお手に取り梓弓(あずさゆみ)を能くしてもおられるのです」
「その薬師の庭に、なぜ稗田が居る」
「土蜘蛛たちとともにやって来た大風で土埃を吸い込んでしまったせいか、どうにも咳が止まりませぬ。先日来、薬師どのの調合なされた薬を服しておりましたなれど、……ここしばらく、夜の書き物に熱を入れるあまり薬を切らしてしまったゆえ、急な話ではございまするが、新たに薬を頂けぬものかと夜中に押しかけて参った次第。諏訪子さまは、なぜこの場に――?」

 至極当然の疑問を稗田は発した。
 ほとんど思案もせずに、稲光のようなすばやさで、

「眼が醒めてしまったゆえ、東日流の国まで散歩へ行って帰って来たところだ」

 と、諏訪子は冗談で応じた。

「奇遇にございまするな。それがしもまた、先夜までのうちにわが郷里はじめ、これまで旅してきた諸国諸州の風土のこと数多書き留め、今は諏訪の国情について筆を執らんとしていたところ。この身は科野州に在れど、心ばかりは遠く出で来て倭国中に遊びおる次第」

 一方の稗田は、冗談と言うにはいささか真面目な切り返しである。

「其許の郷里。確か、和州は添上郡、稗田村という所だったか」
「いかにも」
「稗田の村は、」

 少しためらいながらも、意を決して諏訪子は訊いた。

「懐かしき地であろう」
「改めて、問うていただくまでのこともなく」

 かりかりと頬を掻く、稗田の指先。
 その間にも、鳴弦の音は高く高く響き続ける。諏訪子のなかの浅ましい不安を共鳴させ、眼に見えるかたちとして顕現させようとするかのように。――ああ、わたしは彼がうらやましいのだと、諏訪子は気がついた。洩矢諏訪子は、稗田阿仁を恋うているのだ。自ら諸州を行くこと適う彼の身を。

 そして恋い得る者は、稗田ひとりだけのことでは決してなかった。今は寝床にある八坂神奈子でもあるし、モレヤでもある。洩矢諏訪子という神が他者を羨むとするのなら、それは自らの身を旅し参らせることのできるすべての者たちを恋うことである。悔やむのなら、諏訪に産まれ、諏訪から遠く離れることができない土着の神の身上である。当夜、眠ることができないのも、遠国(おんごく)の厠へ行ってくるという冗談が口を突いて出てきたのも、同じ科野州内のこととはいえ、すべては明日からの行幸を不安がっている諏訪子自身の現実ではなかったか。

「稗田は、八坂さまのいくさにつき従うこと十余年。その間、郷里に帰りたいと思うたことはなかったのか」

 だからそんなことを訊いてしまったのは、自分の知る世界が歪められるかもしれないという感情を、稗田を案ずるという体で取り繕うということなのかもしれなかった。畢竟(ひっきょう)、そこには未だ郷里のうちにおいて安穏と暮らしていられる、わが身の優越も含んでいたのかもしれないのだが。

 醜きことだと、諏訪子とても気づいている。
 問うた彼女に、稗田がただ艶然ささえ含んで微笑するばかりだったのは、彼がそんな諏訪子の心根を見透かしているせいかもしれなかった。

「言葉を変えよう。稗田舎人亜仁。そこは、なぜ郷里を出ようと思った」
「お答えすることも、むろん、できまする。なれど、やはりつまらぬ話にございまするぞ」
「構わぬ。正直を申さば、儂は少し不安なのだよ。諏訪土着の神にして王、それが行幸のためとはいえ初めて幾日も郷里を空ける。はるか日の出ずる東国の向こうまで、果てしなき旅を続ける者の言までも喰うことしなければ、こうして眠れぬ有り様よ」

 幼子のようだと、笑うてくれ。
 と、自虐の気ぶりを目尻に浮かばせる余裕もあらばこそ、諏訪子の口調は明瞭さを増していく様子である。確かに稗田は笑った。けれど、そこに諏訪子の望んだ嘲りは一片も含まれていなかった。歳も性別も素性も郷里もかけ離れた友人への、ささやかな気遣いが滲む笑みである。

「そういうことなれば、寝入りばなの夜伽話としてお話しする余地もございましょう」

 何から話すべきか……と思案するように、稗田は数歩も庭内をうろうろとする。
 やがてゆっくりとしゃがみ込むと、畑に植わった麻の葉や茎を指先で戯れながら、細く細く息を吐いた。ふと、諏訪子は不安がる。鋭い針の先で突くような彼の溜め息に、決して踏み込んではならない他人の領分を覗いてしまったのではないかと、瞬時に思ったせいだ。

「否、稗田。話したくないのであれば、無理に口を割らすつもりも諏訪子にはないのだぞ」
「いや、なに。……新しき世に不安があるのは、稗田とて同様のこと。月の蒼きに狂わされたか、かの鳴弦に心を研ぎ澄ましたゆえか。吐き出すべきもの、どうか吐き出させてくださいませ。なにゆえ、稗田舎人阿仁が八坂神の御いくさにつき従い、諏訪の地に至ったか」

 相変わらず、彼は麻の葉を弄んでいた。
 稗田の決意が揺るがぬうちにと、諏訪子は紙燭の燃えさしを手にしたまま階を下り、その途中に腰を下ろした。きしりと木材の軋る音がした。それを潮かと見たごとく、稗田は口を開き始めた。月光に濡れた彼の唇はことのほか朱(あけ)の差した色をし、ひとりの娘がそこにたたずんでいるかのようである。

「いつかお話ししたことがございましたな。“稗田の祖は大陸からの渡来人(とらいびと)である”と」
「うん。王莽なる王の苛政に倦み、白澤とかいう瑞獣の血を引く上白沢の一族と共に、稗田の祖は倭国の地に逃れてきたと」
「それもまた、まこと。なれど、稗田の名跡の祖はやはり倭国の人にございまする」
「渡来人の稗田は、倭国人の稗田への入り婿だったとでも」
「さようにございます」

 にわかに、稗田は立ち上がった。

「それがしは惨めな男にございまする。稗田という自らの家に倦み、稗田という血を厭い、稗田という流れを嫌うておりました」

 あまり、穏当な発言ではない。
 空手の方で頬杖など突いて聞いていた諏訪子だったが、思わず、背筋を正してしまう。

「わが血の嫡流は、出雲の大王が祖であらせられる天照大神の岩戸隠れがみぎり、歌舞音曲によりてその御身を再び導き参らせた女神、天宇受賣命(アメノウズメノミコト)に発する一族にございまする」

 立ち上がりはしているが、稗田は諏訪子と眼を合わそうとはしなかった。
 彼女に背を向け、夜に何かを探すかのごとく空を見上げていた。鳴弦の源という薬師の姿か、それともより月の蒼さのより明るい場所か。

「より正しきところ申さば、大陸から倭国に逃れてきた学者が天宇受賣の血と混じり、稗田という分家を興した……と、そういったところにございまする」
「稗田阿仁は、傍流の子か」
「血筋から申さば。本家は勢州、分家は和州で、天宇受賣の裔(すえ)なる血族は朝廷の祭祀を執り行うこと累代(るいだい)に及べど、わが稗田阿仁の身は本家の者にあらざるゆえ勢州にて祀りを行うことできず、また分家たる稗田とても、猿女君(さるめのきみ)を称する巫女の血の強き家がため、当然、力あるは女子(おなご)と決まっておりまする。それがしのごとき見神の才なき男子が――飼い殺しにされることなく、ただ次代に血を継がすだけの種馬となることなく、自らの手で糧を得るには、さて如何。遠く昔に稗田に混じったという大陸の学者の血の在るを信じ、官人となるよりほか道は無(の)うございました」

『猿女君』は、天宇受賣命の子孫を称し、古代より朝廷に仕えてきた祭祀氏族のひとつという。始祖とされる天宇受賣が、天照大神の注意を引いて天岩戸を開かせるために舞を行ったという故事から、鎮魂祭(みたましずめのまつり)や大嘗祭(おおにえのまつり)といった宮中儀式の際、巫女となる猿女(さるめ)を輩出した、女系氏族の人々とされる。

 むろん、諏訪子は倭(やまと)の王権が執り行う儀式儀礼や、それを努める者たちの家筋だの血筋について明るいわけではない。氏族の傍流の生まれという稗田阿仁が舐めてきた辛酸がいかなるものかにも、完璧に思い至ることなどできるはずもない。だが、その痛みの端っこくらいのものは何となく想像ができる。自分は八坂神奈子より氏を賜り、洩矢諏訪子となったのだ。洩矢氏(もりやうじ)という氏族が誕生し、夫であるモレヤと子を成し、諏訪王家という血脈を新たに興すということは、この稗田舎人阿仁が抱えるごとく、源を同じくする人々のなかに嫡流と傍流との相克という現象を生ぜしめかねないということでもあった。

 稗田は、自らを惨めな男と称した。
 氏と血族に縛られた人々の生涯は、結束のうえでも尊厳のうえでも確かに強固であろう。
 だけれど稗田が逃れたかったのは、家の名跡を継ぐことのできない自分が『稗田』の名において縛されることそのものである。そのように考え、諏訪子はぎゅうと手を握り締めた。モレヤが神奈子の養子となり神系の祖ともなれば、一族の脆さという患いは消えよう。だが同時に、そこに属するすべての人々を多少なりとも洩矢の血は縛りつけることになろう。未だ見ぬ自らの裔たちをそのような境遇に遭わすことは、諏訪子にもやはり気が重いのである。皆が皆、稗田阿仁のごとく生きられるというわけでもあるまいから。

「惨めな男、稗田舎人阿仁」
「は……」
「八坂さまは、かつて御自らを“敗残者”と称されたことがあった。出雲本国で政の立場を喪うたからだと、そのような仰せであった」
「あの方も、ときにはお気弱を口にされることがおありですから」
「だが八坂さまは敗残の身なれど、郷里より遠く離れたこの科野の地に国ひとつ創建なされた。では稗田。天宇受賣の血より逃げ、家の名より逃げ、郷里より逃げだした其許は、いったい何がしたい。何のために、いま、この諏訪子の前に立つ」

 首の付け根に手を伸ばし、髪の毛の生え際を稗田は掻いていた。
 そして、ようやく振り返って諏訪子の方を見る。月の輝きが逆光となり、彼の表情を影のなかに押し隠していた。

「それがしは、ただ名を欲するのみ」
「名……?」
「天宇受賣にあらず、稗田氏にあらず、猿女君にあらず。稗田阿仁は、稗田阿仁というただひとりの名を、生きた証を残し、それから死にたいと思うておりまする。母に抱かれんとして、自らの居場所を泣き騒ぐかのごとく」

 幼子のようだと、笑うてくださいませ。
 声は笑み、しかし、潤んだ瞳には悲壮な決意が在る。
 諏訪子には、今の稗田がそう見えた。

「ゆえに――八坂神による東国への御いくさへつき従うは、稗田にとりてはまさに渡りに船といったところにございました。諸国諸州の人々、政情、文物、気候、伝承、歴史、いくさ。……そういったものを仔細に書き留め、いつの日にか万巻の書にまとめ上げ、かの司馬遷の御業がごとく世に問いたいのです。そしてその書はこの葦原中ツ国が、倭国が、悠久の時経てたどってきた流れを後の世まで伝える標(しるべ)ともなりましょう」

 諏訪子は、驚きに眼を見張った。
 そして首を傾げ、頬に滲んだ汗をぬぐい、泣くとも笑うともつかない顔になった。

「呆れた。実に呆れた。そんな大それたことを、稗田はずっと考えていたのか」
「未だかつて一国家の歴史を論ずる書物を編むなど、本朝においては確かに前例なきこと。しかし、大陸の学者にできて倭国の学者にできぬ道理が、いったい何処(いずこ)にありましょうや」

 力強い口調。そして稗田は拳を振り上げた。
 怜悧な彼にも似合わず、ひたすらに熱ある仕草である。われ知らず、声が大きくなりすぎたことに気づいて、彼は直ぐに口をつぐんだ。「あ、……申しわけございませぬ。夜伽の話というにしては、いささか重苦しいものにございました」と、元の声音で言い添える。まるで自らの恥ずかしさを隠すかのように、四、五度、かすかに咳き込む彼であった。

 鳴弦の音は、いつか距離の隔てを少しずつ狭めているようにも思えた。
 庵と庭との主である薬師とやらが、もう直ぐ帰って来るのかもしれなかった。
 だけれど、諏訪子の心を焦らせていたのはそんなことでは決してなかった。そこまでの決心を稗田阿仁にさせた自らの家という呪縛のことが、行幸を明日に控えたこの夜のなかで、いよいよはっきりと露わになってきたと思えたからであった。だが、稗田の方でもそれを察したか、努めて柔和な顔をつくったと見える。

「史書の編纂という事業もまた、太平の御世のあればこそ。明日からの行幸は、その太平を一心に祈念するものとならねばなりませぬ」

 と、彼は諏訪子へ声をかけた。

「解っている。ものごとが始まる前には、何につけても気鬱ということがつきものなのだ。だから、儂も今宵は眠れなかった。だがな、稗田」
「はあ……」
「この諏訪子の裔となる者たちもまた、儂のごとく眠れぬ夜あらば、稗田の編んだ書というものが万巻の知をもって、彼らを支えることがあるかもしれぬ」
「恐悦至極と、存じ上げ奉りまする。其をもって、洩矢氏が諏訪の地に敷く王法の礎となるのであれば」

 深々と、稗田は辞儀をした。
 諏訪子は何も返さない。声も、うなずきでさえも。ただ、彼がうらやましいような気がしていた。王として国に、神として人の心に座する洩矢諏訪子が、ただの人間である稗田をうらやむとは、甚だ可笑しい話である。けれど、諏訪子は己の感情を否定しなかった。月光によって昂ぶった狂いとは、彼女にとっては弱気であることの別名であったのだろうか。それは、誰にも解らない。

 ぴんと伸ばしていた背筋をまた屈め、頬杖を突くことを再開する。
 諏訪子はうつむき、自分の可笑しみに口の端を吊り上げている。

「八坂さまがな。モレヤを養子にしたいとの仰せであった」
「なんと」
「モレヤが八坂さまの御子ということになれば、あれは神の霊感に護られし子ということになる。その子と儂が婚儀結べば、洩矢という血族は神系の氏としてさらに強固なものになろうと。そのような仰せだ」
「それは、確かに」

 フと、諏訪子は顔を上げる。
 稗田の表情は、黒く塗りつぶされてしまっているせいでよくは見えない。月からの逆光がことのほか強いせいだ。

「だがな、稗田。諏訪子は、正直を申せば八坂さまの策についてはいけぬ。儂は、あの子を八坂さまに渡しとうはない。いかに政の趨勢(すうせい)がためだったとはいえ、モレヤをわが夫として選んだは、この洩矢諏訪子の心なのだ。その心までをも踏み荒らされることは、たとえ八坂さまであったとしても受け容れがたい」

 ふたりは、沈黙していた。
 諏訪子はそれ以上なにもつけ加えることがなく、稗田もまた――神奈子の策と諏訪子の本心、そのどちらに対しても賛意を表すことがなかった。やがて寒さから逃れるように両の手のひらをこすり合わせながら、ようやく稗田の方から口を開く。

「よくよく自らの内なる“標”に従いて、お考えなさるがよろしいでしょう」
「標……?」
「八坂さまのお志を受け止めることができるのは、諏訪子さま以外にはおりますまい。しかし同時に、いま諏訪子さまのかかる思いを託すことができるお方もまた、八坂さまを除いて科野州に在るとは思われませぬ。そしていずれの考えに立つにせよ、それが太平に“ひび”を入れるものであってはなりませぬ。諏訪の歴史に悪しき前例を残すものであっては」
「それで直ぐに結論が出るのであれば、こうして其許に弱気を見せてなどおらぬ」

 かッかと、諏訪子は弱々しく笑った。
 反面、稗田は笑わない。

「諏訪子さま。これは諫言(かんげん)でも忠言でもございませぬ。もし、この稗田舎人阿仁という男が、御身の友人たるにふさわしき者であると思うてくださるのであれば、ただ、友よりの慰めとしてお耳に入れて頂きたく存じ上げまする」

 と、――突如、稗田は背筋を伸ばし始めた。

「“天地初めて発くる(ひらくる)時に、高天原(たかあまのはら)に成りませる神の名(みな)は、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)。次に高御産巣日神(たかみむすひのかみ)。次に神産巣日神(かむむすひのかみ)。此の三柱の神は、みな独神(ひとりがみ)と成り坐(ま)して、身を隠したまふ”。…………」

 反り返らぬばかりに胸を張ると、大きく息を吐き、呼気と共に朗々たる唄を吟じ始めたのである。諏訪子は眼を見張り、そして耳をそばだてた。これは、稗田の郷里の唄であろうかと。だが、聞くほどにそれはただの歌ではなかった。物語である。稗田がその記憶のなかに留めている古い古い物語を、唄に乗せて朗誦しているのだ。

 天地開闢(てんちかいびゃく)に続き、伊邪那岐命(イザナギノミコト)と伊邪那美命(イザナミノミコト)が数多の国と神とを産み出したこと、伊邪那美がその子の一柱である伽具土(カグツチ)のために火傷を負って命を落とし、黄泉国に住まうようになったこと。そして伊邪那岐が伊邪那美恋しさを抑えきれず、黄泉国に出向いたが、醜く腐り果てた伊邪那美の姿を怖れて逃げ出し、黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ)を境の地として伊邪那美との久遠の別れを選んだこと……。

 稗田阿仁の朗誦には、一片の澱みも欠落もなかった。
 それは確かに彼が自らの記憶に忘れざるものとして織り込んできた、出雲の国と人とがたどってきた物語に他ならないのである。歴史という叙事が未だ神話という叙情と未分化であった時代、口伝や口承によってその民族の歩んできた時の流れを伝える者たちは、その民族の存在証明を唯一可能とする偉才の人々であったに違いない。

 洩矢諏訪子が見た稗田阿仁もまた、そのような古から続く語り部の血が彼のうちに宿り、また後世において何らかのかたちで結実を見ることを、明確に予感させて止まぬものがあった。彼には、いま何の神気も神性も宿ってはいない。稗田は、学を収めて諸国の伝承を聞き書きするだけのただの人間である。だが、その朗誦には稗田という家筋に人の血が強くなるに連れ、徐々に喪われていったのであろう不惑ともいうべき熱がある。

 薬師のかき鳴らす鳴弦と稗田の朗誦とが、共に相戦うかのように響き合い、諏訪子の感覚を幾度もふるりと震わした。

「それで、その夫婦の神はどうなった」

 何につけ、よもや無意味に学ある様をひけらかすのでもあるまいが。
 わずか身を乗り出しながら、諏訪子は尋ねた。わざわざ長々と神話から故事を抜きだして、唄うだけで終わりということないだろう。稗田は、この唄から何かを示そうと考えているはずである。

 ――――伊邪那美命言さく(まおさく)、「愛しき(うつくしき)我(あ)がなせの命(みこと)、かく為(し)たまはば、汝(いまし)の国の人草(ひとくさ)、一日(ひとひ)に千頭(ちかしら)絞り(くびり)殺さむ」とまをす。尓して(しかして)伊邪那岐命、詔(の)りたまはく、「愛しき我がなに妹(も)の命、汝(なれ)然為ば(しかせば)、吾(あれ)一日に千五百(ちいほ)の産屋を立てむ」とのりたまふ。是(ここ)を以ち(もち)一日に必ず千人(ちたり)死に、一日に必ず千五百人(ちいほたり)生まるるなり。……。

 あなたの国の者を毎日千人も殺そう。
 では私は、毎日千五百人も産み出そう。
 人の生き死にの発端たる呪詛と、夫婦神の別れまでを唄い終え、稗田は大きく息を吐いた。

「伊邪那美の呪詛に抗し得べき伊邪那岐の御業がなんであったか。つらつら思いまするに其はやはり、わが愛し子である者たちを失うは忍びないという、親心のゆえであったのではございますまいか。そして、その親心がこの地上に満ち満てる神と人との弥栄(いやさか)の祖となったことを思えば、心ひとつの内たる愛惜の情もまた、政とその重きを同じうしているものと、稗田は思いまする」

 息は、荒い。
 咳き込むのを耐えて歌ったせいであろう。
 それでもやはり朗誦の時と同じだけ、彼の発する言葉にはまるで澱みがなかった。己が考えるところに澱みなきゆえ、斯様にすらすらと話が続くものであろうか。

「人の死するは天命。これは言うなれば、天が定めし呪詛がごときもの。そして、王者に政を与うるもまた天命。天に“叛き”し者は、いずれ天に裁かれましょう。しかし、すべての人が天に“逆ろう”て生きることはできるはずと思いまする」
「話が見えぬ」
「では、手っ取り早く申しましょう」

 ようやく、稗田はにッと笑む顔を取り戻した。

「八坂神は、天に吹く風を嘉(よみ)する乾の神。対して諏訪子さまは、大地の気を読み神霊と人々とを調停せんとする坤の神。乾坤が互いを支え合うて在るには、天が地を押し潰すことなきよう、腕を伸ばし、押し返さねばなりませぬ」

 手っ取り早く……とは言いながら、やはり比喩に頼んだ口ぶり。これが彼という男の癖なのであろう。しばし、顎を指で撫でながら諏訪子は思案の素振りである。それほど時間を掛けることなく、ひとつの答えに行き着いた。

「養子の話、断れということか」

 一見して、そういう話とも思えた。
 坤が乾を押し返すは、すなわち天地の調和である。神奈子と諏訪子、二者の調和のためには神奈子の方に折れてもらうのだと。しかし、稗田は首を横に振った。彼は、依然として諏訪子の問いに対して是とも非とも示さない。そこまでは、自分の務めではないのだと言いたげである。

「受け容れるにせよ、お断りするにせよ……乾坤が互いに引き合い押し合い、その均衡のために天地が崩れることなき最良の一点が何処かにあるはず。それを探すことは、稗田にできる仕事ではございませぬゆえ」
「頼りにならぬ男だな、稗田は」
「知恵者に知恵を問うことと、その知恵を用うることとはまったくの別」

 稗田阿仁は、最後まで諏訪子が選ぶべき最良の選択肢を提示することはなかった。
 また初めのように身を屈め、麻の葉に指を戯れるだけの惨めな男に戻ろうとしていたのである。その矮小な姿に、堂々と出雲人の神話を唄っただけの覇気もまた、もうすでにない。人ひとりの身で神に直答を交わしたのだ。身のうち、魂のうちから霊力のようなものが流れ出、少し、彼の意気は萎んでいたのかもしれなかった。

「自らの内なる“標”か……」

 独語しても、稗田はやはり答えない。
 洩矢亜相諏訪子の標。モレヤを夫と為すだけの、彼に対する朧気な恋であろう。それから、神奈子を盟友と頼んだうえで取り戻さんと願う、諏訪の治世でもある。ここに至って天秤に掛けるべきは、自らの恋か政かではなかったのかもしれない。

 これは、守矢諏訪子の信念の問題であった。
 依然、八坂神奈子の庇護と後見の下で王として在り続けるのか。
 それともモレヤとのあいだに子を成して家を興し、自らの血による統治を永年と続かせるのか。

 そのための“標”を今は、はっきりと削り出さなければならない。
 神奈子という偉大な友人の膝下から、いずれ独り立ちするということを。

「冴えてきた、と申せば良いのか」
「は、はあ」
「稗田。そなたの知恵は役に立たなかったが、そなたの言で儂の手に入れるべきものが、ようやく見えたかも知れぬ」
「それは祝着」

 御身、目指すべきものとは――如何に?

 彼のその言葉は、ほとんど独り言に近いものであった。諏訪子からの答えが返ってくることなど、初めから期待していなかったのかもしれない。それでもなおはっきりと、諏訪子は稗田に答えてやることをした。

「考えてみれば、易きこと。洩矢諏訪子は、どう逆立ちしても八坂神にはなれぬのだ。ならば洩矢諏訪子は、洩矢諏訪子の思うところを歩めば良い。ただ、それだけのこと」

 鳴弦の音は、いよいよ澄明さを増しつつあった。


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