前話→永遠の夜は繰り返されず①
――――――
ここ幻想郷は人間と妖怪が互いの領域を冒さずに共存する地である。
人間は妖怪を恐れ、また妖怪は人間による報復を恐れ、必要以上の干渉を避けて生活している。
そんな人間と妖怪だが、どちらにも寿命というものがある。
人間である限り肉体の老化には耐えきれず、いずれ朽ち果ててしまう。
妖怪も自然の現象に近いものとはいえ、いずれ誰からも忘れ去られてしまい消え去る。
そのどちらにも属さない種族がいる。
永遠の刻を生きる者、蓬莱人である。
迷いの竹林の案内人、藤原妹紅は後天的な(そもそも先天的なものがいるかどうかも分からないが)蓬莱人である。
1000年以上前、蓬莱の薬を服用したことにより蓬莱人となった。
彼女は薬を服用する原因となった月人、蓬莱山輝夜を恨みこの1000年を生きてきた。
妹紅には幻想郷に移り住んでから一人の半人半妖の親友がいた。
人里の教師、上白沢慧音である。
半妖はなんとも悩ましい種族である。人間以上、しかし妖怪未満の刻しか生きられず、だれとも同じ時間を生きられない。
上白沢慧音も人間の何倍という時間を生き、今宵その命の灯が消え去ろうとしていた。
妹紅にはそれが納得できなかった。
こうして妹紅は蓬莱の薬を求めて永遠亭までやってきたのであった。
苦悩の原因を作った蓬莱の薬を求めるとは皮肉なことである。
――――――
「それで刻を止めるのはいいけど、どうやってあの半妖を救うつもり?」
「もう一つお願いがあるんだ・・・蓬莱の薬を譲ってくれないか。慧音には時間がない、時間を止めてくれなければ今夜にも消えてしまう。薬が手に入っても服用できなれば意味がない」
「・・・・・・あなた自分が薬を飲んだこと後悔してなかったっけ。それをあの半妖にも味わさせるの?酷い子ねぇ」
「・・・・・・頼む」
これほどまでに屈辱的なことがあるだろうか、親の仇、そして自分をこんな醜い体(薬を飲んだのは自分だが)にした張本人に土下座をして縋る。
だが慧音を救うためならなんの躊躇いもない。
妹紅にとってそれほどまでに慧音の存在は大きかったのであった。
「(・・・・・・この子が蓬莱人になった時も少し驚いたけど、まさかこんな姿を私に見せるほどあの半妖を慕っていたとはね)」
「・・・・・・」
「少し・・・待っていなさい」
「!」
「永琳に蓬莱の薬があるかどうか聞いてくるわ」
正直あの性悪な輝夜のことである。ほとんど願いを聞き届けてくれる希望なんてなかった。
本当に薬をくれるとは、感謝しても感謝しても感謝したりない位だ。
「ありがとう・・・・ありがとう輝夜」
しばらくして輝夜が件の薬師を連れて、戻ってきた。
「姫様、本当にいいんですか?妹紅に蓬莱の薬を渡して」
「いいわよ。妹紅の珍しい姿も見れたし」
「そうですか・・・・・・姫様が言うことには逆らえません。それではそこの蓬莱人」
私のことを指さし、呼ばれる。
「え。あ、私か?」
「とりあえずその涙をふきなさい」
気づいたら両目から涙がこぼれていた。
土下座のみならず、泣いて乞う姿も見られるとは、本当に悔しくてたまらない。
ただ本当にこれで慧音を救えるんだな。
そう考えると、いくら拭っても涙があふれてくるのだった。
「はっきり言わせてもらうと、今永遠亭には蓬莱の薬がないの」
「え」
「だからあなたには調合材料を持ってきてもらいたいんだけどね、その材料も月にしかないものがほとんどなのよ」
「な!ふざけるな!私がどんな気持ちであんな醜態『落ち着きなさい』~~~っ!」
月にしかないということはあきらめろと言っているのと同じじゃないか!
やはり輝夜になんか頼むんじゃなかった。と黒いものが湧き上がってくる。
「私は月の頭脳と呼ばれた薬師よ」
「だからなんだ」
「代用になるもので薬を調合することも容易いわ」
「!」
「この紙に材料を書いてあるわ、どれも取った瞬間からどんどん劣化していくから、なるべく早く持ってきてね。あ、でも姫様の能力が効いてるから大丈夫かしら?」
紙に目を通す。
・・・・・どれも伝説でしか聞いたことのないものばかりだ。
なんだ?この医者はからかっているのか?と疑う。
「・・・・・・これ、本当に存在するものなのか」
「蓬莱の薬自体幻に近いものよ。ある程度伝説に近いもの同士で調合しないとできるわけないでしょう。幸いここは幻想郷、伝説になったものなんて腐るほどあると思うわ」
確かにその言葉も理に適っている。奇跡を起こすにはそれ相応のリスクを覚悟しろということか。
この1000年間の記憶を思い出す。
どれも一度も見たことない・・・・・・。
だがその程度、慧音を救うためなら苦でもない。
「わかった・・・だが約束しろ、必ず薬を完成させると」
「あなたがその紙に書いてあるものを持ってこれるのならね」
「このぐらいすぐ採ってきてやるさ!待ってろよ!」
待っててくれよ・・・慧音!
――――――こうして蓬莱人の少女は、永遠亭を飛び出していった。
――――――
永遠亭から妹紅が出て行った頃、幻想郷の空には一つの影があった。
「ねぇ紫、だれにも会わないわよ」
「珍しいわね、いつもだったら力を付けた妖怪の一匹や二匹がちょっかい出してくるんだけどね」
話をしながら適当に飛んでくる妖精を落とす
「にしてもうっさいわね、普段の妖精ってこんなに好戦的だったかしら?」
「異変があるとね、こんな風に好戦的になるのよ」
「ふーん、つまり異変の主犯からおこぼれをもらってるってわけ」
「大体あってる気がするわ」
一三代目の巫女が異変を解決している時は大体三匹ぐらい、異変に関係ない妖怪が手を出してきたらしい・・・のだが。
不思議なことに今夜は自分以外何も影が見えない。
「このまま異変の主犯まで着いちゃったりしてね」
「それはともかく霊夢、どこに向かうか分かっていて?」
「もちろんよ、私の勘は外れないわ」
「・・・・・・」
「どうしたの?」
「もしかして適当に進んでる?」
「だから私の勘は外れないから大丈夫よ」
博麗の巫女としての勘がこっちに行けと先導する。
不思議なことに全く外れる気がしない。
「はぁ・・・全く、あなたは霊夢にそっくりだわ・・・あなたも霊夢だけど」
「?」
「今回はおそらく永遠亭が主犯よ、ここしばらく大人しくしてたから油断してたわ」
永遠亭というと竹林の奥の病院(?)か
「とか言ってるうちに竹林まで着いちゃったけど」
「あなたの勘は素晴らしいわね」
「どうよ」
「あ、霊夢、周りをよく見て」
「え」
巫女の勘(?)に任せて進んでいくと気づいたら迷いの竹林の前についていた。
ただ紫は何か思うことがあるようだ。周りに目を凝らす。
何か・・・光の点のようなものが近づいて――――――
「霊夢!よけなさい!」
「え!嘘!きゃあ!!!」
光の点と思っていたものは急速に大きくなり音速を超えて突進してきた。
・・・・・・危うく轢かれるところだった。
あの光は、多分――――――
「――――――魔理沙・・・・・・」
「おろ?霊夢か、久しぶりだな」
「魔理沙、なんで霊夢がいるのよ、今回は私たちだけが異変解決に出るんじゃなかったの?」
魔理沙だけじゃなくてアリスもいるのか。私も紫と一緒だけど。
「あれは嘘だ」
「まぁなんとなくそんな気はしてたけど」
「魔理沙、今回は博麗神社が異変を解決させてもらうわ、主に私のお賽銭のためにね」
「悪いけどそういうわけにもいかないんだなぁ。今回の異変は霧雨魔法店が解決させていただきます。あとアリスな」
「真似しないでよ」
「うっせ」
「そういえば霊夢、あなた、弾幕勝負は初めてだったかしら?」
紫が言う。
一応修行では何回か実践を想定して練習はしているけど、けどね紫――――――
「・・・それ、修行で何回も弾幕を避けさせたあんたが言うこと?紫」
「修行と勝負じゃ全く勝手が違うわ。しかも今回はタッグになりそうだし」
無視しないでほしい・・・。
まぁでも二対二か。
弾幕勝負じゃ異質な部類に入るだろうがそれはそれで面白そうだ。
「いいわよ。勝った方が異変解決を続行していいということで」
「望むところだぜ」
魔理沙がミニ八卦炉を構え、アリスの人形たちが槍を構える。
「紫、結界で防御お願いできる?」
「了解♪」
――――――同刻、迷いの竹林の入り口で閃光と爆音が轟いた
――――――
ここ幻想郷は人間と妖怪が互いの領域を冒さずに共存する地である。
人間は妖怪を恐れ、また妖怪は人間による報復を恐れ、必要以上の干渉を避けて生活している。
そんな人間と妖怪だが、どちらにも寿命というものがある。
人間である限り肉体の老化には耐えきれず、いずれ朽ち果ててしまう。
妖怪も自然の現象に近いものとはいえ、いずれ誰からも忘れ去られてしまい消え去る。
そのどちらにも属さない種族がいる。
永遠の刻を生きる者、蓬莱人である。
迷いの竹林の案内人、藤原妹紅は後天的な(そもそも先天的なものがいるかどうかも分からないが)蓬莱人である。
1000年以上前、蓬莱の薬を服用したことにより蓬莱人となった。
彼女は薬を服用する原因となった月人、蓬莱山輝夜を恨みこの1000年を生きてきた。
妹紅には幻想郷に移り住んでから一人の半人半妖の親友がいた。
人里の教師、上白沢慧音である。
半妖はなんとも悩ましい種族である。人間以上、しかし妖怪未満の刻しか生きられず、だれとも同じ時間を生きられない。
上白沢慧音も人間の何倍という時間を生き、今宵その命の灯が消え去ろうとしていた。
妹紅にはそれが納得できなかった。
こうして妹紅は蓬莱の薬を求めて永遠亭までやってきたのであった。
苦悩の原因を作った蓬莱の薬を求めるとは皮肉なことである。
――――――
「それで刻を止めるのはいいけど、どうやってあの半妖を救うつもり?」
「もう一つお願いがあるんだ・・・蓬莱の薬を譲ってくれないか。慧音には時間がない、時間を止めてくれなければ今夜にも消えてしまう。薬が手に入っても服用できなれば意味がない」
「・・・・・・あなた自分が薬を飲んだこと後悔してなかったっけ。それをあの半妖にも味わさせるの?酷い子ねぇ」
「・・・・・・頼む」
これほどまでに屈辱的なことがあるだろうか、親の仇、そして自分をこんな醜い体(薬を飲んだのは自分だが)にした張本人に土下座をして縋る。
だが慧音を救うためならなんの躊躇いもない。
妹紅にとってそれほどまでに慧音の存在は大きかったのであった。
「(・・・・・・この子が蓬莱人になった時も少し驚いたけど、まさかこんな姿を私に見せるほどあの半妖を慕っていたとはね)」
「・・・・・・」
「少し・・・待っていなさい」
「!」
「永琳に蓬莱の薬があるかどうか聞いてくるわ」
正直あの性悪な輝夜のことである。ほとんど願いを聞き届けてくれる希望なんてなかった。
本当に薬をくれるとは、感謝しても感謝しても感謝したりない位だ。
「ありがとう・・・・ありがとう輝夜」
しばらくして輝夜が件の薬師を連れて、戻ってきた。
「姫様、本当にいいんですか?妹紅に蓬莱の薬を渡して」
「いいわよ。妹紅の珍しい姿も見れたし」
「そうですか・・・・・・姫様が言うことには逆らえません。それではそこの蓬莱人」
私のことを指さし、呼ばれる。
「え。あ、私か?」
「とりあえずその涙をふきなさい」
気づいたら両目から涙がこぼれていた。
土下座のみならず、泣いて乞う姿も見られるとは、本当に悔しくてたまらない。
ただ本当にこれで慧音を救えるんだな。
そう考えると、いくら拭っても涙があふれてくるのだった。
「はっきり言わせてもらうと、今永遠亭には蓬莱の薬がないの」
「え」
「だからあなたには調合材料を持ってきてもらいたいんだけどね、その材料も月にしかないものがほとんどなのよ」
「な!ふざけるな!私がどんな気持ちであんな醜態『落ち着きなさい』~~~っ!」
月にしかないということはあきらめろと言っているのと同じじゃないか!
やはり輝夜になんか頼むんじゃなかった。と黒いものが湧き上がってくる。
「私は月の頭脳と呼ばれた薬師よ」
「だからなんだ」
「代用になるもので薬を調合することも容易いわ」
「!」
「この紙に材料を書いてあるわ、どれも取った瞬間からどんどん劣化していくから、なるべく早く持ってきてね。あ、でも姫様の能力が効いてるから大丈夫かしら?」
紙に目を通す。
・・・・・どれも伝説でしか聞いたことのないものばかりだ。
なんだ?この医者はからかっているのか?と疑う。
「・・・・・・これ、本当に存在するものなのか」
「蓬莱の薬自体幻に近いものよ。ある程度伝説に近いもの同士で調合しないとできるわけないでしょう。幸いここは幻想郷、伝説になったものなんて腐るほどあると思うわ」
確かにその言葉も理に適っている。奇跡を起こすにはそれ相応のリスクを覚悟しろということか。
この1000年間の記憶を思い出す。
どれも一度も見たことない・・・・・・。
だがその程度、慧音を救うためなら苦でもない。
「わかった・・・だが約束しろ、必ず薬を完成させると」
「あなたがその紙に書いてあるものを持ってこれるのならね」
「このぐらいすぐ採ってきてやるさ!待ってろよ!」
待っててくれよ・・・慧音!
――――――こうして蓬莱人の少女は、永遠亭を飛び出していった。
――――――
永遠亭から妹紅が出て行った頃、幻想郷の空には一つの影があった。
「ねぇ紫、だれにも会わないわよ」
「珍しいわね、いつもだったら力を付けた妖怪の一匹や二匹がちょっかい出してくるんだけどね」
話をしながら適当に飛んでくる妖精を落とす
「にしてもうっさいわね、普段の妖精ってこんなに好戦的だったかしら?」
「異変があるとね、こんな風に好戦的になるのよ」
「ふーん、つまり異変の主犯からおこぼれをもらってるってわけ」
「大体あってる気がするわ」
一三代目の巫女が異変を解決している時は大体三匹ぐらい、異変に関係ない妖怪が手を出してきたらしい・・・のだが。
不思議なことに今夜は自分以外何も影が見えない。
「このまま異変の主犯まで着いちゃったりしてね」
「それはともかく霊夢、どこに向かうか分かっていて?」
「もちろんよ、私の勘は外れないわ」
「・・・・・・」
「どうしたの?」
「もしかして適当に進んでる?」
「だから私の勘は外れないから大丈夫よ」
博麗の巫女としての勘がこっちに行けと先導する。
不思議なことに全く外れる気がしない。
「はぁ・・・全く、あなたは霊夢にそっくりだわ・・・あなたも霊夢だけど」
「?」
「今回はおそらく永遠亭が主犯よ、ここしばらく大人しくしてたから油断してたわ」
永遠亭というと竹林の奥の病院(?)か
「とか言ってるうちに竹林まで着いちゃったけど」
「あなたの勘は素晴らしいわね」
「どうよ」
「あ、霊夢、周りをよく見て」
「え」
巫女の勘(?)に任せて進んでいくと気づいたら迷いの竹林の前についていた。
ただ紫は何か思うことがあるようだ。周りに目を凝らす。
何か・・・光の点のようなものが近づいて――――――
「霊夢!よけなさい!」
「え!嘘!きゃあ!!!」
光の点と思っていたものは急速に大きくなり音速を超えて突進してきた。
・・・・・・危うく轢かれるところだった。
あの光は、多分――――――
「――――――魔理沙・・・・・・」
「おろ?霊夢か、久しぶりだな」
「魔理沙、なんで霊夢がいるのよ、今回は私たちだけが異変解決に出るんじゃなかったの?」
魔理沙だけじゃなくてアリスもいるのか。私も紫と一緒だけど。
「あれは嘘だ」
「まぁなんとなくそんな気はしてたけど」
「魔理沙、今回は博麗神社が異変を解決させてもらうわ、主に私のお賽銭のためにね」
「悪いけどそういうわけにもいかないんだなぁ。今回の異変は霧雨魔法店が解決させていただきます。あとアリスな」
「真似しないでよ」
「うっせ」
「そういえば霊夢、あなた、弾幕勝負は初めてだったかしら?」
紫が言う。
一応修行では何回か実践を想定して練習はしているけど、けどね紫――――――
「・・・それ、修行で何回も弾幕を避けさせたあんたが言うこと?紫」
「修行と勝負じゃ全く勝手が違うわ。しかも今回はタッグになりそうだし」
無視しないでほしい・・・。
まぁでも二対二か。
弾幕勝負じゃ異質な部類に入るだろうがそれはそれで面白そうだ。
「いいわよ。勝った方が異変解決を続行していいということで」
「望むところだぜ」
魔理沙がミニ八卦炉を構え、アリスの人形たちが槍を構える。
「紫、結界で防御お願いできる?」
「了解♪」
――――――同刻、迷いの竹林の入り口で閃光と爆音が轟いた
明日にも投稿できるのならば、三話分纏めて一つでも良いのではないですか?
細切れでの投稿は、私には投稿回数を増やして目立とうとしているように見えてしまいます。
ただ一応言わせていただきますと、コマギレに投稿したのは私なりに意味があります。
一つは、この話を考えた時点ではもっと練りこんで長くするつもりでした。
ただ練りこんだ結果大した長さにならず、そのまま投稿してしまいました。これは完全に私の失敗です。謝罪いたします。
二つ目は、私は物書きとしてまだまだ駆け出しです。
とりあえず序盤を投稿してみてコメントなどで何かしら具体的な意見をいただけたらそれを参考に書いていこうと思いました。
この文章じゃ即興だろと思われたかもしれませんが、次回はそう思われないようにもっとじっくりと練りこんでみせます。
ご意見ありがとうございました。
とりあえず書き終えてじっくり練りこむことができたら、①と②もまとめたものを一度に投稿してみようと思います。
①と②は消さずに残しておきますので、よろしくお願いします。