Coolier - 新生・東方創想話

魔法使いと魔法を使える人間と

2012/03/30 01:35:56
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 薄暗く湿った魔法の森の中、人形遣いアリス・マーガトロイドの家に来客が訪れたのは、もうすぐ日付が変わろうとしている真夜中のことだった。

 ――――――――
 
 悩みや不安とは無縁に見える少女、霧雨魔理沙は珍しく一人で悩んでいた。
 魔理沙は魔法は使えるが種族としてはただの人間である。紅魔館の図書館の主や、魔法の森の人形遣い、命蓮寺の僧侶のように、膨大な時間を持つわけでもない、すこし妖怪寄りなだけの人間であった。
 

 魔理沙はここ最近自分の研究に限界を感じ始めていた。
 元々魔理沙はそこまで魔力があるわけではない。魔力が足りないからこそ、ここ魔法の森のような魔力を補える環境に住んでいたわけである。
 魔力自体なら、博霊神社の巫女や、香霖堂の店主の方が多いのではないかと思われるほど魔理沙は平凡であった。


 にもかかわらず魔理沙は自分が人間であることに誇りを持っていた。
 妖怪のような長い寿命を持たずとも、その短い生涯は妖怪に勝るほど輝くと信じ、いままで一人研究に没頭してきた。
 しかしやはり人間である限り、時間という物理的な限界は頑張ってどうにかなるものでもなく、魔理沙が悩んでいるのもそれが原因であった。


 「・・・やっぱり無理かなぁ・・・」


 魔理沙の机の上には魔法使いについての本が積まれていた。


 「どうすればいいんだ・・・今更霊夢に相談するのも恥ずかしいし・・・」


 努力家である魔理沙は同時に高いプライドも持っていた。
 博麗霊夢は昔からの親友であるが、ライバルでもある霊夢に魔理沙は相談できずにいた。


 「・・・・・・」


 ここ数日、魔理沙は博麗神社に行くことはおろか、自分の家(研究室でもある)からも出ずにずっと魔法使いについての本を読んでいた。

 
 実をいうと魔理沙が悩んでいるのはここ最近のことではなく、実家を出て魔法の森に居ついてからずっと考えていることだった。
 そのため紅魔館に足を運んでは図書館の主、パチュリー・ノーレッジに相談することも何度かあった。パチュリーはまともに取り合ってくれたことは一度もないが(「自分で考えなさい」と言われるばかり)。
 ただ研究の限界が見えてくると、その悩みも途端に大きくなってここ数日間家にこもっていたのである。


 「あまり顔を合わせたくないんだけどなぁ・・・」


 魔法の森には魔理沙のように魔法の研究をする少女がもう一人いた。
 人形遣い、アリス・マーガトロイドである。


 ただ人を寄せ付けない(アリスにはそんな気は全くないのだが)アリスと、口が多く活発な魔理沙は相性が悪く、両者ともあまり会いたがらないのであった。


 「聞かぬは一生の恥とは昔の人も上手いこと言ったもんだな。会いたくないが行くしかないか・・・・・・」


 こうして魔理沙はアリスの家を訪ねることにしたのである。


 ―――――――――


 「アリスーいるかー?」ドンドン


 何度来ても慣れない家の前でドアをたたく。
 もうすぐ日付が変わろうとする真夜中に家を訪ねることは、魔法の研究に携わるものの家に訪れる場合は非常識でもない。彼らの中には不規則な生活をするものも多く、夜中に起きていてもおかしくはないからだ。
 しばらく待ってもドアは開かない。
 今は寝ているのかと、会わないことに少し安堵しながら帰ろうとしたときにドアが開いた。


 「・・・・・・あら・・・魔理沙、いらっしゃい」


 2人とも苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。


―――――――――


 「今紅茶でも用意させるから少し待ってて」
 「おう」
 

人形がひとりでに動き、紅茶や茶菓子を用意する(実際はアリスが動かしているらしいのだが)異様な光景にはいまだになれないと魔理沙は思った。


 「人形、便利だな。一体ぐらい譲ってくれないか?」
 「あなた、人形操れるの?」
 「いや、できないが」
 「じゃあ駄目ね、この娘達は自動じゃないんだから」
 「じゃあアリスが私の家の家事やっといてくれないか?」
 「嫌。だってあなたの家、一度入ったことあったけどゴミだらけじゃない」
 「あれはゴミじゃなくてれっきとした資源と資料だ」


 そんな他愛もない会話をしながら時間はすぎていく。
 紅茶とクッキーが机の上に並べられたのは会話を初めて3分程度たってからのことだった。


 「で?今日はどうしたの?」
 「少しな、相談があってきたんだ」
 「へぇ・・・・・・」


 アリスは少し興味を示したようで魔理沙の目をじっと見つめた。


 「もしかして魔法使いについてのこと?」
 「!」


 心の中を見られているようであまりいい気持ちではなかったが、わざわざ説明する手間もはぶけたと少し気持ちが軽くなる。


 「ばればれよ、魔法に携わる人間がそんな深刻な目をするのは財布を落とした時と魔法使いになるか迷っている時ぐらいでしょ」
 「まぁ確かに財布の中身もこの前霊夢にぶんどられたが」


 関係ないがつい先日霊夢との弾幕勝負で負けて酒をおごらされたのだ。


 「それで、魔法使いの何について聞きたいの?」
 「・・・いや、魔法使いになったらどんな感じなのかなーと・・・」
 「ふーん・・・・・・」
 「・・・・・・」
 

 嘘だ。魔理沙は魔法使いになって人間をやめることを恐怖している。


 魔理沙はいつもは強がっているか、中身は年相応の少女程度なのだ。
 人間との決別、それは今まで生きてきた世界が変わることを意味する。
 一緒に遊んできた者のなかでこれから同じ時間を生きてはいけないものも出てくるだろう。魔理沙はそれを恐れているのだ。


 「私は・・・魔法使いになる前のことなんてもう忘れてしまったわ・・・・・・。パチュリーには相談したの?」
 「いや、したんだが取り合ってくれなかった」
 「ふふっ、パチュリーらしいわね。私たち4人の中でもずば抜けて魔法使いの経験もあるのに」
 「・・・・・・」
 「魔法使いになったらどうなると思う?」
 「え・・・・・寝なくていいし研究できる時間も莫大に増える。食事の必要もなく研究に没頭できる・・・ってところか」
 「大体あってるわね。でもその代りあなたはもう妖怪と同じよ」
 「それもわかってる」
 「嘘。分かってないわ。あなたには想像できるの?自分と親しかった人と時間が合わずに消えていくのを」


 魔理沙が考えることなどアリスには全部お見通しだった。
 魔理沙がアリスを嫌いとまではいかないがあまり近寄りたがらないのは、こういうことも関係しているのだろう。

 
 「あなたは自分では妖怪に近いと思っていると思うけど、私たち妖怪からしたらあなたなんてお子様もいいところ。あなたは人間すぎる」
 「そんなことな『いいえ、あなたは人間側に寄りすぎているわ』」
 「っ・・・・・・!そうやって見下してるようなところが私は嫌いなんだ!」
 「奇遇ね私もあなたがそうやって子供すぎるところが嫌いなの」

 
 そこまで言われるとは思わなかった。
 妖怪にかかわることで自分も少しは妖怪側に偏っていると思っていた。
 しかしそれは間違いだったのだ。魔理沙は博麗霊夢や親しくした人間との別れなど想像できない。
 自分は人間すぎたのだと実感させられた。


 「胸糞悪い。帰る」
 「待ちなさい」
 「まだなにかいうことがあるのか?」
 「なんであなたは魔法を研究しているの?」


 今更過ぎる質問だ。魔法に魅力があるから研究する。
 ただそれだけだ。


 「今更過ぎる質問だな。魅力があれば好奇心をそそられる。だから私は魔法を研究しているんだ」
 「そう」
 「じゃあな」
 「紅茶、残ってるわよ」
 「いらん」
 「じゃあ私があとでもらうわ、それと後一つ・・・・・・言い過ぎたとは思ってないわ。気に入らないことがあったらすぐ怒る。そんなので魔法使いになれると思っているなんて思い上がりも甚だしいわ」
 「・・・・・・」
 「・・・・・・」
 「もう少し話していく・・・・・・」
 「紅茶冷めてるけど?」
 「そのままでいい」


 命蓮寺の僧に説教くらった気分だ。そういえばあいつも魔法使いだったな。と魔理沙は思う。
 ただ確かにアリスの言うとおり、気に入らなくても取り入れるのは魔法使いにとって大事なスキルではある。
 心を落ち着かせて椅子に座る。


 「確かに・・・霊夢達と同じ時間を生きれないことに怖いと感じていたよ」
 「あら、ずいぶん素直になったわね」
 「~っ・・・・・・別にいいだろ。確かに気に入らないからってすぐ怒るのは私の悪い癖だったよ。すいませんでした!」

 
 半ばやけくそ気味に謝る。


 「でも・・・人間をやめるのと釣り合うほど魔法の研究には魅力があるんだよなぁ・・・・・・」
 「ま、私も好奇心があるから研究してるんだけどね」
 「アリスは完全自立の人形を作るのが目的だっけ?」
 「そうね、魂の研究とかも同時に進めてるわ」
 「へぇ、そうなのか」


 話をするだけでどんどん時間は過ぎていき、気づいた時には夜明けの時間が近づいていた。


 「魔理沙」
 「ん?」
 「結構時間立ったわね」
 「そうだな」
 「どうするの?」
 「・・・・・・」
 「また説教みたいになるけど、私とこうして話していることは気休めにしかならないわよ」
 「そうだよな・・・・・・わかってる。分かってるよ。でもな、やっぱり怖いんだ。一人で考えてたらおかしくなりそうだ」
 「・・・私もね、一人で研究してるとおかしくなりそうになることあるわよ。魂ってなんだろうとか・・・この世界ってなんだろうって」
 「・・・・・・」
 「でもね、やっぱり魔法の研究って楽しいのよ。私はいつか絶対に自立人形を完成させてみせるわ。絶対にね」
 「そっか・・・・・・とりあえず今日は帰るぜ。もう少し考えるよ。」
 「そう。ま、少しは大人になれたんじゃないの?」
 「ふんっ、嫌味か?」
 「いいえ、純粋な評価よ」
 「ああそうかい」
 「ええ」
 「今の植物の名前だぜ、亜阿相界」
 「どうでもいいわよそんなこと」
 「じゃ、また来るかもしれんから、ありがとな」
 「さよなら、私たち魔法使いはいつでもあなたの業界入りをお待ちしておりますわ」


 アリスの皮肉を後に魔理沙はアリス亭を後に飛び去った。


 ――――――――――数日後


 「後悔は・・・多分しない、私には捨てることなんてできないよ」


 アリスから助言をもらってから数日後、魔理沙は結論を出していた。
 魔理沙にとって魔法とは生きがいそのものでもあった、実家を飛び出してしまうほどに魔理沙は魔法に魅入られていたのだ。
 魔理沙にとって人間としての生活は生きることそのものであった。魔法と比べてもどちらにも傾かないほどに。


 そんな二つの事柄を数日いや、数年も考え続けて魔理沙は決断した。


 ――――――魔法使いになる道を――――――


 「やっぱり私には魔法の研究はあきらめられないよ、悪いな霊夢」


 魔理沙はこれから数年かけて魔法使いになるための道を歩むだろう。
 おそらくその間はだれにも会わずに生活するかもしれない。
 誰にも会わない覚悟を決める。実家に帰らないと覚悟した時よりもはるかに重い重圧を魔理沙は感じていた。

 
 ただ、その道に踏み出す前にこの覚悟を誰かに伝えたい。そう思い魔理沙は出かける準備をしていた。


 ――――――


 「アリスーいるかー」ドンドン
 

 以前訪ねたときよりも早くドアは開いた。
 

 「あら、魔理沙じゃない。いらっしゃい。紅茶でも飲んでくの?」
 「いや、今日はこの前の話の続きをしに来たんだ」
 「そう、決めたのね」
 「ああ、やっぱり私に魔法の道は捨てられないよ。魔法使いになることにした」
 「・・・・・・つらい道になるわよ。覚悟の上?」
 「もちろんさ、こうして言ってみると意外とあっさりだがかなり悩んだんだぜ」
 「見てわかるわよ、疲れ切ってる顔してるもの。それで今から霖之助さんにでも会いに行くの?」
 「お前は読心術でも学んだのか?わざわざ口に出す必要もないな」
 「あなたがわかりやすすぎるのよ」
 「そうかい。じゃああんまり長居するとさびしくなりそうなんでな、そろそろお暇するぜ」
 「次会うのはあなたが魔法使いになったときかしらね?」
 「期待してろ」
 「ええ、期待してるわ」

 
 ―――――――

 
 カランカラン
 「いらっしゃ・・・って魔理沙じゃないか、今日は特に珍しいものはないぞ」


 この毒舌もしばらく聞けなくなるのかと思うと少し心が痛んだ。


 「よお香霖、久しぶりだな」
 「ん、確かに前にあったのは結構前だね。何かしてたのかい?」
 「考え事をしていたんだ」
 「まぁ研究熱心な君のことだ。また答えの出ないようなことに悩んでいたんだろう」
 「違うぜ。ちゃんと答えは出たんだ」
 「ほう、それはよかった。」


 一通りの社交辞令が終わると興味がなさそうに霖之助は目をそらす。
 次に言う言葉を聞いてこいつはどんな顔をするだろうか。魔理沙の頭の中はそれでいっぱいだった。


 「なぁ香霖」
 「なんだい?」
 「私は魔法使いになることにしたよ」
 「・・・・・・え」
 「人間をやめることにした」


 眼鏡がずれていることにも気づかず霖之助は魔理沙を凝視する。
 いつも困った妹を見るような感じで見てくるからいつかこんな風に一泡吹かせてやりたかったのだ。


 「・・・・・・このこと、ぼくはなんて親父さんに伝えたらいいんだ」
 「親父は関係ないだろ」
 「ふぅ・・・・・・まさか君が生まれたころはこんなことになるなんて想像もつかなかったよ」
 「赤ん坊は総じて純粋だからな」
 「だが魔法使いってことは妖怪と同じだぞ?君は人間であることにも誇りがあったじゃないか」
 「魔法の研究と人間、天秤にかけて魔法に傾いただけだ」
 「・・・・・・もう意思を曲げる気はないのか」
 「・・・・・・」
 「聞くだけ無駄か。君は頑固なところだけは親父さん譲りだからな」


 霖之助はその端正な顔を少し悲しそうにゆがめて笑った。


 「でも・・・少し安心したかな」
 「?」
 「僕は人里の慧音のように半分妖怪だからね、いつか君も看取らなきゃならないと思ってた」
 「あ・・・・・・」
 「これで安心だ、ぼくが看取られることはあっても君を看取ることはなくなった。悲しいことが一つ消えたよ」
 「引き留めてるつもりか?」
 「いや、ただそう思っただけさ」
 「ああそうかい」
 「今の植物の名前かい?亜阿相界」
 「よく知ってるな」
 「君に植物を教えたのは誰だと思ってる。まぁ今は君の方が上だが」
 「そういやそうだったな、師匠」
 「師匠だなんて柄でもない」
 「確かに香霖は無駄口が多い、師匠どころか先生にもなれないだろうな」
 

 以前アリスの家で話したような他愛もない話が続く。
 気づいた時にはかなりの時間がたっていた。


 「そろそろ行くぜ」
 「霊夢にもこのこと言うのかい?」
 「まさに今行こうとしてたところだ」
 「やっぱりそうか」
 「全く・・・アリスにしろ香霖にしろ私の思っていることは筒抜けなのか?」
 「君がわかりやすすぎるんだよ」
 「それ、アリスにも言われた」
 「あの人形遣いの少女か」
 「そうだ、家、近いしな」
 「ほう」
 「ああ、香霖、一応言っとくが、次会えるのはずいぶん先のことになると思うぞ」
 「わかってるさ、僕も魔法使いになるための手順については少しは齧ってるからね」
 「じゃあよかった。魔理沙が来ないって霊夢に泣きついたんじゃ霊夢がかわいそうだ」
 「僕は君がいなくなろうと泣かないさ、信じてるからね、帰ってくることを」
 「そこまで信頼されると逆に困るぜ。まぁ・・・また会うときは」
 「ああ、また会うときは」
 『君(私)が魔法使いになったときだね(ぜ)』


 ―――――――――


 誰もいない境内で、博麗霊夢は一人さびしく掃除をしていた。
 ただでさえ鬼やスキマ妖怪、黒白の魔法使いしかこないのに、頻繁にくる黒白の魔法使いこと霧雨魔理沙がここ数日姿を見せないからだ。

 
 「誰か来てくれないかなぁ・・・前魔理沙におごってもらったお酒も切れたし・・・」
 「ぃむー・・・霊夢ー、久しぶりー!」
 「あら!魔理沙じゃない!ずいぶん長い間来なかったわね」
 「いや悪かったよ、少し悩み事があってな」
 「へぇ、まぁあなた普段の姿に似合わず努力家だものね」
 「前半が余計だぜ」
 「はいはい、まぁ少しお茶でも飲んでく?」
 「じゃあお言葉に甘えて」


 ―――――――――


 「ふぅ・・・この季節になるとお茶もおいしいわねー」
 「・・・お前年中それ言ってるだろ・・・」
 「細かいことは気にしないの」
 「・・・・・・」
 「そういえばどんなことに悩んでたの?魔法関係だとお手上げだけど」
 「ああ、魔法関係だけど霊夢にもわかることだぜ」
 「ふーん、少し聞いてみようかしら」
 「ああ、それはな、異変についてのことだ」
 「異変を起こす奴は誰だろうと構わずぶちのめすわ」


 お祓い棒を片手に、お茶を持ちながら霊夢は不敵に笑う。
 少し怖い。


 「まぁまだ仮説だから」
 「聞いてあげてもいいわよ。つぶしやすくなるから」
 「はいはい・・・まず異変の内容なんだがな、人間が妖怪になってしまう異変だ」
 「?それって何?一人だけなるの?人里とかで大規模に起こるの?」
 「一人だけだ、しかも魔法使いになるんだ」
 「ふーん」
 「そうだ」
 「それ異変?ただの個人的な行動で幻想郷の異変とは言えないわよ」
 「その異変の実行者がいまここにいる人だとしたら?」
 「いや、私は異変起こさないし」
 「・・・・・・」
 「・・・言いたいこと・・・あるんでしょ。言いなさいよ」
 「え・・・知ってたのか」
 「最近ここにこなかったしこの前アリスと会ったときに色々話したからね。あなたに何かあったことぐらいわかるわ。」
 「なんだ・・・じゃあ話は早いな」
 「ええ」
 「霊夢、私な、魔法使いになることにしたよ」


 しばらく沈黙が続く、その沈黙はまるで魔理沙を責めたてているようにも思えた。
 なんで私に相談してくれなかったのよ、勝手に決めないで。という霊夢の叫びのように魔理沙は感じた。


 「ごめんな」
 「なんで謝るのよ」
 「お前には相談したくなかったんだよ。私のちいさなプライドが許さなくてな」
 「ほんと、ちっぽけなプライドね。頭にくるわ」
 「悪いな、もう覚悟も決めたんだ」
 「そう・・・・・・」


 また沈黙が訪れる。
 どちらも言葉を発さずしばらくの間お茶をすする音だけが境内に響く。
 ポタッポタッ・・・と水滴が落ちるような音がするのを魔理沙は聞き取った。


 「おい・・・霊夢?」
 「・・・・・・」
 「あ、いや、ごめん・・・泣かせるつもりなんてなかったんだが・・・」
 「うるさいわよぉ・・・ばかぁ・・・」
 「あー・・・とりあえずこれ使え」


 香霖堂で買ってきたティッシュとかいう紙を霊夢に渡す。


 「うぅ・・・ぐすっ・・・」
 「霊夢が泣いたのなんて初めて見た。絶対泣かないと思ってたよ」
 「~~~っ!」
 「・・・・・・」
 「いいわよ・・・」
 「え?」
 「そこまで覚悟があるならなればいいじゃない、魔法使い」
 「お、おう・・・」
 「?なに?引き留めて欲しかったの?」
 「いや、別に・・・そんなつもりはなかったんだが、あんまりにもしゃべらないからボッコボコにされてから言われると思ってた」
 「ひどいわね・・・そんなふうに思ってたの・・・グスッ・・・」
 「あーあー悪かったってほらちり紙」

 
 お茶が切れたわ、と、霊夢が台所の奥に消える。
 というのは口実で顔を洗いに行ったのだと魔理沙は思った。
 しばらくしてお茶を入れて霊夢が戻ってきた。

 「・・・・・・」
 「・・・・・・(気まずいぜ・・・)」
 「いつから?」
 「ん?あぁ。悩んでいたほうか?それとも魔法使いになるために研究し始めるほうか?」
 「どっちも」
 「実をいうと実家を出たときからずっと悩んでいたんだ」
 「そうだったの」
 「で、最近になって限界が見えてきてな、本格的に考え始めたのがここ数か月のことだ」
 「ふーん」
 「魔法使いになるために研究は明日からでも始めようと思ってる」
 「ずいぶん早いのね」
 「アリスと香霖にも言ったが、多分数年は会えずに研究すると思う」
 「え、なんで?別に会うこともできるじゃない」
 「そうもいかないんだ、元々数十年かけて普通の人間が覚える魔術を数年に短縮して覚えるわけだからな。それなりにリスクも伴う」
 「そう・・・・・・」
 「いざとなったら先輩方に助言もらいに行くかもしれないがな」
 「でも私には会えないと」
 「ああ。ここまで来るのも結構時間かかるからな」
 「そう・・・あ、魔理沙ちょっと立って」
 「え。分かった」


 魔理沙が立ち上がったと同時に霊夢も立ち上がりこちらに体を向ける。
 霊夢は拳を振り上げる。


 「え、ちょ、れいm」
 「せぇい!!!」

 
 ボゴォ!!!境内に生々しい音が響く。
 殴られた。


 「いったぁ~・・・・なんで殴る!?」
 「私に相談せずに勝手に決断した罰と、最近会ってくれなかった分」
 「ぅ・・・・そういわれると何も言い返せないが・・・せめて平手打ちぐらいで済ませてくれ」
 「駄目よ、それほど魔理沙がしたことは重かったのよ」
 「くそぅ・・・」
 「あ、そうそう、何年ぐらいで終わるかしら」
 「だからわからないんだって、数年っていっても10年以上かかるかもしれないし」
 「5年」
 「は?」
 「5年よ、それ以上になったら一日過ぎようが絶対に許さない」
 「無理だっていったr『5年よ』」
 「絶対に、5年以内」
 「~~~っ!!!わかったよ!5年だ!5年以内に魔法使いになってやるよ!誓ってやる!」
 「よしっ!」
 「その代り私も条件だ」
 「なに?」
 「5年以内に私が魔法使いになったら、とびきりの酒を鬼から持ってこさせて宴会を開け」
 「・・・・・・いいわよ、その条件乗った!」
 「よっしゃ!」
 「じゃあ」
 「そうだな、そろそろ陽も沈む」
 「次に会うときは」
 『魔理沙(私)は魔法使いになって私(霊夢)はとびきりの酒とつまみを用意しておくっ!』 


 ――――――――― 

 
 こうして一人の少女は魔法の森に帰っていった。


 5年後、「流星異変」という名の異変が幻想郷に起こった。
 人里の半人半獣の教師が言うには、黒と白の服を着た少女が異変を起こしたということだったが、それはまた別のお話・・・・・・。

                                                       -fin-
 初めまして、rasanというものです。
 前々から創創話にはお邪魔していたのですが、いつも見るばかりで何も投稿したことはありませんでした。
 
 何か見てもらいたいなーと思って今回初めてこの作品を投稿してみました。
 書いておいてなんですが、まだまだ自分の技術が未熟で、見にくいし、長すぎるという人も多いと思います。
 
 いつか同人も出したいと思っているので、現在進行形で文章も含め、絵とかも練習し始めています。
 この話には、自分がこの1年間で経験した色々なことを詰め込めたと思います。
 
 ここで出すのもなんですが、この一年間で新しいことを色々体験し、疲れているところ、東方というジャンルを知って、色々な同人誌即売会に一般参加したりとして自分の視野を広げてくれて、そういった意味で、東方は私にとって大きな意味をもたらせてくれました。
 
 自分ではいいものがかけたと納得したので、読んでもらえたらご意見ご感想お待ちしております。

 長々しい話に付き合っていただきありがとうございました。

ちなみに私は雛とかパチェとか慧音先生とか大好きです。
 東方知ってまだ1年ちょっとですが大好きです。

 (誤字脱字とかね・・・許して・・・それかこっそりコメントで書いといてください・・・)
rasan
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コメント



0.740簡易評価
2.80奇声を発する程度の能力削除
>博霊
博麗
読みやすくて、良かったです
12.無評価rasan削除
>>奇声を発する程度の能力さん
あー間違えてたー!!!
すいません若干資料とかあまり読まずに書いてた感じなので・・・あとでなおしときます。
15.100名前が無い程度の能力削除
話がコマ切れというか、説明不足な気がしました
何というか、作者さんの世界観がこちらに伝わってこないんです。だから読んでいていまいちしっくりこない
あともうちょっと高い山があっても良かったかなぁ、と
点数は応援の意味も込めて100点です
18.無評価rasan削除
>>名前がない程度の能力さん
そうですね。書いている最中は長く感じたんですけど、改めて読み返してみると、あまり間がないというか、コマギレのように自分でも感じました。
個人的に山は、霊夢との別れ話のあたりのつまりだったんですけど、もう少しここを盛り上げれなかったのかぁと反省しています。
コメントありがとうございます。オリジナルも書けるよう頑張ります。