・初投稿のため色々ひどいかも
・百合あり
・途中で視点変更あり
以下のことを踏まえてそれでもよろしいという方はお付き合いお願いします
「勘違いしないでよ!義理なんだからねっ!」
朝っぱらから呼び鈴がなったので芽をこすりながら出てみるとアリスが顔を真赤にして何か箱を渡して、そのまま去っていってしまった。そういえば今日はバレンタインデーだったか。箱を開けてみると中には手作りのクッキーが入ってた。前においしいといったのを覚えていたんだろう、今すぐ食べてもいいが昨日も魔法の研究で徹夜だったのである。正直眠い。
「・・・起きたら食べるか」
そうつぶやいてとりあえず二度寝することにした。アリスの作ったクッキーはおいしいだろうなぁ・・・と考えながら。
◇
「てなわけできたんだぜ!」
「・・・分かるように説明してくれないかしら?」
「おいしいクッキーには紅茶がつきものだろ?だからここにきたんだ!」
「私の図書館は喫茶店じゃないんだけど・・・」
あのあと昼頃に目を覚まして、クッキーを食べようと思ったがあいにくと紅茶が切れていた。そこでとりあえず紅魔館の地下図書館に来たのである。ここに来ればなんだかんだで小悪魔がおいしい紅茶を入れてくれるし、なによりせっかくバレンタインに本命のチョコを貰ったことだし誰かに自慢したかった。
「それにしてもえらく嬉しそうね?クッキー貰ったのそんなに嬉しかったの?」
「なにいってんだよ、バレンタインに本命のチョコもらったらそりゃ嬉しいだろ?」
「・・・え?義理じゃないの?」
・・・おいおい。
「本気だとすると乙女心が分かってなさすぎだぜ?バレンタインに女の子が顔を赤らめてクッキー渡してきたらそりゃ間違いなく本命だろ?」
「そのために勘違いしないよう言ったんじゃないの・・・?」
さすがにこれにはため息を付いた。パチュリーは朴念仁だとは思っていたがここまでとは思っていなかった。この様子じゃ今年も小悪魔の思いは伝わってないんだろうと思うとさすがに同情したくなる。ここは恋の魔法使いとして親友に恋が何たるか教えてやるべきだろう!
「お前はダメだなぁ・・・。あれはな、ツンデレだよツンデレ。『魔理沙のことが好きだけど素直になれない』的なやつだよ。ほらアリスってそういうところあるじゃんか、それくらい恋の魔法使いの魔理沙さんには一目瞭然だぜ!アリスとはそれなりに仲よかったし好かれてる自覚はあったけどまさかいきなり告白は驚いたな、いや別にアリスのことが嫌いなわけじゃないしどちらかと言えば好きなんだが・・・なにぶん私は『みんなの人気者の魔理沙さん』だからな一人と付き合うと悲しむ人、じゃなくて妖怪がいるし・・・でも断ったら頑張って告白したアリスに悪いしなぁ・・・。よしここは頑張ったアリスを優先しよう!みんなには悪いけどこれからは『みんなの魔理沙さん』じゃなくて『アリスの魔理沙さん』になることにするぜ!」
「・・・そう」
・・・途中から説教じゃなくなったような気がするがそんなことは大したことじゃない。これで少しでもパチュリーが変われば小悪魔も少しは報われるだろう。一方パチュリーの方は聞いてるのか聞いてないのかよくわからない返事をしていた。そう簡単には変わらないよな・・・。まぁ頑張れと思いつつ隣に控えてる小悪魔がなんとも言えない微妙な顔をしていたので、
「・・・がんばれよ小悪魔。このニブチン魔女を好きになっちまったお前の不幸を恨みながら」
「・・・私はパチュリー様を好きになったことが人生最大の幸せですよ?あとそれとは別に非常に言いにくいことがあってですね・・・」
ここまで言われて気づかないのはもうどうしようもない気がするが・・・。それは置いといて小悪魔の話の続きを聞こうとした時、図書館の扉が勢い良く開いてレミリアが入ってきた。
「・・・レミィ、図書館では静かにっていつも言ってるでしょ」
「そんなことより聞いてよパチェ!昼頃にアリスが『勘違いしないでよ!義理なんだからねっ!』って言って手作りのケーキ持ってきたのよ!顔を赤らめながらこれって確実に本命よ!ツンデレよ!『レミリアのことが好きだけど素直になれない』的なあれよ!それくらい恋の吸血鬼の私には一目瞭然よ!アリスとはそれなりに仲よかったし好かれてる自覚はあったけどまさかいきなり告白は驚いたわね、いや別にアリスのことが嫌いなわけじゃないしどちらかと言えば好きなんだけど・・・なにぶん私は『みんなのおぜうさま』だからね、一人と付き合うと悲しむ人、じゃなくて咲夜がいるし・・・でも断ったら頑張って告白したアリスに悪いしねぇ、ケーキすっごく美味しかったし・・・。よしここは咲夜にケーキを作らせて美味しかった方を選ぼう!てことで咲夜~!今すぐケーキ作って~!」
するとチョコレートを持った咲夜が現れて、
「かしこまりましたお嬢様。・・・ところでパチュリー様に相談があるのですが、今よろしいでしょうか?」
「・・・別にいいわよ。何かしら?」
「昼頃にアリスが『勘違いしないでよ!義理なんだからねっ!』って言って手作りのチョコレートを持ってきたのですが、様子からして間違いなくツンデレの本命です。『咲夜のことが好きだけど素直になれない』的なあれよです。恋のメイドの私には一目瞭然でした。アリスとはそれなりに仲よかったし好かれてる自覚はあったけどまさかいきなり告白されるとは思いませんでした、いや別にアリスのことが嫌いなわけじゃないしどちらかと言えば好きなんですが・・・なにぶん私は『お嬢様の咲夜』なので、他と付き合うと悲しむおぜうさま、じゃなくてお嬢様がいますし・・・でも断ったら頑張って告白したアリスに悪いですけどやっぱりお嬢様が好きなのでアリスには諦めてもらうとして。そういうことでお嬢様、抱きしめてもよろしいでしょうか?」
「・・・今の話に対して私は何を答えればいいのかしら?」
「どうすればお嬢様にキスできるかを・・・」
「・・・ポッ○ーでも作ればいいんじゃないかしら?」
・・・なんとなく小悪魔の話が見えてきた。ちょっと前の自分の自信満々の力説と殆ど同じ事を言ってる痛々しい奴らが目の前に二人いる。てことはあれだ、自分はちょっと前までこのバカ二人と同じような状態だったということで、
「・・・ここは話しの流れ的に自信満々で私も力説するところなのかしら?」
「喘息がひどくなりそうなのでやめてくださいパチュリー様。・・・という訳でですね魔理沙さん、非常に言い難いのですがこの館のみんな、パチュリー様と私も含めて同じセリフを言われてアリスさんからお菓子をもらってるんですよ」
「・・・もうそっとしといてくれ、数秒前に自信満々で説明してた自分が無性に恥ずかしいから」
「いや、その、若さ故の失敗っていうやつですよ!ちょっと恥ずかしい思いをしたってそんなの時間が解決してくれますよ!ねぇパチュリー様!」
「・・・うふふ?」
「なんで止めを指してるんですか!」
咲夜がレミリアを抱きしめた後、○ッキーとケーキを作りに行ってる間、ようやく立ち直ってきた私にパチュリーが話しかけてきた。
「アリスっがそこまで恋多き少女だったとはおもわなかったわね」
「いや、パチュリー、本命っていうのは普通1つだけなんだが」
「でもさっき魔理沙の理屈で言うと少なくてもこの屋敷に今7人アリスの本命がいることになるわよ?」
「さっきの話は忘れてくれ!」
駄目だ。こいつと話してても時間の無駄な気がしてきた。天然魔女より恋する悪魔とはなしたほうがずっと有意義だ。
「小悪魔、どうすればいいと思う?」
「そうですねー・・・、確かに魔理沙さんのもらったものが本命という証拠はなくなってしまったかもしれませんが、別に本命じゃないと決まったわけじゃないですしいいんじゃないですか?」
流石恋する悪魔は違う!確かに私の分が本命かわからなくなっただけなのである。ならば本命かどうか確かめればいいのだ。アリスに直接聞いても素直に教えてくれないのはわかりきっているが、私にはそれでも本命かどうか確かめる手段があるのだ。
「助かったぜ小悪魔!そうだよ、わからなけりゃ確かめればいいんだよ!てなわけで私はちょっとでかける所ができたんで行ってくるぜ。アリスからお菓子もらった奴はみんなそれもって後で博麗神社に来るよう言っといてくれ!」
そう言って私は心当たりのあるところを回ることにした。
「私はそういう意味で言ったんじゃないんですけど・・・」
「相変わらず慌ただしいやつね。悪いけど小悪魔みんなに伝えといてくれる?」
「了解しました。・・・ですがその前に毎年恒例なんですがこれ受け取っていただけますか?」
◇
僕は森近霖之助、古道具屋の店主をやっている。普段この店にはあまり人も妖怪も来ないのだが、今日はアリスがやってきてビスケットを渡していった。正直アリスのような可愛い子からこんな日にお菓子を貰えば、健全な男性なら『本命かも・・・』という想像に至れるのかもしれないが、残念ながら僕はそんな想像さえできないようだ。
僕の能力は『道具の名前と用途が判る程度の能力』である。例えば先日の話だが、ある団子屋の団子は『お客さんを満足させるもの』という用途だったが、地下に住むさとり妖怪の妹がそれを買ったら『姉への感謝の気持ちを伝えるためのもの』になったのである。つまり道具の用途なんて絶対のものではなく、持ち主によって変わるのだ。
そして僕がアリスのチョコを見た結果は『日頃買い物でお世話になっているお礼を伝えるためのもの』であった。『勘違いしないでよ!』と言っていたが、残念ながら勘違いのしようがないのである。それでも嬉しいことには代わりはないし、お茶でも入れて食べようかと思っていると、
「こーりん、ちょっと来てもらうぜ!」
・・・窓を突き破って魔理沙が入ってきた。今日がいい日だと思ったのはどうやら勘違いだったようだ。
「・・・とりあえず用件を聞こうか?」
「こーりんの能力ならバレンタインのお菓子が本命かどうか分かるよな?」
「・・・だいたい予想はついたが、そういうのは悪趣味じゃないかい?」
「イエスかハイで答えるんだぜ!」
「渡した人の気持ちも考」
「イエスかハイで答えるんだぜ!」
「・・・当人同士の」
「イエスかハイで答えるんだぜ!」
「デリカシーの」
「イエスかハイで答えるんだぜ!」
「」
「イエスかハイで答えるんだぜ!」
「・・・わかった。言うとおりにするよ」
◇
魔理沙に連れられながら話を聞いたところ、アリスがややこしいことを言いながらお菓子を渡して回ったためにどれが本命かということでもめているらしい。
たしかに僕の能力ならそれを見分けることは可能だが、それには少し問題がある。アリスが渡す時に見れれば一発で本命かどうか分かるのだが、すでに渡した後だと主な用途が貰い手側に移るのである。まぁ道具には通常いろいろな用途があり集中して見ればその用途の一つにアリスがどういう思いで渡したか見れるのだが、これが結構疲れるのだ。
できるだけ少ないことを願いつつ目的地の博麗神社まで来てみると
「・・・魔理沙、ひょっとしてこれ全員分を本命か義理かを確認するのかい?100近くいるように見えるんだが?」
「これだけの量の人妖を集めた私の苦労に比べれば軽いもんだろ?もっというとこれだけの量の人妖分のお菓子を作ったアリスの苦労に比べれば楽勝だぜ?」
そのがんばりのせいで僕もずいぶん頑張らなければいけないようだ。
どうやら魔理沙はアリスがお菓子を渡した人物を幻想郷中から探して集めたらしい(というより声をかけたらみんな同じセリフを言われてお菓子をもらってたのだが)。周りの様子を見ていると、どうでもいい者、自分こそ本命と言いはる者、冷やかしに来た者、どさくさに紛れてチョコを渡している者、チョコを渡そうとしてるのに渡せずにいる者、説教して回っている閻魔、喧嘩をしている蓬莱人、写真を取ってる天狗等様々である。こうして『アリスの本命探し』が始まったのである。
「『人形のモデルにしてもらったお礼』『いつも門番ご苦労様』『人形劇の時に演奏してくれたお礼』『長い付き合いだけどこれからも宜しくという意味を込めて』『異変の時は間違って退治してごめんなさい』『いつも図書館の本を貸してくれてありがとう』・・」
そうやって一刻ほどかけて全て見終わった。改めて考えてみるとこれだけのお菓子を一人で作ったのなら本当に大したものである。それにその全てが『親しい人へ』『日頃お世話になってる感謝』等アリスの好意的な感情が込められているのである。これらをもらった人はみんなアリスにとって大切な人なんだろう。ここまで大切にされているんだし本命とか義理とかもうどうでも
「で結局どれが本命なんだぜ?」
「・・・人がせっかくいい終わらせ方をしようと思ったんだが」
「そんなのはいいんだよ!誰に渡したのが本命なんだ?」
みんなの視線が僕に集まるのを感じる。自分が本命と信じてる者、すでに別で本命チョコをもらってどうでもいい者、死神からチョコを貰って慌ててる閻魔、結局また渡せなかったと従者に泣きついてる蓬莱人、白狼天狗からチョコを差し出されて写真どころではなくなってる烏天狗等。・・・少しおかしな所もあったような気がしたがとりあえず答えることにする。
「本命は・・・なかったよ」
「・・・え?」
「いやそれぞれ義理以上の思いはこめられていたけどこの中に本命はなかったよ。だからこれまでどおり仲良くしていけばいいんじゃないかな?」
こうしてこの話は終わったのである。本命じゃなくて残念がってる者、しらけて去っていく者、顔を真赤にしながら足早に帰っていく閻魔と後ろから追いかける死神、『来年こそ素直!』と意気込む蓬莱人とそれを見守る従者、嬉しいようだが未だになんて返事を返せばわからず困っている烏天狗とそれを待ってる白狼天狗等、結局みんな解散したのである。これでこの話は
「『うまく行った』とか思ってるんでしょ?甘いわよ霖之助さんは」
「・・・なんのことかな?霊夢」
もうだれもいないと思ってたのにいきなり声をかけられて少し驚いてしまった。考えてみれば霊夢がここに残っているのは当然なのだがこれは少々まずい。霊夢はみんなが知っての通りとてもカンがいいのである。
「本命を言えばアリスが好きな奴らがもめるのは避けられないだろうし、何よりアリスのことを考えたらこんな大勢の前で好きな人を暴露なんてできるわけ無いでしょ。なんだかんだで霖之助さんとは付き合いが長いから嘘ついたかどうかぐらい分かるわよ。いたんでしょ?本命」
「・・・霊夢にはかなわないな。そこまで分かってるんだったら頼むから本命を聞き出そうなんて野暮な真似はしないでくれよ?」
ここまで自分の考えをあてられてしまえばさすがに何も言えなくなる。だがそういうことにあまり関心がないであろう霊夢相手ならきっと穏便にこの話を終わらせることができると思い頼んでみると、
「そんな必要ないわよ。私はアリスとも付き合いが長いし、どういう思いでこれをくれたかぐらい分かってるわ。というかどう考えてももらったものを比べたら私のが本命って分かりそうなのにねぇ、私のもらったおはぎだけ明らかに他の奴らがもらったのに比べて多いし。まぁ素直に好意だけは受け取っておくことにするわ」
「・・・そうだね、それがいいと思うよ」
・百合あり
・途中で視点変更あり
以下のことを踏まえてそれでもよろしいという方はお付き合いお願いします
「勘違いしないでよ!義理なんだからねっ!」
朝っぱらから呼び鈴がなったので芽をこすりながら出てみるとアリスが顔を真赤にして何か箱を渡して、そのまま去っていってしまった。そういえば今日はバレンタインデーだったか。箱を開けてみると中には手作りのクッキーが入ってた。前においしいといったのを覚えていたんだろう、今すぐ食べてもいいが昨日も魔法の研究で徹夜だったのである。正直眠い。
「・・・起きたら食べるか」
そうつぶやいてとりあえず二度寝することにした。アリスの作ったクッキーはおいしいだろうなぁ・・・と考えながら。
◇
「てなわけできたんだぜ!」
「・・・分かるように説明してくれないかしら?」
「おいしいクッキーには紅茶がつきものだろ?だからここにきたんだ!」
「私の図書館は喫茶店じゃないんだけど・・・」
あのあと昼頃に目を覚まして、クッキーを食べようと思ったがあいにくと紅茶が切れていた。そこでとりあえず紅魔館の地下図書館に来たのである。ここに来ればなんだかんだで小悪魔がおいしい紅茶を入れてくれるし、なによりせっかくバレンタインに本命のチョコを貰ったことだし誰かに自慢したかった。
「それにしてもえらく嬉しそうね?クッキー貰ったのそんなに嬉しかったの?」
「なにいってんだよ、バレンタインに本命のチョコもらったらそりゃ嬉しいだろ?」
「・・・え?義理じゃないの?」
・・・おいおい。
「本気だとすると乙女心が分かってなさすぎだぜ?バレンタインに女の子が顔を赤らめてクッキー渡してきたらそりゃ間違いなく本命だろ?」
「そのために勘違いしないよう言ったんじゃないの・・・?」
さすがにこれにはため息を付いた。パチュリーは朴念仁だとは思っていたがここまでとは思っていなかった。この様子じゃ今年も小悪魔の思いは伝わってないんだろうと思うとさすがに同情したくなる。ここは恋の魔法使いとして親友に恋が何たるか教えてやるべきだろう!
「お前はダメだなぁ・・・。あれはな、ツンデレだよツンデレ。『魔理沙のことが好きだけど素直になれない』的なやつだよ。ほらアリスってそういうところあるじゃんか、それくらい恋の魔法使いの魔理沙さんには一目瞭然だぜ!アリスとはそれなりに仲よかったし好かれてる自覚はあったけどまさかいきなり告白は驚いたな、いや別にアリスのことが嫌いなわけじゃないしどちらかと言えば好きなんだが・・・なにぶん私は『みんなの人気者の魔理沙さん』だからな一人と付き合うと悲しむ人、じゃなくて妖怪がいるし・・・でも断ったら頑張って告白したアリスに悪いしなぁ・・・。よしここは頑張ったアリスを優先しよう!みんなには悪いけどこれからは『みんなの魔理沙さん』じゃなくて『アリスの魔理沙さん』になることにするぜ!」
「・・・そう」
・・・途中から説教じゃなくなったような気がするがそんなことは大したことじゃない。これで少しでもパチュリーが変われば小悪魔も少しは報われるだろう。一方パチュリーの方は聞いてるのか聞いてないのかよくわからない返事をしていた。そう簡単には変わらないよな・・・。まぁ頑張れと思いつつ隣に控えてる小悪魔がなんとも言えない微妙な顔をしていたので、
「・・・がんばれよ小悪魔。このニブチン魔女を好きになっちまったお前の不幸を恨みながら」
「・・・私はパチュリー様を好きになったことが人生最大の幸せですよ?あとそれとは別に非常に言いにくいことがあってですね・・・」
ここまで言われて気づかないのはもうどうしようもない気がするが・・・。それは置いといて小悪魔の話の続きを聞こうとした時、図書館の扉が勢い良く開いてレミリアが入ってきた。
「・・・レミィ、図書館では静かにっていつも言ってるでしょ」
「そんなことより聞いてよパチェ!昼頃にアリスが『勘違いしないでよ!義理なんだからねっ!』って言って手作りのケーキ持ってきたのよ!顔を赤らめながらこれって確実に本命よ!ツンデレよ!『レミリアのことが好きだけど素直になれない』的なあれよ!それくらい恋の吸血鬼の私には一目瞭然よ!アリスとはそれなりに仲よかったし好かれてる自覚はあったけどまさかいきなり告白は驚いたわね、いや別にアリスのことが嫌いなわけじゃないしどちらかと言えば好きなんだけど・・・なにぶん私は『みんなのおぜうさま』だからね、一人と付き合うと悲しむ人、じゃなくて咲夜がいるし・・・でも断ったら頑張って告白したアリスに悪いしねぇ、ケーキすっごく美味しかったし・・・。よしここは咲夜にケーキを作らせて美味しかった方を選ぼう!てことで咲夜~!今すぐケーキ作って~!」
するとチョコレートを持った咲夜が現れて、
「かしこまりましたお嬢様。・・・ところでパチュリー様に相談があるのですが、今よろしいでしょうか?」
「・・・別にいいわよ。何かしら?」
「昼頃にアリスが『勘違いしないでよ!義理なんだからねっ!』って言って手作りのチョコレートを持ってきたのですが、様子からして間違いなくツンデレの本命です。『咲夜のことが好きだけど素直になれない』的なあれよです。恋のメイドの私には一目瞭然でした。アリスとはそれなりに仲よかったし好かれてる自覚はあったけどまさかいきなり告白されるとは思いませんでした、いや別にアリスのことが嫌いなわけじゃないしどちらかと言えば好きなんですが・・・なにぶん私は『お嬢様の咲夜』なので、他と付き合うと悲しむおぜうさま、じゃなくてお嬢様がいますし・・・でも断ったら頑張って告白したアリスに悪いですけどやっぱりお嬢様が好きなのでアリスには諦めてもらうとして。そういうことでお嬢様、抱きしめてもよろしいでしょうか?」
「・・・今の話に対して私は何を答えればいいのかしら?」
「どうすればお嬢様にキスできるかを・・・」
「・・・ポッ○ーでも作ればいいんじゃないかしら?」
・・・なんとなく小悪魔の話が見えてきた。ちょっと前の自分の自信満々の力説と殆ど同じ事を言ってる痛々しい奴らが目の前に二人いる。てことはあれだ、自分はちょっと前までこのバカ二人と同じような状態だったということで、
「・・・ここは話しの流れ的に自信満々で私も力説するところなのかしら?」
「喘息がひどくなりそうなのでやめてくださいパチュリー様。・・・という訳でですね魔理沙さん、非常に言い難いのですがこの館のみんな、パチュリー様と私も含めて同じセリフを言われてアリスさんからお菓子をもらってるんですよ」
「・・・もうそっとしといてくれ、数秒前に自信満々で説明してた自分が無性に恥ずかしいから」
「いや、その、若さ故の失敗っていうやつですよ!ちょっと恥ずかしい思いをしたってそんなの時間が解決してくれますよ!ねぇパチュリー様!」
「・・・うふふ?」
「なんで止めを指してるんですか!」
咲夜がレミリアを抱きしめた後、○ッキーとケーキを作りに行ってる間、ようやく立ち直ってきた私にパチュリーが話しかけてきた。
「アリスっがそこまで恋多き少女だったとはおもわなかったわね」
「いや、パチュリー、本命っていうのは普通1つだけなんだが」
「でもさっき魔理沙の理屈で言うと少なくてもこの屋敷に今7人アリスの本命がいることになるわよ?」
「さっきの話は忘れてくれ!」
駄目だ。こいつと話してても時間の無駄な気がしてきた。天然魔女より恋する悪魔とはなしたほうがずっと有意義だ。
「小悪魔、どうすればいいと思う?」
「そうですねー・・・、確かに魔理沙さんのもらったものが本命という証拠はなくなってしまったかもしれませんが、別に本命じゃないと決まったわけじゃないですしいいんじゃないですか?」
流石恋する悪魔は違う!確かに私の分が本命かわからなくなっただけなのである。ならば本命かどうか確かめればいいのだ。アリスに直接聞いても素直に教えてくれないのはわかりきっているが、私にはそれでも本命かどうか確かめる手段があるのだ。
「助かったぜ小悪魔!そうだよ、わからなけりゃ確かめればいいんだよ!てなわけで私はちょっとでかける所ができたんで行ってくるぜ。アリスからお菓子もらった奴はみんなそれもって後で博麗神社に来るよう言っといてくれ!」
そう言って私は心当たりのあるところを回ることにした。
「私はそういう意味で言ったんじゃないんですけど・・・」
「相変わらず慌ただしいやつね。悪いけど小悪魔みんなに伝えといてくれる?」
「了解しました。・・・ですがその前に毎年恒例なんですがこれ受け取っていただけますか?」
◇
僕は森近霖之助、古道具屋の店主をやっている。普段この店にはあまり人も妖怪も来ないのだが、今日はアリスがやってきてビスケットを渡していった。正直アリスのような可愛い子からこんな日にお菓子を貰えば、健全な男性なら『本命かも・・・』という想像に至れるのかもしれないが、残念ながら僕はそんな想像さえできないようだ。
僕の能力は『道具の名前と用途が判る程度の能力』である。例えば先日の話だが、ある団子屋の団子は『お客さんを満足させるもの』という用途だったが、地下に住むさとり妖怪の妹がそれを買ったら『姉への感謝の気持ちを伝えるためのもの』になったのである。つまり道具の用途なんて絶対のものではなく、持ち主によって変わるのだ。
そして僕がアリスのチョコを見た結果は『日頃買い物でお世話になっているお礼を伝えるためのもの』であった。『勘違いしないでよ!』と言っていたが、残念ながら勘違いのしようがないのである。それでも嬉しいことには代わりはないし、お茶でも入れて食べようかと思っていると、
「こーりん、ちょっと来てもらうぜ!」
・・・窓を突き破って魔理沙が入ってきた。今日がいい日だと思ったのはどうやら勘違いだったようだ。
「・・・とりあえず用件を聞こうか?」
「こーりんの能力ならバレンタインのお菓子が本命かどうか分かるよな?」
「・・・だいたい予想はついたが、そういうのは悪趣味じゃないかい?」
「イエスかハイで答えるんだぜ!」
「渡した人の気持ちも考」
「イエスかハイで答えるんだぜ!」
「・・・当人同士の」
「イエスかハイで答えるんだぜ!」
「デリカシーの」
「イエスかハイで答えるんだぜ!」
「」
「イエスかハイで答えるんだぜ!」
「・・・わかった。言うとおりにするよ」
◇
魔理沙に連れられながら話を聞いたところ、アリスがややこしいことを言いながらお菓子を渡して回ったためにどれが本命かということでもめているらしい。
たしかに僕の能力ならそれを見分けることは可能だが、それには少し問題がある。アリスが渡す時に見れれば一発で本命かどうか分かるのだが、すでに渡した後だと主な用途が貰い手側に移るのである。まぁ道具には通常いろいろな用途があり集中して見ればその用途の一つにアリスがどういう思いで渡したか見れるのだが、これが結構疲れるのだ。
できるだけ少ないことを願いつつ目的地の博麗神社まで来てみると
「・・・魔理沙、ひょっとしてこれ全員分を本命か義理かを確認するのかい?100近くいるように見えるんだが?」
「これだけの量の人妖を集めた私の苦労に比べれば軽いもんだろ?もっというとこれだけの量の人妖分のお菓子を作ったアリスの苦労に比べれば楽勝だぜ?」
そのがんばりのせいで僕もずいぶん頑張らなければいけないようだ。
どうやら魔理沙はアリスがお菓子を渡した人物を幻想郷中から探して集めたらしい(というより声をかけたらみんな同じセリフを言われてお菓子をもらってたのだが)。周りの様子を見ていると、どうでもいい者、自分こそ本命と言いはる者、冷やかしに来た者、どさくさに紛れてチョコを渡している者、チョコを渡そうとしてるのに渡せずにいる者、説教して回っている閻魔、喧嘩をしている蓬莱人、写真を取ってる天狗等様々である。こうして『アリスの本命探し』が始まったのである。
「『人形のモデルにしてもらったお礼』『いつも門番ご苦労様』『人形劇の時に演奏してくれたお礼』『長い付き合いだけどこれからも宜しくという意味を込めて』『異変の時は間違って退治してごめんなさい』『いつも図書館の本を貸してくれてありがとう』・・」
そうやって一刻ほどかけて全て見終わった。改めて考えてみるとこれだけのお菓子を一人で作ったのなら本当に大したものである。それにその全てが『親しい人へ』『日頃お世話になってる感謝』等アリスの好意的な感情が込められているのである。これらをもらった人はみんなアリスにとって大切な人なんだろう。ここまで大切にされているんだし本命とか義理とかもうどうでも
「で結局どれが本命なんだぜ?」
「・・・人がせっかくいい終わらせ方をしようと思ったんだが」
「そんなのはいいんだよ!誰に渡したのが本命なんだ?」
みんなの視線が僕に集まるのを感じる。自分が本命と信じてる者、すでに別で本命チョコをもらってどうでもいい者、死神からチョコを貰って慌ててる閻魔、結局また渡せなかったと従者に泣きついてる蓬莱人、白狼天狗からチョコを差し出されて写真どころではなくなってる烏天狗等。・・・少しおかしな所もあったような気がしたがとりあえず答えることにする。
「本命は・・・なかったよ」
「・・・え?」
「いやそれぞれ義理以上の思いはこめられていたけどこの中に本命はなかったよ。だからこれまでどおり仲良くしていけばいいんじゃないかな?」
こうしてこの話は終わったのである。本命じゃなくて残念がってる者、しらけて去っていく者、顔を真赤にしながら足早に帰っていく閻魔と後ろから追いかける死神、『来年こそ素直!』と意気込む蓬莱人とそれを見守る従者、嬉しいようだが未だになんて返事を返せばわからず困っている烏天狗とそれを待ってる白狼天狗等、結局みんな解散したのである。これでこの話は
「『うまく行った』とか思ってるんでしょ?甘いわよ霖之助さんは」
「・・・なんのことかな?霊夢」
もうだれもいないと思ってたのにいきなり声をかけられて少し驚いてしまった。考えてみれば霊夢がここに残っているのは当然なのだがこれは少々まずい。霊夢はみんなが知っての通りとてもカンがいいのである。
「本命を言えばアリスが好きな奴らがもめるのは避けられないだろうし、何よりアリスのことを考えたらこんな大勢の前で好きな人を暴露なんてできるわけ無いでしょ。なんだかんだで霖之助さんとは付き合いが長いから嘘ついたかどうかぐらい分かるわよ。いたんでしょ?本命」
「・・・霊夢にはかなわないな。そこまで分かってるんだったら頼むから本命を聞き出そうなんて野暮な真似はしないでくれよ?」
ここまで自分の考えをあてられてしまえばさすがに何も言えなくなる。だがそういうことにあまり関心がないであろう霊夢相手ならきっと穏便にこの話を終わらせることができると思い頼んでみると、
「そんな必要ないわよ。私はアリスとも付き合いが長いし、どういう思いでこれをくれたかぐらい分かってるわ。というかどう考えてももらったものを比べたら私のが本命って分かりそうなのにねぇ、私のもらったおはぎだけ明らかに他の奴らがもらったのに比べて多いし。まぁ素直に好意だけは受け取っておくことにするわ」
「・・・そうだね、それがいいと思うよ」
非常にヤキモキしたので続きを要求する!!
個人的には映姫さまの反応がかわい過ぎて悶絶しました。
本命がすごい気になる!面白かったです
落ちも上手いと思うし。そうかー、サナアリだったかー(えー)
ここはみんなに詳細な感謝の気持ちを知られて恥ずかしがるアリスにニヤニヤするべき
アリスの本命は・・・神綺とか。元々バレンタインは恋愛ではなく感謝のイベントだったはずですし。
>A.読み手のご想像にお任せします!(人の数だけカップリングはあると思う!)
>そして僕がアリスのチョコを見た結果は『日頃買い物でお世話になっているお礼を伝えるためのもの』であった。
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉい!!!既にアリ霖の可能性が潰えてるわけだが!!!
でも、面白かったです。
決まってる。私d「マスタースp「不夜城レlt「殺人ドーr「アグニシャイ「夢想封印」
霖之助の能力の使い方が斬新で面白かったです。
それにしても霊夢のおはぎが泣けてくる……
大変面白かったですよ。
ちなみに「・・・」ではなく「……」と三点リーダーを二個付けるのが小説では普通です。
別に面白くなんてなかったんだからねっ!
とゆーわけで、おぜうに一票です。
この作品におけるアリスの本命の答えは読者それぞれですが、私はパチュマリが好きです!
2さん
続きはわからないですが……あやもみ・かぐもこ・こまえーきは好きだからその関連の話は書きたいですね。
14さん
ホワイトデーを魔界で過ごして帰ってきたら家がお菓子で埋まってた……。そんな話を書こうと思ってたんですが、アイデアが足りなかった……
24さん
百合限定です!……いや霖之助さん関係の恋愛話好きですけどね。アリ霖もいいなぁ……。あくまでこーりんではなく霖之助さんですが。
26さん
その発想はなかった!
40さん
アドバイス有難うございます。こういったものは本当に助かります。