おはよーございます!
隣の部屋からいつもの挨拶が聞こえる。次は私の部屋。
昨日飲み過ぎたせいか、少し頭痛がする。昨日の記憶が曖昧だ。
「おはよーございます!」
「おはよう。いつもご苦労だね」
「いえいえー ご飯出来てるよ。今日は一輪さんの味噌汁の日! じゃあ他の部屋に挨拶してくるから、また後でね、ナズーリン」
一輪のことは一輪さんなのに私のことはナズーリンと呼ぶ、
命蓮寺の挨拶番である響子がいつもの挨拶をしに来た。いつも元気で羨ましい。
あれ? でも昨日ムラサがやったから、今日のご飯番はご主人だったはず。何で一輪なのだろう。
命蓮寺の食事は普段から、聖の希望でみんなで食べるようにしている。
ご飯番は不公平なく、当番制だ。ちなみに私は今日、夕飯を担当する。
皆を待たせているかもしれないな……
急いで冷水で顔を洗い、ふらふらする頭をごまかしつつ広座敷に向かう。しかしまだ聖しか居なかった。
なんだ、急いで損した。
私がふすまを開けるとはっとしたようにこちらに顔を向けた。聖もまだ眠いのだろう。
「おはよう、聖」
「おはよう、ナズーリン。もうすぐ響子と一輪が来るので、そしたらいただきましょう」
「ん、ご主人はもう出かけたのか? ムラサとマミゾウさんも居ないじゃないか。ぬえだって」
「彼女達は…… ほら、昨日」
そういえば昨日バカみたいに飲んでいたな。祭だからって浮かれ過ぎだ。
まだ寝ているのか。
私は聖に聞こえるようにわざと少し大きめのため息を吐いた。
「一輪やナズーリンはお酒の席でもあまり変わらないですよね。
あの四人ったら、さっき帰ってきたのですよ」
うーん、ご主人はまだしもマミゾウさんまで…… いい年なんだから控えないと。
というかまだ寝ているどころか、さっき帰ってきたとなると…… 起きるのは昼過ぎか夕刻か。
そうこうしている内に一輪と響子が朝食を持ってやってきた。
こんなものしか出来なかったけど、と用意された
今日の朝餉は、ほかほかご飯に大根の味噌汁、それに白菜となすのお新香。
一見、簡素すぎるように見えるが一輪の味噌汁を舐めちゃいけない。これだけでお腹いっぱい白米が食べられる。
一輪はいい嫁さんになるね。
うん、今日のもいいだし出てる。
「流石です。一輪のご飯は素朴ながら元気が出てきますね。いい味出ていますよ」
「誉め過ぎですよ、姐さん。ナズーリンや響子もこんなので良かったかしら?」
「美味しいけど、私はもうちょっとお肉とかあっても良かったです。ね、ナズーリン」
「いやいや、私はこれでも十分だ。君と一緒にしないでもらいたいな。私は子供じゃない」
「えー、でもナズーリン、私と身長変わらないじゃない」
「……そういう事じゃないんだが」
「じゃあどういう事?」
「それは、ほら。精神面というか……」
「ほらほら、貴方達。会話に集中しすぎて手が止まっていますよ。
せっかくの一輪のご飯が冷めてしまいます。食べ終わってからお話ししましょうね」
「「はーい」」
響子のせいで聖に怒られてしまった。
全く、大人気ないやつだ。
「うふふ」
「……一輪、何を笑っているんだい?」
「別に、なんでもないわよ」
馬鹿にされている気がするけど、まぁいい。
大人びた朝食も食べ終わり、温かいほうじ茶で食事を締める。
食後のお茶って素晴らしい。
ふぅ、頭痛は落ち着いてきたみたいだ。
「昨日は盛り上がりましたね」
聖もお茶をすすりながら足を崩してくつろいでいる。
聖は食事中、いつも正座だけど苦しくないのだろうか。
「姐さん、人形劇や演奏会もありましたよ。姐さんは観ましたか?」
「騒霊たちの演奏会ですね。見ましたよ。とても美しかったです」
ふむ、演奏会か。私は見れなかった。
今度何か別の宴会でやってくれないかな。
「私は、ナズーリンと一緒に人形劇を見ました!」
相槌を求めてこちらに顔を向ける響子。
残念だけど今私はほうじ茶に夢中だ。
あー、あったまる。
「あ、そうそうナズーリン、この後はお暇ですか?」
お使いか何かだろうか。
今日は別に何もすることはないはず、ご主人が何も無くさなければ。
「お使いを頼まれてはくれないでしょうか。人里の花屋に行って、花を受け取りに行って欲しいのです」
「花屋か。じゃあ今すぐにでも行ってくるよ。でも、花なんてどうするんだい?」
「昨日、お祭りでお世話になった人たちへのお礼です。やはり厚意を受けたなら、お礼をしなくてはいけないですから。
ナズーリンも、誰かにお世話になったらお礼をしなくてはいけませんよ」
はいはい、と軽く返答する。
そこがいい所なんだけど、聖はいちいち義理堅いなあ。
「私は彼女たちを看病してあげたいので、そちらは頼みますね」
「了解した。行ってくるよ」
お茶を飲み終え、響子に椀を下げるのをお願いする。
一輪に今日も美味しかった、と伝えるとそう言ってくれるなら作りがいがあるわ、と満面の笑みで言われた。
とことん嫁体質だと思う。
――――――――――
人里に一人でお使いか。
普段はご主人と一緒に行くから、何かそういうのも久しぶりのような気がする。
今、ご主人は二日酔いでうんうん唸っているだろう。
人里は祭の片付けをするためか、人が集まってざわめいていた。
このお使いが終わったら手伝いに来ようかな。昨日は私も楽しませてもらったし。
「ほらほら、あぶないよ。子供はあっちで遊んでなさい」
「ちぇー、すぐ子供扱いして。いいよーだ。皆、あっちの空き地で遊ぼうぜー」
「「「おー」」」
大人に注意されて子供たちが駆け足で空き地に走っていく。
ふふ、子供扱いされて不機嫌になるなんてまだまだ子供だ。
私とちょうど身長は同じくらいだが、精神面では私の方が断然大人びているな。
でも、どんな遊びをするんだろう。少し気になるな。見に行こうか……
おっと駄目だ。他の用事は花屋に行ってからにしよう。
こんなお使いもひとりで出来ないなんて、聖や一輪に笑われてしまう。
「すいません、命蓮寺の者なんですが」
「はい、ってあらあら、わざわざ悪いわねー ちょっとそこ座ってて待っててね あ、何かお菓子食べる? 飴あるわよ、飴」
「は、はい、お構い無く……」
私の事を見たとたん、背中をバンバンたたきながら話しかけてくる花屋の女性。な、何だこのテンション。
年をとった人間の女性というのはいまだにどういう生き物かわからない。
人里では妖怪は人間を襲わない、とはいっても私は腐っても妖怪だ。怖くないのか?
「昨日のお祭りは参加した? 楽しかったわねえ。はい、これ。飴なめてね、いっぱいあるから。
もうすぐ出来るからまっててね。私、あなたの所の住職さんにはいつもお世話になってて~~」
こちらの返事もままならないのに話したてる女性。
口の動きも素早いがそれ以上の速さでに手を動かして、花をまとめている。これがベテランか。
「飴は嫌いだったかしら? あ、そうだ。貴方にはこっちがいいかしらね。ほら、ひとくちチーズよ」
ずい、と顔にチーズを押し付けてくる。
チーズの独特の匂いが漂う。さっき朝食を食べたばかりなのに口から涎が……
いやいや、ダメだダメだ。こんな餌付けみたいな事……
「す、すまないけど」
「なぁに? こっちのアーモンドが乗ってるやつの方がいい?」
「一ついただきます」
負けてしまった……
でもいいか、チーズのアーモンド付きなんて気が利いてる。美味い。
ゆっくり噛み締めて味わっていると、満足そうな顔の女性と目が合う。
私がチーズに夢中になっている間に女性はもう花を包み終えていたようだ。
「その……」
「美味しい? 何かして欲しかったら、素直に言わなきゃダメよ?」
「あぁ。……もう一つ貰ってもいい……ですか」
もちろんいいわよ、と私の頭を優しく触る。
手が少し耳にふれてくすぐったい。
素直に、か。
うん、でもこれ以上もらうのも悪いし、帰ろう。
「チーズご馳走様。これだね。もらっていくよ」
「はい、どうぞ。お金はもうもらってるからね。さっきのチーズはお使い頑張っているご褒美よ。帰りも気をつけてね」
やっぱり私を見た目で子供扱いしてるな。撫で撫でなんかして……
私は賢将だぞ。賢将。賢いんだぞ。
まぁいい。お使いは終わりだ。あとはこれを持って帰るだけ。
子供ならこんな簡単にお使いはこなせないだろう。賢将だから成せる技だ。
……そうだ、さっきの子供たちが何をしていたか気になるから、空き地を通って行こう。
――――――――――
「ただいま、聖」
「ありがとうナズーリン、お茶を淹れるので手を洗ってきてください。うがいも忘れちゃだめですよ。ご苦労様」
「はーい」
花を聖に手渡し、手洗いうがいをする。
ちょうど聖に聞きたいこともあったし、お茶でひと休みするか。
……それにしても、酒というのはなぜ記憶を奪っていくのだろうか。
思い出したいことを思い出せない。
「綺麗な花ねぇ。午後は私がこれを届けてきます。
……そういえばナズーリン、少し帰りが遅かったですね。どこかに寄ってきたのですか?」
「……まぁ。少し、ね。ところで聖、その届ける相手の中に、あの魔法の森に住んでいる人形師は含まれているかい?」
「アリスさんのことですね。えぇ、彼女のところにも伺おうと思っていますよ」
よし、しめたもんだ。
それだったら行く理由が出来る。
お茶をすすりながら、できるだけわざとらしくなく。
「じゃあ、そうだな。そうだ、私は偶然魔法の森に用があるんだった。それは私が届けるよ。うん、ちょうど魔法の森に用があったんだった」
「そうですか…… ではお願いしますね」
完ぺきな演技だ。
だけど聖、無駄な詮索はしないでくれよ……
「アリスさんに会いたいのですね?」
……くそっ。
流石、聖。鋭い。
「そ、そういう訳じゃないんだが…… は、早くその花を分けてくれ。行ってくるから」
慌てないように聖を急かす。
そんな私を見て何かわかったようにふふっ、と微笑みながら聖は花を適量分ける。
あまり微笑まないでくれ。別に何も無いから。
そして聖は私に花を渡すときに
「はい、ナズーリン。頑張ってきてください。賢将という者、時には敵以外の者を落とさないといけません」
と、なにか間違っている解釈をして私を送り出してくれた。
なんだ、この複雑な気持ちは。
――――――――――
以前、この森には来たことがある。
といっても森の入り口の道具屋だけだが。
しかし今回用があるのはそのもっと奥、人形師の家だ。
幸い、捜し物は得意なのですぐ見つかった。
私より二回りほど大きい西洋風のドアをノックする。
「すいません、命蓮寺の者なんですが」
声をかけるとまもなく、小さな人形を携えた金髪の少女が現れる。
少女は訪ねてきたのが私だとわかるとすっと笑顔になり、意外にもすぐ部屋に招き入れてくれた。
昨日ぶりだ。
人形師の部屋の中は綺麗に整頓され、小さい人形が所狭しと並べらている。
壁には大小ある額が飾ってあり、棚の上やテーブルの上には細々としたものが置いてある。
私の必要最低限何も無い部屋とは大違いだ。
席に着く前に聖から預かった花を渡す。思っていたより喜んでくれた。
「紅茶で平気? あ、クッキーも食べて。作りすぎちゃったから、余ったら持って帰ってね」
人形師は、早速花を花瓶に飾りながら私に尋ねる。
ありがとう頂くよ、と返事をすると小さい人形がカップとティーポット、それと大量のクッキーを持ってきた。
可愛いなぁ。まぁ私のネズミたちとどっこいだが。
「綺麗ね。私の部屋にも合っているし」
人形が淹れた紅茶をすすりながら、花をうっとりと見つめる。
確かに今持ってきたばかりなのに、この部屋に前からあったと言っても違和感がないほどしっくりきている。
まさか聖はさっきの短い時間の中で、この人形師に合う花を選んだのだろうか。流石超人。
「喜んでくれて良かった。それで、その、今日来たのはもうひとつ用があって……」
「……なに?」
いざ本題を切り出そうとするが、どうも照れくさい。
いや、照れくさいというよりもう完全に恥ずかしい。
「なにかしら。こんな綺麗な花を頂いたのだから多少の無理は聞いてもいいわよ」
そういって私に笑顔を向けてくる。
くっそ、恥ずかしいな。
…………腹をくくるか。
それに、誰しも人に隠していることの一つや二つあるだろう。
これがその一つや二つの事だ。大丈夫、誰にでもあるって。
恥ずかしいことではない。
それに何かをして欲しかったら素直にならないといけない。さっきそう言われたじゃないか。
って私は誰に言い訳しているんだ。
「そ、その」
「うん」
「昨日の人形劇、『人形戦隊 シャンハイジャー』をもう一回やってくれないか」
この発言は彼女の意表をついたのか、彼女は目をぱっちりと見開いている。
それもそうだろう。この大人びた私が子供向けの人形劇を見たいと個人的にお願いしているんだから。
あ、やっぱ少し恥ずかしくなってきた。
「……え?」
「その、だな。昨日見たんだけど、酒を飲んでいたせいかあまり覚えてなくて……」
「た、確かに貴方、昨日は目を輝かせて見ていたわね。それが嬉しかったのを覚えているわ。でも、それだけ?」
本当はそれだけが目的じゃないんだが、
わざわざいう理由もないだろう。
「……うん、まぁ、そうだね、それが私の最終目的だ」
「貴方、嘘つくの下手ね。目が泳いでるってレベルじゃないわ。恥ずかしがらずにもう全部言っちゃいなさいな」
賢将である私の嘘が下手だって?
君が人から話を聞き出すのが上手いんじゃないのだろうか。
うー、言いたくないけど……
ちらりと人形師を見る。目線で本当のことを喋るよう促している気がする。
言うしか無いのか……
「その……さっき、空き地で子供達が遊んでたんだ。それで、その子供たちはシャンハイジャーごっこをやっていたんだが……」
「…………なるほど、貴方もやりたかったのね」
「……うん」
「でも、内容を覚えてないから仲間に入れなかったのね」
黙って、頷く。
あぁ言ってしまった…… 私がごっこ遊びをしたいって……
でも、楽しそうだったんだ、子供たちが!
私も悪の魔法使いグランギニョルと戦いたかったんだ!
でも必殺技の種類とか覚えてないし!
あぁ! 私は誰に言い訳しているんだ!
「そういう事なら別にいいけど」
「本当に?! ……あ、それでこの事は」
「誰にも言わないわよ。それにしても…… あれ、一応人間の子供向けに作ったんだけど」
けど、何だ。私が子供っぽいとでも言うのか。
どうとでも言え、君が手に汗握る人形劇をするのが悪いんじゃないか。
「な、なにか」
「うふふ、何でもないわよ。じゃあ紅茶を飲んだら始めましょうか。お砂糖はいくつ入れる?」
「……な、無しで」
「正直に、いくつ?」
「……三つ」
やっぱり、という顔をしている。うん、これは私でもわかる。
いいじゃないか、甘い物が好きな大人だっていっぱいいるんだぞ。
やめないか、そんな母性あふれる目で私を見るんじゃない。
クッキーも食べるけどっ。そんな目で見るなっ。
「こうして今日もシャンハイジャーは、人々の平和を守りぬいたのでした。おしまい」
劇が終わってやっと自分の鼻息が荒くなっているのに気付く。
もう一度見れて良かった……
膝の上で自然と握られていた拳をほどき、素晴らしい劇を見せてくれた役者に拍手を送る。
「面白かった……」
「でしょうね、そんな顔してるのにつまらないって言われたら私の目は節穴ってことになってしまうわ」
それほど顔に出ていたか。夢中になりすぎてわからなかった。
テーブルには新しい紅茶が置かれていた。いつ持ってきてくれたんだろう。
……砂糖も入っているし。
「これ、結構評判良かったのよ。続編ももう考えてるし」
そうだろう。なにせ私を虜にするくらいだからな。
って続編だって。
「……うーん、そうね。今からやりましょうか、続き」
「え? いいのかい?」
「うん、でも条件が一つあるけど、協力してくれる?」
彼女は片目をつぶり、私に提案を投げかける。
もちろん、私の答えは決まっていた。
――――――――――
「くらえー ロンドンジャーのミストスロー!」
「こっちはホウライジャーのチョンパカッターだ!」
「ぐわぁぁぁ、やられたー ……ねぇ僕もグランギニョルじゃなくて人形戦隊がいいよー」
「おーい、君たち……」
「ん? あ、ねずみだねずみ、なにか用? ねずみちゃん」
「わ、私はねずみじゃなくてナズーリンだ。そのー、あっちに人形劇が来てるんだ。
しかもシャンハイジャーの続きらしいから一緒に見ないかい……?」
「本当に?! おーい、皆、シャンハイジャーの続きだって! 行こうぜー ほら、リンリンも一緒に」
り、リンリン……
私はこうった感じで子供たちをたくさん集めた。
アリスが言った条件とは、観客をたくさん集めること。
どうやらアリスは、多くの人の前でやるほうが楽しいみたいだ。
人形劇の舞台の前にはもう既に20人ほど集まっている。
「お待たせいたしました。『人形戦隊 シャンハイジャー』第二幕の開演です」
そして、シャンハイジャーは多くの子供たちの歓声の中始まった。
うふふ、一日で二回も見れるなんて私は贅沢者だな。
第二幕が終わり、子供たちが帰っていく。
もう夕暮れだ。私もそろそろ帰らなくてはいけない。
あ、さっき空き地で遊んでた子供たちだ。
「面白かったねー」
「うん、ロシアンジャーが裏切ったと思ったらフリだったなんてね」
「あ、また明日集まってシャンハイジャーごっこしようよ」
「えー、でもまた僕がグランギニョルやるのー」
「お前、今日一日中グランギニョルだったもんな。じゃあ明日は俺がやるよ」
「わーい、じゃあ僕がホウライジャーだね! うーんそれともキョウニンジャーにしよっかなー」
……勇気を出して、話しかけよう。
もう必殺技の名前は覚えたし、臆することはない。
「あ、あのー君たち……」
「リンリンだー。教えてくれてありがとうね。そうだ、リンリンも明日一緒にシャンハイジャーごっこやろうよ!」
「?! や、やる!」
やった……!
片付けをしているアリスの方へ振り向くと、
アリスは小さくガッツポーズをしていた。
アリス、ありがとう!
――――――――――
「ただいま」
「おかえりなさい。ナズ…… あらあら、まぁ。いらっしゃい。お茶を入れますから、ゆっくりしていってくださいね」
聖は突然客を連れてきた事にも全く動じず、お茶を入れに台所に向かう。
今日は、私が夕ご飯番だから彼女を夕飯に招待したのだ。
「お構い無く…… いいのかしら、急に夕ご飯なんて。迷惑じゃない?」
「全く構わないよ。それに聖が教えてくれたんだ。世話になった人にはちゃんとお礼をしなきゃいけないって」
私は善人ではない。
だけどアリスにはお礼をしなきゃいけないことは、わかる。
お茶を飲んで一息ついたら、私はアリスに手の込んだ料理作り、振舞った。
アリスにだけ特製大学芋も付けた。
響子がすごい物欲しそうに見てきたけどこれはお礼の一部だからあげられない。
あとでアリスからもらったクッキーをあげよう。
今日はいろいろ恥ずかしいことを吐露した気がするけど、とてもいい一日だった。
明日の約束も出来たし。
そうそう、私はやらなくてはいけないことが増えた。
今日は忙しかった。だけど、明日も忙しい一日になりそうだ。
アリスを送り出したら、今日は早めに寝よう。
―――――次の日―――――
「すいません、命蓮寺の者なんですが」
「いらっしゃい。……やだ、何か約束してたかしら。おばちゃん忘れっぽくて」
「いや、今日は花じゃなくて、貴方にお礼に来たんだ」
「あら、私何かしたかしら」
貴方が素直になれって言ったから、私は昨日楽しめたんだ。
ちゃんとお礼をしなくてはな。
聖に綺麗に結んでもらった包みを渡す。中身は昨日作った大学芋だ。
花屋の女性はありがとう、といってまた私の頭を撫でた。
ふん、子供扱いは今日だけだぞ。
「リンリン、早くシャンハイジャーごっこやろうよー」
あ、友達が呼んでいる。行かなくちゃ。
キョウニンジャーの私がいかないと真・グランギニョル<ハイパーマックス>は倒せない。
「お友達?」
「うん、貴方のお陰で出来た友達だ」
「用事が無くてもいつでも来てね。チーズを用意して待っているわ」
チーズか。それも魅力的だが
私はもっと魅力的で大切なものを手に入れたんだね。
今はこっちの方が大事なんだ。
「キョウニンジャー参上! くらえぇっ 必殺、ブラックヘアーウィップ!!!!」
『大人なナズーリンのお話』
終わり
ナズ可愛い
後書きの設定なんだよw
いやされました
シャンハイジャーあたりでニヤニヤが堪え切れなくなってしまったw
ナズちゃんマジ大人!
ホウライジャー物騒すぎるw
『「回りの子供っぽさを理解している私は子供ではない」と言う子供っぽさ』が面白かったです
そしてシャンハイジャーは見てみたいw
ロンドンの使えなさに全俺が泣いたw
『人形戦隊 シャンハイジャー』はスピンアウト作品として投稿されるんですよね?
そうですよね?
そうだったらいいな。
ロンドンジャーの能力がひどいw
こうゆうナズーリンも可愛いですね。
なんとも癒されますね。
そして、そういうキャラとして改めて見ると、彼女の四角張った物言いにも新たな破壊力が付与されるな。
父兄参観に来ている親御さん達の気持ちがなんとなくわかるというか。
激しくどうでもいいことではあるのですが、文中から察するにナズは食事をする時正座ではない模様。
やはりぺたんこ座りか? いや、意表をついて胡坐という選択も? 作者様の見解をお聞きしたいところだ。
ナズーリンを愛らしく見せることに特化したお話のつくり方はとても清々しい。
そしてその効果は抜群だ。
誤字、言い回し共に訂正いたしました。かなり助かります。
ありがとうございます。というか貴方にコメントされるとは。
ぺたんこ座りとはあの男が骨の構造上出来ないと言われるあれでしょうか。
それはかわいいですね。それでお茶碗を掬う様に持っていて、脇をずっと閉じていれば完璧です。
でも私のイメージだとあぐらです。
あぐらをかきお茶碗は横からガシッと掴む感じで、もう片方の手は箸ですね。
それで響子と会話している時は、それらを両手に持ちながら膝の上に置いて会話しています。もちろん背筋はぴんと伸ばし、しっぽはくるるんと丸まっています。
あくまでこれは私のイメージするナズーリンなので正解はわかりません。
もしかしたら横座りかもしれませんし。
いつか私が命蓮寺で食事をする機会があれば確認しておきます。
アリス邸の扉ノックするとき、背伸びしてるナズーリン幻視余裕でした
いやしかし、このナズは大人にならなくていいな、可愛すぎますw
というか幻想郷全土でナズーリンはお子ちゃまってバレていそうな様子ですね。