『引っ越しました アリス』
そんな手紙が無造作に私の家のポストに投函されていたのは今からおよそ一週間ほど前で、じゃあまあ一度くらいは引越祝いがてら遊びに行ってやるかと思いながらもあまりの夏の猛暑具合に心を挫かれ、明日行こう明日行こうと思っているうちにいつの間にか一週間ほどが経過していた今が今日である。
「ここ、か」
同封されていた地図をあえて参照するまでもなく、アリスの新居は、湖の畔、ちょうど対岸に紅魔館が見える位置という、実に分かりやすい場所に構えられていた。
ちなみに、外観は前の家と全く同じ、どころか、多分同じ建物だ。
あの壁のシミとか見覚えあるし。
「……ってことは、一度解体して移築したのか……。しかし、何でそうまでしてこんな場所に……?」
私は思わず首をひねる。
アリスの家は、それが魔法の森にあったときと微塵も変わらぬ優美な佇まいで、実に堂々とそびえ立っていた。
周囲にはチルノの住んでいるかまくらくらいしかないこの場所においては、とてもよく目立つ。
「まあ、いいか」
細かいことは本人に聞けば済む話だ。
それに何より、この付近は夏の日差しがきつすぎる。
この湖は、昼間は霧に包まれることが多いのだが、その分布具合にはかなりムラがあり、アリスの家近辺にはほとんど発生していない。
まるで、霧が発生しにくいポイント、つまり真夏の直射日光をモロに受けるポイントを故意に選択したかのような印象すら受ける。
「飛んで火に入る夏の魔女……」
何を言っているのか分からないと思うが、私自身もまったくよく分からない。
それだけ、今の私は頭上から降り注ぐ夏の太陽光線に体力及び精神力を根こそぎ奪われているということなのだろう。
普段、木々に覆われ鬱蒼としている魔法の森に住んでいる身としては、これはかなり堪える。
まあ、あれはあれで湿度は高く蒸し暑いので、どっちもどっちともいえるのだが。
……そこでふと、私は、アリスの家からやや離れた位置に所在しているチルノのかまくらに目をやった。
氷でできているだけあって、見た目には清涼感がある。
だがしかし、あいつも氷精だけあって暑いのは苦手なはずで、なんだってこんなところに居を構えているんだろう。
まあ、あいつの場合はアリスと違って、単に何も考えていないだけなんだろうが。
大方、冬の頃から住んでいる場所に、夏になってもそのまま住み続けているというだけのことだろう。
「……そんなこともどうでもいいか」
別に私は、妖精の生態調査をしにはるばるこんなところまで来たわけではない。
霧どころか何の遮蔽物も無いこの付近では、前述の直射日光が敢然と襲いかかってくるため、汗は噴き出すわ服は蒸れるわで最悪に近い。
私は避難の意味も込めて、さっさと眼前の見慣れた家のドアをノックすることにした。
「あら」
ノックから数秒、そう言って姿を現したのは、Tシャツ短パンというまたえらくラフな格好をした七色の人形遣いだった。
「どうしたの、魔理沙」
やけに涼しそうな顔をしていやがる。
というか、なんだか実際に涼しいような気がする。
「ああ、今冷却魔法使ってるからね」
「それは助かるぜ」
早速一歩踏み入ろうとした私を、アリスは片手を上げて制止した。
「待ちなさい。何の用で来たのかを告げない者は侵入者とみなして迎撃します。三、二、一……」
「ひ、引越祝いに来たんだよ」
「あら? そうなの。それはわざわざ悪かったわね」
私が慌てて答えると、アリスの背後で武器を構え始めていた人形達が一斉に臨戦態勢を解いた。
私が何をしたというのか。
「何言ってるの。住居侵入、器物損壊、横領、詐欺、窃盗、強盗……。前科持ちの凶悪犯には相応の対応を取るのが当たり前でしょ」
「ちぇ」
過去の罪状を持ち出されるとぐぅの音も出やしない。
私は分の悪い反論はしない主義なので、黙ってアリスにつき従って家の中に入ることにした。
「お邪魔するぜ……って、さむっ!?」
思わず身震いした。
家の外から冷気を浴びる分にはほどよい涼しさだったが、中に入るとガン冷えだ。
「あ、アリス。お前、いくらなんでもこれちょっと冷やし過ぎなんじゃないか?」
「ああ、今十五度に設定してるからね」
「じゅ、十五度!?」
冷房は二十八度って決まってるだろ。
どんだけ地球に厳しいんだよ。
「あら、私が使ってるのは電力じゃなくて魔力だもの。むしろエコだわ」
「そりゃまあそうかもしれんが……」
何にせよ肌寒いことに変わりはない。
というか、こいつこんなに暑がりだったか?
「ノン」
アリスは得意気に指を振りつつ否定した。
「これにはちゃんと理由があるのよ」
「なんだよ、理由って」
「それは―――」
廊下を渡り、アリスに続いてリビングに入る。
と。
「これよ!」
「……え?」
アリスがドヤ顔で指差す、リビングの中央に置かれたテーブル。
の、上。
「……鍋?」
グツグツと、土鍋が煮えたぎっていた。
正対する席に一つずつ置かれた二つの土鍋が、もくもくと湯気を立ち上らせている。
アリスは、大げさに肩を竦めて言った。
「違うわ」
「いや、鍋だろ」
「鍋焼きうどんよ」
ああ、そうかい。
心底どうでもいい。
「何を言うのよ! 鍋焼きうどんじゃないと意味がないでしょ!」
「? ど、どういうことだ」
いきなり瞳孔を開いて鬼気迫るアリスを前に、私は思わず仰け反った。
するとすぐに、アリスははっとした表情を浮かべ、声のトーンを下げて言った。
「……早苗に聞いたの」
またあいつか。
もうそろそろ守矢教に入信した方がいいんじゃないか?
「お生憎さま。私は神を信じないのよ」
「魔界の母ちゃんが泣いてるぞ」
「それはそれよ」
今流行りのダブルスタンダードってやつですかそうですか。
まあ別にどうでもいいけど。
「どうでもいいとは失礼ね」
「……で、今度は早苗に何を吹き込まれたんだ? ……まさかとは思うが、『外の世界では、暑い夏に冷房をガンガンに効かせた部屋で熱々の鍋焼きうどんを食べるのが最高の贅沢なんですよ!』とか言われたんじゃあるまいな」
「……エスパー?」
やはりか。
私は目を丸くするアリスを見ながら深く嘆息しつつ、
「……じゃあお前は、それをするためだけに、わざわざこんなところまで引っ越してきたってのか」
「うん」
こいつ、真性のアホだ。
「だってしょうがないじゃない。魔法の森だとほとんど日差しが入らなくて、全然夏っぽくないんだもの」
「まあ確かに、ひたすら蒸し暑いだけで夏成分は薄いな。少なくとも、太陽のカンカン照りなんかとは無縁の世界だ」
「でしょう? だからこうするしかなかったのよ」
「確かにここなら、夏の日差しもギンギンだが……」
私はちらりと窓の外を見た。
眩いばかりの太陽光線が地面を直射し、何やら蜃気楼のようなものまで立ち上っている。
空は雲ひとつない青で、まさに夏そのものといった風景が切り取られている。
「このうだるような暑い夏の日に、冷房をガンガンに効かせた部屋で、熱々の鍋焼きうどんを食べる。それが、幻想郷の夏における最高の贅沢なのよ」
いつに間にか場所的副詞句がすり替わっている。
他宗の教義を何食わぬ顔で盗用するのはどうかと思うぜ。
「だから宗教は関係ないの! 神は死んだの! どやっ!」
「ニーチェに謝れ。あとお前の親にも」
とりあえずドヤ顔してれば許されると思ったら大間違いだ。
ていうか口で言うか、それ。
「まあ、でも」
私は軽く息を吐きつつも、アリスに先んじてテーブルの席に着いた。
「魔理沙?」
「嫌いじゃないぜ。こういうの」
私の言葉に、目をぱちくりとさせるアリス。
私は少し照れくさかったので、アリスから目線を外しながら、言った。
「……いいよ。私も一緒にいてやるよ」
「!」
「……ひとりぼっちは、寂しいもんな」
私がそう言って笑いかけると、アリスもまた、笑顔になった。
「……ありがとう、魔理沙」
そして、私の向かい側の席に着く。
グツグツ。
グツグツ。
テーブルの上には、うどん煮えたぎる土鍋が二つ、湯気をくゆらせながら鎮座している。
今更ながら、私は単純な疑問を口にした。
「そういやこれ、二つあるけど……私が来るって分かってたのか?」
「違うわ。単に一人で二人分食べるつもりでいただけ。まあでも折角だから魔理沙、食べていってよ」
「まあそういうことなら遠慮なく頂くが」
この期に及んでツッコむこともあるまいと、私は明鏡止水の境地で箸を手に取る。
眼前の鍋は見るからに熱そうで、っていうか既に熱い。
湯気で顔がみるみるうちに熱されていく。
「じゃあ早速、熱いうちに食べましょうか」
「ああ」
手を合わせて、私とアリスはそれぞれ箸を鍋の中に突っ込んだ。
「は、はふはふっ」
「はふ、はふ」
熱い。
鍋焼きうどんマジ熱い。
でも、身体は妙に涼しい。
ここにきて、十五度設定が真価を発揮している。
それに、何より。
「ふ、ふまいな」
「はふ、ほうでひょ?」
「はあ」
事実、アリスの作った鍋焼きうどんはべらぼうに美味かった。
コシのある太麺に、香り高いかつお出汁が絶妙にマッチしている。
カマボコにシイタケ、ニンジンにエビ天といった歴戦の猛者達の織りなすハーモニーのカタルシスは天井知らずだ。
自分で言っててよく分からんが。
「魔理沙」
「ん?」
「窓の外を御覧なさい」
さっきも見たところだが、言われた通りにもう一度見てみる。
先刻同様、灼熱の太陽光線が視界を歪めていた。
「そして、この部屋の温度」
非常に涼しい。
それはもう、底冷えするくらいに。
「そして、このなべやき、う、はふ、どん、はふふっ」
いや、喋るか食うかどっちかにしろよ。
まあ気持ちは分からんでもないけどさ。
「何言ってるの。はふ、一秒たりとも、はふはふ、無駄には、はふっ、できないのよっ」
今やアリスは、いつものクールな仮面を完全に脱ぎ捨て、鍋焼きうどんをかっこむことだけに全神経を集中させている様子だ。
私が暫し箸を止め、そんなアリスの様子に見入っていると、彼女はおもむろに顔を上げた。
「魔理沙」
「? 何だ?」
「……魔理沙の栄光時代はいつ? 紅霧異変を解決したとき?」
「……いや、そんなの急に言われても分からんが……せめてもうちょっと後の方にしてくれないか」
「私は……」
アリスはちゅぞぞっとうどんを啜り込むと、真摯な眼差しで私を見据え、言った。
「私は今なのよ」
アリスの表情には、一点の曇りも迷いもなかった。
鍋焼きうどんの湯気も、額に滲んだ汗も、全てが彼女を引き立たせるためだけに存在していた。
「……アリス。お前今、最高に輝いてるぜ」
「本当? 輝いてる? ねぇ、私輝いてる!?」
「ああ、輝いてるとも」
そのとき、ぽたりと滴がテーブルに落ちた。
私の汗だ。
どうやら、体内に取り込んだ鍋焼きうどんの熱エネルギーが、外気温による冷却効果を上回ってきたようだ。
全身がじんわりと汗ばむ。
「アリス」
「? なに?」
「着替えを貸してくれないか。えらく暑くなってきた」
「いいわよ」
助かった。
今の状況で、いつもの魔女エプロンを着続けるのは相当にきつい。
「はい」
そう言ってアリスがよこしてきたのは無地のTシャツと短パンだった。
流石都会派は格が違った。
「ふうっ」
早速上下を着替えた私は、心身ともに随分と涼しくなった。
これで一層、熱々の鍋焼きうどんを堪能できるというものだ。
「ふふ、魔理沙。あなたもようやく分かってきたようね。身体を涼しくすればするほど、熱々の鍋焼きうどんを美味しく食べることができるという、この驚異のメカニズムを!」
「ああ、分かってきたぜ。これで私も一級の鍋焼きうど二ストだ」
自分でも噛みそうになるくらいに悪い語呂だが、今それほどどうでもいいことも他に無かった。
私は一心不乱にうどんを啜り、具を噛み、汁を飲んだ。
うだるような暑い夏の日、ガンガンに冷えた部屋、そして熱々の鍋焼きうどん―――。
最高だ。
この上なく最高だ。
明日はアリスと一緒に守矢神社に行って、ありったけの小銭を賽銭箱にぶち込んでやろう。
なんならそのまま入信してやってもいい。
今の私はそれくらいの気持ちだった。
―――十数分後。
「ご馳走さまでした」
「お粗末さまでした」
私とアリスは互いに手を合わせ、食事を終えた。
火照ったからだに、存分に冷えた部屋が心地良い。
まさにこの世の楽園だ。
「ふふ、良かったわ。魔理沙とも、この幸せが共有できて」
「ああ、ありがとうな。アリス」
私達は不思議な一体感に包まれていた。
性格は真反対なのに、ときどきこういうところで感性が合うから、今でも私達は腐れ縁にも似た友人関係を続けていられるのかもしれない。
「ところで、アリス」
「なに?」
「うだるような暑い夏の日に、ガンガンに冷房が効いた部屋で、熱々の鍋焼きうどんを食うのが夏の最高の贅沢なら―――」
「うん」
「凍えるような寒い冬の日に、ガンガンに暖房が効いた部屋で、よく冷えたアイスキャンデーを食うのが、冬の最高の贅沢ってことになるのか?」
「……ぷっ、あははっ」
アリスが笑った。
子供のように、無邪気に。
「そうね。たぶん、そういうことになるんじゃないかしら?」
「ははっ。じゃあ、冬になったらまたやらないとな」
私が冗談めかすと、アリスは何やら意味深な笑みを浮かべて言った。
「……ふふっ、魔理沙。せっかちなあなたが、冬まで待てるのかしら?」
「え?」
キョトンとする私を余所に、アリスはパチンと指を鳴らした。
すると、人形が四体ほど、ふよふよと何やらちゃぶ台のようなものを運んできた。
「アリス?」
「こっちよ、魔理沙」
言われるがままについていく。
アリスはリビングの奥、窓際のあたりで立ち止まった。
「―――開!」
無駄にカッコよくアリスが言うと、ガコン、と床の一部が四角く開いた。
そして、人形達は先ほどのちゃぶ台をその上にセッティングする。
「これは、まさか……」
「その、まさかよ」
アリスは再び指を鳴らした。
人形がふかふかとした掛け布団を持ってきた。
「―――!」
私は確信した。
アリスのやろうとしていること、その意味を。
「アリス……」
「…………」
アリスは何も言わず、じっと人形達の作業を見守っている。
人形がちゃぶ台の上に布団を掛ける。
そしてまた別の人形がちゃぶ台と同面積の板をもってきて、その布団の上から置く。
「さあ、どうぞ」
促されるままに、私は布団の中にもぞもぞと入る。
アリスが三度指を鳴らすと、急速にその中が熱くなってきた。
どうやら、床下に火力魔法を仕込んでいたようだ。
―――掘りごたつの完成である。
「……まさかこんな夏の日に、堀りごたつに入ることになるとは思いもしなかったぜ」
「ふふっ。火力は全開にしておいたわ」
「……ああ、サンキュー」
まだ先ほどのうどんの熱が身体にこもっているところに、火力全開の掘りごたつときたものだ。
しかしアリスは、まだまだ手を緩めるつもりはないらしく、
「はい、魔理沙」
そう言って、私に冬用のコートを手渡してきた。
アリス自身も、いつの間にか同種のそれを羽織っている。
「サンキュー、アリス」
私は微塵も躊躇することなくそれを受け取ると、手早く羽織った。
全身から汗が噴き出す。
「ちょっと待っててね」
そう言い残し、アリスは台所の方へと歩いていった。
私はその後ろ姿を見送りつつ、さらに自分を追い込むべく布団の裾を持ち上げると、一気に肩までこたつに入った。
もう準備は万端だ。くそあつい。
「お待たせ」
早くも私の意識が朦朧となりかけた頃、アリスは戻ってきた。
その手には、二本のアイスキャンデーが握られている。
「……待ちくたびれたぜ」
「ふふ、ごめんね」
そう言って、アリスはそのうちの一本を私に手渡す。
そしてそのまま、アリスも肩までこたつに入った。
「ふふふ……」
「へへへ……」
うだるような暑い夏の日に、ガンガンに冷房が効いた部屋の中、火力全開の掘りごたつに肩まで入った状態で、私達は互いに笑いあった。
「……ね? 魔理沙。冬まで待たなくて、よかったでしょう?」
「ああ……流石はアリス。私の三歩先を行く女だぜ……」
本来ならば寒い寒い冬にしかできないはずの贅沢を、暑い暑い夏にする。
これぞまさに至上の贅沢、贅沢の極致ではなかろうか?
「それじゃあ、溶けないうちに食べましょう」
「ああ」
私達は手を合わせ、同時にシャクリ、とアイスをかじった。
キーンと、頭に響く感覚。
「おぉ……」
「うぅ……」
若干のダメージを受けつつも、すぐにその表情は安堵に変わる。
「……美味いな」
「……ええ」
顔を綻ばせながら、アイスをかじる私とアリス。
熱量の極みの中で食する冷たいアイスが、こんなにも美味いものだったとは。
シャクシャク。
シャクシャク。
アイスの清涼感は抜群だが、それでも身を纏う熱は依然として甚大であり、私の額からは、汗がだらだらと滴り落ちている。
それはアリスも同じようで、滴が彼女の顎を伝っては、ぽたり、ぽたりと台の上に落ちている。
シャクシャク。
シャクシャク。
外は、真夏の太陽がカンカン照り。
部屋は、アリスの冷却魔法でガンガン冷え。
そんな中、私達は火力全開の掘りごたつに肩まで入り、汗水をだらだら流しながら、キンキンに冷えたアイスキャンデーを頬張っている。
最高だ。
これぞまさに、最高の幸せだ―――。
「……ん?」
そのとき、ふいに窓の外の影が視界に入った。
「?」
アリスもつられて、私の視線の先を追った。
窓越しに、何やらテンションの高い話し声が聞こえてくる。
「あ~! やっぱり、夏はこれに限るわね!」
「ホント、ホント」
それは、見覚えのある二匹の妖精だった。
それぞれ、手に何かを持っている。
「あたい、夏は暑いからあんまりスキじゃないんだけど、でもこーやって食べるアイスは、すごく好き!」
「私も! なんていうか、これぞまさに夏! って感じがするよねぇ~」
そんな会話を交わしながら、真夏の日差しを一身に浴びつつ、額に爽やかな汗を浮かべて、美味しそうにアイスキャンデーを頬張っているチルノと大妖精の姿が、そこにあった。
「…………」
「…………」
うだるような暑い夏の日に、ガンガンに冷房が効いた部屋で、冬用のコートを着て火力全開の掘りごたつに肩まで入り、だくだくと汗を滴らせつつ、冷たいアイスキャンデーを頬張っていた私とアリスは、互いに顔を見合わせた。
「アリス」
「何も言わないで」
了
そんな手紙が無造作に私の家のポストに投函されていたのは今からおよそ一週間ほど前で、じゃあまあ一度くらいは引越祝いがてら遊びに行ってやるかと思いながらもあまりの夏の猛暑具合に心を挫かれ、明日行こう明日行こうと思っているうちにいつの間にか一週間ほどが経過していた今が今日である。
「ここ、か」
同封されていた地図をあえて参照するまでもなく、アリスの新居は、湖の畔、ちょうど対岸に紅魔館が見える位置という、実に分かりやすい場所に構えられていた。
ちなみに、外観は前の家と全く同じ、どころか、多分同じ建物だ。
あの壁のシミとか見覚えあるし。
「……ってことは、一度解体して移築したのか……。しかし、何でそうまでしてこんな場所に……?」
私は思わず首をひねる。
アリスの家は、それが魔法の森にあったときと微塵も変わらぬ優美な佇まいで、実に堂々とそびえ立っていた。
周囲にはチルノの住んでいるかまくらくらいしかないこの場所においては、とてもよく目立つ。
「まあ、いいか」
細かいことは本人に聞けば済む話だ。
それに何より、この付近は夏の日差しがきつすぎる。
この湖は、昼間は霧に包まれることが多いのだが、その分布具合にはかなりムラがあり、アリスの家近辺にはほとんど発生していない。
まるで、霧が発生しにくいポイント、つまり真夏の直射日光をモロに受けるポイントを故意に選択したかのような印象すら受ける。
「飛んで火に入る夏の魔女……」
何を言っているのか分からないと思うが、私自身もまったくよく分からない。
それだけ、今の私は頭上から降り注ぐ夏の太陽光線に体力及び精神力を根こそぎ奪われているということなのだろう。
普段、木々に覆われ鬱蒼としている魔法の森に住んでいる身としては、これはかなり堪える。
まあ、あれはあれで湿度は高く蒸し暑いので、どっちもどっちともいえるのだが。
……そこでふと、私は、アリスの家からやや離れた位置に所在しているチルノのかまくらに目をやった。
氷でできているだけあって、見た目には清涼感がある。
だがしかし、あいつも氷精だけあって暑いのは苦手なはずで、なんだってこんなところに居を構えているんだろう。
まあ、あいつの場合はアリスと違って、単に何も考えていないだけなんだろうが。
大方、冬の頃から住んでいる場所に、夏になってもそのまま住み続けているというだけのことだろう。
「……そんなこともどうでもいいか」
別に私は、妖精の生態調査をしにはるばるこんなところまで来たわけではない。
霧どころか何の遮蔽物も無いこの付近では、前述の直射日光が敢然と襲いかかってくるため、汗は噴き出すわ服は蒸れるわで最悪に近い。
私は避難の意味も込めて、さっさと眼前の見慣れた家のドアをノックすることにした。
「あら」
ノックから数秒、そう言って姿を現したのは、Tシャツ短パンというまたえらくラフな格好をした七色の人形遣いだった。
「どうしたの、魔理沙」
やけに涼しそうな顔をしていやがる。
というか、なんだか実際に涼しいような気がする。
「ああ、今冷却魔法使ってるからね」
「それは助かるぜ」
早速一歩踏み入ろうとした私を、アリスは片手を上げて制止した。
「待ちなさい。何の用で来たのかを告げない者は侵入者とみなして迎撃します。三、二、一……」
「ひ、引越祝いに来たんだよ」
「あら? そうなの。それはわざわざ悪かったわね」
私が慌てて答えると、アリスの背後で武器を構え始めていた人形達が一斉に臨戦態勢を解いた。
私が何をしたというのか。
「何言ってるの。住居侵入、器物損壊、横領、詐欺、窃盗、強盗……。前科持ちの凶悪犯には相応の対応を取るのが当たり前でしょ」
「ちぇ」
過去の罪状を持ち出されるとぐぅの音も出やしない。
私は分の悪い反論はしない主義なので、黙ってアリスにつき従って家の中に入ることにした。
「お邪魔するぜ……って、さむっ!?」
思わず身震いした。
家の外から冷気を浴びる分にはほどよい涼しさだったが、中に入るとガン冷えだ。
「あ、アリス。お前、いくらなんでもこれちょっと冷やし過ぎなんじゃないか?」
「ああ、今十五度に設定してるからね」
「じゅ、十五度!?」
冷房は二十八度って決まってるだろ。
どんだけ地球に厳しいんだよ。
「あら、私が使ってるのは電力じゃなくて魔力だもの。むしろエコだわ」
「そりゃまあそうかもしれんが……」
何にせよ肌寒いことに変わりはない。
というか、こいつこんなに暑がりだったか?
「ノン」
アリスは得意気に指を振りつつ否定した。
「これにはちゃんと理由があるのよ」
「なんだよ、理由って」
「それは―――」
廊下を渡り、アリスに続いてリビングに入る。
と。
「これよ!」
「……え?」
アリスがドヤ顔で指差す、リビングの中央に置かれたテーブル。
の、上。
「……鍋?」
グツグツと、土鍋が煮えたぎっていた。
正対する席に一つずつ置かれた二つの土鍋が、もくもくと湯気を立ち上らせている。
アリスは、大げさに肩を竦めて言った。
「違うわ」
「いや、鍋だろ」
「鍋焼きうどんよ」
ああ、そうかい。
心底どうでもいい。
「何を言うのよ! 鍋焼きうどんじゃないと意味がないでしょ!」
「? ど、どういうことだ」
いきなり瞳孔を開いて鬼気迫るアリスを前に、私は思わず仰け反った。
するとすぐに、アリスははっとした表情を浮かべ、声のトーンを下げて言った。
「……早苗に聞いたの」
またあいつか。
もうそろそろ守矢教に入信した方がいいんじゃないか?
「お生憎さま。私は神を信じないのよ」
「魔界の母ちゃんが泣いてるぞ」
「それはそれよ」
今流行りのダブルスタンダードってやつですかそうですか。
まあ別にどうでもいいけど。
「どうでもいいとは失礼ね」
「……で、今度は早苗に何を吹き込まれたんだ? ……まさかとは思うが、『外の世界では、暑い夏に冷房をガンガンに効かせた部屋で熱々の鍋焼きうどんを食べるのが最高の贅沢なんですよ!』とか言われたんじゃあるまいな」
「……エスパー?」
やはりか。
私は目を丸くするアリスを見ながら深く嘆息しつつ、
「……じゃあお前は、それをするためだけに、わざわざこんなところまで引っ越してきたってのか」
「うん」
こいつ、真性のアホだ。
「だってしょうがないじゃない。魔法の森だとほとんど日差しが入らなくて、全然夏っぽくないんだもの」
「まあ確かに、ひたすら蒸し暑いだけで夏成分は薄いな。少なくとも、太陽のカンカン照りなんかとは無縁の世界だ」
「でしょう? だからこうするしかなかったのよ」
「確かにここなら、夏の日差しもギンギンだが……」
私はちらりと窓の外を見た。
眩いばかりの太陽光線が地面を直射し、何やら蜃気楼のようなものまで立ち上っている。
空は雲ひとつない青で、まさに夏そのものといった風景が切り取られている。
「このうだるような暑い夏の日に、冷房をガンガンに効かせた部屋で、熱々の鍋焼きうどんを食べる。それが、幻想郷の夏における最高の贅沢なのよ」
いつに間にか場所的副詞句がすり替わっている。
他宗の教義を何食わぬ顔で盗用するのはどうかと思うぜ。
「だから宗教は関係ないの! 神は死んだの! どやっ!」
「ニーチェに謝れ。あとお前の親にも」
とりあえずドヤ顔してれば許されると思ったら大間違いだ。
ていうか口で言うか、それ。
「まあ、でも」
私は軽く息を吐きつつも、アリスに先んじてテーブルの席に着いた。
「魔理沙?」
「嫌いじゃないぜ。こういうの」
私の言葉に、目をぱちくりとさせるアリス。
私は少し照れくさかったので、アリスから目線を外しながら、言った。
「……いいよ。私も一緒にいてやるよ」
「!」
「……ひとりぼっちは、寂しいもんな」
私がそう言って笑いかけると、アリスもまた、笑顔になった。
「……ありがとう、魔理沙」
そして、私の向かい側の席に着く。
グツグツ。
グツグツ。
テーブルの上には、うどん煮えたぎる土鍋が二つ、湯気をくゆらせながら鎮座している。
今更ながら、私は単純な疑問を口にした。
「そういやこれ、二つあるけど……私が来るって分かってたのか?」
「違うわ。単に一人で二人分食べるつもりでいただけ。まあでも折角だから魔理沙、食べていってよ」
「まあそういうことなら遠慮なく頂くが」
この期に及んでツッコむこともあるまいと、私は明鏡止水の境地で箸を手に取る。
眼前の鍋は見るからに熱そうで、っていうか既に熱い。
湯気で顔がみるみるうちに熱されていく。
「じゃあ早速、熱いうちに食べましょうか」
「ああ」
手を合わせて、私とアリスはそれぞれ箸を鍋の中に突っ込んだ。
「は、はふはふっ」
「はふ、はふ」
熱い。
鍋焼きうどんマジ熱い。
でも、身体は妙に涼しい。
ここにきて、十五度設定が真価を発揮している。
それに、何より。
「ふ、ふまいな」
「はふ、ほうでひょ?」
「はあ」
事実、アリスの作った鍋焼きうどんはべらぼうに美味かった。
コシのある太麺に、香り高いかつお出汁が絶妙にマッチしている。
カマボコにシイタケ、ニンジンにエビ天といった歴戦の猛者達の織りなすハーモニーのカタルシスは天井知らずだ。
自分で言っててよく分からんが。
「魔理沙」
「ん?」
「窓の外を御覧なさい」
さっきも見たところだが、言われた通りにもう一度見てみる。
先刻同様、灼熱の太陽光線が視界を歪めていた。
「そして、この部屋の温度」
非常に涼しい。
それはもう、底冷えするくらいに。
「そして、このなべやき、う、はふ、どん、はふふっ」
いや、喋るか食うかどっちかにしろよ。
まあ気持ちは分からんでもないけどさ。
「何言ってるの。はふ、一秒たりとも、はふはふ、無駄には、はふっ、できないのよっ」
今やアリスは、いつものクールな仮面を完全に脱ぎ捨て、鍋焼きうどんをかっこむことだけに全神経を集中させている様子だ。
私が暫し箸を止め、そんなアリスの様子に見入っていると、彼女はおもむろに顔を上げた。
「魔理沙」
「? 何だ?」
「……魔理沙の栄光時代はいつ? 紅霧異変を解決したとき?」
「……いや、そんなの急に言われても分からんが……せめてもうちょっと後の方にしてくれないか」
「私は……」
アリスはちゅぞぞっとうどんを啜り込むと、真摯な眼差しで私を見据え、言った。
「私は今なのよ」
アリスの表情には、一点の曇りも迷いもなかった。
鍋焼きうどんの湯気も、額に滲んだ汗も、全てが彼女を引き立たせるためだけに存在していた。
「……アリス。お前今、最高に輝いてるぜ」
「本当? 輝いてる? ねぇ、私輝いてる!?」
「ああ、輝いてるとも」
そのとき、ぽたりと滴がテーブルに落ちた。
私の汗だ。
どうやら、体内に取り込んだ鍋焼きうどんの熱エネルギーが、外気温による冷却効果を上回ってきたようだ。
全身がじんわりと汗ばむ。
「アリス」
「? なに?」
「着替えを貸してくれないか。えらく暑くなってきた」
「いいわよ」
助かった。
今の状況で、いつもの魔女エプロンを着続けるのは相当にきつい。
「はい」
そう言ってアリスがよこしてきたのは無地のTシャツと短パンだった。
流石都会派は格が違った。
「ふうっ」
早速上下を着替えた私は、心身ともに随分と涼しくなった。
これで一層、熱々の鍋焼きうどんを堪能できるというものだ。
「ふふ、魔理沙。あなたもようやく分かってきたようね。身体を涼しくすればするほど、熱々の鍋焼きうどんを美味しく食べることができるという、この驚異のメカニズムを!」
「ああ、分かってきたぜ。これで私も一級の鍋焼きうど二ストだ」
自分でも噛みそうになるくらいに悪い語呂だが、今それほどどうでもいいことも他に無かった。
私は一心不乱にうどんを啜り、具を噛み、汁を飲んだ。
うだるような暑い夏の日、ガンガンに冷えた部屋、そして熱々の鍋焼きうどん―――。
最高だ。
この上なく最高だ。
明日はアリスと一緒に守矢神社に行って、ありったけの小銭を賽銭箱にぶち込んでやろう。
なんならそのまま入信してやってもいい。
今の私はそれくらいの気持ちだった。
―――十数分後。
「ご馳走さまでした」
「お粗末さまでした」
私とアリスは互いに手を合わせ、食事を終えた。
火照ったからだに、存分に冷えた部屋が心地良い。
まさにこの世の楽園だ。
「ふふ、良かったわ。魔理沙とも、この幸せが共有できて」
「ああ、ありがとうな。アリス」
私達は不思議な一体感に包まれていた。
性格は真反対なのに、ときどきこういうところで感性が合うから、今でも私達は腐れ縁にも似た友人関係を続けていられるのかもしれない。
「ところで、アリス」
「なに?」
「うだるような暑い夏の日に、ガンガンに冷房が効いた部屋で、熱々の鍋焼きうどんを食うのが夏の最高の贅沢なら―――」
「うん」
「凍えるような寒い冬の日に、ガンガンに暖房が効いた部屋で、よく冷えたアイスキャンデーを食うのが、冬の最高の贅沢ってことになるのか?」
「……ぷっ、あははっ」
アリスが笑った。
子供のように、無邪気に。
「そうね。たぶん、そういうことになるんじゃないかしら?」
「ははっ。じゃあ、冬になったらまたやらないとな」
私が冗談めかすと、アリスは何やら意味深な笑みを浮かべて言った。
「……ふふっ、魔理沙。せっかちなあなたが、冬まで待てるのかしら?」
「え?」
キョトンとする私を余所に、アリスはパチンと指を鳴らした。
すると、人形が四体ほど、ふよふよと何やらちゃぶ台のようなものを運んできた。
「アリス?」
「こっちよ、魔理沙」
言われるがままについていく。
アリスはリビングの奥、窓際のあたりで立ち止まった。
「―――開!」
無駄にカッコよくアリスが言うと、ガコン、と床の一部が四角く開いた。
そして、人形達は先ほどのちゃぶ台をその上にセッティングする。
「これは、まさか……」
「その、まさかよ」
アリスは再び指を鳴らした。
人形がふかふかとした掛け布団を持ってきた。
「―――!」
私は確信した。
アリスのやろうとしていること、その意味を。
「アリス……」
「…………」
アリスは何も言わず、じっと人形達の作業を見守っている。
人形がちゃぶ台の上に布団を掛ける。
そしてまた別の人形がちゃぶ台と同面積の板をもってきて、その布団の上から置く。
「さあ、どうぞ」
促されるままに、私は布団の中にもぞもぞと入る。
アリスが三度指を鳴らすと、急速にその中が熱くなってきた。
どうやら、床下に火力魔法を仕込んでいたようだ。
―――掘りごたつの完成である。
「……まさかこんな夏の日に、堀りごたつに入ることになるとは思いもしなかったぜ」
「ふふっ。火力は全開にしておいたわ」
「……ああ、サンキュー」
まだ先ほどのうどんの熱が身体にこもっているところに、火力全開の掘りごたつときたものだ。
しかしアリスは、まだまだ手を緩めるつもりはないらしく、
「はい、魔理沙」
そう言って、私に冬用のコートを手渡してきた。
アリス自身も、いつの間にか同種のそれを羽織っている。
「サンキュー、アリス」
私は微塵も躊躇することなくそれを受け取ると、手早く羽織った。
全身から汗が噴き出す。
「ちょっと待っててね」
そう言い残し、アリスは台所の方へと歩いていった。
私はその後ろ姿を見送りつつ、さらに自分を追い込むべく布団の裾を持ち上げると、一気に肩までこたつに入った。
もう準備は万端だ。くそあつい。
「お待たせ」
早くも私の意識が朦朧となりかけた頃、アリスは戻ってきた。
その手には、二本のアイスキャンデーが握られている。
「……待ちくたびれたぜ」
「ふふ、ごめんね」
そう言って、アリスはそのうちの一本を私に手渡す。
そしてそのまま、アリスも肩までこたつに入った。
「ふふふ……」
「へへへ……」
うだるような暑い夏の日に、ガンガンに冷房が効いた部屋の中、火力全開の掘りごたつに肩まで入った状態で、私達は互いに笑いあった。
「……ね? 魔理沙。冬まで待たなくて、よかったでしょう?」
「ああ……流石はアリス。私の三歩先を行く女だぜ……」
本来ならば寒い寒い冬にしかできないはずの贅沢を、暑い暑い夏にする。
これぞまさに至上の贅沢、贅沢の極致ではなかろうか?
「それじゃあ、溶けないうちに食べましょう」
「ああ」
私達は手を合わせ、同時にシャクリ、とアイスをかじった。
キーンと、頭に響く感覚。
「おぉ……」
「うぅ……」
若干のダメージを受けつつも、すぐにその表情は安堵に変わる。
「……美味いな」
「……ええ」
顔を綻ばせながら、アイスをかじる私とアリス。
熱量の極みの中で食する冷たいアイスが、こんなにも美味いものだったとは。
シャクシャク。
シャクシャク。
アイスの清涼感は抜群だが、それでも身を纏う熱は依然として甚大であり、私の額からは、汗がだらだらと滴り落ちている。
それはアリスも同じようで、滴が彼女の顎を伝っては、ぽたり、ぽたりと台の上に落ちている。
シャクシャク。
シャクシャク。
外は、真夏の太陽がカンカン照り。
部屋は、アリスの冷却魔法でガンガン冷え。
そんな中、私達は火力全開の掘りごたつに肩まで入り、汗水をだらだら流しながら、キンキンに冷えたアイスキャンデーを頬張っている。
最高だ。
これぞまさに、最高の幸せだ―――。
「……ん?」
そのとき、ふいに窓の外の影が視界に入った。
「?」
アリスもつられて、私の視線の先を追った。
窓越しに、何やらテンションの高い話し声が聞こえてくる。
「あ~! やっぱり、夏はこれに限るわね!」
「ホント、ホント」
それは、見覚えのある二匹の妖精だった。
それぞれ、手に何かを持っている。
「あたい、夏は暑いからあんまりスキじゃないんだけど、でもこーやって食べるアイスは、すごく好き!」
「私も! なんていうか、これぞまさに夏! って感じがするよねぇ~」
そんな会話を交わしながら、真夏の日差しを一身に浴びつつ、額に爽やかな汗を浮かべて、美味しそうにアイスキャンデーを頬張っているチルノと大妖精の姿が、そこにあった。
「…………」
「…………」
うだるような暑い夏の日に、ガンガンに冷房が効いた部屋で、冬用のコートを着て火力全開の掘りごたつに肩まで入り、だくだくと汗を滴らせつつ、冷たいアイスキャンデーを頬張っていた私とアリスは、互いに顔を見合わせた。
「アリス」
「何も言わないで」
了
アイス食うかな
アホだこいつらw
他何か他所のネタあったかなぁ。誰か教えてくれい。
なら、私はアリスに習って鍋焼きうどニストの道を歩んで見せる!
……何?!冷房の下限温度が18℃だと?!
さりげなく挟み込んできて吹いたw
いや実際星屑と魔法少女なんですけれども魔理沙。
アリスが主に言ってたので吹いた。
それよりもアリス、二人前も食うつもりだったのか……?
今年はみんなが節電したから幻想入りしちゃったんですね…
スラムダンクの名台詞じゃないですかーやだー。
それにしてもこのアリス、都会派すぎんぜ。