学生の夏と言えば、レジャー、スポーツ、旅行、部活。
ちょっと背伸びしたい女の子を満足させてくれる冒険が盛りだくさん。
そんな私の、初めての怪談話は林間学校のことでした。
「えー、さなえっち、怖い話とくいなんだぁー」
「ちょっとはなしてみてよー」
「えー? 無理無理! そんなに怖い話とかしらないよ~」
「まぁまぁ! とりあえずでいいからさ」
「えへへ、じゃあちょっと話してみようか?」
女の子同士の、林間学校でのおしゃべり。
そして、この怪談話は私の土俵。
楽しくないわけがありませんでした
うれしくないわけがありませんでした
今は、私が主役なんだもん。
私は、ちょっと考えて怖い話をしてみます。
「キャアー♪」
「こわ~い」
・・・受けた・・・!
「じゃあ、次はみかこの番ね!」
「えー、私そんなのできないよ~」
「いいから、いいから」
私は林間学校を楽しく終えました。
終えたはずでした。
みんな、あんなに楽しそうだったのに・・・?
なんでなのかな?
「あ、みかこ? 今度の日曜なんだけどさ」
「あ・・・? ああ、早苗? ど、どうしたの・・?」
「ほら、テストも終わって、日曜から三連休じゃないの。 みきもつれてさ また今度どっかに泊まりに行かない?」
「え、ええ いいわねそれ」
「そうそう! また怪談とかしてさ!」
「・・・・」
「みかこ?」
「ごめん! 早苗! 私3連休家族で遊園地いく予定があってさ」
「あ、そうなんだ。 じゃあ、仕方ないか~」
「うん、ホント 御免ね?」
なぜか私の周りから友達が消えていきます・・・・。
なんで? 私、たくさん話しってるよ?
勉強も、がんばってるし、部活も頑張ってるじゃない?
夏休みは、決まって寂しくなった、何故か友達は私を避けた。
私の悲しい夏の思い出・・・。
*******************************
『仄暗い神社の奥から!『後編』』
私こと奇跡の現代神、 東風谷 早苗。
そんなわけで、順番で回ってきた私の番。
皆さん、座布団を抱えて私の話を震えながら聞いています。
「・・・そう、そして、その小さな女の子はそっと道の真ん中にある緑色の小さななにかを見つけたの・・・・」
「・・・・・・」
私の話は過峠まで迫ってきていました。
「ま、まさかそれって・・・・?」
ゴクリ・・・
息を呑む音、
痛いほどの静けさ
「「・・・・・・」」
あの咲夜さんや、アリスさんですら息を呑むほどのクライマックスです。
「そう、その道ばたには・・・!」
「・・・!」
「車に轢かれたカエルの死体が張り付いていたのよ!」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
頭を抱えて絶叫する咲夜さん。
ですが、恐怖はまだ終わりません。
「待って下さい! まだよ! 怖がるにはまだ早いわ!」
「・・・な・・・?!」
はあはあと苦しそうに泣きながら首まで真っ赤にする妹紅さん。
「そして、そのカエルを見つけた女の子は、その死んだカエルがかわいそうで、そっと近くの土に埋めてあげたの、だれにも見つからないように・・・・」
「・・・・そう・・・か」
魔理沙さんはとても悲しそうに、ぎゅっとスカートを握りしめました。
「ZZZZZZ」
萃香さんは怖がるどころか、起きる気配すら在りません。
私は、この恐怖に決着をつけねばなりません。
「そして、 何日か経って、 女の子はいつものように、帰り道を歩いていたの、丁度その車に轢かれたカエルを見つけた場所にさしかかったときだったわ・・・」
「ま・・・まさか・・・」
「その日は暑い日だった、 そして小さな女の子は見てしまったの!」
「!」
霊夢さんがひゅうっと息を呑むのがはっきりわかりました。
「そこには 車に轢かれ、無惨に干涸らびたカエルの死体がッッ!!」
「いやああああああああー!!」
「やめてぇえええー!」
半狂乱で、身を震わせながら、恐れおののく一同。
「・・・これは、不思議なある夏の通学路での話です・・・」
私はそっと、蝋燭を一本消した。
「いやぁ・・・・、怖かった・・・」
「全くですね・・・、正直もう、車が通る道が怖くて通れなくなりました」
「まぁ、全体の話の流れが合ってこそね」
「もしかして諏訪子に話したらさらに受けるんじゃない?」
「・・・いやまてよ、これ本当に怪談に分類して良いのかわからないぜ? ちょっと、その、奇妙って言うか・・・」
「ああ、百物語って怖くなくても、なんか不思議な話とかでもいいらしいわよ?」
「うーん・・・まぁ、さっきの咲夜の『恐怖! まな板の上の鯉!』に比べればそれほどでもなかったか?」
「ああん! 今度こそ一番と思ったのに!」
和気藹々と今までの怪談の寸評を始める皆さん。
ある、エライ神学者さんはこういったそうです。
常に瀟洒でいるためには、常に二位で居ること・・?
だっけ?
あまりに弱すぎては駄目だが、強すぎてもだめだとか。
私の話は、一番にはなれませんでしたが、しかしつまらなくも在りませんでした。
完璧な陣形です!
「あー、おしいな、今度こそ塗り替えと思ったけどなぁ」
「あーん、残念です~」
これで、次回のお泊まり会やお出かけ会の予約ゲットです。
「はいー 次は霊夢さんの番~」
「主催者なんだから、きついのお願いね」
「博麗の巫女ならさぞかし、霊験あらたかな話山ほど、谷ほど知っているだろうよ」
「それを身につけたくてこの百物語したんだけどね」
「よっ、 幻想郷一!」
「あ、よせよ妖夢。 蝋燭消えたらどうすんだ」
「・・・・すいません」
「ZZZZZ」
「それで、霊夢はどんな話するんだ?」
「そうね、 ・・・じゃあ、私は『はないちもんめ』を話すわ」
「はないちもんめ、って あの遊びのか?」
「かーって嬉しいはないちもんめ♪ ってやつですよね?」
「なんだそれ?」
「あれ? 魔理沙さん知らないのですか?」
と妖夢さんはかなり意外そう。
「ああ」
意外でした、 子供の頃はこれで絶対遊ぶものですけど。
魔理沙さんが「咲夜知ってた?」と解答のない咲夜さんに聞いています。
咲夜さんが「知ってるわ」と返します。
「ZZZZ」
たぶん、知ってるだろう萃香さんは、大の字になって寝ています。
今、気付きましたが、多分怪談話なんて全く怖くないんでしょうね。
「まぁ、魔理沙もこの話をきいて怖がるといいわ」
はないちもんめ、っていう歌はしってるわよね
子供なら、一度は遊んだことのあるみんな知ってる歌
「私は知らなかったぞ」
「魔理沙、ちゃちゃ入れないで」
魔理沙さんはなぜかふんぞり返って偉そうです。
話の頭を折られた霊夢さんはイヤそうな顔をしてます。
あー、 それで、この歌には秘密があるのよ
それを知るには、ある村の子供達が辿った運命、それについて話をしましょうか・・・
外の世界だと、子供達は綺麗な紙や、ガラス玉で遊ぶってよく聞くわね
まぁ、どこの世界でも、貧乏な子供達にとってはそんな綺麗なおもちゃなんて滅多にない宝物だったの
綺麗なおもちゃが手に入らない子供達は、しかたがないから自分たちで遊び道具を作って毎日遊んでいたわ
ある、幻想郷のはずれの村に、7人の子供達がいたの
子供達は毎日集まって、遊んでいたのだけど
一番小さい男の子が言ったわ
毎日おんなじ遊びばっかりじゃつまらない
そしたら、一番はしかい、女の子がいったの
しかたないわ、だって私たちは綺麗なガラス玉であそんだり、いろんな色の紙で折り紙なんてできないもの
聡い女の子は村が貧しいことをしっていた
けど他の子供達はそんなこと分からない、ちょっとしかない村のあそびに退屈していたのね
一番聡い女の子は子供達の面倒を見る立場だった
女の子は困ったわ
そしたら、聡い女の子と仲が良かった女の子がこう提案した
おとうさんやおかあさんに新しい遊びをきけばいいんだってね
「・・・で、それがその遊びってわけか?」
「・・・まぁ、そういうことね」
魔理沙さんは訳が分からないという感じですが、
・・・・何となく分かってきました。
わりかし、有名なはなしですものね。
これは、この話を知らない魔理沙さんの為のお話ですかね?
ちょっと妹紅さんに視線を流すと、こちらの意図に気付いたのか、すこし「くすっ」っと苦笑しています。
「魔理沙、 あんた割といいとこの家の育ちだったわね?」
「・・・そうか?」
「まぁ、そういえなくはないと思うわよ?」
咲夜さんが肯定しました、 話が分かりますね咲夜さん。
「そうかな?」
「そうよ」
魔理沙さんは「うーん」と唸ってから、エプロンを弄り始めました。
すこし、気まずいのでしょうか?
魔理沙さんは、自立してることに気負いがあるのでしょう。
「じゃあ、 魔理沙がこの歌を知らないのも無理はないかもね」
「え?」
「話を続けるわ」
一番はしかい女の子は、それを聞いて早速お母さんに遊技を教えてもらったの
おかあさんは、
じゃあ歌の遊技をおしえてあげる
といって、女の子に歌と遊び方を教えてあげたの
女の子は新しく覚えた歌をみんなに教えに行った
まず、3人と4人にわかれて、歌を歌うわ
そして、それぞれの組で一番大きな子供が進み出るの
霊夢さんが澄んだ声で一言歌った。
かーってうれしいはないちもんめ
まけーてうれしいはないちもんめ
じゃんけんぽん
「なにしてんだこいつら?」
「はないちもんめのルールはね、こうして代表が勝負事で勝つと負かした組の子供をみんなで相談して一人ずつ脱落させていくの」
「・・・そんで?」
「それで、どちらかの組が最後まで居なくなったらおしまいの遊びよ」
・・・・ああ、なるほど、話が分かりました。
「ふーん?」
魔理沙さんが肩をすくめます。
「続けるわね」
そうして、聡い女の子がえらんだのは、一番元気な男の子
男の子は仲間からはずれてしまって、いじけてどこかにいってしまったの
その翌日も、子供達ははないちもんめで遊んだの
じゃんけんで負けた組の子供を指名するときは、こうやって歌うの
あのこがほしい
あのこがほしい
そうやって選ばれた子供は、今度はわがままな女の子だったわ
その女の子は、元気な男の子と同じようにいじけて他の遊びを始めたの
明日も、明後日も、同じように子供達ははないちもんめで遊んだ
5人、4人、3人、 次第に子供の数は減っていったわ
魔理沙さんは怪訝な顔をしています。
周りの皆さんは、とっくに話が見えているみたいで魔理沙さんの様子をみて含み笑いです。
本当にしらないんですねぇ、この遊び。
そして、最後に、聡い女の子と、一番仲の良い女の子が残ったの
仲のいい女の子が言ったわ
きょうで遊ぶの最後だね
聡い女の子は言ったわ
一人じゃ遊べないものね
二人は歌い出した
かーってうれしいはないちもんめ
まけーてかなしいはないちもんめ
勝ったのは、聡い女の子の方
あのこがほしい
あのこがほしい
仲の良い女の子は悔しそうに
ああ、おしかった
っと呟いて、家の中に入っていったの
「・・・・」
ここまでくると、話を知らない魔理沙さんも勘付きはじめたようです。
暫くして、 貧乏だった聡い女の子の家は裕福になったの
もう、家の子供は聡い女の子一人しかいないわ
聡い女の子は前からほしかった、色紙や綺麗なガラス玉を買ってもらえるようになったわ
けど、女の子はいなくなってしまった自分の兄弟と遊んだほうがずっとたのしかった
女の子はとても寂しがったの
ね、魔理沙? はないちもんめ の意味って分かる?
「・・・いや・・・・」
はないちもんめは、 花一匁、 花一本のねだんが一匁
実は子供を売り買いする人買いが使うことばで、 子供の値段のことなの
「・・・・」
子供がたった一匁でしか買えなかった、悔しいなぁ
子供を一匁値引きできたぞ、うれしいなぁ って意味
はないちもんめは 自分でどの子供を人買いに売るか決められない親が、
子供達に自分達で決めさせようとするときの遊びなのよ
とうとう、 聡い女の子は、自分が子供達との、命の賭け事をして勝ったことは分からなかった
もしかして、その女の子は博打打ちの才能があったのかもね?
霊夢さんは、ちょっと軽薄そうに笑って見せた。
周りは「知ってた知ってた」みたいなノリでしたけど、初めて聞いた魔理沙さんにはちょっとショックがあったみたいです。
本気でこの歌が人買いの歌だって信じちゃったのかもしれませんね。
家が貧乏、たったそれだけのことなのにね?
霊夢さんが蝋燭を一本吹き消した。
「どぉ 魔理沙? あんた、あの家に生まれてきてよかったわねー はないちもんめ 知らなくて、良い人生だったじゃないの?」
「・・・え・・・・」
あ、本気で信じてますよ。
すごく、怖がってます魔理沙さん。
皆さん、それを見て思わず「ぷくく」と吹き出しそうになってます。
「あはははは!」
「プッ!・・・ちょっと! ま、魔理沙ったら! そんな、ねぇ?」
咲夜さんとアリスさんが大笑いし始めて、それを見た魔理沙さんがぎょっとした表情で
「お、お前ら!? しょ、正気かよ? ひ、人買いなんだぞ?! 親が子供売ったんだぞ?!」
と、半場涙目で抗議を始めました。
魔理沙さん、真に受けちゃって純心ですね♪
「お、お前らだって知ってたんだろ、はないちもんめ! ひ、ひどいだろ!」
「あー、魔理沙、これほとんど嘘だからね?」
「え」
そうこうして、魔理沙さんの誤解を解いておくこと暫し。
魔理沙さんの意外な一面もみれて楽しかったです。
ようやく、魔理沙さんが気を取り直し、
「よっし、次は私の番だな!」
と元気よく腕まくり。
ちょっと佇まいを直して、正座してきりりと眉を上げました。
こういう所に、なんだか育ちの良さを、ふと思わせます。
「魔理沙は何話すのよ?」
「うん、何せこの恋の魔法使い魔理沙様! やるとしたら恋の話だぜ!」
「あんた馬鹿?」
「え?」
きょとんとしないで下さい、魔理沙さん。
「魔理沙さん、一応は怪談話なんですからちょっと気味悪い話とかにしましょうよー」
「そうか?」
「私たちは怪談話してきてんの、 ちゃんと気味悪い話とか、怖い話とか、不思議な体験とかあるでしょ?」
「・・・まぁ、あるけど・・・面白いかどうかわからないぜ?」
魔理沙さんは、「えーと、たしかあれは・・・」と首をひねりながら話し始めました。
「これは、私が、自分の魔法の研究をしていた時に起こったんだ」
わたしは、その朝は森にでかけて朝飯になる茸を拾いにいっていたんだ
そんで、まぁお目当ての茸をいくつかひろって、朝飯にするために家に帰ったんだよ
「魔法の実験してたんじゃないの?」
「馬鹿、話はこれからだよ」
珍しく虚仮にされた咲夜さんは「むぅ」と唸ります。
お猪口口がかわいいです、
あとで食べたい
「でだ、その奇妙な話ってのはこれからなんだが」
魔理沙さんは真剣な顔つきに変わりました。
一同は「お?」と変わった雰囲気にちょっと驚きます。
拾った茸で奇妙なことってなんでしょう?
それでだ、そのいくつか拾った茸を調べると、まぁ食えそうにないモノもあるわけだ
そういうのは、ただ捨てちまうのももったいないからな。 魔法の触媒にできないか色々試すんだ
「ああ、そういや八卦路の燃料にしてるとかだったわよね」
「ああ、そういうことだぜ」
それでだ、そんな茸をあつめて適当に栽培してると希に凄く珍しい茸が出来ることがあるんだ
その、煮ても焼いても食えない茸達なんだが・・・・
わたしが、触媒室で調べてたら、凄い茸が出来てるのを発見したんだよ
なんとその茸、食べても凄く旨い、ちょっとだけなのにすぐ満腹になって・・・・しかも、もの凄く燃費が良くてパワーのある魔法の燃料に出来ることが分かったんだ
「いつも思うんだけど、あんたそんな訳の分からないものよく口に出来るわね? いつか死ぬんじゃないの?」
「大丈夫だって! 解毒の茸はあるからな!」
魔理沙さんは「本当にやばかったら竹林いけばいいし」と付け加え、その様子を霊夢さんは「はぁ」と呆れた感じで肩をすくめます。
私も、小学校の頃は「買い食い、拾い食いは駄目」ってよくいわれたなぁ・・・。
実際、魔理沙さんの家に踏み込むのはちょっと気が引ける気がします。 何かのきっかけで爆発しそう。
交友的な問題じゃなく、あくまで保身的意味で、ですけど・・・。
あ、それなら博霊神社も同じですか。
「それでだ、この茸の凄いところはそんなんじゃ無いんだ、もっと凄い性質を持ってたんだよ」
それで、さっそく私はその茸を使って魔法の研究をやり始めたんだ、けど茸は有限だし、あっというまになくなっちまう
まぁ、偶然出来た茸だから、大抵はまた触媒室で偶然できるのを待つんだ
ところがだ、 私が翌日研究の途中だったその凄い茸・・・・
・・・・・そうだなこれからはその茸を『スーパー茸』と仮称するぜ?
そのスーパー茸、どういうわけか机にのっけておいたのは一つのはずだったのになぜか3つに増えてたんだよ
「・・・えーと、つまり・・・?」
妹紅さんが「話がみえない」と言いたげに首をひねります。
私もオチが見えてこないです。
まぁ、たしかに変な話ですけど・・・。
「話は最後まで聞くもんだぜ?」
その、いつの間にか3つに増えた茸、私は最初はただの勘違いで最初から机に3つあったもんだと思っていたんだが、
さらに翌日になると、その茸は9個に増えていたんだ
そう! その茸は急速に生長して数を増やす生態を持った茸だったんだ
私はそれに気付いたとき心が躍ったよ、世紀の発見てやつだ、なにせ魔法の燃料にしてもなかなか消えない上に、凄いパワーがでる! さらに旨くてすぐ満腹になる茸が無尽蔵に手に入るようになったんだ
これを使えば、魔法の研究が凄く進むはずだったし、私はスーパー茸を養殖して増やすことに決めたんだ
養殖は簡単だった、 なにせそこらの枯れ木の近くにおいとくだけで、明日には一つが20個以上は増えた、
私は思う存分、スーパー茸をつかって魔法の研究に打ち込んださ
「・・・・あれ? ちょっと待って、 その茸・・・凄く早く増えたのよね?」
「ああ」
「それって・・・、その茸の消費が追いつかなくなったらどうするの? 確か、燃費が良くて、しかもちょっと食べちゃうだけで満腹になっちゃうんでしょ?」
・・・・あ・・・れ・・・・?
アリスさんの投じた一投の石は、私の心に大きな波紋を広げることになりました。
みんなも「そういえば、そうだな」とあごに手をあてて、考え始めました。
「・・・まさに、問題はそこにあったんだ」
魔理沙さんは「話をつづけるぜ?」とぶるっと躯を震わせ、青ざめた顔で話を切り出しました。
わたしが、それに気付いたのは茸を見つけてから4日目のことだった
わたしが、寝る前になって風呂に入ろうと、風呂を覗いたときだったぜ・・・
私はそのときになって、はじめて自分が何を作っているか、認識することが出来たんだ
風呂場の浴槽にはその『スーパー茸』がところせましと敷き詰めるように生えていたんだ・・・
・・・うわぁ・・・、気味悪ぃ・・・・、新手の怪談にしても内容が奇抜過ぎます・・・・。
一同は「うわぁ・・・・」と若干身を引いてこの怪奇談を聞いています。
私はそのときになって漸く自分の失敗に気付いたんだ、慌てて栽培室を調べると、もうほとんど「スーパー茸」の塊が部屋を埋め尽くしているようにしかみえなかったぜ・・・・
「じゃあ、八卦路で焼いちゃえば良いんじゃない?」
「ああ、私もはじめにそれを試したさ・・・」
魔理沙さんは「だが、無駄な努力だったぜ・・・」と沈痛な面持ちで話をつづけます。
そう、その通り私は緊急処置として八卦路で茸を焼いてしまおうと考えたんだ
まぁさっき言ったとおり、よく燃料になる茸だからな、一遍にたくさんの茸に点火すると爆発したみたいな気焔が上がるんだよ
私も家は火事にしたくないし、 下手に外に持ち出して燃やすと森が火事になっちまうだろ?
しかたなしに私が安全に燃やし尽くせるだけの量を燃やしはするんだけど・・・
明日になったらその量の10倍くらいの量がまた増えて居るんだ・・・・
9が30に・・・30が90に、 そして90が500に・・・・スーパ茸は恐ろしいスピードで繁殖を続けていったんだ
このまま、もしほうっておいたらスーパー茸は無限に増え続けてしまうかもしれない・・・
「い・・・、意外に怖くなってきたわね・・・・」
アリスさんが頬を轢くつかせて、事の成り行きを気にし始めます。
そのとき既に茸は家を埋め尽くしててな、もう私も一人じゃどうしようもないと思ったんだ
そこで私は香霖に相談して、このスーパー茸をどうすればいいか相談しにいったんだ。
香霖がスーパー茸を紫に相談したらしいんだが、 紫の話に依れば
スーパー茸が幻想郷を埋め尽くすのは『一年と三十日後』 だって話になったんだ・・・・
「ええ!?」
「マジで!? 茸が? 幻想郷を滅ぼしちゃうの?!」
「ま、魔理沙さんはどうやってそのスーパー茸を退治したのですか!?」
茸を退治って・・・・
幻想郷が茸の里になる・・・・・?
ぞっとしません。
ああ、そこで、紫のとっさの機転でスーパー茸をスキマを使って外の世界に送り出すことにしたんだ
とりあえず、そのスーパー茸が幻想郷を滅ぼしてしまうことは回避された・・・・
けど、今もスーパー茸はどこかでその数を増やし続けてる、
外の世界もいつの日かスーパー茸で埋め尽くされてしまうかもしれない
外の世界は幻想郷に繋がってるらしい、 外の世界で満杯になったスーパー茸はいつの日にか幻想郷までやってくるかもしれないんだ・・・・
紫が計算したらしいけど、その日はそんなに遠くないらしいぜ・・・?
魔理沙さんがふっと蝋燭を吹き消した。
「「「「「・・・・・・」」」」」」
『んな馬鹿な』とでも言いたげに皆さんぽかんとしています。
け、けどこの話が本当なら、いつか幻想郷がスーパー茸に滅ぼされるかもってことですよね・・・?
「・・・・そういえば、 てゐが変な茸喰って、 「腹がつっぱって死にそう」とか言ってたな・・・・」
なにか不吉な話を妹紅さんがしていますが、 あえて皆さんはなにもいいませんでした。
「なおらないから、医者が腹を開けて取り出したら「美味しそうな茸ね」とかいってうどんげに食わしてた」
酷っ!?
「おーい、萃香、次はおまえだぜ? 起きろー」
「にゃ!?」
「あんた、こんな酒かっくらって、神社の酒だと思って容赦ないわね」
萃香さんは順番が来るととりあえずは起きるのですが、気持ちよさそうに話すので、あまり雰囲気は怖くありません。
というか、酔っているせいか、全体的に話が見えないことがかなり多いです。
「うー・・」
「なぁ、大丈夫かよ?」
「よっし!!」
突然飛び起きた萃香さん
様子をのぞき込んでいた妖夢さんの顔面に頭がごちんと当たりました。
「むぐぅ・・・!!」
大分酔って居るみたいでした。
「うーん、そうだねぇー・・・」
ぽりぽり頭を掻きながら、頭を気持ちよさそうにゆらゆら揺らして腕を組んで考え込んでいます。
見た目が小さいのでかわいいです。
抱きしめて寝たい。
「うんっ、おもついたよっ!」
「おー、いけいけ」
「いっちょ、頼むわ」
「鬼が百物語に参加するなんて、妙な話よね」
「それでいうと、アリスは妖怪だな」
「それなら、私は半霊半人ですね」
「あっそ、よかったわね」
「・・・・はい」
「きゃ~、いやぁ~」
「苦しい、絞めるな」
「よーし! こんどこそとっておきをはなしてやるかぃ!」
萃香さんはぐびりと喉をならしてお酒をあおります。
人ってもんはさお化け、物の化をおっかないっておもってるもんだが
それでも何でこうやって惹かれちまうのかねぇ?
こいつは、おっかないものけに惹かれちまった、人間のはなしさ
あるところに、一人の可愛い男の子がいたのさ
その男の子は、結構な美男でね、毎日女の子に言い寄られていたんだ
そんな男の子は、心苦しいとは思いながらも、 女の子達の申しを断っていた
男の子は寺のお坊さんの弟子だったのさ
お寺のお坊さんは修行のために女人を寄せ付けちゃいけないからねぇ
それを、遠くからおっかないもののけが見ていたんだ
おっかない妖怪は、実は美男な男の子の人気をねたんでいたのさ
もののけはその可愛い男の子をみて、 一つ悪巧みを考えた
あの美男な男は、 坊主のくせに女を寄せ付けて生意気だ、
よぅし あの糞生意気な男をさらって醜い化け物にしてしまおう
そうすれば、あの男はもう女にいいよられることもないだろう
「はぁ、 リア充爆発しろってことですかね?」
「りあじゅう?」
萃香さんがきょとんとしています。
「あ、 ごめんなさい。 何でも無いです」
私としたことが、『リア充爆発』なんて、 はしたない言葉を使ってしまいました。
失敗 失敗♪
「まぁ、 なんとも器量の狭い妖怪ね」
アリスさんが愉快そうに笑っています。
「萃香とは真逆の性格ね」
「そりゃまた、おっかねぇ妖怪だな」
萃香さんの明るい語り口調で、 それなりに怖いかもしれない話も あまり怖く感じません。
本人が怪談を怖いと思っていないせいなのでしょうかね?
「・・・・あはは! そうかい、そうかい!」
萃香さんは爆笑してから「話をつづけるよ~」とぐびりとひょうたんを傾けます。
そんなある日、 男の子が境内を掃除していると、 後ろから誰か自分を覗いていることに気付いたんだ
男の子が後ろを見ると、 知らない女の子が自分を見つめてたのさ
もちろん、その女の子は、さっきのおっかないもののけさ
もののけは、じぶんがとびっきりの美人に化けて、男を寺の外に連れ出そうとしたってわけだ
寺の中じゃ、 もののけもおいそれとは手出しができないからねぇ
その男の子は、
あぁ、もしかして、あの女の子は、また他の女の子と同じように僕をさそいに来たのかもしれない
と考えたわけさね
「そいつ、なんかむかつくな」
「確かに、ちょっと、女を馬鹿にしてる気がするわね」
と魔理沙さんと霊夢さんが憮然とした顔で酷評してます。
「まぁ、それだけいい男だったんだよ」
萃香さんが「まぁまぁ」と話が進まないのを嫌ってか、言い訳をします。
それで化けたもののけは男をなんとか巧みに外に誘い出して攫おうとするんだけど、男は寺の修行のこともあってかのらりくらりと誘いを断り続けたんだ
妖怪は困ってしまった、 こいつはこのままじゃ攫うことができない
そこで、妖怪は別のモノをちらつかせて外に誘い出すことにしたんだ
そんで、そのもののけは、いつもみたいにその男に会いに行って、
こういったんだよ
あなたの母が、 寺に捨ててしまった貴方にどうしても会いたいといっております
せめて、会って話をしてくれませんか?
それは、もののけの嘘さ、 けど寺に捨てられた男の子には 母親はどうしても会いたい相手でもあったのさ
それを聞いた男の子は、 今まで会いたい一心だった母親の事を思い出して、 寺をこっそり下っていった
鬼は、 その男の子の母親に化けて男の子を油断させ、攫ってしまおうと考えたんだ
男の子は果たして鬼が化けた母親の家の前にやって来た
もののけはこう思った
しめしめ、馬鹿なやつめ、 これでお前を攫うことができる
だけど男の子はいつまでも家の中に入ってこない
もののけは不思議に思って、 母親のふりをした声でいったのさ
わたしのまなや、 なぜ母にかおをみせてくれんのか はやく入っておいで
だけど、寺の立派な坊主の弟子は母親と思う、化けたもののけにこういったのさ
おかあさん、 わたしもいつかおかあさんに会いたいと思っていました けど、私は仏道に入って俗世を捨てております
こうして、禁を破って里に下りてしまいましたが、 私はやはり貴女にあうわけにはいきません
こうして声をきけただけでも 満足です
男の子は寺にもどってしまったのさ、立派な男の子は鬼の悪巧みには引っかからなかったんだ
鬼は、 これではいかんと思って、 次の悪巧みをしたんだ
鬼はまた美人の姿に化け、
またいつもみたいにやってきて、
男の子に嘘の話をしたのさ
お坊さん、お坊さん、 実はお話があります
あなたと添い遂げられないことを苦にした女人がたくさんいます
男の子は、仏道の人間だからね、 もともと無理な話さ。 だけど、慈悲深い男の子を騙すために鬼はさらに嘘をついたのさ
その女人のなかに、それが苦しくて、 自ら死んだ女がおります
それが書いた、貴方への恋心をつづった文があります
せめて、それをよんではくれませぬか?
男の子は、 自分のことで女が知らぬ間に死んでいたことに凄く悲しんだ、
かわいそうにと思って、 男の子は鬼の作った、 のろいのかかった文をよんじまったのさ
それを読んだ、男の子は、文から吹き出した煙をすいこんで、 瞬く間に鬼になっちまった
「酷いな、それ」
「滅茶苦茶するわね、そいつ。 なんか恨みでもあったの?」
妹紅さんもアリスさんも人外の人ですが、 あまりそういうこともしなさそうですし、あまり人に酷いことをした経験がなさそうです。
鬼になっちまった男は、そのおっかない鬼と一緒になって、 人間を襲ったり、 色んな悪さをするようになったんだがね
暫くたって、 その男はある寺の強い坊さんに退治されちまったんだよ、 これが
おっかない鬼はその強い坊さんにびびって、一人にげだしちまったんだ
「うえぇ・・・」
「勧善懲悪もなし?」
霊夢さんがしまらないオチに不満げのようです。
確かに、あんまりオチがぴんとこない話に感じます。
てなわけさね、 あんまりもののけには、 かかわらないほうが良いってことかねぇ
萃香さんは、 蝋燭を吹き消した。
「・・・それでおしまい?」
霊夢さんが、なぜか他と違って、神妙な顔で萃香さんの顔をのぞき込んでいます。
「うん」
「それって、 聞いた話かなにかかしら?」
「うん、 聞いたはなしだよ、 仲間がよく聞いてたんでね、 話してみようと思ったのさ」
どうやら、そのもののけさんは、 昔に居たらしいものけさんのようです。
「まったく、 男の嫉妬てのは見苦しいものですね! 我々女を少しは見習ってほしいモノです!」
妖夢さんが鼻息荒く、 策を弄したもののけさんを非難しています。
まぁ、 そんなもんなんですかね? 男の人の嫉妬って?
女の私たちにはちょっと想像できませんが。
「結論、 男の嫉妬は見苦しい♪」
一座がどっと湧きます。
女の子同士の別性の非難話なんか結構ざらです♪
「あはは! じゃあ、妖怪だけじゃなくて、男にも気をつけないとね!」
萃香さんが爆笑してます。
そんな愉快な話ですかね?
そして。とんでもなく強い酒をあおってまた 、ぐったりと、 横になりました。
「そういえば、霖之助さんも半分妖怪よね? 魔理沙、貴女大丈夫かしら?」
「ああ、霖之助はそんな色香ないから、 心配しなくても大丈夫だぜ」
そうですかね? 結構かっこいいから、 ねらってる人多そうですけど?
「そうよ! 魔理沙は男になんか靡かないわ!」
「なんでそうなるんだ?」
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暫く、 そんな怪談話を続けて、 そろそろ100になるかならないかまで、話が進んだ。
「よーし! 99話おしまい!」
妹紅が一息で蝋燭を消した。
「よし 次は早苗の番だぜ」
外は、咲夜が時間を操っているせいか、まだ明ける様子がない。
「百物語、 最後のトリは早苗ね」
「ちゃんと、きめろよ~」
「百話目には何かが起きるっていうけど・・・・、 何なのかしらね?」
「ですが、 もう鬼やら妖怪やら、不死身の人がいますしね・・・」
「それ言えてる♪ 別に何が起きても怖いモノなしって感じよね~」
各々は、 百物語の性質をよくよく理解していた。
百の怪談がおわると、 最後の蝋燭が消えて、 真の闇に誘われた真の怪が現れる。
これが、百物語の結末だ。
実際は、一晩にそれだけの話を終えるのは難しいのだが、咲夜の時間を操る能力で、それ自体は簡単な事。
百の物語を終えて怪物が出てきたとしても、 彼女たちの前では何ら意味のないものだろう、
そう思われた。
「では、 私がトリですね」
早苗が、ちょっと佇まいを直して、 「ふぅ」と少し緊張したのか顔をこわばらせている。
「では、私は、百物語の最後にふさわしい話を知っています」
「おお!」
「いいわよー早苗」
「雰囲気出てるじゃん!」
「決めなさい~」
「ZZZZ」
「きゃー、 こわーい」
「どけ」
早苗は、ぽつりぽつりと話を切り出し始めた。
これは、 百物語をした、 百物語にとらわれてしまった女の子達のお話よ・・・・
「お、 なんだ、 私たちをびびらせようってか?」
「良い感じね早苗♪」
霊夢と魔理沙は「我に怖いものなし」と言わんばかりにけろりとしている。
あれは、 こんな更けた夜の、 小雨が心地良い夜のことでした・・・・
「・・・・ん」
天井のうえから、何かを叩く音がする、
妹紅がふと上を見上げる。
小雨が屋根を叩く音だった。
「・・・・」
妖夢が少し、少しだけ不安そうな顔をする。
女の子たちは、 とってもなかのいい友達です
女の子達はそれぞれに仲良くなりたいと思っていました
そんなある日、 一人の女の子が考えました
そうだ! みんなを呼んで百物語をしよう
「あはっ 霊夢の事よ♪」
「えー」
咲夜と霊夢は面白そうにケタケタ笑っている。
早苗はそれを聞いてにこっと笑った。
その場に居るモノは即座に理解した。
これは、今日のダイジェストだ。
「(ま、 わるくは無いな)」
妹紅はこの話がオチとしては悪くなさそうだと感じた、 早苗にしては良いアイディアだと思う。
女の子は、特に仲のいい帽子をかぶった女の子に相談しました
私だけじゃ、恥ずかしいから、 みんなをさそってよ
帽子をかぶった女の子はたのみとあらばと、ほかの女の子をさそいにでかけました
「ははっ! おい霊夢は私と一番仲がいいんだよな♪」
「何はなしてんのよ早苗、 こっぱずかしい! 恥ずかしくなんて無かったわよ!」
早苗はまたにこっと笑って、話を続けた。
アリスがその様子をみてギリギリと歯を食いしばっていた。
集まったのは、8人の女の子、 みんなそれぞれに話を持ち寄って、100話の完成をめざします
まず、最初は、おかっぱ頭の真面目な女の子の番です
おかっぱ頭の女の子は、 実は呼ばれた事がとっても嬉しくて、 たくさん話をご主人様に教わっていました
妖夢が頭を照れ隠しでかきかき、恥ずかしそうに俯いている。
まわりもニヤニヤとその様子をみる、 一見、妹を見るように優しげな光景のようにも思えた。
ですが、女の子は真面目な性格が災いして、 うまくお話をしゃべれません
おかっぱ頭の女の子はちょっと悔しくなりましたが、周りの女の子は、そんなおかっぱ頭の女の子をかわいいと思いました
さらに、にやにやな視線が飛び交った、妖夢はさらに真っ赤になって俯いた。
次は、 人形好きな女の子の番です
人形好きの女の子は、 仲良くしたい女の子がおさそいにきたので快く百物語に参加しました
アリスは「うへへェ・・・」とだらけた頬を、魔理沙によせてにへらにへらろ笑っている。
「暑い、ちょっとどいてくれ」
「だって、こわいんだもん♪」
人形が好きな女の子は、 たくさん怖い人形のお話をしっていましたので、 みんなを上手に怖がらせることができました。
次は、 給仕のお仕事をしている銀髪の女の子です
メイドの女の子は、 百物語のことをご主人様に伝えたのですが、 最初はお仕事がおそくなるからと断られてしまいます
「・・・・」
咲夜が怪訝な顔をした。
咲夜がやっとのことで暇をもらったのは誰にも言っていないはずだ・・・。
ですが、それをきいていたご主人様の妹さんがそれを聞いていて、 お姉さんに銀髪の女の子にお休みをくれるように頼んでくれました。
女の子は、 なんとか女の子達と一緒に遊ぶことが出来ました。
「咲夜、そうなの?」
「え、ええ。 フランドール様が特別にね・・・」
「へ~、 あいつ良いとこあるじゃんか」
銀髪の女の子は、怪談をたくさんは知っていませんでしたが、 自分の怖い体験をたくさんはなして上手くみんなを怖がらせることが出来ました
「・・・・」
咲夜は、少しだけ、不思議に感じ始めていた。
今の早苗は、 ・・・・なにか おかしい気がする
次は、 紅いズボンがお気に入りの女の子の番です
「ズボンじゃない もんぺだ」
「どっちだって同じよ」
早苗が「あれれ」と表情を崩して、話を続けた。
そう! あかいもんぺがお気に入りの女の子は、 みんなよりもお姉さんだったので、たくさんお話を知っていました。
上手くそれを話して、みんなを怖がらせることが出来ました。
妹紅は「ふんっ」と得意げそうに、 ちょっと恥ずかしそうに鼻を鳴らした。
早苗はそれをみて くすり とわらう。
次は、 最近引っ越しをしてきた女の子です
引っ越ししてきたばかりの女の子は呼ばれたことがとっても嬉しくて、 たくさんお話を考えて来ました・・・
早苗がちょっと、様子をうかがうように周りのみんなを伺った。
「早苗の話もなかなかのモノだったわよ」
「ええ、おもしろかったわ」
「そうそう、 特にカエルの話とかな!」
「・・・なぁ、あれってやっぱ今考えると変じゃないか?」
「ZZZZZ」
「素晴らしい、お話でした!」
「はいはい、 ずいぶん楽しませてもらったわよ」
それぞれに早苗の評価をした。
早苗は嬉しそうにそれを聞いて笑った。
女の子は自分のお話がつまらないかもしれないと不安でしたが、 女の子達が楽しく聞いてくれたのでとっても嬉しくて一安心です!
早苗が照れて「えへへ」と笑った。
次は、 百物語のいいだしっぺの女の子、
女の子は神社の巫女様ですので、霊験あらたかなお話をたくさん知っています
みんなを上手く怖がらせて、 もっとみんなと仲良くなれました
霊夢は「やれやれ」と肩をすくめた。
魔理沙が肘でこづいてそれを冷やかした。
その次は、 帽子をかぶった女の子です
女の子は恋に夢中ですので、 好きな人の話してくれたお話を元にしてなんとかお話を考えました
「え」
「あ、あれってあの人の話だったの?」
「や、いや・・・」
「別に否定しなくてもいいわよ」
みんなにからかわれながらも 帽子をかぶった女の子はなんとか全部のお話を語り終えました
次は、・・・・・・
早苗がねむりこける萃香をじっと凝視した。
次は、 ねんがら年中お酒ばかりのんでいる女の子です
お酒の好きな女の子は、 けっこうなお姉さんだったので、人よりたくさんの経験をしていますから、お話に事欠きません
上手に全てのお話をしてしまいました。
「・・・・?」
咲夜はふと、今まで自分の持っていた疑問の正体が分かった。
この話は、 ちょっと、 そう、 話が少しだけ多いのだ。
そして、とうとう、100話目、 女の子は100話目のお話を語り終えます・・・・
早苗が100話目のダイジェストにさしかかった。
そうだ! 今この場にいる人数は8人だ、 だとすれば100話目に早苗に順番が回ってくるはずが無い。
咲夜は簡単な順列の数式を頭の中で考えた。
この百物語の話は、 妹紅で、さっきの話で100話目を終えているはずなのだ。
100/8= 12×8+4
つまり単純に考えても、 100話目にくる人間は話の4番目の妹紅でなくてはならない。
話の順番は、妖夢、アリス、咲夜、妹紅、早苗、霊夢、魔理沙、萃香の順だ。
つまり、今早苗は実は101番目の話を知らずに100話目と思って話している。
早苗は話の結末を語り始めた。
皆さんは知っていますか?
100話目を終えた、百物語の本当の結末を?
「ああ、 最後に本当の妖怪がでてくるんだろ?」
魔理沙がしたりと自分の知識を話し始める。
いえいえ、 それは実は少しちがうんです、 本当の結末は少しだけ違います・・・
「え?」
「知らないな、そんな話」
アリスと、魔理沙がぽかんとした表情で問うてきた。
早苗はうっすらと笑みをうかべて
にやりと笑った
そうです! そこで話を聞いていた、銀髪の賢い女の子は気付きました!
「・・・!」
早苗が不気味に笑って、咲夜を流し見た。
咲夜は背筋に冷たいモノが走るのを感じた。
「え?」
「なに?」
とたん、視線が咲夜に集中した。
「・・・・じつは・・・この話、 100話目じゃないのよ・・・・」
「えっ?」
「・・・あっ!」
霊夢は一瞬逡巡したが、 どうやら咲夜の考えに至ったらしく、気づきの声を上げた。
「え? どういうこと?」
妹紅はわけがわからないらしく、頭を抱えている。
「・・・・つまり、 順番に話を続けていったら、 100話目にくるのは妹紅さんのはずなんです・・・」
妖夢もすぐに理解したらしく、妹紅に説明を付け足す。
「へー・・・」
「・・・・そう、そうなのよね、 つまり今話しているのは101話目ってことになるわ・・・・」
早苗はにこっと笑って見せた。
本当は、もう終わっているはずの怪談ですが、 あわてん坊の帽子をかぶった女の子は、お店のお兄さんの言いつけを聞かずに慌てて飛び出してしまったので、100本でいいのに101本の蝋燭を持ってきてしまったのです
「あちゃー・・・」
「え、じゃあ百物語は失敗って事?」
「・・・・いえ、 多分成功・・・・な・・・のよ・・・」
咲夜が少し青ざめていた。
「なんで? なにも起こって無いじゃない」
「・・・知りすぎてるのよ・・・・」
アリスが至極当然の事を言うが、 咲夜はあえてそれを否定した。
「早苗・・・、いえ、誰にも言ってないけど、私がお暇をいただいた経緯は此処にいる誰にも話してないはずよ」
「それが何だってんだよ?」
「あと・・・、 さっき早苗が、実はこの話が101話目ってことに一番早く気付いたのが私って事も分かってたみたいね?」
全ての視線が今度は早苗に集中した。
「早苗? どうやってそれを知ったの?」
「・・・・」
確かに、 咲夜が、誰にも言っていないのに早苗はそれを最初からわかっているかのように当てて見せた。
咲夜が暇を特別にもらった経緯は、レミリアとフランドール以外は紅魔館でも他のだれも知らないはずだ。
早苗はにこにことしたまま、何も答えない。
「そ、そういえば私が 幽々子様に 前もってお話していたのも・・・!」
妖夢が驚きを隠さずに言った。
「・・・・早苗お前・・・・」
「話を続けますね」
そうして101話目のお話が始まると、 辺りの天気が急に悪くなります
ごうごう、ごうごう、強い風が吹き始めました・・・
早苗が語り出すと、
「・・・・・」
戸を叩くように、 強く強く、 辺りに風が吹き出し始めた。
会場の空気が変わった。
あたりの天気は急に悪くなってざあざあ雨も降り出しました
これではとても外に出ることは出来ないでしょう
早苗がそう宣言すると、 早苗の言葉を待っていたかのように、
大雨が降り出した。
「・・・・これは・・・・」
「・・・ぐ、偶然て凄いですね・・・・」
「・・・・」
百物語、最後の秘密は、 誰もしらない事です
ですが、 本当の百物語の結末は、本当はこんなお話です
100話目を終えた百物語の席に、最後に本当の怪が現れて、 101話目のお話をします、
そして、その101話目のお話が語り終えられると
その話が現実のものになると言うお話です
「・・・・」「・・・・」「・・・・・」「・・・・」「・・・・」「・・・・・」「ZZZZ」
そして、知らぬ内の101話目
お引っ越しをしてきた、女の子のお話が始まりました・・・
女の子は、 実はとっても寂しがりや、 いつもお友達をほしがって、お友達を集めてお話をしていました。
お引っ越しする前のお友達とも、たくさん怪談話をしていたの
今回集まった、女の子達とお話ししていて、とっても楽しかった女の子は、
こんな風に願いました
「このまま、明けない夜の中で、ずっと永遠にお話が出来ればいいのに・・・・」
早苗がくすくすと含み笑いをした。
「・・・!」
霊夢があまりの不気味さにとっさに袖の札を手に握った。
「あまりに、怖いお話に思わず、リボンをした女の子は立ち上がってしまいますが・・・・」
霊夢は、座布団から立ち上がり、 とっさに札を投げる体勢に入った・・・・
「しかし、突然の隙間かぜによろけてしまいます」
ばぁん!!
あまりの突風に耐えられなかったのか、神社の戸がはずれてしまう。
霊夢はそれに驚いて、手を止めてしまった。
「ッ・・・!」
「あ、霊夢さん! 立たないで下さいよ~、 ここに来てちょんぼはなしですよ! せっかく100話目にきたのに~」
「・・・・」
「100話終わったら何が出るのか見たくないですか?」
一同は顔面蒼白、 霊夢は震える手を押さえて、ゆっくりと座に戻ってしまった。
辺りは、雨の音と、ごうごう鳴る風の音でいっぱいだった。
魔理沙は必死に蝋燭の数を数え始めた。
「ほ・・・ほんとに・・・101本ある・・・!」
「・・・ま、魔理沙!」
そして、引っ越ししてきた女の子の、お話もそろそろおしまいです
女の子たちは、自分たちが、これからこの狭い、狭い家のなかでずぅっと、怪談話をしなければならないということをまだ知りませんでした
明けない夜のままで、 暗い暗い、雨の中で永遠に怪談話をするのです
「ヒッ!」
「・・・さ、早苗!」
女の子は、そっと蝋燭を、消しました
暗闇の中で、 女の子達は誰も知らないままに、怖い話をし続けるのです・・・・
永遠に・・・!
その場に居るほとんどの人間が、自分たちの、 哀れな未来の話を聞いて震えていた。
いつもは気丈に振る舞う者も、永遠を生きる人間も、妖怪も、
一様に永遠の闇を怖がった。
彼女たちの精神は限界だった。
今すぐにあの扉から逃げ出したい・・・!
これは、 本当の百物語を知らずに、百物語をしてしまった、女の子達の悲しいお話です・・・・
戸をはずした突風が神社の中まで入ってきた。
その突風が蝋燭の最後の火を吹き消した。
その瞬間、 豪雨に誘われて、
がぁん!!
轟音とともに雷が神社を照らした。
雷鳴に照らされて、
早苗の一瞬見えたゆがんだ笑み。
それきり、彼女達の目の前は、真の闇につつまれた。
「「「「「「きゃあああああああああああああああああああ!!!」」」」」」
*************************************
「・・・フ」
・・・・ふっ、決まった・・・!
途中で思いついた話でしたが、これ、完璧じゃありません?
にやにやが止まりません!
自分の話に自ら笑ってしまうとは、要注意ですね・・・。
私の番がじつは101話目で在ることを利用した、まさに完全犯罪!
偶然の賜物、 傑作です!
魔理沙さんもおっちょこちょいです。
まぁ、妹紅さんの100話終えたところで期待はちょびっとはあったのですが、鬼やら妖怪やら不死身さんがいるので、期待通りというかなんというか・・・・。
なんにも起きませんでしたね!
咲夜さんも勘がいいので、すぐに気付いてフォーローしてくれたし。
適当に話をでっちあげたけど、割とあたるものですね、そんなに真剣に考えなくてもいいのに♪
残念ながら、蝋燭が全部消えてしまっているので、皆さんの顔をすぐに見ることは出来ませんが、
早苗お姉さんのひねりだした(?)渾身の怪談話、 最高に受けたようです!
「ふふ、みなさん『きゃああああ♪』ですって♪ 楽しんでもらえてなによりです~」
私は、勝利を確信しながらも、妹紅さんに声をかけます。
「妹紅さん~、 火つけてくださいよ~」
・・・あれ? 返事がありませんね?
あまりの怖さにしゃべれませんか・・・ふふふ♪
しかし、こうしていても皆さんのご尊顔が拝見できません。
仕方なしに、私はそろりそろりと誰かの足を踏まないように提灯の明かりをつけるために歩いていきます。
あれ? なんか、だれの息づかいもきこえないなぁ・・・?
ぼぅ、と明かりを行灯につけます。
「あれ?」
「ZZZZ」
誰もいません。
いやまぁ、一人は熟睡してますけど。
もしかしたら、単にお酒の酔いじゃなくて眠かっただけなのかもしれません。
周りの行灯にどんどん火をつけていくと、まわりの状況が見えてきました。
どういうわけか、 6方の壁にそれぞれ大穴が空いています。
その大穴からのぞき込むと、 外の風景が見えました。
綺麗なわずかに朝日が覗いてきています。
雨の滴にてらされて、綺麗に七色の虹を光らせて・・・。
外の天気は快晴のようです。
とおくで喚きながら、飛び去る6つの影がうっすらと見えました。
なにしてんだろ?
もしかすると、幻想郷の朝の慣習なのかもしれません。
ラジオ体操みたいなものですかね?
私もそれに習うことにしましょう!
私は、明けの太陽に向かって飛び出しました。
「皆さん、 待って下さい~! おいていかないで~!」
「うわっ! おいかけてきたああぁぁぁ!」
「こっ こないで~!!」
「キヤァァアアアアアアアアアアア!!」
「うわぁああああ きたあああああ!!」
「・・・・!!」
「いやぁあああああ!」
え? これって、何の遊びなんでしょうか?
鬼ごっこ?
「みなさん~?! これって何のあそびなんですか~!? もしかして幻想卿の伝統ある遊び?」
「おっ、 追いつかれたら終わりだ! 逃げるぞ!」
「あっ、 やっぱり鬼ごっこなんですね?! よーし、つかまえちゃいますよ~!」
私は、太陽に向かってぐんぐんスピードを出します。
朝の冷気はうんと、肌に優しそうでした。
「たすけてえええええええええ」
「つかまえた~♪」
「も、妹紅はもう駄目だわ! 置いていくわよ!」
「も、妹紅~!!」
また、綺麗な、幻想郷の朝がやって来ました。
*******************************
備考、 東風谷早苗、 能力、 『奇跡を起こす程度の能力』
*************************
ところで、萃香の話しで「もののけ」と言ったかと思えば「鬼」と言い
また「もののけ」「鬼」ってコロコロ変わるのがちょっと。
「もののけ」の正体は「鬼」だったのです・・・ってことですかね。
珍しく虚仮にさけた咲夜さんは「むぅ」と唸ります→×さけた ○された?
医者が腹を空けて取り出したら「美味しそうな茸ね」→×空けて ○開けて
誤字脱字の指摘ありがとうございます
修正させて頂きました。
すいかの話はすいかの元ネタしゅてんどうじの妄想の産物ですね
では、コメありがとうございました!
最後はなかなか引き込まれました。
>>小雨が天井を叩く音だった。
天井じゃなく屋根だと思います。天井だと雨漏りしている気が・・・
>怪談話をしなければならない「ところ」まだ知りませんでした→「ということを」等
雰囲気良かったです。夏に投稿したらもっとハマったかもしれませんね~。
私はホラー好きだけど怖いのは苦手なんで、オチで安心しました。
友だちに敬遠されてたのは能力とかのせいじゃなくてこれが原因だったとは……、早苗さんw
それはともかく達幻想郷の少女達の“girly”な仕草が節々から読みとれて良かったです。
もっとこういうの読んでみたい!
コメント、ありがとうございます。
オチのためだけに8人分話を考えたようなものですからねー
早苗は作者の中では明るいお姉さんのイメージなのでこんな話になりました
表現、誤字の指摘も寄せてくれてありがとうございます。
修正をさせていただきます。
たくさんのこめんとありがとうございました!
能力設定ををうまく使ったナイスな落ちでした