Coolier - 新生・東方創想話

東方相棒風 2

2011/05/06 00:08:10
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 日の暮れかけた空を、霊夢と魔理沙は飛んでいた。眼下に広がる湖面は、既に沈みかけの太陽の光で暗い金色に波打っている。
「・・・・・・なあ、紅魔館で何か分かると思うか」
「行かないよりはマシよ。魔理沙はあのまま納得して大人しく帰れるような気分なわけ?」
 あのまま、とは、にとりの家で見た光景のことだろう。外の世界のものが勝手に流れ込んで暴れているという早苗の話と相まって、否が応でも好奇心をかきたてられる。博麗大結界を司る霊夢が気にするのはもちろんだが、魔理沙とて、はいそうですか、と納得できる状況ではない。 
「でも紅魔館と外の世界とか幽霊とかってイマイチ結びつかないっていうか・・・」 
「どこまで信じるか微妙だけど、文の記事では紅魔館近辺でも戦闘があったって書いてあったわ。場所的にフランとレミリアの喧嘩っていうセンもあるけどね。違ったとしても、手がかりは多いほどいいじゃない」
 それもそうなんだが、と言おうとして魔理沙は口をつぐんだ。冬の湖面上の空気は余りに冷たく、おしゃべりに興じるには寒すぎる。
 黙って進むうちに紅い建物が見えてきた。吸血鬼の館らしく中は薄暗く、いつ見ても近づきがたい印象だが、それを気にする二人ではない。

「あ、れ・・・・・・」
「何、これ。結界?面白いことしてくれるじゃないの」
 スピードを速めて突っ込もうとした二人は、見えない何かに遮られた。手を出しても触れることができないのに、進もうとすればやんわりと跳ね返す。
「もしかしたら魔方陣かもな。だったら魔法使いの専売特許だぜ」
 言うなり魔理沙はミニ八卦炉を構え、容赦なく門に向けた。
「行くぜ・・・・・・マスタースパーーーク!」
 虹色の閃光が何かに当たって炸裂し、一瞬空に複雑な幾何学模様が浮かび上がった。ほらな、と魔理沙が自慢げに鼻をこする間に、標的となった門の陰から人影が飛び出て舞い上がる。
「もう、いきなり何するんですか!ちゃんと門を叩くのが訪問者の礼儀でしょう!」
「おお、美鈴。まだ雇ってもらっていたか。てっきり首になったから魔方陣張ったのかと思ったぜ」
 急接近してきた美鈴は、やはり何かに跳ね返されるようにして止まった。どうやら結界らしきものはマスタースパークでも壊れなかったらしい。薄く浮かんだ魔法の模様に対する言及も、魔理沙の冗談に対する反論もせず、腕を組んで空中で立ちふさがる。
「どうであれ、今日は・・・今日も、いや今日こそは、中に入れてあげるわけには行きません。お嬢様はお取り込み中です」
「それは、フランの件?」
 図星なのだろう、美鈴はきっと目を吊り上げて反論する。
「妹様は悪くないのです。少しお嬢様が厳しすぎるのです。先方の都合では仕方ないとはいえ、楽しみにされていた里へのおでかけが取りやめになって、あんなにがっかりなされていたのですから」
「・・・・・・美鈴、口数が多いわ」
 いつの間にか瀟洒なメイド長が脇に来ていた。明らかに動揺を見せて美鈴は慌てて後ろに下がる。もう少し突っ込んで聞けば何か聞き出せそうだと思っていた魔理沙は、密かに舌打ちした。

「ここから先は紅魔館内部の話よ。今日は帰ってもらえる?」
「中に入れろとは言わないわ。紅魔館の付近で起きたスペルカードルール無視の戦闘について聞きたいだけ」
「聞こえなかったかしら。今日は取り込んでおりますので、お引取りくださいと申し上げたつもりです」
 それでも食い下がろうとした二人は、館の方角を見て驚いた。”動かない大図書館”のはずのパチュリーがふよふよとこちらに向かってくる。近くまでやってくると、二人には目もくれず咲夜に声をかけた。
「・・・・・・魔理沙で一発、美鈴で一発。ちゃんと認識した。機能しているわ、咲夜」
「では、パチュリー様。やはり別の要因が」
「問題はどうやって壊さなかったかよ・・・・・・一体なんなのかしら」
「おい、何の話なんだ」
 割り込んだ魔理沙にパチュリーは冷たい声で言い放った。

「壊す専門の貴方じゃ役に立たないわ。霊夢だけならまだしもね。とにかく今日は帰って」


***

「あぁー、もうむかつくぜ!・・・・・・みすちー、お代わりだ」
 徳利を逆さにして振った魔理沙が、悪態をついてカウンターに突っ伏す。ミスティアが運んできた徳利とつまみを、アリスは横から魔理沙の代わりに受け取った。
「なんか悔しい。ねえ霊夢、コイツは私が何か言ったときもこうやって愚痴ったり荒れたりしてるの?」
「知らないわ、私は保護者じゃないもの・・・・・・っていうか、てっきりあんたに魔方陣のこと聞きたくて連れ出したんだと思ったのに、愚痴りたかっただけなのかしら、魔理沙は」
 冷え切った体を温めてから帰ろうとミスティアの屋台に寄ることにしたとき、アリスにも声をかけようと言い出したのは魔理沙だった。急な誘いにも喜んで乗ったアリスは、まさかこんな風に管を巻かれるとは思ってなかっただろう。それでも魔理沙の面倒を見ようとするアリスを、霊夢は不思議なものを見るような目で眺めた。

「魔方陣ねぇ・・・・・・確かにさっき聞いた話からしたら、あの紫もやしが家に魔方陣を張ってたこと、そしてそれがフランに破られたことは間違いなさそうね。でも魔方陣を壊して突破したのではない、と」
 大雑把な説明をしただけで、アリスは今までの状況は飲み込んでくれたので話は早かった。
「で、聞きたいんだけど。魔方陣って壊れるときに気づくものなの?」
「大体は分かるわ。精巧に作れば作るほど、保つのには魔力は要らないんだけどね」
 アリス曰く、魔方陣は要となるところに魔力をこめたり魔石を使う以外は、精密な演算を練り上げて構成するらしい。そのどれもが実体がないため、打撃や爆破のような実体にダメージを与える攻撃は通用しないのだと言う。
「でも触れば分かるし壊れることもある、と。魔理沙がさっきやったみたいに・・・・・・」
「あーれーは、ちゃーんと要になってるところを見切ってマスパを打ってるんだぜ。私だって魔法使いだからな、それくらい見えるし分かる・・・」
 あんた起きてたの、というアリスの声には反応せず、また魔理沙はカウンターに突っ伏した。コイツはほっとこう、と身振りで示した霊夢に対し、アリスは溜息で応じる。
「確かに、マスタースパークは物理攻撃じゃない。魔力のカタマリだから、吹っ飛ばすことも可能ね。でもあのパチュリーの魔方陣だもの。完璧な魔方陣は、他人に要となる部分も分からないよう、演算を複雑にするものよ」
「なるほど・・・・・・で、要のところが壊れたら魔力が開放され、術者にも分かる、と」 
「そんなところかしら。霊夢の結界もそんな感じじゃないの?」
 うーん、と唸って霊夢が考え込む。
「自分でもよく分からないわ。壊れた、とか千切れた、とかの感覚じゃないわ・・・・・・というか、壊されたことがないのかしら」
「さすが、博麗の巫女は格が違う、と。自覚無く大結界を背負ってるんだから。あ、褒めてないわ、嫌味よ」
 アリスの言葉を全く気にしないかのように、霊夢はお猪口に口をつけた。その横で魔理沙がむっくりと頭を上げる。

「で、さー。さっきから聞いてると、やっぱ魔方陣壊したのはフランじゃないぜ。だって、アイツのぎゅっとしてどかーん!は実体のある物を破壊する能力だしな」
「だとすると、何なのかしら」
「フランが新しい能力に目覚めたとか?」
「怖いこといわないの」
「そんな進化って言うか、秩序無視みたいなこと、いきなり出来ると思う?」
「秩序無視っていうならアレだってそうだろ」
 くいっとお猪口を開けながら、魔理沙が後ろを指差す。
 そこには、三人が席に着く前から大はしゃぎで雪合戦をするチルノやルーミアなどがいた。それも口々に、スペカルールが無いのが流行りだの、あたいはさいきょーだからひっさつわざを編み出しただの、わいわいきゃあきゃあと騒がしい。横にはレティが園児を見守る保育士のように微笑んで座っている。
「飲食店で静かにしないのは秩序無視よね」
「アリス、そこじゃないわ・・・・・・あの子たちにまでスペルカードルール無視が広まっているのが秩序無視なのよ。ここまでくると、異変ね」
 自分の分の酒を飲み干して霊夢がきっぱりと言ったとき。


「いいえ、異変じゃないわ」
 霊夢の左側の空間がぱっくり開き、そこから姿を現したのは八雲紫だった。
「え、あんた、真冬なのに起きてんの。どうしたのよ」
「別に。目が覚めたっていいじゃない・・・あ、霊夢と同じの、一つね」
 大妖怪のいきなりの登場に辺りが一瞬静まる。魔理沙とアリスは話を続けてよいのか戸惑って口をつぐみ、後ろで騒いでいた妖精たちも凍りついたかのように動きを止めた。焦るミスティアが震えながらお猪口と熱燗を用意する音だけが響く。
「顔が見たくなって寒い中出てきたのに、神社に誰も居ないんだもの。どこ行くかくらい教えなさいよ」
「あんたを冬中待ってる義理も義務もないし、私がどこへ行こうと何しようと勝手じゃない」
「そうでもないわよ、友人だもの。忠告よ。勝手に出回って細かいことつつくと、蛇が出るわ」
 紫に酌をし、自分も手酌で注いで猪口を満たす霊夢を見て、魔理沙は密かに溜息をついた。紫が出てくるということは、何か腹に一物抱えているということだ。しかもこのタイミング。自分たちの動きが彼女の気に食わないのか。それくらいの予想はできるのに、全く動じない霊夢の肝の太さには敵わない。
「蛇が出ようと蛙が出ようと知ったことじゃないわ。異変かもしれないなら尚更よ」
「異変じゃないって言ってるじゃない」
「決めるのは紫、あんたじゃない。解決する巫女が決めること。私がその巫女よ」
 紫の眼光が鋭くなった。正面からそれを見たミスティアがひっと悲鳴を上げ、震える手から皿が滑り落ちた。陶器の割れる音が響いて、それを皮切りに辺りのざわめきが戻ってくる。すみませんすみませんすぐ片付けます、あら勿体無いわ、ミスティアちゃん大丈夫ケガは無い、手伝ったほうがいいのかー、おい大丈夫か片付け手伝うぜ、アリスお前人形連れてきてないのかよ、私の上海に片付けさせる気なの、大ちゃん離せみすちーのカタキだ倒してやる、落ち着いてチルノちゃん相手はあのやくもゆかりだよ、知るもんかスペカルールがなけりゃあたいはさいきょーだから喰らえ最大氷玉・・・・・・


「ああ、もう五月蝿いわ。ちょっと遠くに行ってて!」
 
 紫がぱっと開いた扇子を、横に薙ぎ払うように振った瞬間。
 屋台の横の空間が大きく裂けた。
「危ない!」
 魔理沙がアリスを横に抱えて転がる。二人の足元まで広がったスキマが、椅子を飲み込んで消えた。後ろを振り返った魔理沙の目には誰も写らない。チルノを初めとした妖精や妖怪たちがきれいさっぱり消えていた。
「・・・・・・妖精ごときが。私を倒していいのは、霊夢と藍と、あと一人くらいよ」
「お、おい、紫!危ないじゃないか!」
 激高する魔理沙には目もくれず、紫は霊夢に向き直る。
「とにかく霊夢、春が来るまで大人しく神社にいなさい。じゃ、もう行くわ」
 お代置いとくわ、と屋台の中にへたり込んだミスティアに声をかけて、紫は来たとき同様、音も無く姿を消した。



「・・・・・・な、なんなんだ!アイツ危なすぎるだろ!お前何とか言ってやれよ、悔しくないのかよ!」
 興奮してカウンターにバンッと手を着いた魔理沙に、霊夢はゆっくりとつぶやいた。
「というか、妙だと思わない?・・・・・・明日、人里へ行ってみましょ」





***


「しかし、珍しいよな。慧音が臥せってるなんて」
「あんたの顔には、寺子屋が休みで運がいい、と書いてあるわ」
「言うなよ、人聞きの悪い・・・・・・そりゃ確かに、寝過ごしたのは私だけどさ」
「まったく。昨日飲み過ぎるからよ」
 
 人里のことを聞き取りをするのには慧音が一番、ということで、霊夢と魔理沙は朝のうちのまだ生徒が少ない時間帯に寺子屋に向かうはずだったのだが、人里に着いたのはもう日が完全に傾いたころだった。しかし授業中だったら終わるまで大分待たねば、という二人の心配は杞憂に終わった。慧音はこの二、三週間ほど、体調を崩して寝込んでいるという。もちろん寺子屋は休みで、二人は慧音の家に向かうことにしたのだった。

「妖怪って病気になるんだっけ?」
「人間と同じ病気にはならなくても、慧音は半人だから分からないわよ・・・・・・でもいきなり行って病人に話を聞くだけって気が引けるわね」
「だったらお見舞いってことで。あれでも持ってけばいいんじゃないか」
 魔理沙が指差したのは、未だ開店記念の花輪も残る和菓子屋だ。横には小奇麗な飲食のスペースもあり、女性客で賑わっている。寒さは今日も厳しかった。雪こそ降ってないが、足元から這い登るような冷たさが人里全体を覆っている。ちょっと暖かいものを腹に入れて菓子もお土産として買えばいいという提案に異論があるはずもない。二人は一服することにした。
 
 
「ご注文繰り返しまーす、栗ぜんざい餅二つトッピングと、みたらし団子と抹茶のセットでよろしいでしょうか?」
 お茶屋の娘というよりカフェのウェイトレスと言ったほうが似合う店員を見送って、魔理沙は店内を改めて見渡した。どの席も里の女性客でいっぱいだ。箒を預けた入り口近くを見れば、既に空席待ちの列ができ始めていた。さっと入れたのはタイミングが良かったのだろう。

「ていうかさ、誰もがこんなのどかにお茶してる風景見てると、里近辺で妖怪の本気の戦闘あったなんて思えないよな」
「みんな知らないだけじゃないの?」
「じゃあ私たちで触れまわった方がいいいのかな、悪魔の妹が本気で暴れてますよって」
「あら、魔理沙はフランが犯人だと思ってるわけ?」
 うーん、と魔理沙は言いよどんだ。確かにフランが紅魔館から出たならやりかねないし、昨日の紅魔館メンバーの様子からもそれは間違いないだろう。だが、早苗が見た外界の化け物とは接点が無さ過ぎる。

「じゃあ霊夢は、誰の何が原因だと・・・・・・あ、昨日お前、紫が妙だって言ったけど、何がそうだと思ったんだ?」
 ウェイトレスが運んできた栗ぜんざいの餅を箸でつつきつつ、魔理沙は尋ねた。みたらし団子を口に入れた霊夢は、もしゃもしゃと口を動かしながら、そうねえとつぶやく。
「強いて言えば、勘?」
「なんだよ、それだけか?」
「というか・・・・・・紫は本来、面倒くさがりなのよ。異変っぽいなら逆に私にやらせて自分は動かない。それが今回は私を止めようとする」
 それはそうだ、と魔理沙は相槌を打つ。それに、と霊夢は続けた。
「『春までは大人しく』と言った・・・・・・多分、春になれば紫が自分で自由に動ける。それまでは触れてくれるな、ということなのかと思ったの」
「つまり、今回のことは紫が裏で糸を引いてる、と」
「もしくは隠しておきたい何かがある。どちらにしろ、胡散臭いわ・・・・・・冬のうちが勝負ね。急ぎたいわ」
 抹茶をきれいに飲み干して、考えにふけるように目を閉じた霊夢に、魔理沙はま、いいじゃないかと明るく言った。
「慧音に聞いたら、とりあえず何か手掛かりが増えるだろう。期待しようぜ」



***

「すまないな、この頃全く外に出ていなくて・・・・・・何にも様子が分からないんだ、グフッ、ごほごほ」
「ああ、もう無理しなくていいぜ!」
 苦しげに咳き込む慧音に、魔理沙は慌てて肩を貸して横の布団に寝かせる。背は魔理沙よりだいぶ高いのに、支えた慧音の体が思ったよりも軽くて、魔理沙は驚きが顔に出ていないことを祈った。
「伝染病とかではないようだがこじらせたみたいで・・・・・・調子がいいときは起き上がって家事くらいできるんだが、寺子屋で授業するほどになかなかならなくてな。子供たちにも申し訳ない」
「いや、本当に治るまでちゃんと養生したほうがいいぜ」
 湯を沸かし勝手に三人分の茶を入れた霊夢が枕元までやってきて、魔理沙の横に座る。
「ああ、ありがとう・・・・・・お土産ももらって、茶まで客人に淹れてもらうとは。ここの和菓子、美味いから嬉しいよ」
「和菓子にはお茶が必需品だから。そういえば、妹紅とか世話しに来てくれてるんじゃないの」
「妹紅は、自分の炭焼きの仕事が空いたときに不定期に来てくれてるよ」
「えー、毎日べったりかと思ったぜ」
 魔理沙の声に慧音は薄く微笑んだ。
「余り心配かけたくないから、初めは知らせてなかったんだ・・・・・・この頃一週間ばかりは毎日来てる、かな。永遠亭のお姫様が出てこないから暇だ、とか言い訳しながらだが」
「なんだ、その言い訳。かわいいじゃんか」
 魔理沙はお茶を噴出したが、霊夢は笑わなかった。
「慧音・・・・・・いくつか聞きたいわ。妹紅は、何か異変っぽいことを見聞きしたとか話してない?」
「いや、あいつは嘘はつかないし隠し事も下手だが、そんなことは言ってもない」
「そう。それから貴方、永遠亭で症状診てもらった?」
「霊夢、いくら病気といっても妹紅の手前行きづらいんじゃ・・・」
 いや、と慧音は弱弱しく手を上げて魔理沙を遮る。
「私と永琳は、まあその・・・・・・立場が似ているからな。それなりに話ができる仲ではある。だから妹紅に知られる前にと思って、薬を頼んだ」
「で、効かなかったの」
「永琳が特効薬を作ると言って3日ほど待たされて、兎が持ってきてくれたよ、ほら付け耳の子がね・・・・・・だが、中身は」
 一旦言葉を切って、くっくっとさも面白そうに慧音は笑った。
「滋養によさそうな食材たくさんと、今お前たちが差し入れてくれた和菓子だったよ。ちゃんと食べて、よく休むしかないってことなんだな」
 けほけほっとまた咳き込んだ慧音の背中をさすりながら、魔理沙と霊夢は顔を見合わせた。 



***

「結局、空振りか・・・・・・」
 里の外れまで来てつぶやいた魔理沙は、明らかに肩を落としていた。霊夢も何かを考え込んでいるようだった。
「そんなことないわ。永遠亭に行きましょう・・・・・・あっ」
「うどんげに聞き込みか?」
 力なく振り向いた魔理沙は、視界に霊夢が居ないのを見て驚く。慌てて見回すと、道端の藪を覗き込むようにしゃがみこんでいる彼女の姿が目に入った。
「何やってるんだ、びっくりするじゃないか・・・・・って、おい何拾ってんだ?」
 霊夢が摘み上げたのはきらきらひかる円いもの。またお金に走り寄るなんて、と言い掛けた魔理沙は、ん?とその言葉を飲み込んだ。
 それは、お金と間違うにしては余りにシンプルで、模様も無く味気ない形をしていた。
「これって、確か外の世界の・・・・・・なんだっけ。早苗が持ってたゲーム機に入ってた」
「ボタン電池とかいうものじゃない?」
 だとしたら、と魔理沙の表情が明るくなる。
「ここも、外の事物が流れ込んだ跡があるってことか」
「間違いないわ・・・・・・やはり聞き込みは続行よ。慧音の話で気になったこともあるし」
 ふわっと舞い上がった霊夢を追って魔理沙も箒に跨る。その動きがふと止まった。


「あれぇ、これ、私の箒じゃない。どこで間違った・・・・・・あ、あのぜんざい食べた店でか!」
 慌てて走っていく魔理沙を、何で今まで気づかないのかしら、と霊夢は溜息混じりに見送った。
2回目です。
イメージ的にはここでCMと思って区切っているのですが。
緑茶
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コメント



0.230簡易評価
2.無評価名前が無い程度の能力削除
私は見たくもないコマーシャルでぶつ切りされるのが嫌、DVDで一気に見たい派なので早く結末まで読みたいです。
それとこれはアドバイスなのですが、モノ書き一里塚などで文章作法を一度ご確認になったほうが宜しいのではないでしょうか。
物語以外の部分で読みづらさを感じてしまうのは作者さんにとっても不本意だろうしマイナスだと思いますので。

続きをお待ちしております。
3.100名前が無い程度の能力削除
続きが楽しみですぅ

個人的には、続き物でも一話一話が面白くて好きですよ。だから100点入れちゃいます。