静かな風が流れました。雲は一切見えない新月の夜周りの視界は闇世界に包まれ、ザアーッていう音が聴こえます。
そんな中、一匹の妖怪が宙を漂ってました。名前はルーミア。見ての通り闇の妖怪です。
「闇はいいわ。昼間と違って日光で自慢の髪が傷む心配もないし、肌を痛む事もない。女の子は常日頃から身なりには気を使わないといけない。まあ、これは人間や妖怪にも言える事だけどねー」
両手を真っ直ぐに広げ、辺りを散策するルーミア。ほんと脳天気な妖怪ですわね。
「あー、あー、なんかお腹空いたなぁ……と、お肉(人肉)を丸呑みしたいな」
するとルーミアは山の裏側に不思議な妖精を見つけました。
赤い目をした金髪の縦ロールの女の妖精、名前はルナチャイルドと言いますの。うふふ、確かこの妖精は結構ドジッ子なんですよねぇ。
「………あ、アイツなのかー」
ルーミアはポンっと右手の平を叩くと、何故か赤いリボンが少し揺れまし。ふふ、何でかしらね。
「何か不思議な気持ちだなぁ。まあいいや」
そしてルーミアは両手でスカートを押さえ、ゆっくりと川岸に降下しました。
微風が流れてます。黒き闇は私達妖怪に取って、幸せの一時です。
元々玄武の沢は、大昔山の火口から大量の溶岩が流れ、いつしか溶岩が冷え固まり、岩や崖になった場所で此処には玄武様が住んでらっしゃるのですわ。
あらあら? あの妖精は体を丸くし、何か悩んでいますね。あらまぁ……ルーミアったら例の妖精に一声を掛けましたわ。
「ねえ」
「何? ああ、貴方は肝試しの……」
妖精はルーミアの顔をじっと見ました。
「そうだよ。肝試しの夜。一緒にスイカを食べたルーミアよ」
数日前の夏のある日。ルーミアは魔理沙に「暇つぶしに肝試しをやらないか?」と誘われ、博霊神社に行きました。ルナチャイルドとはその時知り合ったのですわ。
肝試しではみんなで妖夢を脅かし、わあわあと騒ぎに騒いで楽しみ、それはもう笑いあれば恐怖ありの度胸試しでした。ちなみに妖夢は半泣きだったけどね。ふふ……。
あとルーミアは肝試しの際、満面の笑みで闇を展開し、リグル、チルノ、ミスティアを追いかけていたとか、いないとか。私も参加したわぁ、はぁ。
「で、貴女はどうしてここに?」
「暇つぶしに散策してるのよ」
ルーミアは両手を広げ元気よく答えると何故かルナは深い溜め息を吐きました。
「貴方は気楽でいいわねぇ」
「何で」
軽く首を傾げるとルナは「だってえ……」と軽く呟くと、ルーミアはジッーとドジっ子の目を見つめました。
「「ジッー?」」
別にルーミアはルナの事が好きとかそういう事ではありません。ただルーミアは、何となくルナの事がほっとけ無かっただけなんでしょうね。うふふ。
「な、ええと……うーん」
ルナの頬を赤くなりました。ルーミアは「私、何かしたのかなぁ」と言い、人差し指をくわえ、ジ……っとルナの顔を見ました。赤い目は怖いですわ、うふふ。
「いや何というかねぇ。はあ……ってそんな目で見ないでよっ!」
深い溜め息を吐いた後に恥ずかしがるルナ。あらまあ……そんなに恥ずかしがって、貴方たちそういう関係だったのね。するとルナはルーミアにある悩み事を打ち明けました。
「さっきねサニーたちと喧嘩したの」
「何で?」
首を傾げるルーミア。
「いやまあ、私がサニーの大事にしていた舟の模型を壊しちゃってね。サニーは私に、あんたワザと壊したんでしょ!、って強い口調で言い寄ってきたの」
とルナはルーミアに説明し、再び溜め息を吐きました。ちょっぴり可哀想かも。
「ふーん……」
蠢(むし)たちの鳴き声が響き渡ります。まだ鈴蠢たちが鳴くには少し早いと思いますが、もしかしたら夏はもう終わるのではないでしょうか。うーん。
ルーミアはルナに「妖精も喧嘩するんだね」と言うと、ルナは「まあね」と小さく呟きました。
宵闇のルーミアには妖精たちが何を考えるのかは解りません。けど何となくルナはサニーたちと仲直りをしたいんだと思いますわ。
「ねえ……。ルーミアだったどうする?」
ルーミアの顔を見るルナ。ルーミアは悩みました。ん、何て言えば良いんだろ?とりあえず普通に謝れば言うのかな、それとももう……あらあら?
「「んんっ?」」
二人は何者かの気配を感じました。一匹、いや二匹? それともゾンビフェアー? いいえ八重歯を生やした一匹の妖精です。サニーミルクはお友達のルナチャイルドを探していたのです。
どうしてかって? さぁ何故なんでしょ。
「ルナー!」
「さ、サニー!」
「さ、サニー?」
「ルナ、ごめん!!」
サニーはルナに深々と謝罪の意を現し、体をぎゅーっと抱きしめました。さて、そろそろ……行くとしますか。
「ふふふ……私の語り手は終わりね」
「「「あ――!」」」
三匹の行動を予め把握した私は、可愛い二匹の妖精さん、そして宵闇の妖怪さんの前に姿を晒しました。ふふ♪
「「ゆ、紫さん」」
私はクスクスと笑みを見せ閉じた扇子をルナに向けます。
「ルナチャイルド。貴女はサニーミルクが大事にしていた舟の模型を壊し、責任を感じてましたね?」
「は……はい」
ルーミアは口をぽかんと開き、「そーなのか」言いました。
「そして、サニーミルク。貴女は自分が大事にしていた舟の模型をルナに壊されたと思い、彼女に八つ当たりをしましたね?」
「は…はぃ。」
「なー。八雲紫?」
「ん? なんですか?」
後ろからルーミアに呼ばれた私は、その場で軽く半回転し、優しい笑みを見せました。
「コレってどういう状況なのー?」
「ふふ、簡単な事ですわ。サニーが大切にしていた舟は実は怨霊が取り憑いた舟の模型で、その舟が二人に悪戯をしただけよ」
と私は満面な笑みでルーミアにその説明しました。ルーミアの返答は「へー」。でも金の脳は渡せませんわよ? ふふ。
一方ルナとサニーは、お互い面に向かって何度も「ごめんなさい」と謝り続けました。。
幻想郷には外で使われなくなった様々な道具が流れてきます。そしてそれはいつ……。おや?
「うーらめしやーっ!」
「「ひゃああ!」」
「おお……何かでてきた! でてきたよー!」
まぁ、茄子色の唐傘がこんな岩場に来るなんて……びっくりしましたわ。明日、幻想郷全体に雨が降り渡るかもしれないわねぇ……。
「私ね。小傘って言うの。何かよく解らないけど、此処に来ると肝試し出来るって聞いたんだー!」
光の三妖精に満面な笑みを見せる小傘。彼女もまた呪われていた道具で、今ではまぁのんびりと人間達を脅かしています。
古き道具は結界を越えこの地に渡って来る――外の人間たちはちゃんと道具を大切にしてるかしらねぇ?
「あ、いたいた。サニー! ルナー!」
西側から現れたのは星の妖精、スターサファイア。ルナとサニーの友人です。
そして私は傘を広げ、宙に浮き、幼き妖怪と妖精たちに、こう言いました。
「さあ……貴女たち。仲直りのしるしに、楽しくて怪しい肝試しを始めましょう」
「「「「「はーい!」」」」
ちなみにどうして私が肝試しを企画した言いますと、あの三妖精には仲良くして貰わないと、色々と困るからです。
彼女達の住家(ミズナラの大木)を維持してもらわないと二重結界が壊れてしまいますからね、うふふ。特に数年前。外からたくさんの生物が来たから、結界にたくさんの穴が開いて大変でしたわー。いったい何処の"誰"がこんな事をしたのでしょうかねー?
(完)
>>4さん
どもどもです。数年前から三月精を何度も読み返し、勉強しましたら、このような展開なりました。
と思ったら三月精ネタか。
後書きであらすじを書くくらいなら、本編に組み込んでいただいた方が嬉しかったですね。
ご指摘有り難うございます。再度読み直したら、確かに急すぎました。
あらすじを後で持ってくのは良く無かったです…ね…。そのお言葉を肝に銘じ、今後の創作活動に生かして参ります。